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第4章 迷宮の宝
第21話 まさかの偽物?
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「千眼鬼すら、もうオレたちの敵じゃないなんて、ちょっと信じられないぜ」
強敵を難なく片付けることができ、冒険者の1人が興奮冷めやらぬ様子で言葉を発した。
Aランク冒険者ほどの技量に強力な魔導装備が加われば、ダンジョンの手強い怪物相手でもそう簡単に負けることはないだろう。
とはいえ、そこは歴戦の猛者であるAランク冒険者たち。慢心せずに、ダンジョンを慎重に進んでいく。
『導きの白樹笛』は最短ルートを教えてくれるだけで、安全なルートというわけじゃない。
敵の強さだけを考えるなら、場合によっては遠回りするほうが楽かもしれない。
それでも、千眼鬼を倒せる力があれば問題なく進んでいけると思っていたが、それは少々オレの思い上がりだったらしい。
なんと赤き壁には、千眼鬼に負けず劣らずの強敵がうようよ徘徊していたのだ。
体長3メートル、どんなに攻撃を喰らおうともモノともせずに巨大剣を振り回す、地獄の狂戦士。
尻尾まで入れた体長は10メートル、腐った骨だけの身でありながら、とんでもない怪力と膨大な体力を持つ巨骸蜥蜴。
そして『迷宮の怪物』として一番知られた存在ミノタウロスの上位種である、体長5メートルの鋼鎧の牛頭巨人など、様々な強敵がオレたちの前に立ち塞がってきた。
ここまで強敵揃いだと、いくら魔導装備を持ったAランク冒険者でも、進んでいくのはかなり困難……
しかし、オレが思っていた以上に冒険者たちは強く、これらの敵も次々に返り討ちにしたのだった。
装備を強化したとはいえ、これほど戦闘力が上がるとは……なんとも頼もしい仲間たちだ。
オレが声も出ないまま驚いていると、ザックが近付いて話しかけてきた。
「何驚いてんだリューク、もしかしてオレたちのこと、もっと弱いと思ってたのか? こう見えたって、ダンジョンの経験は豊富だ。オレたちだってこれくらいはできるさ。まあ、これも全部お前のおかげなんだけどな」
「ああスマン。みんなの力も、そしてこのダンジョンのこともオレは少し甘く見ていたようだ。みんなから学べることは、まだまだたくさんありそうだ」
「そう言ってもらえると、一応先輩としては顔が立つぜ」
そう言って、ザックはウインクする。
これほどのメンバーなら必ず最下層まで行ける……改めてオレは確信した。
だがここで、思わぬ事態が起こる。
分岐路に出会う度に『導きの白樹笛』で道を確認していたんだが、なんと、進んでいった先が行き止まりだったのだ!
目の前の壁を呆然と見つめる冒険者たちとオレ。
こんな事が起こるなんてありえない。
『導きの白樹笛』は間違いなく本物だ。『スマホ』の鑑定でしっかり確認してある。
ということは、『導きの白樹笛』でも『赤き壁』の正解ルートは分からないというのか!?
さっきまで自信たっぷりに進んでいたオレだったが、それがガラガラと崩れそうになっていくのを感じる。
「グハハッ、とんだペテン師だったな! お前のようなガキがそんなお宝を持ってるなんて、おかしいと思ってたんだ。『導きの白樹笛』は真っ赤な偽物だったってことだ、俺様ですらすっかり騙されちまったぜ」
ジャビロがさも愉快そうにオレのことをあざ笑う。
お前、ちゃんと状況が分かってるのか? 『導きの白樹笛』が役に立たないなら、この先ロクに進めないってことなんだぞ!?
それにしても、まさかこんな事態になるとは……。
完全に『導きの白樹笛』のことを信頼していたから、通用しない迷宮があるなんて考えもしなかった。
どうする? 人海戦術で正解ルートを探っていくしかないのか?
……とそこで、念のためもう1回『導きの白樹笛』を奏でてみた。
すると、やはりこの行き止まりの壁の奥から反響音が聞こえてくる。
……壁の奥!?
ちょっと待てよ! オレは『スマホ』でマップを確認してみる。
マップでは、この壁の裏側に通路があるのが分かった。
ってことは、その通路が正解ルートなのかもしれないが、壁に阻まれては行くことができない。
ダンジョンの壁は壊せないし、どうすればいいんだ?
「おいリューク、もしかしてこれは隠し通路なんじゃないのか?」
「隠し通路?」
「ああ、仕掛けを解くことで通路が現れる。ダンジョンではたまにあることだが、そもそも隠し通路を見つけるのはかなり稀なので、何かのきっかけで偶然通路が出現することが多いがな」
隠し通路か!
確かに、一部のダンジョンにはそんな仕掛けがある。ただ、ダンジョン慣れしてないオレは、そのことを完全に失念していた!
「オレに任せろ。仕掛けがあると分かってさえいれば、見つけるのは難しくないぜ」
ダンジョンのギミックに詳しい冒険者が、壁の周囲を念入りに調べていく。
しばしののち、興奮した様子で声を上げた。
「あったぞ! これがギミックを発動するスイッチだ!」
そう言って冒険者が何かを操作すると、目の前の壁がゴゴゴと唸りを上げながら沈んでいき、その先の通路が出現した。
「スッゲーッ!! 『導きの白樹笛』は、隠し通路すら教えてくれるのかよ!」
「こりゃまさしく『伝説級』だ! おいジャビロ、何か言うことはあるか?」
さっき『導きの白樹笛』のことを嘲笑したジャビロに、冒険者が皮肉まじりに言葉をかける。
ジャビロは言葉を呑み込むかのように、黙ったまま立ち尽くしていた。
またしても不穏な空気になってしまったが、正直言うと、少しオレもスカッとした。
それにしても、せっかく隠し通路の前まで来たのに、あやうく見逃すところだったぜ。
みんながいて本当に良かった。
強敵を難なく片付けることができ、冒険者の1人が興奮冷めやらぬ様子で言葉を発した。
Aランク冒険者ほどの技量に強力な魔導装備が加われば、ダンジョンの手強い怪物相手でもそう簡単に負けることはないだろう。
とはいえ、そこは歴戦の猛者であるAランク冒険者たち。慢心せずに、ダンジョンを慎重に進んでいく。
『導きの白樹笛』は最短ルートを教えてくれるだけで、安全なルートというわけじゃない。
敵の強さだけを考えるなら、場合によっては遠回りするほうが楽かもしれない。
それでも、千眼鬼を倒せる力があれば問題なく進んでいけると思っていたが、それは少々オレの思い上がりだったらしい。
なんと赤き壁には、千眼鬼に負けず劣らずの強敵がうようよ徘徊していたのだ。
体長3メートル、どんなに攻撃を喰らおうともモノともせずに巨大剣を振り回す、地獄の狂戦士。
尻尾まで入れた体長は10メートル、腐った骨だけの身でありながら、とんでもない怪力と膨大な体力を持つ巨骸蜥蜴。
そして『迷宮の怪物』として一番知られた存在ミノタウロスの上位種である、体長5メートルの鋼鎧の牛頭巨人など、様々な強敵がオレたちの前に立ち塞がってきた。
ここまで強敵揃いだと、いくら魔導装備を持ったAランク冒険者でも、進んでいくのはかなり困難……
しかし、オレが思っていた以上に冒険者たちは強く、これらの敵も次々に返り討ちにしたのだった。
装備を強化したとはいえ、これほど戦闘力が上がるとは……なんとも頼もしい仲間たちだ。
オレが声も出ないまま驚いていると、ザックが近付いて話しかけてきた。
「何驚いてんだリューク、もしかしてオレたちのこと、もっと弱いと思ってたのか? こう見えたって、ダンジョンの経験は豊富だ。オレたちだってこれくらいはできるさ。まあ、これも全部お前のおかげなんだけどな」
「ああスマン。みんなの力も、そしてこのダンジョンのこともオレは少し甘く見ていたようだ。みんなから学べることは、まだまだたくさんありそうだ」
「そう言ってもらえると、一応先輩としては顔が立つぜ」
そう言って、ザックはウインクする。
これほどのメンバーなら必ず最下層まで行ける……改めてオレは確信した。
だがここで、思わぬ事態が起こる。
分岐路に出会う度に『導きの白樹笛』で道を確認していたんだが、なんと、進んでいった先が行き止まりだったのだ!
目の前の壁を呆然と見つめる冒険者たちとオレ。
こんな事が起こるなんてありえない。
『導きの白樹笛』は間違いなく本物だ。『スマホ』の鑑定でしっかり確認してある。
ということは、『導きの白樹笛』でも『赤き壁』の正解ルートは分からないというのか!?
さっきまで自信たっぷりに進んでいたオレだったが、それがガラガラと崩れそうになっていくのを感じる。
「グハハッ、とんだペテン師だったな! お前のようなガキがそんなお宝を持ってるなんて、おかしいと思ってたんだ。『導きの白樹笛』は真っ赤な偽物だったってことだ、俺様ですらすっかり騙されちまったぜ」
ジャビロがさも愉快そうにオレのことをあざ笑う。
お前、ちゃんと状況が分かってるのか? 『導きの白樹笛』が役に立たないなら、この先ロクに進めないってことなんだぞ!?
それにしても、まさかこんな事態になるとは……。
完全に『導きの白樹笛』のことを信頼していたから、通用しない迷宮があるなんて考えもしなかった。
どうする? 人海戦術で正解ルートを探っていくしかないのか?
……とそこで、念のためもう1回『導きの白樹笛』を奏でてみた。
すると、やはりこの行き止まりの壁の奥から反響音が聞こえてくる。
……壁の奥!?
ちょっと待てよ! オレは『スマホ』でマップを確認してみる。
マップでは、この壁の裏側に通路があるのが分かった。
ってことは、その通路が正解ルートなのかもしれないが、壁に阻まれては行くことができない。
ダンジョンの壁は壊せないし、どうすればいいんだ?
「おいリューク、もしかしてこれは隠し通路なんじゃないのか?」
「隠し通路?」
「ああ、仕掛けを解くことで通路が現れる。ダンジョンではたまにあることだが、そもそも隠し通路を見つけるのはかなり稀なので、何かのきっかけで偶然通路が出現することが多いがな」
隠し通路か!
確かに、一部のダンジョンにはそんな仕掛けがある。ただ、ダンジョン慣れしてないオレは、そのことを完全に失念していた!
「オレに任せろ。仕掛けがあると分かってさえいれば、見つけるのは難しくないぜ」
ダンジョンのギミックに詳しい冒険者が、壁の周囲を念入りに調べていく。
しばしののち、興奮した様子で声を上げた。
「あったぞ! これがギミックを発動するスイッチだ!」
そう言って冒険者が何かを操作すると、目の前の壁がゴゴゴと唸りを上げながら沈んでいき、その先の通路が出現した。
「スッゲーッ!! 『導きの白樹笛』は、隠し通路すら教えてくれるのかよ!」
「こりゃまさしく『伝説級』だ! おいジャビロ、何か言うことはあるか?」
さっき『導きの白樹笛』のことを嘲笑したジャビロに、冒険者が皮肉まじりに言葉をかける。
ジャビロは言葉を呑み込むかのように、黙ったまま立ち尽くしていた。
またしても不穏な空気になってしまったが、正直言うと、少しオレもスカッとした。
それにしても、せっかく隠し通路の前まで来たのに、あやうく見逃すところだったぜ。
みんながいて本当に良かった。
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