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38.イケメンが優しすぎて気持ちが悪いです
しおりを挟む呼吸が先に落ち着いた悠はズボンだけを穿くとすぐに、グロッキー状態でぐったりしている俺の世話をやき始めた。
あちこちに飛び跳ねてしまった精子を、高級そうなハンカチで優しく拭いとってくれている。
ほんと申し訳ねぇなって気持ちになるけど……。
よくよく考えると俺が動けなくなっているのも、これだけの精子があちこちに飛んでいるのも、全て悠のせいだったわ。
なら世話くらいしてもらっても、別にいいのか。
ただ、このハンカチだけは、残念でならない。
こんな事後処理にさえ使われていなかったら、正直このハンカチも「欲しいものリスト」にしっかり入っていたっていうのにさ。
使う前に気がついていれば、俺のハンカチと交換していたよ。
……まぁ俺の身体を拭く前に、二人分の精子をこれで受け止めていたから、どっちにしても無理か。
最後何かちんこの上に被さってきた感じがしたけど、よくよく感触を思い返すと正体はこのハンカチだったんだよな。
そんな部分の気遣いなんて、要らねーってのに。
むしろ俺のケツを気遣ってほしかった。
まじで今頃になってくると、尻周りが痛くなってきたからな。
絶対途中から指を増やしていただろ、コイツっ。
むむむ…っ、と思わず眉間に皺を寄せていたら、それを見た悠が首を傾げている。
「どうした?」
「……お前のせいで、尻が痛ぇんだよ」
痛えって言ってんのに悠は頷きながらも、はにかむように笑っている。
……何でお前がそんな照れたような表情してくんだよ。
「ごめん。アキは初めてだったんだもんな。次からは少しずつ慣らしていくから」
まるで子供相手に話すみたいに優しい声を出しながら、俺を胸に抱き込んでくる。
そのまま頭をなでなで。
おい……。
俺を子供扱いすんな。
つーか、お前そんな優しい声で話す奴だっけ?
しかも次ってなんだよ。次なんかねーよ。
もう、どこから突っ込んでいいのか分からなくて、目を白黒させるしかない。
唖然とする俺の唇に、チュッと唇を軽く合わせてきた悠は、また俺の身体についた精子と汗を拭っている。
……えっと、何これ?
なんか悠の雰囲気が甘くねぇ?
そもそもお前って、人の面倒なんかみるタイプの奴じゃねーだろ。
うっかり流されちゃったけど、もしかしてアレだろうか?
俺ってば悠にセフレ認定されちゃってる?
そうだったとしたら、メチャクチャ嫌なんだけど。
今回は仕方ないとしても、今後も男と関係を持つつもりなんか、俺にはないんだよ。
どういうつもりなのか聞いておこうと、口を開けた瞬間。
「……ひぁ…ッ」
情けない声が口から飛び出した。
胸を拭う悠のハンカチが、乳首に軽く触れただけで、飛び上がるくらいに感じてしまった。
ほんとどうしちゃったんだよ、俺の乳首!?
こんなに感じやすい器官じゃなかっただろ、お前…!
女みたいな反応に、自分でも恥ずかしくなってくる。
顔が火照って熱い。
羞恥に染まる俺の様子を見ていた悠が、胸に顔を寄せてきたのに気付いて慌ててストップをかけた。
ちょちょちょ…っ、何しようとしてんだよ!
そんなとこ、舐めなくていいからっ!
プクッと先端が膨らんできてはいるけど、別に舐めてほしいわけじゃねぇし!
俺の乳首は、飾りくらいでいいんだよっ。
「ゆゆゆ悠っ!もういいってっ、後は自分で拭けるから!」
乳首に届く前に、悠の頭を手で押し留めた。
あ、危ねぇ……!!
「──…いや。アキはそのまま何もしなくていいよ。オレがするから」
阻まれたことで悠も諦めたのか、スッと胸から頭を離すと手に持ったハンカチで、今度は腹の辺りを拭い始めている。
自分で拭けるって言ったんだけどな。
まぁ胸じゃないならいいか、とそのまま悠の好きなようにさせていたんだけど。
んん? 何でお前、そんな所で跪いてんの?
お坊ちゃんがトイレの床に直接膝をついていることにもビックリしたけど、そこで跪かれると俺の萎んだクララがモロ見えじゃんか。
股間を拭くにしても、何で目線を合わせようとしてんだよ。
ちんこにそんなことする必要はねぇって。
むしろ見るな!!
「悠。ちょ……、見んなよ!」
慌てて両手でクララを隠そうとしたら、悠に両手を掴まれてしまった。
「おいっ」
「アキはどこもかしこも可愛く出来ているんだな。後ろの穴も綺麗な色をしていたし」
「───なっ!!」
か、可愛いだと……!!
くそっ、お前の凶悪なブツと比べてるんだろうけど、俺のサイズは普通だからな!!
お前のサイズが規格外すぎんだよっ
驚きと恥ずかしさでわなわなと震える俺の両手を離すと、悠が躊躇もなく俺のクララを握り込んできた。
一度匂いをスンと嗅いだ後、そのまま口元に近づけて──…
「───ッッ!!!」
そんな所を嗅がれたことにもビックリしたけど、おもむろに俺のクララを口に含んできた事にも度肝を抜かれた。
(信じらんねぇ……。
あの悠が俺のちんこを口に含むなんて……マジかよっ)
それでなくても今のクララは、二人の分泌液でデロデロに汚れきっている。
普通なら絶対に触るのも舐めるのも躊躇うような状態だっていうのに、何で咥えられるんだよお前っ。
驚きで目を瞠ったままの俺に、悠は目線だけを合わせてくると、舌を這わせて見せつけるかのようにしゃぶってきた。
「え、え、え、わ…っ」
(うわわわ…っ、
悠のお上品な口の中で、俺のちんこが出たり入ったりしている!?)
これはかなりキた。
フェラチオって初めての経験だけど、口の中ってこんなに熱いんだな……。
あと柔らかい舌が、ちんこに絡みついてくるのも、すげー気持ちイイ。
何より、あの悠がこんなことをしているってことに興奮する。
「ん…っ、んん……っ」
唇を使って軽く扱かれると、もう駄目だ。
トロンと蕩けた目で悠を見ると、それを見た悠の口淫がますます激しさを増してくる。
揺れそうな腰を理性だけでなんとか押し止める。
思わず悠の頭に縋り付くように抱きついて、腰が抜けそうなほどの快感に耐えた。
「出していいよ、アキ」
縋り付く俺に嬉しそうに目を細めた悠が、促すように舌先で鈴口をチロチロと刺激してくる。
──うぅう、それやめて……!
気持ちいいんだってばっ。
悠の頭を掻き抱くようにしながら、腰をビクビクさせる。
このまま吐き出してしまいたい…!
うっかり流されてしまいそうになる快感に、必死に抗う
ダメだって。正気に戻れ俺!
このままだと悠に流されて、本当にセフレ関係を続けることになるぞ。
そんなのは絶対に御免だっての!!
快楽に抗うように、必死で首を横に振って抵抗した。
「……も、やだってぇ…っ」
「イキそうだな。いいよ、そのまま出しても」
「で、出ない…って。いーから、さっさと離せ!!」
強い口調でそう言った俺に、悠は名残惜しそうに唇を離してくれた。
「本当にいいのか?」って最後に聞かれたけど、もちろん頷く。
立ち上がった悠が手早くハンカチでソコを拭い取ると、下に落ちていたパンツとズボンを拾って穿かせてくれる。
(う…っ、中途半端にされたちんこのせいで、前が閉められねぇ!)
固まる俺に気づいたんだろう。
「やっぱり出しておいた方がいいんじゃないのか?」
「……放っておけば治まる」
「口淫に抵抗があるなら手でも……」
「あーもーっ、放っておけって言ってんだろ!」
頑なな俺の返答にため息を吐きながらも、便器の上に置いていた自分の制服をタンクの上に退かした悠は、俺を支えながらゆっくりと便座の上に座らせてくれる。
なんだろう……。
まるで介護される、おじいちゃんにでもなった気分だ。
少し足を動かしただけでも、ブルブルと足が震えてくる。
せめて腕にひっかかっているシャツだけでも自分で着ようと腕を上げたら、すぐに気がついた悠に止められてしまった。
そのまま悠の手でボタンを留められていく。
もうこれさ、本当に介護されるじいちゃんじゃねぇの?
思わず遠い目になってしまったよ、俺。
シャツのボタンを留めてもらいながらも、何となく腑に落ちない点で頭がいっぱいだ。
いくらなんでも悠が甲斐甲斐し過ぎて、気持ちが悪い。
悪いと思って後始末をしてくれているんだろうけど、それにしたってここまで面倒をみる必要があるのか?
一人で悩んでても仕方がねぇかと思って、悠に直接聞いてみることにした。
「悠ってさ、セフレに優しいタイプ?」
「セフレ? さぁ、どうだろうな。心配しなくても、そんな相手はいないよ」
ん? 俺ってセフレってわけじゃねーの?
「セフレじゃねーなら、尻を慣らす必要なんてねーじゃん」
「必要はあるだろう? アキはオレのΩなんだし」
「Ω……?」
そっちか。すっかり忘れ去っていた。
てかマジで俺を番にする気だったのかよ、コイツ……。
『番』ってアレだろ?
詳しいことはよく分かんねーけど、 Ωとαが結婚するような仕組みのことだったよな。
本気かよ?
「βだぞ、俺」
「そうみたいだな。でもアキはΩの因子も持っているよ。現にオレに噛まれて、さっきはフェロモンを出していただろう?」
「……あれ、めっちゃ痛かったぞ。Ωって噛まれないとフェロモンが出せねーの?」
「普通は噛まれなくても、勝手に出るものなんだけどな。アキは多分、Ωとして開花していないせいもあるんだろうな」
俺の襟首の傷を触りながら、悠が答えてくる。
その顔がどことなく機嫌良さげなのがムカツク。
あれ、すげー痛かったんだけど。
あそこまでガッツリ噛む必要なんてねーだろ。
「お前が項を噛みたがったのは、俺がΩなのかを確かめる為だったのかよ?」
「それもあるけど……、どちらかといえば本能に近いのかもな。番の匂いを嗅ぐと噛みつきたくなるんだ」
「だから番じゃねーって。何で勝手に番認定されてんだよ」
「アキはまだβ色が強いから分からないのかもしれないけど、アキはオレの番だよ。アキを見ているだけで孕ませたくて仕方がなくなってくるし。だから相性はすごく良いんだと思う」
そういえば匂いの相性によって、子供が産めるかどうかも変わるって言ってたっけ。
「男の俺でも本当に産めんのかよ?」
「産めるよ。いつかここに、二人の子供を作ろう」
悠が俺の腹を触りながら、嬉しそうに言ってくる。
マジか……。
あの悠が冗談なんかを言うはずがないだろうし、本当に男の俺でも妊娠が出来ちゃうらしい。
Ωってすげーな…とは思うけど、さすがに実感が湧かなすぎて呆然としてしまう。
呆然としている間に、悠が俺の髪の毛を愛しそうに何度も漉いてくる。
最後にギュッと抱きしめてくると、今日の戦利品であるTシャツを俺に渡してきた。
呆然としながらも素直に受け取る俺。
いや、このTシャツのためにこんなに大変な目に遭ったと言っても過言じゃないし。
俺にTシャツを渡した悠は手早く自分の身体を拭くと、残りの制服を身につけ始めている。
何か悠だけがスッキリした顔をしているのが、本当に腹立たしい。
俺なんか、はっきり言ってボロボロだぞ。
いや、気持ちはよかったけどさ……。
良すぎて地獄をみたっていうか……。
本当、このTシャツだけじゃ割に合わねー気がする。
そもそも悠が、こんなにエロい奴だっていうのも知らなかったし。
あんなん詐欺だろ。
普段の淡白ぶりはどこに行ったのかって言うくらい、ねちっこかったし。
(まぁそのおかげで、いつもより濃いフェロモンも貰えたけどさ)
β色が強くなっているせいで、あまり鼻が利かなくなってきているけど、これだけ濃いフェロモンの中にいたのなら、きっと俺の制服にもしっかり悠のフェロモンが染み込んでいると思う。
悔しいけど、それで痛み分けだと思うしかないんだろうな。
そうじゃないと犠牲になった、俺の項と尻が浮かばれない。
とりあえず、しばらくの間はフェロモンが染み込んだ服で、ベッドを取り囲んでやる!
うん、絶対安眠間違いなしだ。
俺が無理やり気分を向上させている間に、悠はトイレ内で俺が飛ばしたものの後始末をしてくれていた。
ある程度片付け終わったのか、ドアノブに手をかけた悠が俺に声をかけてくる
「アキ、そこの洗面台でハンカチを洗ってくるからそのまま休んでいるといい。すぐに戻るから」
「あっ、悠!ちょっと待て。お前に言っておきたいことがあったんだ」
今にも出ようとしていた悠が、俺を振り返ってくる。
──うん、呆然としている場合じゃなかった。
悠は俺との子供を作る気満々みたいだし、俺のことを番扱いしているけど、俺はΩになんかなる気はねーんだよ。
「どうした?」
「あのさ、悠に俺のバースの事がバレるとは思っていなかったから、伝えて無かったんだけど……」
「アキ?」
「俺、βとして生きたいって思ってるんだよ。だから悪いけど……お前の番になる気はないんだ」
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