上 下
46 / 71
第4章 迷宮の宝

第14話 攻略開始

しおりを挟む
「おい、雑魚が出たぞ。誰がやる?」

「ジャビロ、オレたちに任せろ。行くぞ!」

 ダンジョンを進んでいくと、まずオレたちを出迎えたのは、アンデッドモンスターのスケルトン3体だった。
 これはダンジョンでは定番の敵で、どこのダンジョンにもほぼ必ず出現する。
 種類も豊富で、浅い階層では最弱モンスターの部類だが、深い階層になると、凄まじい剣技や強烈な魔法を使ってくるヤツもいる。
 死の騎士デスナイトや死霊王リッチなどがスケルトンの上位クラスだ。
 そのほかのアンデッドとして、腐った死体ゾンビ系や悪霊レイス系などがやはりダンジョンでの定番モンスターだ。

 このスケルトンに対し、任せろと言って出ていったのはAランクチームの4人。
 もちろん、この程度のモンスターは瞬殺だった。
 よほどの凶悪なダンジョンでもない限り、地下3階くらいまでのごく浅い階層は低ランク冒険者でも問題なく、その後も中級程度の実力があれば10階くらいまでは進んでいける。

 それ以降となると、各ダンジョンごとの特徴が表れ始め、例えばトラップがやたら多いダンジョンもあれば、急激に敵が強くなってロクに進めなくなるのもある。
 攻略スピードの目安としては、各階のフロアがあまり広くないものなら1日に数階分下りることが可能だが、フロアが広大だと、数日経っても1階分すら下りられないこともある。

 このダンジョンがどれほど深いのかはまだ分からないが、実は50階までのマップは存在し、みんなに配られていた。
 マップには通路の構造のほか、階段の位置やトラップのある場所なども記されていて、現在オレたちはそのマップを頼りに進んでいる。

 何故そんなマップがあるかというと、ダンジョン攻略を単独のチームで行うには難易度が高いため、ある程度みんなで協力し合うのだ。
 ダンジョンのマッピングは、盗賊シーフ系が持っているスキルを使えば、通った道を正確に記録することができる。マップ作り専門の冒険者チームもいる。
 そして各チームで作成したマップを持ち寄り、それを元に高い精度で完成させたものが販売されている。

 ただし、マップは中層階までしか作られておらず、下層のマップはそれぞれのチームが自力で作っていくのが一般的な慣わしだ。
 下層のマップ情報は非常に価値が高いため、ほかのチームに教えることはまずない。
 このダンジョンのマップが50階までしかないのも、何を隠そう51階からが『赤き壁』となっているらしいからだ。
 つまり、そこから先が本当の攻略開始とも言える。

 ということで、オレはダンジョンの正解ルートが分かる『導きの白樹笛ディヴァインフルート』を持っているが、現状ではその出番はない。
 このまま地下50階まではマップを頼りに攻略し、その後は全員でルートを探しながら進む予定だが、そのとき『導きの白樹笛ディヴァインフルート』の出番が来るだろう。

 ちなみに、この調査隊を離れてオレとレムだけで攻略したくもあるのだが、しかしこの事態で勝手な行動を取るのは少々気が引けるし、何よりオレはダンジョン初心者だ。
 ここで何が起こっているのかも分からない以上、迂闊な行動は避けたい。
 少なくとも、ダンジョンに慣れるまでは、ほかの冒険者たちの行動をよく観察すべきと思ってる。

 それに、最短で進むのが最適とは限らない。
 途中にどんな手掛かりがあるかも分からないし、場合によっては、気付かないうちにアニスがいるフロアを通り過ぎてしまう可能性もある。
 状況が判明するまでは、全員で動いたほうがいいだろう。

 オレたちは現れる敵を倒しながらそのまま先に進み、1つ、また1つと階下へ下りていく。
 地下4階でスケルトンナイト、スケルトンメイジ、スケルトンアーチャーの集団を倒したあと、すぐ脇の小部屋に宝箱があることに気付いた。

「おっ、宝箱みっけ! 誰か鑑定してくれ」

「オレに任せろ。『擬態分析ミミックアナライズ』は……正常ブルーだ。トラップもなさそうだし、安全だぜ」

「よっしゃ、この宝はオレたちがもらう番だったな」

 ダンジョンにある宝箱は、たまにモンスターが化けていたり、トラップの発動装置になってることがある。
 盗賊シーフスキルでその安全を確認し、宝箱を開けてみると、中には第9階級の魔法が封じられている魔水晶が入っていた。
 せっかく見つけた宝箱だが、まだ浅い階層だけに、それほど価値の高いものではなかった。
 一応、見つけた宝は順番に各チームがもらうことになっている。

 宝箱は開けてしばらくすると消滅し、また別の場所にリポップするので、マップには記されていない。
 だから見つけたときは、たとえ浅い階層でもテンションが上がる。

 しばらく進むと、今度は天井や壁にへばりついている、体長4~5メートルほどの赤黒い軟体モンスター5体と遭遇した。
 巨大なナメクジといった感じだが、オレはこのモンスターを知らない。

「おっと、スピアースラグか。迂闊に近寄るなよ?」

 パッと見は手強そうに思えないが、冒険者の1人がみんなに注意をうながしたことを考えると、意外に強敵なのかもしれない。
 それを聞いた者たちも、盾を構えて慎重に様子を見ている。

 前衛が盾となっている間に、後衛の魔導士たちが攻撃魔法の詠唱を始めた。
 剣で斬りつけないのを見ると、どうやら物理攻撃よりも魔法のほうが効くようだ。

 ……と思っていたところ、巨大ナメクジの体が一瞬膨らんだあと、鋭い槍となって攻撃してきた。
 その射程距離はなんと7メートルほど。
 それは前衛の盾に弾かれたが、知らずに近寄っていたら串刺しにされていただろう。
 こんな攻撃をしてくるモンスターもいるのか……やはりダンジョンは侮れないな。

 危険な攻撃とはいえ、がバレてしまえば恐るるに足らず、魔導士たちの魔法によってスピアースラグは全滅した。
 とりあえず、出会ったモンスターは全て『スマホ』で撮っているので、オレのモンスタースキルはさらに増えている。

 その後もグールやガストなどのアンデッドや、キラーハウンド、マッドスパイダー、アイアンキャタピラーなどのモンスターと遭遇したが、片っ端からなぎ倒してオレたちは進んでいった。
 この調査隊には一流の冒険者しかいないため簡単に倒しているが、低ランク冒険者だとこう簡単にはいかない敵たちだ。
 さすがといったところか。
 オレも初めてのダンジョンで緊張していたが、だいぶほぐれてきた。

 そしてオレたちはあっという間に地下7階まで到達し、今日の行動を終了した。
 昼から攻略開始したことを考えるとなかなかのペースと言えるが、しかしまだまだ先が長いだけに、救出が手遅れにならないか心配になってきた。
 いや、冒険者たちがピンチになっているのかすら確認できてないが、このペースに少し不安を感じてしまう。

 やはりオレとレムだけで行くべきか……?
 ダンジョンにもだいぶ慣れてきただけに、離脱しても大丈夫とは思うが……。
 ただ、人数が多いほうが手掛かりも発見しやすいし、単純に下層に行けばいいってものでもない。
 うーむ、判断が難しいところだな……。

 とりあえず、今は成り行きに任せるしかないと結論を出してオレは眠りについた。


 ☆


 翌日。
 オレたちは昨日同様、順調に攻略を進め、階下へと下りていく。
 特に目立った発見がないまま、地下11階に下りたところで、その異変に気付いた。

 なんと、ダンジョンの壁が赤くなっていたのだ!

『赤き壁』は51階以降のはずなのに、何故!?
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。