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第4章 迷宮の宝
第13話 ダンジョンとは
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「マスターおはようございます」
「ん……? ああ、おはようレム」
朝、レムの声でオレは目覚める。
その直後、右手に握ったままのフォルティラピスに気付き、昨夜はアニスに想いを馳せながら寝たことを思い出した。
時計を確認してみると、現在は朝の6時。
起きる時間としてはちょうどいいのだが、どうも寝足りなかったようで、まだちょっと眠い。
そういや、ようやく迷宮に行けるということでオレも気持ちが昂ぶってしまい、寝付きが悪かったっけ。
まあとにかく、シャキッと起きて朝の仕度をしないとな。
……って、ちょっと待て! なんでレムがオレのテントにいる!?
「レ、レムっ、お、お、お前何してんだーっ!」
横を振り向くと、オレの寝袋の隣にレムが素っ裸で添い寝していたのだ。
当たり前だが、テントは別々にして寝た。なのに、いつの間にか入ってきていた。
このオレに気付かれずにこんなことができるとは……!
オレの探知能力は高いうえ常時発動しているので、本来ならここまで接近する前に気付くが、レムは魔導人形なので探知が難しい。
探知系のスキルや魔法は、人間の魔力やモンスターの魔石などを感知して反応するからだ。
一応『スマホ』を起動していれば探知できるが、寝ている最中はもちろん停止している。
「マスターが昨夜お相手してくれませんでしたので、朝イチでお伺いしました。さあ朝食前にワタシをどうぞ」
「そんなもんいるかっ! ホントにお前というヤツは……すぐに服を着ろレム!」
そう言いながらオレは寝袋を脱ぎ、転がるようにして慌ててテントから飛び出す。
外はまだ薄暗く、そしてほかの冒険者たちもまだ寝ているようだった。
どうやらレムのことは気付かれてないな。まったく焦ったぜ……。
まあおかげですっかり眠気が取れてバッチリ目が覚めたけど。
レムが服を着て出てきたところで、ぼちぼちとほかのテントからも冒険者たちが起き出てきた。
そしてオレたちは朝食をとったあと、身支度を整えて出発する。
ここから先は険しい森に入るので、乗ってきた馬たちはここに置いていく。
同行していたBランク冒険者たちは、オレたちが迷宮にいる間の馬の世話をするのでここでお別れだ。
オレたちは森に棲息しているモンスターを倒しつつ、目的地に向かって進んでいった。
この調査隊には実力者たちが集まっているだけに、移動は順調に進み、予定通り昼前には件の迷宮に到着した。
「ここがアニスやほかの冒険者たちが行方不明になってる迷宮か……」
丘のように盛り上がった地面には、直径3メートルほどの穴が開いていて、ゆっくりと下り坂となって奥に続いていた。
パッと見た感じでは迷宮と洞窟はよく似てるが、中の構造や法則が全然違う。
まず、洞窟のように衝撃などで崩れることはない。ダンジョンの壁には人智を超えた不可思議な防御シールドがかかっているので、たとえ第1階級の魔法でも崩すことは不可能だ。
ほかの違いとしては、ダンジョン内には植物などが存在しないこと。
さらに通常の生物も棲息していないうえに、出現するモンスターも地上とは性質が違う。
野外にいるモンスターは、食物連鎖など生態系の1つとして組み込まれているが、ダンジョンのモンスターは完全に外の世界とは断絶している。
そもそも、分類としては生物ではないかもしれない。ダンジョン内のモンスターは魔瘴気から生まれるので、擬似生物と言っていいだろう。
よって、ダンジョンの外では存在が維持できないし、倒しても一定時間が経過すると再出現する。
外の常識が通用しないのがダンジョンなのだ。
中に入ってみると、思っていたより通路は広かった。幅は7メートルくらいある。
ただし、通路の大きさは一定ではなく、場所によっては細く狭かったり、また広場みたいな場所も至る所にあると聞く。
周囲の壁はほんのり光っているため、特に照らす必要もない。
そして、この通路は先々で複雑に分岐していくので、ただ進むだけでも一筋縄ではいかない。迷宮と言われる所以だ。
手強いモンスターや罠も、探索者たちの行く手の邪魔をする。
なるほど、オレもそれなりに経験を積んだが、ダンジョンには独特の緊張感が漂ってるな。
一度心を落ちつかせるため、オレはごくりとツバを飲む。
問題は、このダンジョンがどれくらい深いかだ。
ダンジョンは初心者が挑むような小さなものから、広さも深さも規格外な巨大迷宮まである。
小さなものなら数日でクリアできたりするが、巨大なものは数ヶ月かかる。場合によっては数年がかりで攻略することも。
それどころか、およそ底が知れず、発見から何百年経っても未だに最下層に到達できないダンジョンもたくさん存在する。
そういう場合、攻略に挑む冒険者や商売人が大勢集まって、迷宮都市を形成したりするようだ。
ダンジョンのクリアは、最下層のボスを倒したり、迷宮に隠された秘宝を取ることで達成されるが、その後ダンジョンがどうなるかは2つのパターンに分かれる。
1つは、時間が経つとまたダンジョンボスや宝がリポップし、いつまでもダンジョンとして存在し続ける。
もう1つは、ダンジョンの鼓動が止まるというか、まるで死んだように消滅する。
その場合、中にいた冒険者は自動で地上に戻されるようだ。
『赤き迷宮』については、『覇王の卵』を取った記録が残ってないらしいので、クリア後にどうなるのか分からない。
ただ、どうも一定期間が過ぎると自然に消失しているようだ。
もしかしたら、人知れず誰かがクリアしたから消失したのかも知れないが、現状では確かめる術はない。
まあ、このダンジョンが『赤き迷宮』と決まったわけではないが……。
「行くぞお前ら!」
調査隊の隊列が整ったところで、ジャビロがみんなに号令をかける。
経験豊富なSランクチーム『黒鷲の爪』の5人が先頭となって、オレたちは迷宮攻略を開始した。
「ん……? ああ、おはようレム」
朝、レムの声でオレは目覚める。
その直後、右手に握ったままのフォルティラピスに気付き、昨夜はアニスに想いを馳せながら寝たことを思い出した。
時計を確認してみると、現在は朝の6時。
起きる時間としてはちょうどいいのだが、どうも寝足りなかったようで、まだちょっと眠い。
そういや、ようやく迷宮に行けるということでオレも気持ちが昂ぶってしまい、寝付きが悪かったっけ。
まあとにかく、シャキッと起きて朝の仕度をしないとな。
……って、ちょっと待て! なんでレムがオレのテントにいる!?
「レ、レムっ、お、お、お前何してんだーっ!」
横を振り向くと、オレの寝袋の隣にレムが素っ裸で添い寝していたのだ。
当たり前だが、テントは別々にして寝た。なのに、いつの間にか入ってきていた。
このオレに気付かれずにこんなことができるとは……!
オレの探知能力は高いうえ常時発動しているので、本来ならここまで接近する前に気付くが、レムは魔導人形なので探知が難しい。
探知系のスキルや魔法は、人間の魔力やモンスターの魔石などを感知して反応するからだ。
一応『スマホ』を起動していれば探知できるが、寝ている最中はもちろん停止している。
「マスターが昨夜お相手してくれませんでしたので、朝イチでお伺いしました。さあ朝食前にワタシをどうぞ」
「そんなもんいるかっ! ホントにお前というヤツは……すぐに服を着ろレム!」
そう言いながらオレは寝袋を脱ぎ、転がるようにして慌ててテントから飛び出す。
外はまだ薄暗く、そしてほかの冒険者たちもまだ寝ているようだった。
どうやらレムのことは気付かれてないな。まったく焦ったぜ……。
まあおかげですっかり眠気が取れてバッチリ目が覚めたけど。
レムが服を着て出てきたところで、ぼちぼちとほかのテントからも冒険者たちが起き出てきた。
そしてオレたちは朝食をとったあと、身支度を整えて出発する。
ここから先は険しい森に入るので、乗ってきた馬たちはここに置いていく。
同行していたBランク冒険者たちは、オレたちが迷宮にいる間の馬の世話をするのでここでお別れだ。
オレたちは森に棲息しているモンスターを倒しつつ、目的地に向かって進んでいった。
この調査隊には実力者たちが集まっているだけに、移動は順調に進み、予定通り昼前には件の迷宮に到着した。
「ここがアニスやほかの冒険者たちが行方不明になってる迷宮か……」
丘のように盛り上がった地面には、直径3メートルほどの穴が開いていて、ゆっくりと下り坂となって奥に続いていた。
パッと見た感じでは迷宮と洞窟はよく似てるが、中の構造や法則が全然違う。
まず、洞窟のように衝撃などで崩れることはない。ダンジョンの壁には人智を超えた不可思議な防御シールドがかかっているので、たとえ第1階級の魔法でも崩すことは不可能だ。
ほかの違いとしては、ダンジョン内には植物などが存在しないこと。
さらに通常の生物も棲息していないうえに、出現するモンスターも地上とは性質が違う。
野外にいるモンスターは、食物連鎖など生態系の1つとして組み込まれているが、ダンジョンのモンスターは完全に外の世界とは断絶している。
そもそも、分類としては生物ではないかもしれない。ダンジョン内のモンスターは魔瘴気から生まれるので、擬似生物と言っていいだろう。
よって、ダンジョンの外では存在が維持できないし、倒しても一定時間が経過すると再出現する。
外の常識が通用しないのがダンジョンなのだ。
中に入ってみると、思っていたより通路は広かった。幅は7メートルくらいある。
ただし、通路の大きさは一定ではなく、場所によっては細く狭かったり、また広場みたいな場所も至る所にあると聞く。
周囲の壁はほんのり光っているため、特に照らす必要もない。
そして、この通路は先々で複雑に分岐していくので、ただ進むだけでも一筋縄ではいかない。迷宮と言われる所以だ。
手強いモンスターや罠も、探索者たちの行く手の邪魔をする。
なるほど、オレもそれなりに経験を積んだが、ダンジョンには独特の緊張感が漂ってるな。
一度心を落ちつかせるため、オレはごくりとツバを飲む。
問題は、このダンジョンがどれくらい深いかだ。
ダンジョンは初心者が挑むような小さなものから、広さも深さも規格外な巨大迷宮まである。
小さなものなら数日でクリアできたりするが、巨大なものは数ヶ月かかる。場合によっては数年がかりで攻略することも。
それどころか、およそ底が知れず、発見から何百年経っても未だに最下層に到達できないダンジョンもたくさん存在する。
そういう場合、攻略に挑む冒険者や商売人が大勢集まって、迷宮都市を形成したりするようだ。
ダンジョンのクリアは、最下層のボスを倒したり、迷宮に隠された秘宝を取ることで達成されるが、その後ダンジョンがどうなるかは2つのパターンに分かれる。
1つは、時間が経つとまたダンジョンボスや宝がリポップし、いつまでもダンジョンとして存在し続ける。
もう1つは、ダンジョンの鼓動が止まるというか、まるで死んだように消滅する。
その場合、中にいた冒険者は自動で地上に戻されるようだ。
『赤き迷宮』については、『覇王の卵』を取った記録が残ってないらしいので、クリア後にどうなるのか分からない。
ただ、どうも一定期間が過ぎると自然に消失しているようだ。
もしかしたら、人知れず誰かがクリアしたから消失したのかも知れないが、現状では確かめる術はない。
まあ、このダンジョンが『赤き迷宮』と決まったわけではないが……。
「行くぞお前ら!」
調査隊の隊列が整ったところで、ジャビロがみんなに号令をかける。
経験豊富なSランクチーム『黒鷲の爪』の5人が先頭となって、オレたちは迷宮攻略を開始した。
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