勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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第4章 迷宮の宝

第43話 再会

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「はっ、くっ……!」

 アニスは地を這うような超低空ジャンプで、呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥが振り下ろす光剣をギリギリ躱す。
 その勢いで2、3回転ほど地面を転がったあと、即座に起き上がってまた距離を取る。
 それをすぐさま追う呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥ

 走るスピードは呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥのほうが速いため、アニスが必死に距離を取っても簡単に追いつかれてしまう。
 そして攻撃を躱し、また再び距離を取る。
 まさに紙一重の攻防で、アニスは天才的な戦闘センスでかろうじて逃げ延びているが、このままでは殺されるのも時間の問題だった。

「きゃあああっ!」

「アニスっ!」

 光剣ではなかなかアニスを捉えることができないため、呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥはアニスに向かって炎のブレスを吐いた。
 アニスはそれをなんとか躱したが、直撃こそしなかったものの、強烈な熱波に煽られて吹き飛ばされてしまう。
 それを見たザックたちが不安の声を上げるが、アニスは瞬時に立ち上がってまた走る。

 自分はまだ死ねない。
 自分が死んだら、母も死んでしまう。だから絶対に死ぬわけにはいかない。
 疲労で呼吸もロクにできない中、アニスは歯を食いしばって全力で走り続ける。

 こんな怪物に勝てる可能性は0だ。
 ただ、倒さなくても、何かしらの条件を達成すればクリアになる可能性がある。
 それは時間経過かもしれないし、どこかにある怪物の本体を見つければいいのかもしれないし、この部屋に隠されたギミックを発動すればいいのかもしれない。
 何が条件なのかは皆目見当が付かないが、それをクリアできれば『覇王の卵』を手に入れることができる。

 ここにいるのはアニスだけ。
 もしも大勢いたら、『覇王の卵』の凄まじい争奪戦が始まっただろう。それは恐らく殺し合いとなっていたに違いない。
 母を救うためとはいえ、そんなことはアニスはしたくなかった。
 考えようによっては、この場にアニスだけというのは好都合でもある。

 クリア不可能なダンジョンなど存在しない。逃げ延びることで、きっと何かカギを掴めるはず。
 この試練を乗り越えることができたら、母を救うことができる。迷宮のどこかにいるリュークも救えるかもしれない。
 それを希望に、アニスはひたすら走り続けた。
 1分すら逃げるのは不可能と思われた死の鬼ごっこだが、アニスは極限の集中力と奇跡的な幸運で生き延び続ける。
能天使の守護聖域アジール・オブ・エクスシア』の効果が切れるまで、残り3分……2分…………

「はあっ、はあっ、あうっ!」

 残り1分ほどとなったところで、気力も体力も限界となっていたアニスは、つい足がもつれて体勢を崩してしまう。
 そこにブレスが吐かれた。
 アニスはなんとかギリギリで躱すが、その場に転がったまま即座には起き上がれなかった。
 そこに呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥが突進し、アニス目掛けて巨大光剣を振りかぶる。

 とっさに逃げようとするが、自分の意志に反して足は動かないまま。
 体力も限界だったが、さらに今の転倒で足も骨折したらしい。
 もはや万事休すだった。

(お母さん、ごめんなさい。リューク、どうかあなただけでも無事に生き延びて……)

 目を瞑ったアニスの脳裏に、病床に伏している母親の顔が思い浮かぶ。
 そして、リュークの顔も……。

 せめてもう一度会いたかった。
 会って、あのとき冷たい態度を取ってしまったことを謝りたかった。

(ああ、神様……!)

 死を覚悟して、アニスが神にすがる――そんな奇跡なんて起こらないと知っていても。
 それを証明するように、光剣が無慈悲に振り下ろされた。
 絶体絶命のそのとき……


「アニスーーーーーーっ!」


 懐かしく、そして優しい、もう一度聞きたかったその声を聞いて、思わず目を開けるアニス。
 そこに映ったのは、両手を広げて飛び込んでくる黒髪の青年――リュークだった。
 光剣がアニスに到達する刹那、すんでのところでリュークはアニスを抱きかかえ、間一髪それを躱した。

「リュー……ク? 生きていたのね! あなたともう一度会えるなんて……で、でも、どうやってこの部屋に入ったの? 待って、これって本当に現実!?」

「ああ、今度こそ本物のアニスだ! 無事で良かった……!」

 飛び込んだ勢いのまま、2人一緒にゴロゴロと地を転がったあと、アニスは嬉しいという感情よりも現状を理解できずに混乱する。
 まだ『能天使の守護聖域アジール・オブ・エクスシア』の結界は解けていないはずだ。なのに、どうしてリュークはここに現れたのか?
 もしかして自分はすでに死んでいて、これは死後に見ている夢ではないのだろうか?

 それとは対照的に、リュークはドッペルゲンガーじゃない本物のアニスとついに再会できて、歓喜に満ちあふれていた。
 あと0.1秒遅れていたら、アニスは死んでいたかもしれない。この奇跡に、リュークは心から感謝した。

 リュークがこの部屋に入れた理由――それは、最強暗殺者『虚身うつろ』から手に入れた『闇神』の能力のおかげだった。
『闇神』はいかなる結界でも難なく進入できる。
 たとえ『能天使の守護聖域アジール・オブ・エクスシア』であろうとも、進入することは造作もなかった。

「アニス、ちょっと待ってて。アイツを倒してくる」

 愚直にまた突進してくる呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥに対し、リュークも飛び出して迎え撃つ。

「だ、だめよリューク、そいつには絶対に勝てないわ! お願い、あなただけでも逃げて……!」

 せっかく奇跡の再会を果たしたというのに、絶体絶命の状況は変わっていなかった……アニスの中では。
 命を救ってもらったばかりだが、せめてリュークだけは助けなくてはと、アニスは痛めた足を押して立ち上がる。
 しかし、その直後に見た光景は、とても信じられないものだった。

「リュ、リューク!? ウソでしょ!?」

 襲いかかる巨大光剣をリュークは神速で躱し、呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥに向かってジャンプする。
 そこに呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥは爆炎のブレスを吐くが、それを全身に浴びながらリュークはまるで動じた様子もなく、呪われし超越者インヘリット・ノスフェラトゥを頭部から腰に向けて真っ二つに斬り裂いたのだ。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 本日コミカライズ『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』第4話が更新されました!
 成長したリュークのバトル、そして最後に意外な展開がありますので、どうぞご覧になってくださいませ。
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