勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

文字の大きさ
上 下
65 / 81
第4章 迷宮の宝

第33話 レムの想い

しおりを挟む
 エリート・ドッペルゲンガーからは、外見をコピーできる『形態模倣』というスキルを手に入れることができた。
 死んだモンスターからはスキルは取れないけど、どうやらギリギリ間に合ったらしい。もしくは、ダンジョンのモンスターは魔瘴気から生まれるので、通常のモンスターとは少し性質が違うのかもしれないが。
 非常に希少なスキルだが、ただこの能力を下手に使うと思わぬ事態を招く可能性があるから、安易に使用することはできないな。

 その後、オレたちはフロアボスがいた部屋にテントを張り、仮眠をとることに。
 ボス部屋には通常モンスターが出現しないため、比較的安全な場所だからだ。
 場合によってはトラップなどがあったりもするが、そのあたりはもちろん何もないことを確認してある。

 まあ仮眠といっても、寝るのはオレだけだがな。
 レムはゴーレムだから睡眠は必要ない。だからレムにはテントの外で、オレが寝ている間の護衛をしてもらう。
 たとえ睡眠中でも、危険が迫ればオレはすぐに気付けるが、一応念のためだ。

 一刻も早く進みたい気持ちではあるが、ちゃんと体を休めないと、いざというときの集中力に影響する。
 そんなわけで、オレは短時間ながらもきっちり良質な睡眠をとりたいと思っていたのだが……

「レムっ、なんの用だ? 理由もなしにそれ以上入ってきたら許さんぞ」

 テント内にレムが入ろうとした気配を感じ、オレは即座に目を覚まして威圧する。
 一度こっそり侵入されてるからな。今回も夜這いに来るんじゃないかと警戒してたぜ。

「その……マスターがお疲れじゃないかと思い、マッサージしに来ました」

「そんなのいらん。オレは大丈夫だから外に出てろ」

「で、では、マスターが寂しくないように添い寝いたします」

「それもしなくていい! オレは寂しくなんかないから放っておいてくれ!」

「でもマスター、せっかく2人きりになれたのですから、子作りくらいしても良いのでは……?」

「こ、こ、子作り~っ!? お、お前とするわけないだろっ! 休憩する時間も貴重なんだ、頼むから静かにオレを寝かせてくれ!」

 まったく、ゴーレムなのに、どうしてそこまでしてオレとくっつきたがるんだ?
 子作りに興味があるのもよく分からん。

 オレは強めにレムを拒絶し、もう一度眠りにつこうとしたところ、レムは命令を無視して無理やりテント内に入ってきた。
 そして強引にオレに抱きついてキスを迫る。

「マスター、せめてキスだけでも……」

「こ、こら、よせっレム! やめろって!」

 相変わらずなんて馬鹿力だ。普通の冒険者なら全身複雑骨折してるぞ。
 ゴーレムは主人に絶対服従なはずなのに、何故かレムはオレの言うことを聞かない。
 本当にどうなってんだ?

「レムっ、い、いい加減にしないと、本気で怒るぞ!」

 オレは仕方なく、レムを超える超パワーで引き離す。
 そして、主従関係を教え込むためにもガッツリ説教しようとしたところ、レムの力が急に抜け、おもむろに目から涙を流した。

「お、おいレム、ちょっとまて……あ~あの、その、なんだ、えーと……オ、オレが悪かった、だから泣くな」

 狭いテント内で女性(外見は)に泣かれ、思わず取り乱すオレ。
 オレのどこがダメだったのか、今のやり取りを思い返しながらレムをなだめようとするが、レムの涙は一向に止まらない。
 あたふたと慌てふためいているオレに対し、レムが静かに言葉を出した。

「マスターはワタシのことが嫌いなのですか? マスターのためにワタシは生まれてきたのに、嫌われているのならどうすれば……」

「えっ? べ、別に嫌いじゃないぞ!?」

「転移トラップのとき、マスターが危険をかえりみずワタシを助けてくれたことが本当に嬉しかったんです。だからお礼がしたいだけなのに、何故マスターはワタシをそんなに拒絶するのか……」

「拒絶してるわけじゃ……」

 いや、拒絶してるのか。
 だが、レムが求めているようなことは、ゴーレム相手でも人間相手でもオレはできない。
 オレの心にはアニスがいるからだ。
 レムにそれを分かってもらうにはどうしたらいいのか……

 レムは本物の人間のように泣き続けたあと、指で涙を拭いた。
 そしてオレから離れる。

「わがままばかり言って、マスターを困らせて申し訳ありません。きっとワタシがおかしいのです。もっとマスターに忠実なゴーレムを作り直してくださいませ」

「そ、そんなことは絶対にしないから安心しろ」

 オレはつい条件反射で言ってしまった。
 ただ、自分でもよく分からないが、レムを作り直すことはしないと思う。
 困ったヤツだが、なんとなくオレにはレムが必要な気がするからだ。

「ありがとうございますマスター。やっぱりマスターは優しいです」

 レムは少し元気になったようで、穏やかな笑顔を見せた。
 ふ~……自分が作ったゴーレムにこれほど感情を揺さぶられてしまうとは、オレもまだまだだな。

「マスター、1つだけお願いがあります」

「あ~なんだ、言ってみろ」

 ほっとして落ちついたのでオレの心にも余裕ができたし、他愛もない願いなら聞いてやりたいところ。
 さっきのドッペルゲンガーも、レムのおかげで助かったしな。

「ほっぺにキスしてください」

「えええっ!?」

「ダメ……ですか?」

 くっ……どうする?
 ほほにキスする程度なら、そこまで拒まなくてもいいか……人間相手ならともかくゴーレムだし。
 意固地に断って、この雰囲気をぶち壊すのもなんだしな。

「分かった、それくらいなら」

「ありがとうございますマスター!」

 オレはゆっくり近寄り、レムのほほに顔を近付ける。
 そして覚悟を決めてキスをしようとしたところ、突然レムがオレのほうを向いて自分からキスをしてきた。
 ……オレの口に。

「今日はこれで我慢します。それではおやすみなさいマスター」

 レムが笑顔でテントを出ていく。
 くそっ、やられた……ゲインロードに続いて、レムにも騙されるとは。
 オレは本当にバカだな。はあ~……。

 まあしかし、ゴーレムなのにレムの唇は柔らかかったな。
 我ながら、これほど人間そっくりのゴーレムを作ってしまうとは、少々恐ろしさを感じてしまう。

 ところで、ゴーレムとのキスはノーカウントだよな?
 アニスに対する後ろめたい気持ちをごまかすため、オレはよく分からない言い訳を自分にしながら今度こそ眠りについた。


 ☆


 数時間後、オレは起きてテントから出る。
 レムとのことで寝付きはいまいち悪かったが、短時間ながらも熟睡はできた。
 おかげで、一応体調は万全だ。精神的には軽く疲労を覚えているが。

「おはようございますマスター」

 レムはすこぶる上機嫌の表情でオレに声をかける。
 時間的にはまだ夜の部類だが、目覚めの挨拶だからおはようで間違いない。
 オレは軽く朝食をとったあと、またダンジョン攻略を開始した。

 出会うモンスターを倒しつつ、新たにコピー出力した『導きの白樹笛ディヴァインフルート』の案内で迷宮を進んでいると、またしても行き止まりに辿り着いた。
 恐らく隠し通路だろう。前回の経験が生きて、今度は慌てずに対処する。

 周囲を調べたところ、仕掛けギミックを見つけたので発動させてみた。
 すると、以前と同じように壁が唸りを上げながら沈んでいき、通路が出現した。
 短縮通路ショートカットだ! 上手くいけば、一気にみんなに追いつけるぞ!

 心を躍らせながら通路を進んでいくと、巨大な金属製の扉が目の前に現れる。
 中に入ると、そこには……

「マスター、アイツは!?」

「ああ、前回同様の隠しシークレットボスだな。だが、少し違うようだぞ」

 広い部屋の中央にあったのは、燃えるように紅く輝く、大量の金属の塊だった。
 当然ダンジョンの守護神『機神兵ガーディアン』だが、あの金属はまさか、最強金属ヒヒイロカネじゃ……?

 佇むオレたちの目の前で、金属は次々に結合して8本足の蜘蛛のような姿になった。
 体高は10メートル、横幅は20メートルを超える最強の『機神兵ガーディアン』……

 魔王の守護機神ルシファーガーディアンだった。

「別に今さらもう驚きゃしないぜ。どんなヤツが出ようとも倒すだけだ。行くぞ、レム!」

「はい、マスター」

 オレたちは戦闘を開始した。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。