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50.一人ぼっちの夜③
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流石にそろそろ
『調子に乗ってすいませんでした!』
と、土下座の準備に入ろうかと動き出した瞬間。
『───いいよ』
ずっと反応を返してくれなかった悠が、画面の向こうから、薄く笑いながら声をかけてきた。
「───…は?」
えっと…今なんて言った?
俺の耳には”いいよ”って聞こえた気がしたんだけど、聞き間違いじゃねーよな?
「いま……いいって言った?」
『あぁ。アキが見たいって言うならペニスも出すし、特等席で扱くところを見せてあげても良い。そうしたらアキのおっぱいも見せてくれるんだろう?』
「…………はい?」
何でノリノリなのっ!?
こういう時って、どう反応すればいいんだ?
コイツの思考って、ホンットわけ分かんねぇっ。
あっさり了承してきたけど、悠ってこんなにノリの良い性格してねーだろ?
冗談なんだか本気なんだか、分かんねぇよ。
(それに──…ぺ…ペニスって……。
たまに悠って、変なスイッチが入るよな)
イケメンの卑猥な発言に、こっちが恥ずかしくなってきた。
どぎまぎしている間に、椅子から立ち上がった悠が、画面に近づくのが見える。
そのままズボンのホックを躊躇なく外しだした。
(はぁ!? )
嘘だろっ。
さっきの会話って、マジだったのか!?
俺のスマホ画面には、ホックが外された悠の股間部分が、デカデカと映し出されている。
と…特等席ってこういう事かっ。
確かに股間のアップは凄いけど、だからって!!
「ゆゆゆ悠っ!ちょっ、お前何するつもりなんだよっ!」
『何って、アキが俺のオナニー姿を見たいと言ったんだろう? いいよ。だから見せてやると言っているんだ』
「オナ……ッ!?」
ほ、本気か…ッ!?
動転しすぎて声が裏返った。
俺の慌てている様子とは逆に、悠の声は落ち着いている。
何で見せつけられている俺の方が、動揺してんだよ!
混乱する俺を前に、悠がズボンを下ろす為に、ジッパーに手をかけた。
思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
(ほ、本気で俺に、オナる所を見せる気かよ!?)
悠の凶悪ペニスが脳裏を過ぎった瞬間、ブワリと全身に鳥肌が立った。
マジでやだっ!
止めろってっ。止めてくれよ!!
お前の凶悪ペニスなんて、見せんなぁあっ!
「悠ストーーップ!! み、見せんなっ、見せなくてもいい!!」
スマホに向かって大声で『待った!』をかけると、悠の手がピタリと止まった。
うん、それでいい。
そのまま動くんじゃねぇぞ。
悠の姿を注視していると、画面の向こうで何かを操作するような動きを見せた後、急に画面が真っ暗になった。
一瞬通話を切ったのかと思ったけど、ビデオ通話を止めただけで、通話は繋がったままだ。
兎にも角にも、悠の凶悪ペニスを見なくて済むのなら何でもいい。
ホッと安堵の溜め息が、口から漏れた。
あのペニスのデカさと形は、未だにトラウマになっている。
出来るなら、一生ズボンの中から、出さないでもらいたいくらいだ。
『アキが見たいと言い出したくせに、酷いな。どうして止めるんだ?』
「あほっ。見たくなんてねぇよっ。冗談に決まってんだろ!」
『そうか…残念だな。見せても別に、構わなかったんだが』
画面が消灯したまま悠の声だけが、スマホのスピーカーから流れてくる。
これ、ビデオ通話が終わったんなら、スピーカーじゃなくてもいいよな。
切り替えられそうなボタンを探すけど、スピーカーどころか、切断ボタンさえ見つからない。
どこかに隠れてんのか?と、あちこち画面を触っていたら、突然スマホを覗き込む自分の姿が、画面に映し出されて飛び上がった。
「どわあ……っ、ビックリした!」
タイミングがタイミングだったから、滅茶苦茶ビビった!
「何だ俺かよ……。てか何でこっちだけカメラ機能がオンになってんだよっ。おい悠、これどこで切ればいいんだ?」
『あぁ、それならこっちで操作しているから、アキ側では弄れないよ』
「……は? どういうこと?」
サラッと怖い発言を聞いたような気がする。
なんかこのアプリって……やっぱ色々とおかしくねぇ?
『それよりも──、まだ?』
このアプリのおかしさに改めて戦慄していると、悠が何かを催促してくる。
「…………は?」
『おっぱいを見せてくれる約束だったろう? こっちは準備が整っているんだが、いつまでオレは待てばいいんだ?』
………………はぁっ!?
「何言ってんだよ、お前。それに準備も何も、そっちは画面消してんじゃん。ズルくねぇ?」
『狡くはないだろう? オレはいいよって言ったのに、見せるなと言ってきたのはアキの方だ』
────あっ!
(さっきのやり取り……!?)
俺の言葉を逆手に取りやがったな、コイツ!!
「お前、騙しただろっ!!」
『騙してはないだろう? オレは見たいのなら見せてもいいと、本気で思っていたし』
くっそ!! 悠の奴めっ。
絶対俺が途中で止めさせると分かっていて、あんな真似をしたんだろうが!
ぶすくれたまま画面を睨んでいると、悠がスピーカー越しに、これみよがしな溜息を吐いてきた。
『──アキ。自分から言いだしたことだろう。なら自分が言った言葉には、最後まで責任を持つべきじゃないのか?』
「やだよ。あれはお前の反応が見たいだけの、ただの冗談なんだし」
『冗談だとしても、オレは了承したよ。ならアキも約束を果たすのが筋なんじゃないのか?──それとも……』
そこでわざとらしく言葉を切ったあと、スッと目を細めるようにして笑いかけてきた。
『オレにおっぱいを見られるのが、そんなに恥ずかしいんだ?』
(こいつ……!)
そこでやっと理解した。
悠のこの雰囲気。
(これって絶対さっきの、『シコれ発言』に対しての仕返しだろッ!!)
相変わらず悠の嫌がらせが、ねちっこくて分かりにくい。
それとも俺で楽しんでんのか?
とにかく、綺麗な見た目と普段の落ち着いた言動に惑わされそうになるけど、悠の本質はかなりえげつないし、子供っぽい。
あと、怒らすとメチャクチャ面倒くさいし。
こんな伴侶、絶対お断りだ!!
「お前な……おっぱいって言い方止めろよ。きもい」
『何故? 最初に言い出したのは、アキだろう?』
「元々はお前が先に言い出したんだろうがっ。あとお前が言うと、なんかやらしくて嫌だ。逆に見せたくなくなる」
『へぇ。自分の胸をおっぱいって言われただけで、恥ずかしいの? 見られたくないって、もしかしてオレを雄として意識してたりする?』
「────ッ!?」
お、雄とか自分で言うか!?
やっぱ変なスイッチ入ってるだろお前!
いや……。それとも 俺を雌扱いして、Ωとして目覚めさせようって魂胆なのかもしれねぇ。
くそっ、負けてたまるかっ!!
「違ぇよっ、男の胸なんかをおっぱいなんて恥ずかしい呼び方してる奴には、見せたくねぇって言ってんの」
『恥ずかしい呼び方? Ωは妊娠すると男でも母乳を出すんだ。なら別にアキの胸をおっぱいと言ったって、問題ないだろう?』
……………へっ?
「それマジな話?」
思わず悠に聞き返してしまった。
Ωって男でも母乳出んの?
マジで?
もしかしてこの平たい胸も、膨らんだりすんの?
『出るよ。赤ちゃんを産めるんだ。それくらい当たり前だろう?』
当たり前なんですって!
知らなかったよ俺!!
「すげぇな。何だその人間の神秘。どういう構造になってんだよ」
『何を他人事みたいに言っているんだ? アキの胸が敏感なのもΩ性が混ざっているからだろう。赤ちゃんを生むために、乳腺が過剰に反応しているせいだと思うよ』
「はぁっ、別に敏感じゃねーよ!!」
『少し吸っただけで、腰砕けになっていたじゃないか』
「バ…ッ、なってねぇっ!!」
『なっていないなら、どうしてそんなに赤い顔になっているんだ?』
「うるさい! お前は少し黙れ!」
むむむぅ……っ。ビデオ通話め。
カメラ部分、隠してやろうか。
つーか、悠が俺の乳首に固執してるのって、おっぱい大好きマンとかじゃなくて、Ω性を刺激する為とかじゃねーよな?
確かに感じやすくはなってるけど、それがまさか赤ちゃんを生む為の準備だったなんて、知りたくもなかった。
くそっ。
勝手にΩへの階段なんか、登らされてたまるか!
鎮まれ俺の乳腺!!
(ミルクを出す予定もねーし、赤ん坊だって産むんじゃなく産ます方に、俺はなるんだ!)
ていうか!!
「何サラッと人の事をΩ扱いしてんだよっ。俺はβだって言ってんだろ!」
『なら βの胸はおっぱいじゃないんだし、別に恥ずかしがる必要もないだろう? そのまま堂々と画面に映せばいい。同性なんだろう?』
悠の言葉通りにするのは癪だけど、このまま恥ずかしがって見せないままだと、更にからかわれそうだ。
もうここまできたらヤケだ!
お前の辱めに、負けてたまるか!!
スマホを前にして、ドドンと胸を晒してやる。
こういうのは堂々と見せるほうが、エロさが半減するんだ。
「おら、お前の見たがってたおっぱいだぞ。これで満足か?」
ジト目で悠に話しかけながら、画面に映った自分の胸を見る。
うん、普通に大平原がそこにあるだけだ。
こんなのに興奮する方が、おかしいんだって。
『ふふっ。やっぱりアキの乳首は、小さくて慎ましやかで、可愛いらしいな』
心底可愛いと思っているような口調で、俺の乳首を褒める悠。
大丈夫かこのイケメン……。
ちょっとゾワッとしたんだけど。
まぁここまで来たら、最後まで付き合ってやるけどな!
(先に音を上げるのは、お前だ悠!!!)
「だろ? 乳首の貞淑さには、ちょっと自信があんだよ俺」
自分で言っときながら、顔が引き攣りそう。
何だよ貞淑さって。
言ってる俺でさえ、意味が分かんねぇわ。
『乳首は可憐で小さいけど、少し弄るだけですぐに息を乱すところも可愛いよ。次はどう弄って啼かせようかと、想像するだけで楽しくなる』
「へーえぇえ…。ならその楽しい想像で、早くイッちまえよ」
……やばい。
悠の発言が気持ち悪すぎて、早々と引いてしまった。
本気で頭大丈夫かお前?
男の胸相手に、よくそこまで語れるな。
言ってて恥ずかしくならないのか?
それともこれが俗に言う、深夜テンションというものなんだろうか?
「アキ。ちょっと脇から乳首に向けて、指先を滑らせるように触ってみてくれ」
「はぁっ!? 何勝手にリクエストなんかしてんだ。ウチはそんなサービスなんかしてねぇよ。満足できねぇなら、他の店を当たってくれ」
「早くイッて欲しいんだろう? アキの痴態を見せてくれたら、すぐにイケそうだ」
……ん?
もしかして、マジでオナってんの?
耳を澄ませてみるけど、オナる音まではスピーカーで拾えそうにない。
息も乱れているようには感じないけど、悠なら上手く隠しそうだしなぁ。
(まぁどっちにしても、それくらいのサービスなら、別にいいか)
思い直して、さっさと終わらせようと脇に手を当てた所で、早々と「待った」がかかった。
俺の魂胆を見抜いた悠が、面倒くさいことを言い始める。
「アキ、じっくり焦らすように滑らせて」
うわぁ……なんだこの展開。
変なノリになってきたなと思いつつ、リクエスト通りに脇からゆっくりと中心に向かって指を滑らせていく。
おっ、映像で見る視覚効果ってすげーな。
指を乳首に向かって滑らせているだけなのに、何かエロく見える。
あれ?
もしかして、俺……ちょっと興奮してる?
自分の手なのに、何か気持ちいいぞ。
少しずつ手を前に滑らせていくだけで、触れた箇所がゾワゾワしてくる。
乳首が前に引っ張られるような感覚に、思わず自分の胸を見ると、ぷっくらと先端が膨らんでいた。
……え?
俺の胸、感じやす過ぎじゃねぇ?
『調子に乗ってすいませんでした!』
と、土下座の準備に入ろうかと動き出した瞬間。
『───いいよ』
ずっと反応を返してくれなかった悠が、画面の向こうから、薄く笑いながら声をかけてきた。
「───…は?」
えっと…今なんて言った?
俺の耳には”いいよ”って聞こえた気がしたんだけど、聞き間違いじゃねーよな?
「いま……いいって言った?」
『あぁ。アキが見たいって言うならペニスも出すし、特等席で扱くところを見せてあげても良い。そうしたらアキのおっぱいも見せてくれるんだろう?』
「…………はい?」
何でノリノリなのっ!?
こういう時って、どう反応すればいいんだ?
コイツの思考って、ホンットわけ分かんねぇっ。
あっさり了承してきたけど、悠ってこんなにノリの良い性格してねーだろ?
冗談なんだか本気なんだか、分かんねぇよ。
(それに──…ぺ…ペニスって……。
たまに悠って、変なスイッチが入るよな)
イケメンの卑猥な発言に、こっちが恥ずかしくなってきた。
どぎまぎしている間に、椅子から立ち上がった悠が、画面に近づくのが見える。
そのままズボンのホックを躊躇なく外しだした。
(はぁ!? )
嘘だろっ。
さっきの会話って、マジだったのか!?
俺のスマホ画面には、ホックが外された悠の股間部分が、デカデカと映し出されている。
と…特等席ってこういう事かっ。
確かに股間のアップは凄いけど、だからって!!
「ゆゆゆ悠っ!ちょっ、お前何するつもりなんだよっ!」
『何って、アキが俺のオナニー姿を見たいと言ったんだろう? いいよ。だから見せてやると言っているんだ』
「オナ……ッ!?」
ほ、本気か…ッ!?
動転しすぎて声が裏返った。
俺の慌てている様子とは逆に、悠の声は落ち着いている。
何で見せつけられている俺の方が、動揺してんだよ!
混乱する俺を前に、悠がズボンを下ろす為に、ジッパーに手をかけた。
思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
(ほ、本気で俺に、オナる所を見せる気かよ!?)
悠の凶悪ペニスが脳裏を過ぎった瞬間、ブワリと全身に鳥肌が立った。
マジでやだっ!
止めろってっ。止めてくれよ!!
お前の凶悪ペニスなんて、見せんなぁあっ!
「悠ストーーップ!! み、見せんなっ、見せなくてもいい!!」
スマホに向かって大声で『待った!』をかけると、悠の手がピタリと止まった。
うん、それでいい。
そのまま動くんじゃねぇぞ。
悠の姿を注視していると、画面の向こうで何かを操作するような動きを見せた後、急に画面が真っ暗になった。
一瞬通話を切ったのかと思ったけど、ビデオ通話を止めただけで、通話は繋がったままだ。
兎にも角にも、悠の凶悪ペニスを見なくて済むのなら何でもいい。
ホッと安堵の溜め息が、口から漏れた。
あのペニスのデカさと形は、未だにトラウマになっている。
出来るなら、一生ズボンの中から、出さないでもらいたいくらいだ。
『アキが見たいと言い出したくせに、酷いな。どうして止めるんだ?』
「あほっ。見たくなんてねぇよっ。冗談に決まってんだろ!」
『そうか…残念だな。見せても別に、構わなかったんだが』
画面が消灯したまま悠の声だけが、スマホのスピーカーから流れてくる。
これ、ビデオ通話が終わったんなら、スピーカーじゃなくてもいいよな。
切り替えられそうなボタンを探すけど、スピーカーどころか、切断ボタンさえ見つからない。
どこかに隠れてんのか?と、あちこち画面を触っていたら、突然スマホを覗き込む自分の姿が、画面に映し出されて飛び上がった。
「どわあ……っ、ビックリした!」
タイミングがタイミングだったから、滅茶苦茶ビビった!
「何だ俺かよ……。てか何でこっちだけカメラ機能がオンになってんだよっ。おい悠、これどこで切ればいいんだ?」
『あぁ、それならこっちで操作しているから、アキ側では弄れないよ』
「……は? どういうこと?」
サラッと怖い発言を聞いたような気がする。
なんかこのアプリって……やっぱ色々とおかしくねぇ?
『それよりも──、まだ?』
このアプリのおかしさに改めて戦慄していると、悠が何かを催促してくる。
「…………は?」
『おっぱいを見せてくれる約束だったろう? こっちは準備が整っているんだが、いつまでオレは待てばいいんだ?』
………………はぁっ!?
「何言ってんだよ、お前。それに準備も何も、そっちは画面消してんじゃん。ズルくねぇ?」
『狡くはないだろう? オレはいいよって言ったのに、見せるなと言ってきたのはアキの方だ』
────あっ!
(さっきのやり取り……!?)
俺の言葉を逆手に取りやがったな、コイツ!!
「お前、騙しただろっ!!」
『騙してはないだろう? オレは見たいのなら見せてもいいと、本気で思っていたし』
くっそ!! 悠の奴めっ。
絶対俺が途中で止めさせると分かっていて、あんな真似をしたんだろうが!
ぶすくれたまま画面を睨んでいると、悠がスピーカー越しに、これみよがしな溜息を吐いてきた。
『──アキ。自分から言いだしたことだろう。なら自分が言った言葉には、最後まで責任を持つべきじゃないのか?』
「やだよ。あれはお前の反応が見たいだけの、ただの冗談なんだし」
『冗談だとしても、オレは了承したよ。ならアキも約束を果たすのが筋なんじゃないのか?──それとも……』
そこでわざとらしく言葉を切ったあと、スッと目を細めるようにして笑いかけてきた。
『オレにおっぱいを見られるのが、そんなに恥ずかしいんだ?』
(こいつ……!)
そこでやっと理解した。
悠のこの雰囲気。
(これって絶対さっきの、『シコれ発言』に対しての仕返しだろッ!!)
相変わらず悠の嫌がらせが、ねちっこくて分かりにくい。
それとも俺で楽しんでんのか?
とにかく、綺麗な見た目と普段の落ち着いた言動に惑わされそうになるけど、悠の本質はかなりえげつないし、子供っぽい。
あと、怒らすとメチャクチャ面倒くさいし。
こんな伴侶、絶対お断りだ!!
「お前な……おっぱいって言い方止めろよ。きもい」
『何故? 最初に言い出したのは、アキだろう?』
「元々はお前が先に言い出したんだろうがっ。あとお前が言うと、なんかやらしくて嫌だ。逆に見せたくなくなる」
『へぇ。自分の胸をおっぱいって言われただけで、恥ずかしいの? 見られたくないって、もしかしてオレを雄として意識してたりする?』
「────ッ!?」
お、雄とか自分で言うか!?
やっぱ変なスイッチ入ってるだろお前!
いや……。それとも 俺を雌扱いして、Ωとして目覚めさせようって魂胆なのかもしれねぇ。
くそっ、負けてたまるかっ!!
「違ぇよっ、男の胸なんかをおっぱいなんて恥ずかしい呼び方してる奴には、見せたくねぇって言ってんの」
『恥ずかしい呼び方? Ωは妊娠すると男でも母乳を出すんだ。なら別にアキの胸をおっぱいと言ったって、問題ないだろう?』
……………へっ?
「それマジな話?」
思わず悠に聞き返してしまった。
Ωって男でも母乳出んの?
マジで?
もしかしてこの平たい胸も、膨らんだりすんの?
『出るよ。赤ちゃんを産めるんだ。それくらい当たり前だろう?』
当たり前なんですって!
知らなかったよ俺!!
「すげぇな。何だその人間の神秘。どういう構造になってんだよ」
『何を他人事みたいに言っているんだ? アキの胸が敏感なのもΩ性が混ざっているからだろう。赤ちゃんを生むために、乳腺が過剰に反応しているせいだと思うよ』
「はぁっ、別に敏感じゃねーよ!!」
『少し吸っただけで、腰砕けになっていたじゃないか』
「バ…ッ、なってねぇっ!!」
『なっていないなら、どうしてそんなに赤い顔になっているんだ?』
「うるさい! お前は少し黙れ!」
むむむぅ……っ。ビデオ通話め。
カメラ部分、隠してやろうか。
つーか、悠が俺の乳首に固執してるのって、おっぱい大好きマンとかじゃなくて、Ω性を刺激する為とかじゃねーよな?
確かに感じやすくはなってるけど、それがまさか赤ちゃんを生む為の準備だったなんて、知りたくもなかった。
くそっ。
勝手にΩへの階段なんか、登らされてたまるか!
鎮まれ俺の乳腺!!
(ミルクを出す予定もねーし、赤ん坊だって産むんじゃなく産ます方に、俺はなるんだ!)
ていうか!!
「何サラッと人の事をΩ扱いしてんだよっ。俺はβだって言ってんだろ!」
『なら βの胸はおっぱいじゃないんだし、別に恥ずかしがる必要もないだろう? そのまま堂々と画面に映せばいい。同性なんだろう?』
悠の言葉通りにするのは癪だけど、このまま恥ずかしがって見せないままだと、更にからかわれそうだ。
もうここまできたらヤケだ!
お前の辱めに、負けてたまるか!!
スマホを前にして、ドドンと胸を晒してやる。
こういうのは堂々と見せるほうが、エロさが半減するんだ。
「おら、お前の見たがってたおっぱいだぞ。これで満足か?」
ジト目で悠に話しかけながら、画面に映った自分の胸を見る。
うん、普通に大平原がそこにあるだけだ。
こんなのに興奮する方が、おかしいんだって。
『ふふっ。やっぱりアキの乳首は、小さくて慎ましやかで、可愛いらしいな』
心底可愛いと思っているような口調で、俺の乳首を褒める悠。
大丈夫かこのイケメン……。
ちょっとゾワッとしたんだけど。
まぁここまで来たら、最後まで付き合ってやるけどな!
(先に音を上げるのは、お前だ悠!!!)
「だろ? 乳首の貞淑さには、ちょっと自信があんだよ俺」
自分で言っときながら、顔が引き攣りそう。
何だよ貞淑さって。
言ってる俺でさえ、意味が分かんねぇわ。
『乳首は可憐で小さいけど、少し弄るだけですぐに息を乱すところも可愛いよ。次はどう弄って啼かせようかと、想像するだけで楽しくなる』
「へーえぇえ…。ならその楽しい想像で、早くイッちまえよ」
……やばい。
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本気で頭大丈夫かお前?
男の胸相手に、よくそこまで語れるな。
言ってて恥ずかしくならないのか?
それともこれが俗に言う、深夜テンションというものなんだろうか?
「アキ。ちょっと脇から乳首に向けて、指先を滑らせるように触ってみてくれ」
「はぁっ!? 何勝手にリクエストなんかしてんだ。ウチはそんなサービスなんかしてねぇよ。満足できねぇなら、他の店を当たってくれ」
「早くイッて欲しいんだろう? アキの痴態を見せてくれたら、すぐにイケそうだ」
……ん?
もしかして、マジでオナってんの?
耳を澄ませてみるけど、オナる音まではスピーカーで拾えそうにない。
息も乱れているようには感じないけど、悠なら上手く隠しそうだしなぁ。
(まぁどっちにしても、それくらいのサービスなら、別にいいか)
思い直して、さっさと終わらせようと脇に手を当てた所で、早々と「待った」がかかった。
俺の魂胆を見抜いた悠が、面倒くさいことを言い始める。
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うわぁ……なんだこの展開。
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あれ?
もしかして、俺……ちょっと興奮してる?
自分の手なのに、何か気持ちいいぞ。
少しずつ手を前に滑らせていくだけで、触れた箇所がゾワゾワしてくる。
乳首が前に引っ張られるような感覚に、思わず自分の胸を見ると、ぷっくらと先端が膨らんでいた。
……え?
俺の胸、感じやす過ぎじゃねぇ?
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