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第4章 迷宮の宝
第16話 牙を剥く迷宮
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落ち着きを取り戻したオレたち調査隊は、とりあえず周囲を調べてみることにした。
今度はモンスターに不意を突かれないよう気を付けつつ、通路を一歩ずつ進んでいく。
しばらく行ってみると、オレたちは十字路となっている場所に出くわした。
前方と左右の通路にモンスターがいないか注意しながら、どの道を行くべきか考えていると、ルート確認の担当をしていた冒険者が突然大声を上げた。
「おい……こんな分岐路、マップには載ってねえぞ!?」
驚きの発言を聞いて、ほかの冒険者たちも慌てて自分の持つマップを取り出す。
オレも紙のマップを確認してみたところ、確かにこんな場所に十字路はない。
実はオレは『スマホ』でマップを見ていたんだが、『スマホ』ではちゃんとこの十字路が載っている。だからマップと実際の道が違うというこの異常には気付かなかったのだが、よく見ると、『スマホ』のマップと紙のマップでは全然通路の状態が違っていた。
階段の場所こそ載っていないが、『スマホ』のマップは正確だ。つまり、みんなに配られているこの51階までのマップが間違っているということだ。
これはいったいどういうことなんだ?
「本来なら地下51階以降にあるはずの『赤き壁』、そしてマップとは違う通路……こりゃあ『迷宮構造変異』だ!」
『迷宮構造変異』!?
ジャビロの言葉を聞いて、オレは急いで『スマホ』の検索機能で調べてみる。
すると、これは特殊な条件を満たしたことで迷宮内の構造が変化する、非常に珍しい現象らしい。
通常のダンジョンではまずありえないようで、『迷宮構造変異』が起こるというのは特別なダンジョンの証拠とのこと。
なるほど、そんなことが起こったりするのか……11階から『赤き壁』になってたのも、これが原因か。
「冒険者をそれなりに長くやって来たが、『迷宮構造変異』なんて初めてだ。まさか、モンスターの棲息区域まで変わっちまうなんてな」
「だが、こんな現象が起こってるってことは、ここに『覇王の卵』がある確率はかなり高いぞ。さすがにテンション上がるぜ」
「そりゃそうかもしれないが、マップが役に立たないんじゃ、宝がどうとかそういう次元じゃないぜ。この先まともに進むことすらままならねえ」
「それどころか、『脱出輝石』の輝きが消えてる! これじゃ緊急脱出もできねえぞ!」
『迷宮構造変異』を知って、冒険者たちは口々に思い思いの言葉を発する。
ちなみに『脱出輝石』というのは、ダンジョンから一瞬で脱出できるアイテムだ。いちいち来た道を戻るのは大変なので、ダンジョンを出るときはこれを使うことが多い。
ただし、『脱出輝石』の輝きが消えている場所では使用不可能だ。
もしも『赤き壁』の中では『脱出輝石』が使えないなら、この先ピンチになったときに緊急脱出できないことになる。
そうか、行方不明になってる冒険者たちは、探索中に『迷宮構造変異』が起こってしまい、マップが変わったことで自分の居場所が分からなくなってしまったんだ。
地下51階以降は当然として、それより上の階にいた人たちも、いきなり『赤き壁』に囲まれてしまって『脱出輝石』での脱出も不可能となってしまった。
それで現在も彷徨ってる最中なんだろう。
事態を把握した冒険者たちは、このあとどうするか思案している。
マップが役に立たないとなると、この先まともに進むことができない。手強いモンスターも徘徊してるし、『脱出輝石』も使えないならば、引き返すなら今しかない。
しばしの沈黙のあと、1人の冒険者が口を開いた。
「オレは行くぜ。どこまで進めるか分からないが、彷徨ってるヤツらを助けてやらないとな」
「……ああそうだな。このままじゃ行方不明の者たちは全滅だろう。『覇王の卵』はもちろん気になるが、窮地のヤツらも放っておけねえ」
「せっかくここまで来たんだ、1人でも多く助けてやりたいぜ」
冒険者はみんな強欲で、危険なことについても自己責任だが、それなりに仲間意識はある。
ジャビロたち『黒鷲の爪』はこの地に来たばかりだが、ほかのみんなは一応お互い面識のあるヤツが多いしな。
困ったときはお互い様ってヤツだ。
「けっ、オリャあ無能なヤツらの救出には興味ねえが、先行してるヤツらが『迷宮構造変異』のせいで足止め食ってるなら、今からでも充分追いつける。お宝をみすみす獲られちまうわけにはいかねえから行くぜ」
ジャビロの言葉が本心かどうかは分からないが、どうやらここにいる全員がダンジョンを進むことに決めたようだ。
もちろん、オレも行く。
考えてみたが、彷徨っている人間を全員助けようと思ったら、恐らくダンジョンをクリアするのが一番確実だろう。
この広いダンジョン内にいる冒険者たちをいちいち探し出すなんてほぼ無理だ。それよりも、最下層まで完全クリアすればこの異常事態も終息するように思う。
よって、ここまでは手掛かりを探すことなども考えて慎重に進んできたが、ここから先は最短クリアを最優先にする。
いよいよ『導きの白樹笛』の出番だな。
……と、その前にやることが。
今度はモンスターに不意を突かれないよう気を付けつつ、通路を一歩ずつ進んでいく。
しばらく行ってみると、オレたちは十字路となっている場所に出くわした。
前方と左右の通路にモンスターがいないか注意しながら、どの道を行くべきか考えていると、ルート確認の担当をしていた冒険者が突然大声を上げた。
「おい……こんな分岐路、マップには載ってねえぞ!?」
驚きの発言を聞いて、ほかの冒険者たちも慌てて自分の持つマップを取り出す。
オレも紙のマップを確認してみたところ、確かにこんな場所に十字路はない。
実はオレは『スマホ』でマップを見ていたんだが、『スマホ』ではちゃんとこの十字路が載っている。だからマップと実際の道が違うというこの異常には気付かなかったのだが、よく見ると、『スマホ』のマップと紙のマップでは全然通路の状態が違っていた。
階段の場所こそ載っていないが、『スマホ』のマップは正確だ。つまり、みんなに配られているこの51階までのマップが間違っているということだ。
これはいったいどういうことなんだ?
「本来なら地下51階以降にあるはずの『赤き壁』、そしてマップとは違う通路……こりゃあ『迷宮構造変異』だ!」
『迷宮構造変異』!?
ジャビロの言葉を聞いて、オレは急いで『スマホ』の検索機能で調べてみる。
すると、これは特殊な条件を満たしたことで迷宮内の構造が変化する、非常に珍しい現象らしい。
通常のダンジョンではまずありえないようで、『迷宮構造変異』が起こるというのは特別なダンジョンの証拠とのこと。
なるほど、そんなことが起こったりするのか……11階から『赤き壁』になってたのも、これが原因か。
「冒険者をそれなりに長くやって来たが、『迷宮構造変異』なんて初めてだ。まさか、モンスターの棲息区域まで変わっちまうなんてな」
「だが、こんな現象が起こってるってことは、ここに『覇王の卵』がある確率はかなり高いぞ。さすがにテンション上がるぜ」
「そりゃそうかもしれないが、マップが役に立たないんじゃ、宝がどうとかそういう次元じゃないぜ。この先まともに進むことすらままならねえ」
「それどころか、『脱出輝石』の輝きが消えてる! これじゃ緊急脱出もできねえぞ!」
『迷宮構造変異』を知って、冒険者たちは口々に思い思いの言葉を発する。
ちなみに『脱出輝石』というのは、ダンジョンから一瞬で脱出できるアイテムだ。いちいち来た道を戻るのは大変なので、ダンジョンを出るときはこれを使うことが多い。
ただし、『脱出輝石』の輝きが消えている場所では使用不可能だ。
もしも『赤き壁』の中では『脱出輝石』が使えないなら、この先ピンチになったときに緊急脱出できないことになる。
そうか、行方不明になってる冒険者たちは、探索中に『迷宮構造変異』が起こってしまい、マップが変わったことで自分の居場所が分からなくなってしまったんだ。
地下51階以降は当然として、それより上の階にいた人たちも、いきなり『赤き壁』に囲まれてしまって『脱出輝石』での脱出も不可能となってしまった。
それで現在も彷徨ってる最中なんだろう。
事態を把握した冒険者たちは、このあとどうするか思案している。
マップが役に立たないとなると、この先まともに進むことができない。手強いモンスターも徘徊してるし、『脱出輝石』も使えないならば、引き返すなら今しかない。
しばしの沈黙のあと、1人の冒険者が口を開いた。
「オレは行くぜ。どこまで進めるか分からないが、彷徨ってるヤツらを助けてやらないとな」
「……ああそうだな。このままじゃ行方不明の者たちは全滅だろう。『覇王の卵』はもちろん気になるが、窮地のヤツらも放っておけねえ」
「せっかくここまで来たんだ、1人でも多く助けてやりたいぜ」
冒険者はみんな強欲で、危険なことについても自己責任だが、それなりに仲間意識はある。
ジャビロたち『黒鷲の爪』はこの地に来たばかりだが、ほかのみんなは一応お互い面識のあるヤツが多いしな。
困ったときはお互い様ってヤツだ。
「けっ、オリャあ無能なヤツらの救出には興味ねえが、先行してるヤツらが『迷宮構造変異』のせいで足止め食ってるなら、今からでも充分追いつける。お宝をみすみす獲られちまうわけにはいかねえから行くぜ」
ジャビロの言葉が本心かどうかは分からないが、どうやらここにいる全員がダンジョンを進むことに決めたようだ。
もちろん、オレも行く。
考えてみたが、彷徨っている人間を全員助けようと思ったら、恐らくダンジョンをクリアするのが一番確実だろう。
この広いダンジョン内にいる冒険者たちをいちいち探し出すなんてほぼ無理だ。それよりも、最下層まで完全クリアすればこの異常事態も終息するように思う。
よって、ここまでは手掛かりを探すことなども考えて慎重に進んできたが、ここから先は最短クリアを最優先にする。
いよいよ『導きの白樹笛』の出番だな。
……と、その前にやることが。
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