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第3章 現代の魔女裁判

第93話 司法自動販売機論

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 裁判所は自動販売機のようなもので、お金を入れてボタンを押されたから、判決というジュースを出しただけで、出したジュースの味がどう評価されたかについては、彼らは一切関知しないでしょう。
 押されたボタンに従い、お客様が希望された商品を間違わずに提供することが仕事です。この「間違わずに」は、自販機の基準で間違わないことなので、お客様の意向に沿えなくても、クレームは一切受け付けられません。出された商品の味がひどくて、お客様が自販機の悪口を言っても、「俺カンケーねぇし」みたいな感じです。すべては、製造会社の責任になります。
 問題点を指摘すると、我が身に返ってくるかもしれません。このメーカーは、税金という投資によって賄われている強制的な株式会社のようなものです。問題の根源を正せば、それを放置している国民が株主責任を問われかねません。
 実際は、持ち株が少なすぎて、意見が届かないだけなのですが、残念です。

 もしかしたら、サンプルの商品と出てきた物が違っている場合でも、法務省という管理会社の責任であり、自販機的には、やはり「俺カンケーねぇし」みたいな感じになります。自販機の横に電話番号も書いてあるのですが、苦情を受け付けても、自販機が改善されることはありません。旧来のシステムで、しかもただ商品を出すだけなので、改善を求めることは困難です。結局は、商品の話に返って、司法ではなく、我々が代議士を送り込んでいる立法府の問題になります。もし管理会社に問題があったとしても、有権者という株主の責任になるのが、国民主権という制度です。
 自販機が、どうやってこの商品を出したのかという点が、購入者には気になりますが、その点は、判例と呼ばれる古いシステムに従っているようなので、判決の基準についてはほぼブラックボックスです。自販機に貼られたチラシの商品「改正民法七六六条」は、目新しいデザインの新製品で、面会交流という子供に優しい味になっているようで、ぜひ飲んでみたいのに、出てくる缶は旧型の七六六条です。商品を取り出した瞬間、騙されたと気づきます。しかも、連れ去りの衝撃的な辛さと引き離しの苦い後味が効いていて、とても飲めたものではありません。

 さらに、自販機横には、弁護士と言うボタン押し代行業者がいるのですが、これが曲者です。一応お客さんの好みを聞くのですが、あとは司法試験合格というプライドと直感でテキトーにボタンを押してしまうため、ポカリを頼んだつもりが梅昆布茶を渡されて、大変残念な思いをさせられます。高額なボタン押し料を取るくせに、ボタンを押す指の角度にまでこだわるプライドのせいで、お客様の要望をなかなか聞いてくれません。
「大丈夫!安心してください! 次はポカリを出します」と胸を張るので、また数十万を渡してボタンを押してもらうと、「なんだ! この機械どうなってんだ?!」と言いながら、さらに梅昆布茶を手渡してきます。
 私は最近、この代行業者への信頼を失ってしまったため、とりあえず業者を横へ置いておいて、梅昆布茶を押すと見せかけて…、ポカリのボタンを思いっ切りグーパンチでポカリます。もちろん、実際に手は出しません。嘘つきバイキンマンに言葉のアンパンチを放つだけです。案外、ちゃんとした商品を出してくれます。
 地元の方言で話す自販機を見たことがありますが、虚言癖の自販機を想像してもらうと理解しやすいでしょう。面と向かって「嘘をつかないでください」と伝えると、意外と効いて、少しは聴き入れてくれます。虚言癖は治らないのですが、商品に嘘がなくなります。一時的にですが…。

 最近、この自販機の脇に、魅力的なドリンクの広告が掲示されていました。ぜひ飲んでみたい親子に優しい味のため、早く新商品が追加される日を心待ちにしていました。
 この商品には反対派が多くて、主にこの商品の発売で損をする業者さんが反対していたようです。飲んだこともないくせに「味が強烈で、子供の健康を考えてない」と、発売前からゴネまくっています。個人のお客さんでも、この商品が置かれると、大好きな連れ去りスカッシュや引き離しソーダが自販機から撤去される可能性を恐れて、反対しているようです。ボタン押し代行も、連れ去りスカッシュや引き離しソーダが好きです。「二本目当たりのお得感がなくなる」というのが本音で、一本目ハズレのお客からの追加料金で、一度で二度おいしい思いができなくなるのが反対の理由でしょう。
 この新飲料は飲んでみると、子供に優しいだけじゃなく、意外と親にもおいしい味だと思うのですが、どうやら気づかないうちに発売中止に追い込まれたようです。

 捏造DVコーラの品切れも影響しているのでしょうか。あれは、警察沙汰になるほどのスパーク感です。私はDVコーラを出されたことはないですが、嫁が自販機のそばで大騒ぎして、パトカー数台が来たことはありました。義父が一一〇番通報が得意だったのが、災いしました。「娘のところへ連れて行ってください」と頼む私に、「警察が来てからです!」と義父が野次馬の前で叫んでいました。そして、義父も嫁も、みんな仲良く警察で取り調べを受けました。
 裁判自販機にお金を投入する前に、まずは結婚相手をきちんと選ばないと大変なことになります。裁判は自販機任せでも、結婚を運任せにしては絶対にダメです。少しでも何かが変だと感じたら、さっさと身を引いてください。司法自販機という単なるシステムでさえ改善できないのに、人間の精神に改良を求めることは不可能です。壊れた本人が「壊れてない」って言っているのだから、手の施しようがありません。
 つい脱線しました。私もそんな女性を配偶者に選んだがために、裁判自販機の前に立つことになった者の一人です。

 そのうち、共同親権の自販機ができると、本当に子供に優しい商品が出させるようになるはずです。離婚後初の共同作業が、子供のことを第一に考えた面会と養育費であれば言うことなしです。
 子は親の私物ではありません。人格と人権を有する、一人の人間です。世話してやっているからという理由で、我が意のままにしていいものでもありません。「私が世話してやっているんだから、面会せずとも金を出せ」は、エゴ丸出しで一方的すぎます。残念ながら、面会二割・養育費二割が実態です。金さえ出せば親子という論理は成り立ちません。

 要するに、何が言いたかったかと申しますと、裁判所という自販機は自らが出した判決という商品の評価を気にしないし、古い商品を飲んで腹を壊しても、もし命を落としたとしても、「我関せず」だということです。
 それはそうです。だって、ただの機械だもの。非情で当然です。
 ちなみに、高裁最高裁はさらに機械的です。高裁はお金を入れたら、ボタン押す前に梅昆布茶を出してきます。最高裁は商品を出さずに、却下ボタンが点灯します。
「明るい家族計画」よりも恥ずかしい「暗い家族崩壊」自販機です。我が子のためを思うなら、こんな安くて古臭い自販機に、家族の運命を委ねてはいけません。
 以上が、私が家事審判を経験して感じた司法自販機論の概略です
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