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第4章 迷宮の宝
第39話 禁呪
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「頭を斬り落とされても平気ってことは、コイツはアンデッドなのか!?」
「ダンジョンならアンデッドは珍しくねえが、しかしこんなヤツは聞いたことないぜ?」
完全に復活した呪われし超越者を見て、Sランク冒険者たちは動揺しながらもその正体の推測をする。
確かに、アンデッド系のモンスターであれば、通常では致命傷となるような損傷を負っても平気で動けることがある。
この戦いでも呪われし超越者は驚くほどタフだったので、アンデッドならそれも納得なところだが……。
とはいえ、頭部を攻撃されればアンデッドといえども大きなダメージを受けるし、弱点である火属性や聖属性に対しては非常に脆い。
この戦闘中、Sランク冒険者たちは様々な攻撃を試していた。当然、火属性や聖属性の攻撃も浴びせている。
しかし、特に有効な感触などはなかった。
アンデッド特有の腐臭も感じないため、アンデッド系ではないと判断して戦っていたのだが、それは間違いだったのだろうか?
今一度確かめるため、Sランクたちは火属性と聖属性の攻撃を呪われし超越者に撃ち放つ。
結果は、やはり効いた様子がなかった。
不死ではないのに不死なのか?
それとも、弱点のないアンデッドか?
もしもそんなものが存在するとしたら、果たしてそれは倒せるのだろうか……?
Sランクたちは混乱しつつも、傷付いている仲間を抱えて一気に呪われし超越者から離れる。
すでに死力を尽くして戦ったあとなので、全員疲労困憊だ。こんな状態では、呪われし超越者を倒すどころかまともに戦うことすら難しい。
ここまできて、逃げるしか手はないのか?
『覇王の卵』を目前にして、Sランクたちは悔しさに歯を軋ませる。
「皆の者、こうなったら禁呪でヤツを仕留める。だが私だけの力では禁呪を発動することができない。頼む、力を貸してくれ」
ゲインロードはそう言いながら、懐から青く輝く手のひらサイズの水晶を取り出した。
「これは『魔導波激化水晶』といって、水晶に魔力を注入することで魔法の効果を大きく増強することができる。私も1つしか所持していない秘宝だ。皆の魔力をこの水晶に注入してくれ。その魔力で、私の最大の召喚術を行う」
『魔導波激化水晶』は、注入された魔力の量によってその効果も変動する。
つまり、ここにいるSランクたちの魔力を集めれば、ゲインロードが普段使えない最高レベルの召喚術を使用できるというわけだ。
ただし、その代償としてSランクたちは大量の魔力を失ってしまう。失敗すれば、さらなる危機を迎えることになるだろう。
しかし、もはやこれに賭けるしか手はなかった。
「了解だ、ゲインロード。こうなったらあんたを信じるしかないぜ」
Sランクたちは覚悟を決めて、水晶に魔力を込めていく。
もちろん、バーダンやジャビロ、ザックたちも協力する。
「アニス君、すまんが水晶に魔力を込める間、囮となってあの怪物を引きつけ、時間を稼いでくれ。君ならできる……いや、君にしかできないことだ。頼めるか?」
呪われし超越者から逃げながら魔力を溜めるのは少々無謀なため、ゲインロードはアニスに時間稼ぎを命じた。
かなり無茶な頼みだが、アニスが回避に専念すれば、たとえ呪われし超越者が相手であろうとも簡単にやられることはない――先ほどの戦闘を見てそう判断したのだ。
「やってみるわ」
それを承諾し、アニスはみんなから離れて呪われし超越者に接近していく。
その姿をザックたちは不安げに見つめるが、今の自分たちではどうしようもない。
アニスを信じるしかなかった。
絶望的な力の差がある相手に、ただ1人で戦いを挑むアニス。
アニスも相当疲労が溜まっているはずだが、しかし期待以上の動きで呪われし超越者とバトルを繰り広げ、華麗な体術で翻弄する。
「ス、スゲエ……あれが史上最年少でSランクに昇格した天才剣士『剣姫』の力か」
アニスの卓越した戦闘センスに、ザックたちはただただ感心した。
そのアニスが必死に奮闘している間、『魔導波激化水晶』には大勢の魔力が込められ続ける。
「くっ……はあはあ、こっちよ!」
さすがのアニスもそろそろ体力の限界が近付いてきたところで、ようやく必要量の魔力が『魔導波激化水晶』に溜まった。
膨大な魔力によって激しく輝く水晶を握りしめながら、ゲインロードが前に進み出て叫ぶ。
「よく頑張ってくれたアニス君。無事準備は整った。今から禁呪を発動するので、すぐにそこから離れたまえ」
ゲインロードの言葉を聞き、アニスは呪われし超越者との戦闘を中止してみんなのもとへ向かう。
アニスが呪われし超越者から離れたことを確認してから、ゲインロードは『魔導波激化水晶』を上に掲げ、禁呪を発動するための詠唱を始める。
「おお真理の守護者、現の地を司る裁きの神子よ、秩序を乱す仇敵を御身の力にていざ滅ぼさん……大召喚『主天使の降臨』っ!」
ゲインロードが禁呪を発動すると同時に、『魔導波激化水晶』は粉々に砕け散り、その増強された特大の魔力が天を衝いた。
そして上空に黒い異空間の門が開くと、そこから光り輝く体長10メートルほどの天使――天使階級第四位の『主天使』が静かに舞い降りてきたのだった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
来週12月25日にコミカライズ第3話が更新されます!
是非是非よろしくお願いいたします。
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完全に復活した呪われし超越者を見て、Sランク冒険者たちは動揺しながらもその正体の推測をする。
確かに、アンデッド系のモンスターであれば、通常では致命傷となるような損傷を負っても平気で動けることがある。
この戦いでも呪われし超越者は驚くほどタフだったので、アンデッドならそれも納得なところだが……。
とはいえ、頭部を攻撃されればアンデッドといえども大きなダメージを受けるし、弱点である火属性や聖属性に対しては非常に脆い。
この戦闘中、Sランク冒険者たちは様々な攻撃を試していた。当然、火属性や聖属性の攻撃も浴びせている。
しかし、特に有効な感触などはなかった。
アンデッド特有の腐臭も感じないため、アンデッド系ではないと判断して戦っていたのだが、それは間違いだったのだろうか?
今一度確かめるため、Sランクたちは火属性と聖属性の攻撃を呪われし超越者に撃ち放つ。
結果は、やはり効いた様子がなかった。
不死ではないのに不死なのか?
それとも、弱点のないアンデッドか?
もしもそんなものが存在するとしたら、果たしてそれは倒せるのだろうか……?
Sランクたちは混乱しつつも、傷付いている仲間を抱えて一気に呪われし超越者から離れる。
すでに死力を尽くして戦ったあとなので、全員疲労困憊だ。こんな状態では、呪われし超越者を倒すどころかまともに戦うことすら難しい。
ここまできて、逃げるしか手はないのか?
『覇王の卵』を目前にして、Sランクたちは悔しさに歯を軋ませる。
「皆の者、こうなったら禁呪でヤツを仕留める。だが私だけの力では禁呪を発動することができない。頼む、力を貸してくれ」
ゲインロードはそう言いながら、懐から青く輝く手のひらサイズの水晶を取り出した。
「これは『魔導波激化水晶』といって、水晶に魔力を注入することで魔法の効果を大きく増強することができる。私も1つしか所持していない秘宝だ。皆の魔力をこの水晶に注入してくれ。その魔力で、私の最大の召喚術を行う」
『魔導波激化水晶』は、注入された魔力の量によってその効果も変動する。
つまり、ここにいるSランクたちの魔力を集めれば、ゲインロードが普段使えない最高レベルの召喚術を使用できるというわけだ。
ただし、その代償としてSランクたちは大量の魔力を失ってしまう。失敗すれば、さらなる危機を迎えることになるだろう。
しかし、もはやこれに賭けるしか手はなかった。
「了解だ、ゲインロード。こうなったらあんたを信じるしかないぜ」
Sランクたちは覚悟を決めて、水晶に魔力を込めていく。
もちろん、バーダンやジャビロ、ザックたちも協力する。
「アニス君、すまんが水晶に魔力を込める間、囮となってあの怪物を引きつけ、時間を稼いでくれ。君ならできる……いや、君にしかできないことだ。頼めるか?」
呪われし超越者から逃げながら魔力を溜めるのは少々無謀なため、ゲインロードはアニスに時間稼ぎを命じた。
かなり無茶な頼みだが、アニスが回避に専念すれば、たとえ呪われし超越者が相手であろうとも簡単にやられることはない――先ほどの戦闘を見てそう判断したのだ。
「やってみるわ」
それを承諾し、アニスはみんなから離れて呪われし超越者に接近していく。
その姿をザックたちは不安げに見つめるが、今の自分たちではどうしようもない。
アニスを信じるしかなかった。
絶望的な力の差がある相手に、ただ1人で戦いを挑むアニス。
アニスも相当疲労が溜まっているはずだが、しかし期待以上の動きで呪われし超越者とバトルを繰り広げ、華麗な体術で翻弄する。
「ス、スゲエ……あれが史上最年少でSランクに昇格した天才剣士『剣姫』の力か」
アニスの卓越した戦闘センスに、ザックたちはただただ感心した。
そのアニスが必死に奮闘している間、『魔導波激化水晶』には大勢の魔力が込められ続ける。
「くっ……はあはあ、こっちよ!」
さすがのアニスもそろそろ体力の限界が近付いてきたところで、ようやく必要量の魔力が『魔導波激化水晶』に溜まった。
膨大な魔力によって激しく輝く水晶を握りしめながら、ゲインロードが前に進み出て叫ぶ。
「よく頑張ってくれたアニス君。無事準備は整った。今から禁呪を発動するので、すぐにそこから離れたまえ」
ゲインロードの言葉を聞き、アニスは呪われし超越者との戦闘を中止してみんなのもとへ向かう。
アニスが呪われし超越者から離れたことを確認してから、ゲインロードは『魔導波激化水晶』を上に掲げ、禁呪を発動するための詠唱を始める。
「おお真理の守護者、現の地を司る裁きの神子よ、秩序を乱す仇敵を御身の力にていざ滅ぼさん……大召喚『主天使の降臨』っ!」
ゲインロードが禁呪を発動すると同時に、『魔導波激化水晶』は粉々に砕け散り、その増強された特大の魔力が天を衝いた。
そして上空に黒い異空間の門が開くと、そこから光り輝く体長10メートルほどの天使――天使階級第四位の『主天使』が静かに舞い降りてきたのだった。
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