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30.試させてもらいました ※
しおりを挟むあの後
怒らせてしまった悠のご機嫌をとるのが、少しだけ大変だった。
思い出すだけで、どっぷりとため息が漏れてしまう。
あの時とった俺の行動も悪かったから、実際文句は言えない立場なんだけどさ。
手に入ったタオルが嬉しすぎて、悪ノリしちゃった自覚もあるし。
なにより──…
「悠の目の前で、ってのが失敗したよなぁ」
あの時は浮かれすぎてて気づかなかったけど、冷静になってみると悠には酷い事をしてしまったと思う。
あんな言い方をしたら、女子に売るためにタオルを欲しがったと聞こえたよな。
まぁ一番最悪なのは、俺と橘とでキャッキャッしながら匂いを嗅いでいたことなんだろうけど。
改めて自分が悠の立場だったら、使ったタオルの匂いなんて嗅がれたくなかっただろうし。
あれは思い返しても、いじめと受け取られてもおかしくない行動だったと思う。
本当に申し訳ない。
あの後しっかり反省して悠には謝ったんだけど……悠は冷たかった。
いや、俺が悪いんだから許してもらえないことに文句を言うつもりはないけどさ。
でも、さすがの俺でもちょっと挫けかけた。
元々口数が少ない分、怒らせたら口もきいてもらえないんだよ。
態度が素っ気ないどころか、居ないものとして扱われるあのダメージは、楽天的な俺でもかなりクる。
半分ヤケになって無視されても傍に居続けたら、少しずつ態度が軟化していってくれたけど、正直あれが何日も続くようだったらさすがに無理だったかも。
今回のことで、悠は怒らせるとかなり厄介なことに気がついた。
普段が淡々としている分、見誤ってしまったけど、一度怒らせると機嫌が直るまでにしばらく時間がかかるタイプっぽい。
はぁ……。
まぁ最終的には許してもらえたから良かったよ。
失くなった信用は…うん、これからの俺が頑張っていくしかないな。
あとは案の定というか、なんというか。
やっぱり休み時間に、隣のクラスの女子に呼び出されてしまった。
ウチのクラスの女子も、俺と悠がタオルの交換をしていたことには気がついていたけど、いいなぁと言われるくらいでこっちは済んだ。
ただ隣のクラスの女子は、俺を呼び出すという形でクラスから連れ去ると、悠のタオルを譲るか売ってくれといきなり縋りついてきた。
いや、ごめん。
普通に引いたんだけど。
冗談で女子が欲しがるアイテムなんて橘には言ったけど、まさか6人がかりで脅すようにタオルを欲しがってくるなんて、マジで思ってなかったんだって。
なにこの圧力……。
どうしても欲しいと言って泣き出す子まで出てくるし、本当に参ったんだけど。
泣くくらい欲しいなら、俺じゃなく直接本人に言えよって思うし。
てか、いくら泣かれても渡せないんだけどさ 。
渡してない今でさえ、悠が拗ねて大変だっていうのに、売ったなんて悠に知られたらどんな態度をとられるか。
怒られるくらいならまだいいよ。
軽蔑されたら俺、本気で泣いちゃうって。
その前に、俺にとっても大事だアイテムだから、渡したくないけど。
色々あったけど、無事に救世主アイテムを手に入れることが出来てホクホクしている。
──となると次はアレしかないだろう。
本番前の試しって、大事だもんな。
「…………ん…っ」
風呂上がりの身体を布団に横たえながら、クララを上下に扱きあげる。
久しぶりだから気持ちいい。そういえば抜くのはトイレ以来だっけ?
先走りのヌメりを利用しながら擦っていくけど。
んんんっ、なんかイケねぇ……!
気持ちは良いのに、イケそうでイケない感じがずっと続いている。
「はぁ……。やっぱ無理か……」
信じたくはねーけど橘の言う通り、あのグリーン系のいい香りと思っていたものが悠のフェロモンなら、今日はバースが乱れている日なのかもしれない。
実際今日は疲れたように身体が怠いし。
まぁおかげで試すには丁度いいのかな。
すぐに使用出来るようにと、枕元に置いておいたタオルに手を伸ばした。
ふんわりとした感触のタオルを鼻に押し付けながら、そっと目を閉じる。
特に匂いが強く感じる部分を選びながら、ゆっくりと息を吸い込んだ
そのまま香りに身を任せるように、全身の力を抜いていく。
──強い匂いじゃないけど……。
ほんのり香る程度にあの匂いがする。
その中に混じる悠自身の汗の匂い。
これが『αの香り』なんだろうか?
もっと動物的な香りなのかと思っていたけど違った。
想像していたものより、随分とあっさりしている。
単にβ色が強い今の俺だと、この程度の香りとしか認識出来ていないだけなのかもしれねーけど。
でもこれが本当のΩだったら、もっと噎せ返るような芳醇な香りに感じていたのかな?
いくら考えても仮定の話だし、俺自身これ以上Ω化を進行させる気もないから、別にどうでもいいけど。
ただこの香りは……何か安心する。
悠の香りに身を任せていると、包み込まれているような安心感を覚える。
「なんか……これだけでも気持ちいいかも」
もっと悠の匂いを感じとりたいのに、薄っすらとしか感じ取れない自分の鼻にヤキモキする。
それでもと深く息を吸い込んだら、今度はクラクラするような酩酊感が襲いかかってきた。
吸い込みすぎたか?っと焦ったら、ふわふわするような気持ち良さが全身に伝わってくる。
「あ……れ……?」
気持ち良さに身を任せたまま、スウェットの隙間から手を差し込んでみると、クララがすでにビショビショに濡れそぼっていた。
軽く触れるだけでも、身体がビリビリする。
刺激に目眩がした。
「は……ぁ───ッ」
喘ぎ声が口から漏れそうになって、慌ててTシャツを噛んで口を塞ぐ。
擦り上げる毎に、コプコプと先端から溢れ出す先走りのせいで、ローションを使った時のような卑猥な音が室内に響き渡る。
ヌルつくちんこが気持ちいい。
隣にいる姉ちゃんに聞こえたらどうしようと思っているのに、擦り上げる手を止めることが出来なかった。
「……っ、……ん、…ッッ、ン……」
堪らない快感に、腰も一緒に揺れ始めた。
頭がクラクラして、気持ちがいいという事しかもう分かんねぇ。
イキたいような、まだこのままの状態で、ずっと快感を追っていたいような。
そんなよくわからない気持ちのまま、夢中で腰を揺らす。
だんだんぼやけてくる思考に、それでも声は抑えなきゃと、必死にTシャツを噛みしめた。
(気持ちい…っ、気持ちい…っ、気持ちい…ぃっ!)
ヌチャヌチャと粘膜の擦れ合う音と、クラクラする酩酊感に、耳と脳みそが犯される。
ちんこが蕩けすぎてこのまま崩れ落ちるんじゃないかと思えてきた。
押し付けた鼻から、悠の匂いが強く感じられる。
──匂い…、悠のにおい……んんっ……
「あ、あ、悠っ、悠っ、ンッ────~~…ッ!!」
頭が真っ白になった瞬間、暴発したかと思うような勢いで鈴口から精子が飛び出した。
身体をガクガク揺らしながら長い吐精に息を詰める。
「はぁ……っ、はぁ……っ」
めちゃくちゃ出し切った気分。
酸欠になったみたいにクラクラしている頭と、乱れた呼吸に胸を喘がせたまま、快感が凄すぎて動けなくなっていた。
風呂に入ったばかりだっていうのに、全力疾走したみたいに汗が流れている。
(ヤバい……これはクセになりそうなほど気持ち良い……)
いつものオナニーの10倍は気持ち良かった。
腰が未だに快感で甘く痺れている。
はぁはぁ息を喘がせながら、押し付けていたタオルから顔を離した。
やっと呼吸も整ってきた。
頭がクリアになってくると、さっきまでの自分の行動に思わず頭を抱えた。
(どう考えても失敗だろ、この作戦っ! )
匂いに夢中になりすぎて、途中からわけが分かんなくなったし。
実際セックスなんかしたら、彼女どころではないと思う。
意識が飛ぶと彼女のことなんて頭から追いやって、ひたすら自分の快感を追い求めてそう。
しかも匂いで頭がやられていたせいで、最後……。
なんか……、悠の名前を叫んでいたような気もする。
「……絶対まずいだろ……。あれ……」
これがもし本番で、女と抱き合いながら別の名前を無意識に叫んでしまったとしたらさ、絶対浮気を疑われるよな。
うわ…、もう最悪じゃん!
ていうか、そもそもが彼女以外の香りに興奮しながらセックスするのって、立派に浮気っぽいよな?
「マジかよ……」
いや、やっぱ浮気かもって思えてきた。
俺が逆の立場なら、間違いなく浮気認定するし。うん。
しかも浮気相手はこの場合、悠になるのか?
うっわ、最悪……!
今更ながら、なんて作戦を思いついてんだよ俺。
なんかもう自己嫌悪で死にたくなってくる。
先生と姉ちゃんの言葉が嬉しくて、少しハイになっていたのは認めるけど、それにしてもアホすぎだろ。
賢者モードになった途端、自分の行動全てに恥ずかしくなった。
しかも匂いでおかしくなっていたとは言え……あ、あんな無意識に名前まで叫んじゃうかよ普通。
(死にたい。死にたすぎる……!)
そんなつもりじゃなかったのに、結局は悠をオカズにしてしまった形だ。
今更ながら、交換してくれた悠に申し訳ない気持ちになってきた。
まさか自分のタオルが抜き道具に使用されているなんて、思ってもみないだろうし。
(本当にごめん、悠)
良心が咎めて仕方がなかったので、とりあえず悠のタオルに向かって土下座をしといた。
いや、ほんと……悠のタオルは恐ろしいよ。
持っているだけで女子からは狙われるし、こんな所にまで飛ぶ?!ていうような位置にまで、白いものが飛んでいるし。
飛距離の凄さはいいけど、これを片付けなきゃいけないのかと思ったら、白目になった。
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