勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

文字の大きさ
上 下
62 / 81
第4章 迷宮の宝

第30話 和解と表明

しおりを挟む
「これで勝負ありだろ……おっと!」

 オレの力は充分証明できたと思ったんでバトルの終了を告げようとしたところ、いきなり背後から殺気を感じ、素早く身を躱して振り向く。

「オ、オレのスピードに反応しただと!?」

 後方から斬りつけてきたのは、『閃光』のレピィーだった。
 Sランクでも随一のスピードを持つ男らしいが、当然オレよりは遥かに遅い。
 どうやら、ファイクの負けを見てオレに奇襲をかけてきたみたいだが……

「これはタイマン勝負のはずだろ? 不意打ちは卑怯だぜ」

 オレはレピィーを超えるスピードで、彼の顔面を殴った。
 パンチをまともに喰らったレピィーは、周囲で見ていたSランクたちのところまで飛んでいく。
 その瞬間、またしても後方から、今度は魔法がオレに向かって放たれた。

「『フリーズキャノン』っ!」

冷血の淑女クールレディ』サリアが、水属性の第二階級魔法を撃ったのだ。
 躱せないタイミングではなかったが、オレはあえてそれをまともに喰らう。
 強烈な冷凍波を浴びたオレだが、もちろん属性魔法はノーダメージだ。

「そ、そんなっ、アタシの魔法が効かない……!?」

 まるで平気な顔をしているオレを見て、サリアは右手を突き出したまま呆然と立ち尽くしている。
 そこに、うなり声を上げながら誰かが突っ込んできた。

「うおおおおおオレがぶっ殺してやる~っ!」

『狂い獅子』ウルヴァルだ。
 パワーはかなりありそうだが猪突猛進、大型モンスター相手なら相性は良さそうだが、こんな直線的な攻撃じゃ対人戦は向かないな。
 そんなウルヴァルを軽くあしらおうとしたところ、後方から鋭く一喝する声が上がった。

「よせウルヴァル、その男はお前の敵う相手ではない! これ以上の戦闘は無意味だ!」

常勝の百人長グローリーセンチュリオン』ゲインロードが、自分たちの敗北を告げたのだった。
 頭に血が昇っていたウルヴァルだが、この一声で動きを止めた。
 サリアやレピィー、ファイクも、オレに対してまた攻撃を仕掛けようとしていたみたいだが、ゲインロードの制止によって断念したようだ。
 なるほど、凄い統率力だな。彼が指揮する戦いは負け知らずらしいが、それもうなずける。

「リューク君と言ったな。我らの負けだ。君の力を軽視した我らに落ち度があるが、しかしこれほど強い者がいるなど思ってもいなかったのだ。分かってくれ」

 頭を下げるゲインロードを、複雑な表情で見つめるファイクたちやほかのSランクたち。
 ふとジャビロを見ると、ファイクたちが負けたのを嘲笑あざわらっているのか、少し口元が弛んでいるように見える。

「いえ、オレは特に気にしていません。こちらの事情も少々複雑なので、理解していただけて助かります」

 多少の遺恨は残るかもしれないが、ゲインロードが認めてくれたのなら、この先はもう大丈夫だろう。
 オレは上手くいったことに安堵して、ホッと胸を撫で下ろした。
 ……のだが…………

「とはいえ、リューク君。やはり『導きの白樹笛ディヴァインフルート』は我らが持つべきだ」

 ゲインロードは話を蒸し返したかのように、『導きの白樹笛ディヴァインフルート』の所持について主張した。
 ゲインロードは言葉を続ける。

「確かに君の強さは規格外だ。だが、君たちのチームを拝見したところ、君はまだダンジョンに対して経験が浅いと見える」

 ゲインロードは頭の回転も速いが、慧眼でもあるようだ。
 オレたちの様子を見て、オレが経験不足ということを見抜いている。

「ダンジョンに関しては、我らは世界でも有数の熟練者エキスパートだ。そろそろ最下層も近く、ここからは特に経験がものをいう。いくら君が強くても、経験不足の人間に我らは命を預けるつもりはない。どうしても『導きの白樹笛ディヴァインフルート』を渡せないというなら、君たちとの共闘は断らせてもらう」

 ゲインロードはハッキリと宣言した。
 無事和解できたと思ったのだが、痛いところを突かれてしまった。

 ゲインロードの言う通り、オレはダンジョンの経験が乏しい。
 たとえ『スマホ』で調べようとも、やはり付け焼き刃の知識では、緊急事態でどんな失態を犯すか分からない。
 オレを認めてくれたのなら、『導きの白樹笛ディヴァインフルート』をオレが持っているべき理由は特にないし、彼らに渡したほうがいいのかもしれない。

「分かりました。みんなで協力できるのなら、『導きの白樹笛ディヴァインフルート』はお渡しいたします」

「お、おい、いいのかリューク!?」

「ああ、問題ないだろう。ここで争ってる場合じゃないしな」

 慌てるザックをなだめつつ、オレは『導きの白樹笛ディヴァインフルート』をゲインロードに渡した。

「マスターは本当にお人好しですね。気を付けないと、いつか痛い目に遭いますよ?」

 レムが呆れたような表情で呟く。
 ゲスニクに洗脳されてたせいで人付き合いが苦手なオレだが、この性格は簡単には変えられない。
 レムの忠告ももっともだが、まあなんとかなることを祈るしかない。

「ではリューク君、すまないが『導きの白樹笛ディヴァインフルート』の使い方を教えてもらえないか」

「ああいいですよ」

 オレはゲインロードに付き従って、部屋の出口のほうに向かう。
 使い方なんて教えるのは簡単だ。実戦してみせればすぐに分かるはず。

「ところでリューク君、君のその黒髪は生来のものかね?」

 ゲインロードは、オレの頭髪を見ながら尋ねる。

「……え? あ、はい、生まれつき黒でした」

 想定外の質問だったので、オレは少々戸惑いながら答えた。
 黒髪は特別な力を授かると言われているから、ゲインロードも気になったのだろう。
 オレ自身は気にしたことはないが、もしかしたらオレの前世が関係しているのかもしれない。

「なるほど、それでその力か。となると、あの噂も偽りではないのか……」

 ゲインロードが悩ましげに考え込むような表情を見せる。
 オレの黒髪が何か問題なんだろうか? ゲインロードの様子が少しおかしいので、オレからも質問してみたいところだが、何か言葉をかけづらい雰囲気があるのでオレは躊躇ためらってしまう。
 そんな状態で歩いていると、ふとゲインロードが立ち止まった。

「どうかしたんですか?」

 ゲインロードが何故停止したのか分からず、オレは訊いてみる。

「さらばだ、リューク君」

 ゲインロードはそう意味不明の言葉を言うと、オレに何かを投げつけてきた。
 なんだ? 投擲武器じゃなくてアイテムみたいだが……?
 オレは反射的にそれを避けようとしたが、空中でアイテムが発動し、その直後体が吸い寄せられるように引っ張られる。
 この異様な力はいったい……!?

「危ないマスターっ!」

 ゲインロードの行動に不穏な気配を感じていたのか、レムはオレたちのすぐ後ろを追ってきていたらしい。
 そしてオレの危機を感じ、慌てて飛び込んできた。
 レムの捨て身の体当たりにより、オレは謎の呪縛から解き放たれる。
 代わりにレムが謎の力に捕まり、強大な魔力がそこへ凝縮して黒く光り出す。

 まずい! 何か分からないが、このままじゃレムが危険だ!
 オレは思考する間もなく勝手に体が動き、レムのもとに飛び込んだ。

「レムっ!」

「来てはダメですマスター!」

 その瞬間、脳が揺さぶられるような感覚が湧き起こり、体が重力から解き放たれて宙に浮く。
 これは……転移トラップと同じ!?
 まさか強制的に転移させるアイテムか!

 気付くと、オレとレムはまるで別の場所に立っていたのだった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。