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第4章 迷宮の宝
第32話 アニスとレム
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アニスは無事だった! その事実が嬉しくてたまらない。
ゲインロードに騙されたオレだが、まさか転移先で会えるなんて奇跡だ。
恐らく、アニスたちは『赤き壁』のせいで、前進も後退もできずに彷徨っていたんだろう。
ゲインロードに少し感謝しながら、オレは無我夢中で駆け出した。
「アニス~っ!」
オレの叫び声を聞いて、アニスたちもこっちに気付く。見た様子、怪我もないようだ。
ただ、オレの姿を見てアニスはキョトンとしている。もっと喜んでもらえると思っていただけに、ちょっと拍子抜けだ。
まあ、Fランクのオレが来たところでどうにもならないと思っているんだろう。
成長したオレの力を見せて、驚かせたいぜ。
アニスに助けられた恩をようやく返せる……そう思いながらあと20メートルという距離に迫ったところで、後ろからレムが凄まじいスピードでオレを追い抜いた。
「レ、レム? いったいどうした……!?」
突然のことにオレが驚いていたところ、レムはそのまま突進し、剣を抜いてアニスたち5人に襲いかかる。
「よせっレム、彼らは敵じゃない!」
と、オレが叫んだ瞬間には、アニスたち5人は斬り殺されていた。
レムの凶行に、オレは呆然とその場に立ち尽くす。
ようやく、ようやく会えたと思ったのに……オレはこの現実を受け止めることができず、絶望で全身が震え出した。
呼吸も苦しくなり、息をするのもつらいくらいだ。
「なんで……なんで殺したんだ、レムっ!?」
オレはやっとの思いで声を出し、レムを問い詰める。
もしかして、オレがアニスに好意を抱いていることが許せなかったのか?
返答次第じゃ、オレはレムを許せそうにない。
レムを作って失敗だったと、すでに後悔しているほどだ。
「マスター、彼らをよく見てください。人間ではありませんよ」
「………………なにぃっ!?」
オレは一瞬レムが何を言っているのか分からず、少し考えたあと、その意味を理解して驚いた。
倒れているアニスたちを見てみると、その体が灰色に変化して徐々に干涸らびていき、そして最後には蒸発するように消滅した。
ダンジョンに出るモンスターの最期と同じだ。
オレは狼狽しながらも、かろうじて『スマホ』で撮ったので分析してみる。
「エリート・ドッペルゲンガーだって……!?」
アニスたちの正体は、エリート・ドッペルゲンガーというモンスターだった!
『スマホ』の検索で調べてみると、『ドッペルゲンガー』という種族は人間に化けることができるらしい。
その上位種であるエリート・ドッペルゲンガーは、簡単な会話すら可能だとか。
こんなヤツがいたなんて……!
「マスターがお気づきでなかったみたいなので、ワタシが排除いたしました。まあマスターならこんなモンスターにやられることはないかと思いますが……」
レムが今の行動について説明をした。
そんな理由だったとは……レムを疑ってしまったことを心から反省する。
オレはバカだ。アニスに会えたことが嬉しくて、つい危機管理を怠ってしまった。
まさに経験不足が招いた危機だが、レムがいなかったら、オレは不意打ちで心臓を刺されてもおかしくなかった。
『損傷再生』や『物理無効』、『身体硬化』を持っているオレだが、生身のまま心臓を刺されたらさすがに死ぬ。
レムのおかげでオレは命拾いをしたんだ。
「しかし……ドッペルゲンガーがアニスたちに化けていたということは、まさかアニスたちはコイツらに殺されたんじゃ……?」
オレは最悪のパターンを想像して胸が苦しくなる。
「恐らく、彼らは無事だと思いますよ。Sランク冒険者なら簡単にドッペルゲンガーには騙されないでしょうし、今斬りつけた感じでは戦闘力も大したことはありません」
確かに、エリート・ドッペルゲンガーといえども戦闘力はそれほど高くないようだ。
まともにやれば、Sランクが負ける要素はない。
「このドッペルゲンガーたちは、たまたまアニス様たちを見かけて外見をコピーしたのでしょう」
レムの言う通りかもしれない。
いや、そうであると信じたいだけかもしれないが……。
でも、レムの言葉を聞いて、オレは少し安心した。
レムがここにいることをとても心強く感じる。オレ1人だけだったら、冷静な考えができなかったかもしれない。
「ありがとうレム。お前のおかげだ」
オレは素直に礼を言う。
「ではマスター、ご褒美にキスしてください」
「そ、それはちょっと……でも心から感謝してるからそれで許してくれ」
「……マスターがそう仰るなら我慢します」
レムが不服そうに口を尖らせた。
本当に感謝してるんで、レムの願いをきいてやりたくはあるんだが、キスはちょっとなあ……。
とにかく、オレは今回の事態を大いに反省した。
迷宮における経験不足が、やはりこういうミスを生んでしまう。
今後はさらに注意して攻略していこう。
「それにしても、先ほどの女型ドッペルゲンガーがアニス様のお姿というわけですね。ワタシとそっくりではありませんか。ということは、ワタシは理想のアニス様ということなのでは?」
「断じて違う」
レムの言葉に即答するオレ。
それを聞いてまたしょげるかと思いきや、レムはなんとなく嬉しそうな顔をしている。
なんでだ?
「ウフフ、少なくともワタシは、マスターの好み通りの外見というわけですね。なら、ワタシにも恋人になるチャンスはありますね」
あ~コイツってばそんなこと考えてたのか。
まあ一応事実ではあるから、否定はしないでおこう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
アニスとの再会を期待していた方、肩すかしな思いをさせてしまってすみません(^^;)
再会までもう少しだけお待ちください。
アニスの可愛い姿はコミカライズでご堪能いただければと思います。
ゲインロードに騙されたオレだが、まさか転移先で会えるなんて奇跡だ。
恐らく、アニスたちは『赤き壁』のせいで、前進も後退もできずに彷徨っていたんだろう。
ゲインロードに少し感謝しながら、オレは無我夢中で駆け出した。
「アニス~っ!」
オレの叫び声を聞いて、アニスたちもこっちに気付く。見た様子、怪我もないようだ。
ただ、オレの姿を見てアニスはキョトンとしている。もっと喜んでもらえると思っていただけに、ちょっと拍子抜けだ。
まあ、Fランクのオレが来たところでどうにもならないと思っているんだろう。
成長したオレの力を見せて、驚かせたいぜ。
アニスに助けられた恩をようやく返せる……そう思いながらあと20メートルという距離に迫ったところで、後ろからレムが凄まじいスピードでオレを追い抜いた。
「レ、レム? いったいどうした……!?」
突然のことにオレが驚いていたところ、レムはそのまま突進し、剣を抜いてアニスたち5人に襲いかかる。
「よせっレム、彼らは敵じゃない!」
と、オレが叫んだ瞬間には、アニスたち5人は斬り殺されていた。
レムの凶行に、オレは呆然とその場に立ち尽くす。
ようやく、ようやく会えたと思ったのに……オレはこの現実を受け止めることができず、絶望で全身が震え出した。
呼吸も苦しくなり、息をするのもつらいくらいだ。
「なんで……なんで殺したんだ、レムっ!?」
オレはやっとの思いで声を出し、レムを問い詰める。
もしかして、オレがアニスに好意を抱いていることが許せなかったのか?
返答次第じゃ、オレはレムを許せそうにない。
レムを作って失敗だったと、すでに後悔しているほどだ。
「マスター、彼らをよく見てください。人間ではありませんよ」
「………………なにぃっ!?」
オレは一瞬レムが何を言っているのか分からず、少し考えたあと、その意味を理解して驚いた。
倒れているアニスたちを見てみると、その体が灰色に変化して徐々に干涸らびていき、そして最後には蒸発するように消滅した。
ダンジョンに出るモンスターの最期と同じだ。
オレは狼狽しながらも、かろうじて『スマホ』で撮ったので分析してみる。
「エリート・ドッペルゲンガーだって……!?」
アニスたちの正体は、エリート・ドッペルゲンガーというモンスターだった!
『スマホ』の検索で調べてみると、『ドッペルゲンガー』という種族は人間に化けることができるらしい。
その上位種であるエリート・ドッペルゲンガーは、簡単な会話すら可能だとか。
こんなヤツがいたなんて……!
「マスターがお気づきでなかったみたいなので、ワタシが排除いたしました。まあマスターならこんなモンスターにやられることはないかと思いますが……」
レムが今の行動について説明をした。
そんな理由だったとは……レムを疑ってしまったことを心から反省する。
オレはバカだ。アニスに会えたことが嬉しくて、つい危機管理を怠ってしまった。
まさに経験不足が招いた危機だが、レムがいなかったら、オレは不意打ちで心臓を刺されてもおかしくなかった。
『損傷再生』や『物理無効』、『身体硬化』を持っているオレだが、生身のまま心臓を刺されたらさすがに死ぬ。
レムのおかげでオレは命拾いをしたんだ。
「しかし……ドッペルゲンガーがアニスたちに化けていたということは、まさかアニスたちはコイツらに殺されたんじゃ……?」
オレは最悪のパターンを想像して胸が苦しくなる。
「恐らく、彼らは無事だと思いますよ。Sランク冒険者なら簡単にドッペルゲンガーには騙されないでしょうし、今斬りつけた感じでは戦闘力も大したことはありません」
確かに、エリート・ドッペルゲンガーといえども戦闘力はそれほど高くないようだ。
まともにやれば、Sランクが負ける要素はない。
「このドッペルゲンガーたちは、たまたまアニス様たちを見かけて外見をコピーしたのでしょう」
レムの言う通りかもしれない。
いや、そうであると信じたいだけかもしれないが……。
でも、レムの言葉を聞いて、オレは少し安心した。
レムがここにいることをとても心強く感じる。オレ1人だけだったら、冷静な考えができなかったかもしれない。
「ありがとうレム。お前のおかげだ」
オレは素直に礼を言う。
「ではマスター、ご褒美にキスしてください」
「そ、それはちょっと……でも心から感謝してるからそれで許してくれ」
「……マスターがそう仰るなら我慢します」
レムが不服そうに口を尖らせた。
本当に感謝してるんで、レムの願いをきいてやりたくはあるんだが、キスはちょっとなあ……。
とにかく、オレは今回の事態を大いに反省した。
迷宮における経験不足が、やはりこういうミスを生んでしまう。
今後はさらに注意して攻略していこう。
「それにしても、先ほどの女型ドッペルゲンガーがアニス様のお姿というわけですね。ワタシとそっくりではありませんか。ということは、ワタシは理想のアニス様ということなのでは?」
「断じて違う」
レムの言葉に即答するオレ。
それを聞いてまたしょげるかと思いきや、レムはなんとなく嬉しそうな顔をしている。
なんでだ?
「ウフフ、少なくともワタシは、マスターの好み通りの外見というわけですね。なら、ワタシにも恋人になるチャンスはありますね」
あ~コイツってばそんなこと考えてたのか。
まあ一応事実ではあるから、否定はしないでおこう。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
アニスとの再会を期待していた方、肩すかしな思いをさせてしまってすみません(^^;)
再会までもう少しだけお待ちください。
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