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第4章 迷宮の宝
第33話 レムの想い
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エリート・ドッペルゲンガーからは、外見をコピーできる『形態模倣』というスキルを手に入れることができた。
死んだモンスターからはスキルは取れないけど、どうやらギリギリ間に合ったらしい。もしくは、ダンジョンのモンスターは魔瘴気から生まれるので、通常のモンスターとは少し性質が違うのかもしれないが。
非常に希少なスキルだが、ただこの能力を下手に使うと思わぬ事態を招く可能性があるから、安易に使用することはできないな。
その後、オレたちはフロアボスがいた部屋にテントを張り、仮眠をとることに。
ボス部屋には通常モンスターが出現しないため、比較的安全な場所だからだ。
場合によってはトラップなどがあったりもするが、そのあたりはもちろん何もないことを確認してある。
まあ仮眠といっても、寝るのはオレだけだがな。
レムはゴーレムだから睡眠は必要ない。だからレムにはテントの外で、オレが寝ている間の護衛をしてもらう。
たとえ睡眠中でも、危険が迫ればオレはすぐに気付けるが、一応念のためだ。
一刻も早く進みたい気持ちではあるが、ちゃんと体を休めないと、いざというときの集中力に影響する。
そんなわけで、オレは短時間ながらもきっちり良質な睡眠をとりたいと思っていたのだが……
「レムっ、なんの用だ? 理由もなしにそれ以上入ってきたら許さんぞ」
テント内にレムが入ろうとした気配を感じ、オレは即座に目を覚まして威圧する。
一度こっそり侵入されてるからな。今回も夜這いに来るんじゃないかと警戒してたぜ。
「その……マスターがお疲れじゃないかと思い、マッサージしに来ました」
「そんなのいらん。オレは大丈夫だから外に出てろ」
「で、では、マスターが寂しくないように添い寝いたします」
「それもしなくていい! オレは寂しくなんかないから放っておいてくれ!」
「でもマスター、せっかく2人きりになれたのですから、子作りくらいしても良いのでは……?」
「こ、こ、子作り~っ!? お、お前とするわけないだろっ! 休憩する時間も貴重なんだ、頼むから静かにオレを寝かせてくれ!」
まったく、ゴーレムなのに、どうしてそこまでしてオレとくっつきたがるんだ?
子作りに興味があるのもよく分からん。
オレは強めにレムを拒絶し、もう一度眠りにつこうとしたところ、レムは命令を無視して無理やりテント内に入ってきた。
そして強引にオレに抱きついてキスを迫る。
「マスター、せめてキスだけでも……」
「こ、こら、よせっレム! やめろって!」
相変わらずなんて馬鹿力だ。普通の冒険者なら全身複雑骨折してるぞ。
ゴーレムは主人に絶対服従なはずなのに、何故かレムはオレの言うことを聞かない。
本当にどうなってんだ?
「レムっ、い、いい加減にしないと、本気で怒るぞ!」
オレは仕方なく、レムを超える超パワーで引き離す。
そして、主従関係を教え込むためにもガッツリ説教しようとしたところ、レムの力が急に抜け、おもむろに目から涙を流した。
「お、おいレム、ちょっとまて……あ~あの、その、なんだ、えーと……オ、オレが悪かった、だから泣くな」
狭いテント内で女性(外見は)に泣かれ、思わず取り乱すオレ。
オレのどこがダメだったのか、今のやり取りを思い返しながらレムを宥めようとするが、レムの涙は一向に止まらない。
あたふたと慌てふためいているオレに対し、レムが静かに言葉を出した。
「マスターはワタシのことが嫌いなのですか? マスターのためにワタシは生まれてきたのに、嫌われているのならどうすれば……」
「えっ? べ、別に嫌いじゃないぞ!?」
「転移トラップのとき、マスターが危険を顧みずワタシを助けてくれたことが本当に嬉しかったんです。だからお礼がしたいだけなのに、何故マスターはワタシをそんなに拒絶するのか……」
「拒絶してるわけじゃ……」
いや、拒絶してるのか。
だが、レムが求めているようなことは、ゴーレム相手でも人間相手でもオレはできない。
オレの心にはアニスがいるからだ。
レムにそれを分かってもらうにはどうしたらいいのか……
レムは本物の人間のように泣き続けたあと、指で涙を拭いた。
そしてオレから離れる。
「わがままばかり言って、マスターを困らせて申し訳ありません。きっとワタシがおかしいのです。もっとマスターに忠実なゴーレムを作り直してくださいませ」
「そ、そんなことは絶対にしないから安心しろ」
オレはつい条件反射で言ってしまった。
ただ、自分でもよく分からないが、レムを作り直すことはしないと思う。
困ったヤツだが、なんとなくオレにはレムが必要な気がするからだ。
「ありがとうございますマスター。やっぱりマスターは優しいです」
レムは少し元気になったようで、穏やかな笑顔を見せた。
ふ~……自分が作ったゴーレムにこれほど感情を揺さぶられてしまうとは、オレもまだまだだな。
「マスター、1つだけお願いがあります」
「あ~なんだ、言ってみろ」
ほっとして落ちついたのでオレの心にも余裕ができたし、他愛もない願いなら聞いてやりたいところ。
さっきのドッペルゲンガーも、レムのおかげで助かったしな。
「ほっぺにキスしてください」
「えええっ!?」
「ダメ……ですか?」
くっ……どうする?
ほほにキスする程度なら、そこまで拒まなくてもいいか……人間相手ならともかくゴーレムだし。
意固地に断って、この雰囲気をぶち壊すのもなんだしな。
「分かった、それくらいなら」
「ありがとうございますマスター!」
オレはゆっくり近寄り、レムのほほに顔を近付ける。
そして覚悟を決めてキスをしようとしたところ、突然レムがオレのほうを向いて自分からキスをしてきた。
……オレの口に。
「今日はこれで我慢します。それではおやすみなさいマスター」
レムが笑顔でテントを出ていく。
くそっ、やられた……ゲインロードに続いて、レムにも騙されるとは。
オレは本当にバカだな。はあ~……。
まあしかし、ゴーレムなのにレムの唇は柔らかかったな。
我ながら、これほど人間そっくりのゴーレムを作ってしまうとは、少々恐ろしさを感じてしまう。
ところで、ゴーレムとのキスはノーカウントだよな?
アニスに対する後ろめたい気持ちをごまかすため、オレはよく分からない言い訳を自分にしながら今度こそ眠りについた。
☆
数時間後、オレは起きてテントから出る。
レムとのことで寝付きはいまいち悪かったが、短時間ながらも熟睡はできた。
おかげで、一応体調は万全だ。精神的には軽く疲労を覚えているが。
「おはようございますマスター」
レムはすこぶる上機嫌の表情でオレに声をかける。
時間的にはまだ夜の部類だが、目覚めの挨拶だからおはようで間違いない。
オレは軽く朝食をとったあと、またダンジョン攻略を開始した。
出会うモンスターを倒しつつ、新たにコピー出力した『導きの白樹笛』の案内で迷宮を進んでいると、またしても行き止まりに辿り着いた。
恐らく隠し通路だろう。前回の経験が生きて、今度は慌てずに対処する。
周囲を調べたところ、仕掛けを見つけたので発動させてみた。
すると、以前と同じように壁が唸りを上げながら沈んでいき、通路が出現した。
短縮通路だ! 上手くいけば、一気にみんなに追いつけるぞ!
心を躍らせながら通路を進んでいくと、巨大な金属製の扉が目の前に現れる。
中に入ると、そこには……
「マスター、アイツは!?」
「ああ、前回同様の隠しボスだな。だが、少し違うようだぞ」
広い部屋の中央にあったのは、燃えるように紅く輝く、大量の金属の塊だった。
当然ダンジョンの守護神『機神兵』だが、あの金属はまさか、最強金属ヒヒイロカネじゃ……?
佇むオレたちの目の前で、金属は次々に結合して8本足の蜘蛛のような姿になった。
体高は10メートル、横幅は20メートルを超える最強の『機神兵』……
魔王の守護機神だった。
「別に今さらもう驚きゃしないぜ。どんなヤツが出ようとも倒すだけだ。行くぞ、レム!」
「はい、マスター」
オレたちは戦闘を開始した。
死んだモンスターからはスキルは取れないけど、どうやらギリギリ間に合ったらしい。もしくは、ダンジョンのモンスターは魔瘴気から生まれるので、通常のモンスターとは少し性質が違うのかもしれないが。
非常に希少なスキルだが、ただこの能力を下手に使うと思わぬ事態を招く可能性があるから、安易に使用することはできないな。
その後、オレたちはフロアボスがいた部屋にテントを張り、仮眠をとることに。
ボス部屋には通常モンスターが出現しないため、比較的安全な場所だからだ。
場合によってはトラップなどがあったりもするが、そのあたりはもちろん何もないことを確認してある。
まあ仮眠といっても、寝るのはオレだけだがな。
レムはゴーレムだから睡眠は必要ない。だからレムにはテントの外で、オレが寝ている間の護衛をしてもらう。
たとえ睡眠中でも、危険が迫ればオレはすぐに気付けるが、一応念のためだ。
一刻も早く進みたい気持ちではあるが、ちゃんと体を休めないと、いざというときの集中力に影響する。
そんなわけで、オレは短時間ながらもきっちり良質な睡眠をとりたいと思っていたのだが……
「レムっ、なんの用だ? 理由もなしにそれ以上入ってきたら許さんぞ」
テント内にレムが入ろうとした気配を感じ、オレは即座に目を覚まして威圧する。
一度こっそり侵入されてるからな。今回も夜這いに来るんじゃないかと警戒してたぜ。
「その……マスターがお疲れじゃないかと思い、マッサージしに来ました」
「そんなのいらん。オレは大丈夫だから外に出てろ」
「で、では、マスターが寂しくないように添い寝いたします」
「それもしなくていい! オレは寂しくなんかないから放っておいてくれ!」
「でもマスター、せっかく2人きりになれたのですから、子作りくらいしても良いのでは……?」
「こ、こ、子作り~っ!? お、お前とするわけないだろっ! 休憩する時間も貴重なんだ、頼むから静かにオレを寝かせてくれ!」
まったく、ゴーレムなのに、どうしてそこまでしてオレとくっつきたがるんだ?
子作りに興味があるのもよく分からん。
オレは強めにレムを拒絶し、もう一度眠りにつこうとしたところ、レムは命令を無視して無理やりテント内に入ってきた。
そして強引にオレに抱きついてキスを迫る。
「マスター、せめてキスだけでも……」
「こ、こら、よせっレム! やめろって!」
相変わらずなんて馬鹿力だ。普通の冒険者なら全身複雑骨折してるぞ。
ゴーレムは主人に絶対服従なはずなのに、何故かレムはオレの言うことを聞かない。
本当にどうなってんだ?
「レムっ、い、いい加減にしないと、本気で怒るぞ!」
オレは仕方なく、レムを超える超パワーで引き離す。
そして、主従関係を教え込むためにもガッツリ説教しようとしたところ、レムの力が急に抜け、おもむろに目から涙を流した。
「お、おいレム、ちょっとまて……あ~あの、その、なんだ、えーと……オ、オレが悪かった、だから泣くな」
狭いテント内で女性(外見は)に泣かれ、思わず取り乱すオレ。
オレのどこがダメだったのか、今のやり取りを思い返しながらレムを宥めようとするが、レムの涙は一向に止まらない。
あたふたと慌てふためいているオレに対し、レムが静かに言葉を出した。
「マスターはワタシのことが嫌いなのですか? マスターのためにワタシは生まれてきたのに、嫌われているのならどうすれば……」
「えっ? べ、別に嫌いじゃないぞ!?」
「転移トラップのとき、マスターが危険を顧みずワタシを助けてくれたことが本当に嬉しかったんです。だからお礼がしたいだけなのに、何故マスターはワタシをそんなに拒絶するのか……」
「拒絶してるわけじゃ……」
いや、拒絶してるのか。
だが、レムが求めているようなことは、ゴーレム相手でも人間相手でもオレはできない。
オレの心にはアニスがいるからだ。
レムにそれを分かってもらうにはどうしたらいいのか……
レムは本物の人間のように泣き続けたあと、指で涙を拭いた。
そしてオレから離れる。
「わがままばかり言って、マスターを困らせて申し訳ありません。きっとワタシがおかしいのです。もっとマスターに忠実なゴーレムを作り直してくださいませ」
「そ、そんなことは絶対にしないから安心しろ」
オレはつい条件反射で言ってしまった。
ただ、自分でもよく分からないが、レムを作り直すことはしないと思う。
困ったヤツだが、なんとなくオレにはレムが必要な気がするからだ。
「ありがとうございますマスター。やっぱりマスターは優しいです」
レムは少し元気になったようで、穏やかな笑顔を見せた。
ふ~……自分が作ったゴーレムにこれほど感情を揺さぶられてしまうとは、オレもまだまだだな。
「マスター、1つだけお願いがあります」
「あ~なんだ、言ってみろ」
ほっとして落ちついたのでオレの心にも余裕ができたし、他愛もない願いなら聞いてやりたいところ。
さっきのドッペルゲンガーも、レムのおかげで助かったしな。
「ほっぺにキスしてください」
「えええっ!?」
「ダメ……ですか?」
くっ……どうする?
ほほにキスする程度なら、そこまで拒まなくてもいいか……人間相手ならともかくゴーレムだし。
意固地に断って、この雰囲気をぶち壊すのもなんだしな。
「分かった、それくらいなら」
「ありがとうございますマスター!」
オレはゆっくり近寄り、レムのほほに顔を近付ける。
そして覚悟を決めてキスをしようとしたところ、突然レムがオレのほうを向いて自分からキスをしてきた。
……オレの口に。
「今日はこれで我慢します。それではおやすみなさいマスター」
レムが笑顔でテントを出ていく。
くそっ、やられた……ゲインロードに続いて、レムにも騙されるとは。
オレは本当にバカだな。はあ~……。
まあしかし、ゴーレムなのにレムの唇は柔らかかったな。
我ながら、これほど人間そっくりのゴーレムを作ってしまうとは、少々恐ろしさを感じてしまう。
ところで、ゴーレムとのキスはノーカウントだよな?
アニスに対する後ろめたい気持ちをごまかすため、オレはよく分からない言い訳を自分にしながら今度こそ眠りについた。
☆
数時間後、オレは起きてテントから出る。
レムとのことで寝付きはいまいち悪かったが、短時間ながらも熟睡はできた。
おかげで、一応体調は万全だ。精神的には軽く疲労を覚えているが。
「おはようございますマスター」
レムはすこぶる上機嫌の表情でオレに声をかける。
時間的にはまだ夜の部類だが、目覚めの挨拶だからおはようで間違いない。
オレは軽く朝食をとったあと、またダンジョン攻略を開始した。
出会うモンスターを倒しつつ、新たにコピー出力した『導きの白樹笛』の案内で迷宮を進んでいると、またしても行き止まりに辿り着いた。
恐らく隠し通路だろう。前回の経験が生きて、今度は慌てずに対処する。
周囲を調べたところ、仕掛けを見つけたので発動させてみた。
すると、以前と同じように壁が唸りを上げながら沈んでいき、通路が出現した。
短縮通路だ! 上手くいけば、一気にみんなに追いつけるぞ!
心を躍らせながら通路を進んでいくと、巨大な金属製の扉が目の前に現れる。
中に入ると、そこには……
「マスター、アイツは!?」
「ああ、前回同様の隠しボスだな。だが、少し違うようだぞ」
広い部屋の中央にあったのは、燃えるように紅く輝く、大量の金属の塊だった。
当然ダンジョンの守護神『機神兵』だが、あの金属はまさか、最強金属ヒヒイロカネじゃ……?
佇むオレたちの目の前で、金属は次々に結合して8本足の蜘蛛のような姿になった。
体高は10メートル、横幅は20メートルを超える最強の『機神兵』……
魔王の守護機神だった。
「別に今さらもう驚きゃしないぜ。どんなヤツが出ようとも倒すだけだ。行くぞ、レム!」
「はい、マスター」
オレたちは戦闘を開始した。
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