イケメンがご乱心すぎてついていけません!

アキトワ(まなせ)

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36.アキだよ ※

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 悠が何かを言ってるみたいだけど、うまく言葉が聞き取れない。 
 気がついたら2度めの絶頂を迎えていた。
 ほとんど間を空けずに2度もイッてしまったせいで、小刻みな身体の震えがずっと止まらない。
 啜り泣きながら、浅い呼吸を繰り返すだけでいっぱいいっぱいの俺に、悠の言葉まで気にする余裕なんてない。 
 そんな俺を、悠が痛いくらいに抱きしめてくる。 
 軋むほどに抱きしめられて…うぅう、苦しいって。
 もっと力を緩めてくれと言いたい。
 言いたいけど。
 息を吸い込むだけでいっぱいいっぱいだし、脱力感が凄すぎて腕を持ち上げて止めることさえ出来ない。 

  
(……あぁ、もう、全部面倒くせー……) 

  
 体内にへばりつくように存在していた、悠のフェロモンが消えたおかげで、少しずつ意識がはっきりしてきた。 
 はっきりしてくると、トイレに漂うフェロモンの匂いが気になってきて、つい眉を潜めてしまう。 
  
(う……っ、香水をぶち撒けたのかってくらい凄い匂い。悠め、垂れ流しすぎだろっ) 
  
 ……いや、悠の匂いだけじゃないか。
 その中に嗅ぎ慣れない、甘い匂いが混じっているのに気がつく。
 悠の匂いだけを感じとっていたいってのに、その甘ったるい匂いが邪魔をする。 
 発生源はどこだ?と思ったら。
 
 ……ん? 俺?

 なんか俺から匂っている気がする。
 全力疾走でもした?ってくらいに汗ばむ俺の身体から、この匂いが漂っていた。
 汗ばむ身体も気持ち悪いけど、この甘い匂いも何か不快だ。
 とりあえず悠にはこの匂いがそっちに移る前に、俺から離れてもらわねぇと。
 
  
「悠、悪ぃけど離れて……俺臭い。匂いうつるぞ……」 
「どうして? すごくいい匂いだと思うけど。もっとオレに頂戴」 
「や、冗談じゃなくてさ…、ぎゃっ、バカ…ッ、なに舐めようとしてんだよ…っ!?」 
「じゃあ、キスしたい。させて」 
  
 悠と向き合うように身体を反転させられたかと思うと、頷く前に噛み付くようにキスをされた。 
 さっきまでとは違う、荒々しい口づけに、またもや息が乱れてくる。 
  
「んん、うん、んっ……、ンふぅ…っ」 
  
 余す所無く舐め回そうとしているのか、悠の舌が遠慮もなく口の中を掻き回してくる。
 
 うわ、落ち着け!
 落ち着いてくれって……!
 こんなんじゃ、息もまともできねぇよ! 

 息苦しさに、止まっていた涙がまた自然と溢れ出した。
 俺、本気で死ぬかもしれねぇ!
 付け根から引っこ抜くつもりか!と思えるくらいに強く舌を絡めらる。
 くぐもった悲鳴が喉から漏れた。
 限界だとばかりにドンドンと胸を叩いて抗議しても、悠の蹂躙は止まらなかった。 

 じゅるるるっ、とすごい音を立てながら舌を吸われる。
 思わず涙で濡れる目をカッ開いた。


(これ、キスで出す音か!? )

 おま……っ。
 そんなお上品そうな顔してるくせに、なんて音を出してんだよ……っ!! 


 恥ずかしい音にビックリして、思わず唇を離そうと胸を押し返したら、逆に抱きしめてくる腕の力が強まる。
 逃さないとばかりに悠の舌も追いかけてきた。 

 ちょちょちょっ、待って! 
 俺いま酸欠状態!!
 このままじゃ、まじで死んじゃうって?! 
 
 
「ん…っ、んん、……ぁ、むぅう……っ」 
「ん……、アキ……」 
  
 悠の舌が動くたびに、ぴちゃり、ぴちゃり、と口元からいやらしい水音が上がる。
 恥ずかしさと息苦しさに逃げを打つ俺の尻を、悠が両手で掴んできた。
 そのまま、ぐりり…っと自分の腰に強く押し当ててくる。 
  
「ふンンッ?!」 
  
 えっと………。


 ──なんか、股間にゴリっとしたものが当たってるんですけど……。 
 しかもなんかすげぇ、熱いんだけど……。 

 ………悠に限って、まさかだよね? 

  
 固まる俺の唇から、舌を引き抜いた悠が俺の顔を、じぃっと見つめてくる。 
 濡れた唇はそのままに、荒い呼吸を繰り返す悠を見ていたら、今更ながらに俺と悠ってキスしちゃったんだなって実感が強まる。
 悠の舌が、あんなにエロい動きをするなんて思ってもみなかったし。
 人形みたいに整った顔をしているくせに、舌は思いの外熱いのにもビックリした。 
 息を吐きだす悠の唇から覗く赤い舌に、ドキンッと鼓動が跳ねる。
 絡められた舌の感触を思い出すだけで、すげー恥ずかしくなってきた。
 照れる俺の顔を見ていた悠が、ゴクリと唾を呑みこむ。 
  
「アキ。そんな顔をされると、挿れたくなってくる。ここで抱いてもいい?」 
「……はぁっ?!」 
  
 悠とは結びつかない言葉が突然飛び出してきて、思わず目を丸くしてしまった。 
 さっきから股間に当たる、このゴリゴリの存在もちゃんと認識はしているけど、どうしても普段のお澄まし顔が頭にチラつくせいで『悠』と『性的』なものが結びついてくれない。
 むしろ「そんな人間的な衝動、お前にもあったのかよ!」と、そこに驚いてしまう。 
  
「何を驚いているんだ?」 
「なんでって…、そりゃそうだろ。お前の顔からそんな言葉が出るなんて……。何か悪い冗談を聞いてるみてぇ」 
「冗談? 自分のΩの匂いを嗅いで、冷静でいられるαなんているわけが無いだろう」 
「Ωの匂いって……何のことだよ」 
「気づいてないのか? アキから漂う匂い。オレのフェロモンと綺麗に重なり合っているだろう?」 
「匂い……?」 
  
 言われて自分の匂いに意識を向けてみる。 
 さっきから薄く漂っているこの匂いが、俺のフェロモン…? 
 悠は綺麗に重なり合っているって言うけど、俺からしたら悠の香りに何かベタっとした甘い匂いが絡みついているようで、不快感しか湧かない。 
  
「……なんか、嫌な匂いしてんな俺」 
「どこが? すごく良い匂いがしているよ。 傍において、ずっと嗅いでいたいくらいだ」 
「お前、鼻が悪いんじゃねーの? これのどこがいい匂いなんだよ。重なるどころか邪魔でしかないっての。とにかく全部お前の勘違いだ」 

 まずいな。何で俺からフェロモンなんかが出てくんだよ。
 とりあえず全部勘違いだと思ってもらわねーと、俺が困る。

「この匂いは前にも言ったけど、お前の──」
「勘違いじゃないと言っているだろう。間違いなくアキだよ」 
「……っ!」 
「αの感覚が、オレのΩはアキだって言っている」 

  
 低く断言されて言葉を飲むしかない。 
 引き攣る俺の頬を、悠の両手が撫でるように滑り、目の中を覗き込むように顔を近づけてくる。
 狙いを定めたように見つめてくる、悠の瞳が怖い。

(こんな眼で見られるなんて、本当に俺がこいつのΩなんだろうか……)

 こんな中途半端な状態の俺が純血種のΩ?
 やっぱどう考えても、悪い冗談にしか聞こえねぇよ。
 戸惑う俺の頭を、悠が優しく撫でてきた。 
  
「……アキなんだ」 
  
 揺れる俺の眼を見つめながら、何度も何度も悠が熱い唇を押し付けてくる。 
 触れてくる唇が微かに震えてんのは……何でだ?
 不思議に思いつつも、俺も悠にΩ認定されて思考回路がグチャグチャだ。
 だって診断結果ではほんのちょっとしか混じっていないって判定だったのに。
 どういうことだ?
 Ω化が進んでいたってこと?

「悠…ちがう。俺、Ωなんかじゃ……」
「オレのΩだよ。ずっと…何でこんなに惹きつけられるんだろうなって不思議だった。アキがΩじゃなくても、と考えてた時期もあったんだ。でもやっぱり勘違いじゃなかった。やっと見つけたんだ。離すわけがないだろう」 
  
 背を掻きむしるような勢いで強く抱きしめたかと思うと、唇に触れるだけだったキスが、また深いものに変わった。
 怖いくらいに感情を剥き出しにしてくる悠に、ブルリと震える。
 Ωになんてなりたくもねーし、絶対に認めたくもないけど、抱きしめてくるこの身体を払いのけることが出来ねぇ。
 頭は混乱しているってのに、身体は心地よさを訴えてくるって何なんだよ!
 自分でももう、何が何だか分かんねぇ。 
 つま先立ちになるくらい身体を強く抱きしめられたまま、悠の激情にただただ翻弄された。
 そんな悠の香りが、さらに甘さを増したような香りに変わる。
 それにつられるように、俺の汗の匂いも強さを増した。 


 ──うわぁ……。
 この匂いはちょっと酔いそう。 

  
 気づいたら悠だけじゃなく、俺も夢中になって悠の舌を追いかけ回していた。 
 ぐちゅぐちゅと粘膜の擦れ合う音に、静まっていたはずのクララも勃ちあがってきている。 
 唇がふやけるくらいキスをし合い、唾液を啜り合っていると、また身体中の力が抜けてきた。
 とろん、とした気分になってくる。 
  
「は、ぁ、んん……、ゆう……ぅ」 
「ん。アキ…、アキ…、可愛いよ」 
  
 濡れた唇が、頬や目蓋にも口づけを落としていく。
 むむ…、擽ったいけど気持ちいいな、それ……。 
 うっとりと目を閉じながらその感触を堪能していたら、カチャカチャとベルトを外すような音が下から聞こえてきた。 

  
 ───…なんだ? 

  
 確認しようと目蓋をうっすらと開けたところで、右太腿の裏に悠の指がかかった。
 そのまま悠の腕に抱えられるように、強引に足を広げさせられる。
 はぇっ!?と驚いて目を見開いた。 
  
「えっ? 悠サン!?」 
「……ごめん、余裕がない……っ」 
  
 恥ずかしい体位をとらされていることよりも、抱えられたまま悠に尻タブを思いきり割り広げられたことの方にビックリする。 
 アナルが空気に触れる冷たさに青褪める。 
 また指でも挿れられるのかと全身を固くしていると、指とは違う、何か熱くて弾力のあるものがそこに押し付けられていることに気がついた。 
 
 
(ま……まさか……) 

  
 恐怖に慄きながら下を向くと。 
  
「───ヒッ!?」 
  
 あまりの驚きに、悲鳴が喉に張り付いた。 


(なんだそれ、なんだそれ、なんだそれっ!!) 


 そこにあったのは、
 見たこともないような凶器だった───…… 
  
 美しい悠からは想像出来ないほどの、凶悪過ぎるブツがそこにある。


 何でそんな雁首デカイの? 
 竿も何でそんなに、ゴツゴツと張り出した形をしてんの!?
 ちょっと待てっ、あと太すぎだよね!!
 もうこれ、挿れた相手を殺る気満々だよな!?

 ──え?
 純血種のαのチンコってみんなこんな形状なの?
 βでこんなチンコの形なんて、見たことがないんだけど。 
 こんな所にまでβとの違いが現れんの?
 
 あまりにも恐ろしい悠のブツにブルブルと震えながらも、思い切って気になっていたことを聞いてみる。
 むしろ聞かないとまずいだろう。
   
「おおお前っ。こんな凶悪なペニスを使って、俺を番にしようとしていたのか!?」 
「アキ、心配しなくても大丈夫だ。Ωはαのペニスが挿ろうとすると、自然と緩まるように入り口が開くから、危険はないよ」 
 
 そう言って安心させるように無駄に美しい笑顔を向けながらも、さらに凶悪な物体を押し付けようとしてくる悠に、俺の恐怖は限界に達した。 
  




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