勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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第4章 迷宮の宝

第26話 導かれた先は……

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「やったぜリューク! お前ってヤツは凄すぎるぜ!」

 ザックを先頭に、みんなが歓喜の声を上げながらオレのもとに駆け寄ってくる。
 冥府の凶獣王キングケルベロスは確かに強敵だったが、オレは暗黒の守護機神ダークガーディアン戦を休んでいたことで気力も体力も充実していたし、全力で戦えたからこそ誰も犠牲者を出さずに勝てたと言える。
 おっと、ジャビロたちは重傷だったな。一応、みんなが応急手当をしたみたいだが。

「まったく、あんな怪物にたった1人で勝つなんて、どこまでオレたちの度肝を抜き続けるんだ? お前、絶対ゾンダール将軍より強いだろ!」

「いや、将軍どころじゃねえぞ。世界最強かもしれねえ」

「っていうか、お前まだまだ力を隠してるだろ!? どうなんだリューク?」

「えっ、いやその……どうかなあ?」

 突然想定外のことを聞かれて、オレは返答に焦ってしまう。
 力を隠してるというのは図星だけど、認めてしまうのもなんとなくバツが悪い。
 今の戦いがオレの限界と言い訳しておくべきか……?

「マスターは嘘が本当に下手ですね」

 しどろもどろしているオレを見て、そばにいたレムがため息まじりにぼそりと呟いた。
 うう、毎度のことながら、こういう状況は苦手なんだよ……もっと堂々とするクセを身に付けないとなあ。

「やっぱリュークの真の力はこんなもんじゃないのか。まあ言いたくないならオレたちも詳しくは聞かないぜ」

 そんなオレを見て、みんなは茶化すように笑った。
 いずれそのときが来たら、『スマホ』のこともみんなに教えようと思う。

「それにしてもマスター、あんな無茶をするなんて……もう少しご自分を大事にしてください」

 レムがオレを戒めるように言葉を出す。
 さすがのレムも、オレが冥府の凶獣王キングケルベロスに喰われるとまでは考えてなかったようだ。
 まあその場の思いつきでやっちゃったからな。仮に噛み砕かれても、『損傷再生』スキルでなんとか治せるだろうと思ってたし。
 とはいえ、想定外の事態になる可能性も0じゃなかったから、いちかばちかの賭けではあったが。

 そんなことを考えていると、ふとレムの両目から液体が流れた。
 ……もしかして涙? えっ、ゴーレムって泣けるの!?
 思わずサクヤに泣きつかれたこともフラッシュバックして、オレは少々パニックになる。

「ああああレム、心配かけてすまなかった。もうあんな無茶はしないから安心しろ」

 オレは精いっぱい冷静さを心掛けながら、レムの肩をやさしく両手で掴む。

「約束ですよ」

 レムは指で涙を拭きながら、少しだけ微笑んだ。
 ふう……女性に泣かれるのはオレの最大の弱点かもしれない。

「おっと、ジャビロたちを治療しないと!」

 オレとレムのことをみんながニヤニヤしながら見守っているので、気まずさを取り繕うようにその場を逃げ出した。


 ジャビロたちにエリクサーを飲ませると、全員無事意識を取り戻した。
 すぐに記憶も戻ったようで、ジャビロは慌てて周囲を見渡したあと、自分の体をあちこち触りながら怪我がないことを確かめる。
 そして、わけが分からないといった感じで言葉を発した。

「おいっ、あの怪物はどうした!? 俺は……生きてるのか!?」

「大丈夫、ここはあの世じゃなくて現世だ。お前は死んでねえよ。そして冥府の凶獣王キングケルベロスはリュークが倒した」

「リュークが倒した? ……あっ、あの怪物をかっ!?」

 ザックの言葉を聞いて、ジャビロが驚きながらオレを見る。
 到底信じられないといった表情だ。
 そんなジャビロたち5人に対し、ザックが厳しい顔つきで苦言を呈する。

「ジャビロ……今回の事態は、お前が勝手な行動をしたことが原因だ。お前たちにはもう離脱してもらいたいが、この状況じゃそうもいかない。いいか、今後はオレとリュークの指示に絶対服従してもらうぞ」

 ザックの言葉に、ジャビロは無言のままたたずむ。
 認めたくないようだが、とりあえず反論しないところを見ると、一応納得はしているようだ。
 これでジャビロたちも大人しくなるだろう。

 それにしても、意地の悪い隠し部屋だった。
 これほどの戦闘をさせておいて、なんの報酬もないんだからな。ジャビロじゃなくても不満が出るところだ。
 まあ冥府の凶獣王キングケルベロス暗黒の守護機神ダークガーディアンの魔石は手に入れたし、強力なスキルも取得できたんで良しとしよう。


「じゃあ今度こそここを出るぞ」

 ザックの言葉を合図に、オレたちはこの隠し部屋をあとにする。
 外に出ると、そこにはまた長い通路があった。
 モンスターは出現しないようだが、ここにも意地の悪いトラップがあるかもしれないので、オレたちは慎重に進んでいく。

 しばらく行くと、日光が差しているかのような明るい場所が前方に見えてきた。
 まさか外に繋がっているのかと驚いたが、到着してみると、それは地面が光っているだけだった。
 5メートル四方ほどがまばゆい光を出していて、明らかに異質なものを感じる。
 これはなんだ?

『スマホ』で解析してみると、なんとその正体は『転移トラップ』だった。
 つまり、この発光している地に入ると、どこかに強制的に転移させられてしまう。
 ダンジョンでは最も気を付けなくてはならないトラップの1つだが、ただ通常は普通の地面と変わらない状態で、こんな目に見える形でトラップがあるのは不自然だ。
 これではまず引っかかる人間などいない。いったいどういうことなんだ?

「隠し通路の終着が『転移トラップ』とは……今までオレたちがしたことは全て無駄だったというのか?」

 ザックが肩を落としながら言葉を出す。
 こんな結果になって、みんなも酷く気落ちしている。
 だが、『導きの白樹笛ディヴァインフルート』に導かれて来た場所だ。このまま何もないわけがない。
 絶対にここに案内した理由があるはずだ。
 オレは『スマホ』でマップを確認してみる。

 そこで、ふとオレは気付く。
 

 もしもこの『転移トラップ』が危険な罠なら、マップにもそれが示されるはず。
 だが探知されてないってことは、この『転移トラップ』は危険じゃないってことか?
 もしや、この『転移トラップ』に入ることが、ダンジョン攻略の最短ルートなのでは……?

「みんな、この『転移トラップ』に入ってみよう」

 オレは意を決してみんなに語りかける。
 みんなは不安な顔をしたが、ただどうやらオレが言うまでもなく、入るかどうか迷っていたらしい。
 ここまで来た以上、引き返す選択肢はない。だから、危険を承知であえてこのトラップに挑もうと思っていたようだが、そうはいっても簡単には決断できない。
 だが、オレの言葉が後押しになって、覚悟が決まったようだ。

「リュークのおかげで腹をくくることができたぜ」

「ああ、そうだな。オレも『導きの白樹笛ディヴァインフルート』を信じる」

「こんだけ色んな経験すりゃあもう怖いもんはない。行けるとこまで行ってやる!」

 全員が顔を見合わせて頷く。
 気持ちの整理がついたところで、みんなでいっせいに『転移トラップ』に入った。
 すると………………

「うおおおおお~っ」

 脳が揺さぶられるような感覚のあと、ヒュオンとした感じで体が宙に浮く。
 次に気付いたときは、まったく別の場所に立っていた。
 少し目眩を感じつつ、周りを見渡してみる。全員無事に転移できたようだ。
 しかし、ここはいったいどこだ?

「こりゃあ……この雰囲気はただ事じゃないぞ」

「どう考えても深層だ。ってことは、ショートカットに成功したってことか?」

 みんなの言葉を聞きながら、『スマホ』で現在地を確認してみる。
 一気に移動したので詳細までは分からないが、どうやらここは地上から千メートル以上は離れている場所らしい。
 つまり、大幅にルートを短縮できたことになる。

「みんな、正確なことまでは分からないが、多分ここはかなりの深層らしい。恐らく、最下層までそう遠くはない気がする」

 オレは自分の見解を述べた。
 最下層まで遠くないというのは完全にオレの想像だが、周囲の様子から考えてもそれほど見当違いではないだろう。
『転移トラップ』のおかげで、通常なら1ヶ月以上かかる攻略をショートカットできた。
 色々と苦難の連続だったが、あの怪物たちを倒した甲斐があったというものだ。

「おおお~っ、スゲー! さすが『導きの白樹笛ディヴァインフルート』だ!」

 みんなからも歓喜の声が上がる。
 これならあと少しで完全攻略が叶いそうだが、一気に深層まで来たことで、アニスを追い抜いてしまったかもしれない。
 できればこの目でアニスの無事を確認したいところだが、今さら上の階に戻るわけにもいかない。
 アニスがこの先にいることを信じて進むしかないな。

「よし、あともうひと踏ん張りだ! 気合い入れていこうぜ!」

「おお~っ!」

 ザックのかけ声で、オレたちはまた攻略を再開した。
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