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第一章 山森颯人 菅野淳太
コマ
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「淳太くん…どうして??」
泣きっ面を淳太に向けた。
「探したに決まってるでしょ!!」
「いや、どうしてって……授業中、で、しょ?しかもここ人気ないし…どうして…。」
「あ~」と言いながら、淳太は何故か照れくさそうに頭をかいた。
「僕さ、問題児っぽいの!!授業出てないんだ♪」
「自分から問題児って言っちゃうんだ…」
颯人はため息をついて、顔を腕へ埋めなおした。淳太はそれを見て、教室から持ってきたバッグを漁りだした。木材や金属が擦れる音がする。さすがに何事だと思った颯人は、音の方を見た。
「あそぼ?」
そう言って淳太がバッグから取り出したのは、昔ながらのコマだった。
「……コマ?」
「そう。コマ。やり方わからないけど。」
淳太はおぼつかない手で糸を持ち、くるくるとコマに巻きつけ始めた。そして、階段の踊り場へとコマを放つ。コマは地面に打ち付けられ、階段へ滑り落ちた。どんどん下へ落ちていき、さらに下の踊り場へ落ちていったコマを見て、颯人は微妙な表情をしていた。
「あちゃー……やっぱり難しいね。」
淳太は言った。颯人は「うーん……」と言いながら、落ちたコマを拾うために階段を下り、コマを手に取った。
「まず…巻き方が、違うけど………」
「えっ」
颯人はコマを慣れた手つきで巻き始めた。淳太は階段にちょこんと座り、上から颯人を見ていた。颯人は踊り場へコマを放つ。そのコマが回る回る。颯人はその回っているコマを眺めていた。淳太は立ち上がり、「すげーーー!」と言いながら階段を下り、颯人の肩を叩いた。
「プロじゃん!!出来るの!?」
「昔…やってた、から…。」
颯人は回っている途中のコマを拾い、淳太へ手渡した。
「すごいじゃん!!え!?本当すごい!!教えてよ~。」
颯人は顔を赤くした。そんなに褒められた事などなかったからだ。
「いや、その………えっと…」
急に褒められた、と混乱した頭を整理し、次に出す言葉を考えていた。だが、思いつかない。淳太はにこやかに笑い、颯人の手を掴んだ。颯人は「ヒッ!」と声を出す。
「んじゃ!もうさっきの呼び出しの放送かかってから20分経ってるよ!そろそろ行かないとまずいじゃんね。」
颯人はハッとした。完全に忘れていた。
「あっ、ありがとう……行かないと…」
「僕も行くよ!スクールカウンセラーの先生に渡すものあるから!」
淳太はコマを乱雑にバッグへ放り込み、肩にさげた。
「じゃ行くか!!」
「あっ、、…うん!!」
2人は手を繋ぎ、階段を駆け下りた。
泣きっ面を淳太に向けた。
「探したに決まってるでしょ!!」
「いや、どうしてって……授業中、で、しょ?しかもここ人気ないし…どうして…。」
「あ~」と言いながら、淳太は何故か照れくさそうに頭をかいた。
「僕さ、問題児っぽいの!!授業出てないんだ♪」
「自分から問題児って言っちゃうんだ…」
颯人はため息をついて、顔を腕へ埋めなおした。淳太はそれを見て、教室から持ってきたバッグを漁りだした。木材や金属が擦れる音がする。さすがに何事だと思った颯人は、音の方を見た。
「あそぼ?」
そう言って淳太がバッグから取り出したのは、昔ながらのコマだった。
「……コマ?」
「そう。コマ。やり方わからないけど。」
淳太はおぼつかない手で糸を持ち、くるくるとコマに巻きつけ始めた。そして、階段の踊り場へとコマを放つ。コマは地面に打ち付けられ、階段へ滑り落ちた。どんどん下へ落ちていき、さらに下の踊り場へ落ちていったコマを見て、颯人は微妙な表情をしていた。
「あちゃー……やっぱり難しいね。」
淳太は言った。颯人は「うーん……」と言いながら、落ちたコマを拾うために階段を下り、コマを手に取った。
「まず…巻き方が、違うけど………」
「えっ」
颯人はコマを慣れた手つきで巻き始めた。淳太は階段にちょこんと座り、上から颯人を見ていた。颯人は踊り場へコマを放つ。そのコマが回る回る。颯人はその回っているコマを眺めていた。淳太は立ち上がり、「すげーーー!」と言いながら階段を下り、颯人の肩を叩いた。
「プロじゃん!!出来るの!?」
「昔…やってた、から…。」
颯人は回っている途中のコマを拾い、淳太へ手渡した。
「すごいじゃん!!え!?本当すごい!!教えてよ~。」
颯人は顔を赤くした。そんなに褒められた事などなかったからだ。
「いや、その………えっと…」
急に褒められた、と混乱した頭を整理し、次に出す言葉を考えていた。だが、思いつかない。淳太はにこやかに笑い、颯人の手を掴んだ。颯人は「ヒッ!」と声を出す。
「んじゃ!もうさっきの呼び出しの放送かかってから20分経ってるよ!そろそろ行かないとまずいじゃんね。」
颯人はハッとした。完全に忘れていた。
「あっ、ありがとう……行かないと…」
「僕も行くよ!スクールカウンセラーの先生に渡すものあるから!」
淳太はコマを乱雑にバッグへ放り込み、肩にさげた。
「じゃ行くか!!」
「あっ、、…うん!!」
2人は手を繋ぎ、階段を駆け下りた。
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