51 / 81
第4章 迷宮の宝
第19話 不安の種?
しおりを挟む
「リュークのおかげで準備も万全となったし、今度こそ攻略再開といこうぜ!」
場の空気がまとまったところで、冒険者の1人――5人組チームのリーダーであるザックが、全員を見渡したあと声を上げた。
6チームいるAランクチームに序列の優劣はないが、これまで見てきたところ、彼は特にリーダーシップに溢れているようで、みんなも自然と彼の言葉に従っている。
一応、この調査隊のまとめ役はジャビロだったはずだが、さっきの戦闘でみんなの不信感が募り、ジャビロの指示に素直に従うような雰囲気ではなくなってしまった。
ジャビロもそれを感じており、ザックが指揮を執ることに異論はないようだ。
経験豊富なSランク冒険者に場を仕切ってほしいところではあるが、まあジャビロは問題も多いし、現状ではこれが最善かもしれないな。
「さて、まずはルートを調べないとな。前方と左右の通路を調べるため、8チームを3つのグループに分けて進むことにしよう。戦力を分散するのは危険だが、リュークに装備を強化してもらったからなんとかなるはずだ。正解らしきルートを見つけたら、他チームに『光紙』で報せる……」
「あっ、ちょっと待った! 何度も話の腰を折ってすまないが、それについてオレに策があるんだ」
ザックがプランを話したところで、またしてもオレは口を挟んでしまう。
オレは学校に行ってなかったから、ずっと友達がいなかった弊害として、どうも集団に対して手際よく発言することが下手なようだ。
サクヤたち七部衆とトラブったのも、オレのそういう一面が影響したんだと思う。
「大丈夫ですマスター、要領の悪いところもマスターの魅力の1つですよ」
「う、うるさい!」
褒めてるのか貶しているのか分からないレムのセリフに、ちょっとキレるオレ。
おっと、策について早く冒険者たちに説明しないと。
さっきはストップをかけたことで少々イラついていたみんなだが、今回は大人しくオレの言葉を待っている。
オレがどんな提案をするのか、興味津々といった目だ。
「実はルートについては調べなくても問題ない。何故なら、こういうアイテムを持ってるからだ」
そう言いながら、オレは『導きの白樹笛』を取り出してみんなに見せた。
一瞬、それが何か理解できなかった冒険者たちだが、その形状と、魔力を溢れさせながらキラキラ輝いているのを見て、伝説級アイテムだと気付く。
「おい、まさかソレって……」
「ああ、迷宮で正解を導いてくれる『導きの白樹笛』だ」
「で、伝説の『導きの白樹笛』だって……!? ほ、本物なのか!?」
オレはコクリと頷いた。
「信じられねえ……どこかにあるという伝説だけは聞いてたが、まさか本当に存在したとは」
「マップが役に立たなくなっちまって、下層まで行くのは到底不可能だと諦めてたが、『導きの白樹笛』さえあればもう安心だぜ!」
「それにしたって、そんなもんどこで手に入れたんだ? もしかして、それもリュークが自分で作ったっていうのか?」
「いや、オレが作ったんじゃない。あ~その、実はこの『導きの白樹笛』は……」
魔導装備が作れることもみんなには教えたし、グリムラーゼ王女とのことも話していいだろう。
オレは王女を捜索したときのこと、そして王都で起こった出来事を手早く掻い摘まんで説明する。
すると、最初こそみんなは驚きの声を上げていたものの、途中から納得いったように頷きながら話に聞き入っていた。
オレが話を終えると、誰とはなしにため息が漏れ、そして堰を切ったように口々に言葉を発した。
「そういうことだったのか……まあリュークの強さを知った今では、当然とも思えるけどな」
「おかげで、色々とおかしなことが全部繋がったぜ。話してくれてありがとなリューク」
「森で王女様を救出した経緯も、偶然にしちゃできすぎた話だったしな。ラスティオンより強いんなら納得だ」
「とはいえ、あのラスティオンを倒したなんて、普通なら絶対信じられねえところだ。もしかしてお前、ゾンダール将軍より強かったりするのか?」
「いやあ、そこまではどうだろうなあ?」
オレは言葉を濁してごまかす。
みんなにはラスティオンを倒して王女を救ったこと、王都で王様の病気を治す手助けをしたこと、その褒美として『導きの白樹笛』をもらったことを話したけど、詳細までは説明しなかった。
全部話すと、話が長くなるしな。『虚身』との戦闘も秘密にした。
「一応、今の話はギルド長のフォーレントには内緒に頼む。どうもオレ、フォーレントに嫌われてるっぽいんだ。手柄を立てたことが知られると、フォーレントに変な難癖を付けられそうで……」
オレは両手を合わせてみんなにお願いする。
フォーレントに知られるとゲスニクやドラグレスの耳にも入るだろうし、そうなるとアイツらがどんなことをしてくるか気懸かりだ。
ゲスニクに対しては近いうちに何か手を打とうと思っているが、それまではイタズラに刺激したくない。
「別にギルド長に知られても平気だと思うけどな。むしろ、所属の冒険者が活躍したのを知って喜ぶんじゃないか? まあリュークが内緒にしろって言うなら黙ってるが」
「よろしく頼む。フォーレントに教えるときはオレが言うよ」
いつまで隠し通せるか分からないが、できるかぎり内密にしておきたいところだ。
「ば、馬鹿な、『導きの白樹笛』だとぉ!? 『覇王の卵』にも匹敵するようなお宝だぞ。売りゃあどれほど金が入ってくることか……こんなガキが持ってていいもんじゃねえ」
少し離れた場所でオレの話を聞いていたジャビロが、ぼそりと小声で呟く。
みんなには聞こえてないだろうが、オレの聴力なら聞き取ることができた。
フォーレントだけじゃなく、こっちでも何か問題が起きそうで少々不安になるオレだった。
場の空気がまとまったところで、冒険者の1人――5人組チームのリーダーであるザックが、全員を見渡したあと声を上げた。
6チームいるAランクチームに序列の優劣はないが、これまで見てきたところ、彼は特にリーダーシップに溢れているようで、みんなも自然と彼の言葉に従っている。
一応、この調査隊のまとめ役はジャビロだったはずだが、さっきの戦闘でみんなの不信感が募り、ジャビロの指示に素直に従うような雰囲気ではなくなってしまった。
ジャビロもそれを感じており、ザックが指揮を執ることに異論はないようだ。
経験豊富なSランク冒険者に場を仕切ってほしいところではあるが、まあジャビロは問題も多いし、現状ではこれが最善かもしれないな。
「さて、まずはルートを調べないとな。前方と左右の通路を調べるため、8チームを3つのグループに分けて進むことにしよう。戦力を分散するのは危険だが、リュークに装備を強化してもらったからなんとかなるはずだ。正解らしきルートを見つけたら、他チームに『光紙』で報せる……」
「あっ、ちょっと待った! 何度も話の腰を折ってすまないが、それについてオレに策があるんだ」
ザックがプランを話したところで、またしてもオレは口を挟んでしまう。
オレは学校に行ってなかったから、ずっと友達がいなかった弊害として、どうも集団に対して手際よく発言することが下手なようだ。
サクヤたち七部衆とトラブったのも、オレのそういう一面が影響したんだと思う。
「大丈夫ですマスター、要領の悪いところもマスターの魅力の1つですよ」
「う、うるさい!」
褒めてるのか貶しているのか分からないレムのセリフに、ちょっとキレるオレ。
おっと、策について早く冒険者たちに説明しないと。
さっきはストップをかけたことで少々イラついていたみんなだが、今回は大人しくオレの言葉を待っている。
オレがどんな提案をするのか、興味津々といった目だ。
「実はルートについては調べなくても問題ない。何故なら、こういうアイテムを持ってるからだ」
そう言いながら、オレは『導きの白樹笛』を取り出してみんなに見せた。
一瞬、それが何か理解できなかった冒険者たちだが、その形状と、魔力を溢れさせながらキラキラ輝いているのを見て、伝説級アイテムだと気付く。
「おい、まさかソレって……」
「ああ、迷宮で正解を導いてくれる『導きの白樹笛』だ」
「で、伝説の『導きの白樹笛』だって……!? ほ、本物なのか!?」
オレはコクリと頷いた。
「信じられねえ……どこかにあるという伝説だけは聞いてたが、まさか本当に存在したとは」
「マップが役に立たなくなっちまって、下層まで行くのは到底不可能だと諦めてたが、『導きの白樹笛』さえあればもう安心だぜ!」
「それにしたって、そんなもんどこで手に入れたんだ? もしかして、それもリュークが自分で作ったっていうのか?」
「いや、オレが作ったんじゃない。あ~その、実はこの『導きの白樹笛』は……」
魔導装備が作れることもみんなには教えたし、グリムラーゼ王女とのことも話していいだろう。
オレは王女を捜索したときのこと、そして王都で起こった出来事を手早く掻い摘まんで説明する。
すると、最初こそみんなは驚きの声を上げていたものの、途中から納得いったように頷きながら話に聞き入っていた。
オレが話を終えると、誰とはなしにため息が漏れ、そして堰を切ったように口々に言葉を発した。
「そういうことだったのか……まあリュークの強さを知った今では、当然とも思えるけどな」
「おかげで、色々とおかしなことが全部繋がったぜ。話してくれてありがとなリューク」
「森で王女様を救出した経緯も、偶然にしちゃできすぎた話だったしな。ラスティオンより強いんなら納得だ」
「とはいえ、あのラスティオンを倒したなんて、普通なら絶対信じられねえところだ。もしかしてお前、ゾンダール将軍より強かったりするのか?」
「いやあ、そこまではどうだろうなあ?」
オレは言葉を濁してごまかす。
みんなにはラスティオンを倒して王女を救ったこと、王都で王様の病気を治す手助けをしたこと、その褒美として『導きの白樹笛』をもらったことを話したけど、詳細までは説明しなかった。
全部話すと、話が長くなるしな。『虚身』との戦闘も秘密にした。
「一応、今の話はギルド長のフォーレントには内緒に頼む。どうもオレ、フォーレントに嫌われてるっぽいんだ。手柄を立てたことが知られると、フォーレントに変な難癖を付けられそうで……」
オレは両手を合わせてみんなにお願いする。
フォーレントに知られるとゲスニクやドラグレスの耳にも入るだろうし、そうなるとアイツらがどんなことをしてくるか気懸かりだ。
ゲスニクに対しては近いうちに何か手を打とうと思っているが、それまではイタズラに刺激したくない。
「別にギルド長に知られても平気だと思うけどな。むしろ、所属の冒険者が活躍したのを知って喜ぶんじゃないか? まあリュークが内緒にしろって言うなら黙ってるが」
「よろしく頼む。フォーレントに教えるときはオレが言うよ」
いつまで隠し通せるか分からないが、できるかぎり内密にしておきたいところだ。
「ば、馬鹿な、『導きの白樹笛』だとぉ!? 『覇王の卵』にも匹敵するようなお宝だぞ。売りゃあどれほど金が入ってくることか……こんなガキが持ってていいもんじゃねえ」
少し離れた場所でオレの話を聞いていたジャビロが、ぼそりと小声で呟く。
みんなには聞こえてないだろうが、オレの聴力なら聞き取ることができた。
フォーレントだけじゃなく、こっちでも何か問題が起きそうで少々不安になるオレだった。
305
お気に入りに追加
3,720
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。