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第4章 迷宮の宝
第11話 NTR?
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午後の14時過ぎにゲスニクの街を出発して、すでに4時間。
オレたち調査隊一行はゲスニク領の南方にある、行方不明者が続出している迷宮に向かって馬で移動している。
馬車ではなく、各自でそれぞれ騎乗しているので、移動速度は馬車の3倍ほど。
出発が少し遅れてしまったため、辺りはだいぶ薄暗くなってしまったが、冒険者たちが言うにはあと1時間ほどで野営する場所に到着するらしい。
その頃にはすっかり暗くなってしまうだろうが、まあこのメンバーなら問題ないだろう。
その野営地で一夜を過ごしたあと、馬を置いてそこからは徒歩で迷宮に向かう。
一応、明日の昼頃には迷宮に着く予定だ。
調査隊メンバーの内訳は、4人組のAランクチームが4つと、5人組のAランクチームが2つ、ジャビロたち5人組のSランクチームが1つ、そしてオレとレムを含めた計33名。
レム以外は全員男だ。冒険者は元々男性のほうが比率が高いが、高ランク冒険者ともなると、さらに女性は少ないからな。
まあレムも女性というわけではないが。
そのほか、オレたち調査隊以外にも、5人組のBランクが2チーム同行している。
ただし彼らは迷宮には入らず、オレたちが迷宮にいる最中、待機している馬の世話を担当する。
「ブヒッ、ブヒヒヒンッ(おいリューク、何故この女はこんなに重いのだ!? ちょっとだけ疲れてきたぞ)」
王都一の駿馬であるタフなアレイオンが、少し息を荒くしながらオレに話しかけてきた。
実はアレイオンには、オレじゃなくてレムが乗っている。
理由は、レムが重すぎて、普通の馬ではこの部隊の移動について来られないからだ。
レムは細身とはいえ、骨格が重いアダマンタイトでできているため、体重が250㎏くらいある。
これでは、さすがのアレイオンでもちょっとキツいだろう。
むしろ、よくここまで追走できたと言えるくらいだ。
伝説の名馬アレイオンを名乗るだけあって、プライドも高くやせ我慢しているみたいだが、そろそろ限界かもしれない。
「ブヒンブヒン(あともうちょっとで着くから頑張ってくれ)」
「ブヒヒン(ま、まあこれしきのこと、問題ないがな)」
「マスター、もしやこの馬、ワタシを重いと言っているのですか? まったく情けない駄馬ですね」
オレとアレイオンの会話を聞いていたレムは、そう言いながら呆れたような表情でアレイオンを見る。
どうやら会話の雰囲気で内容を察したらしいが、それにしてもレム、ホントに口が悪いな……アレイオンは必死に頑張ってるというのに。
まあ今の言葉がアレイオンには分からなかったことが幸いだ。
「おいリュークよ。そのレムちゃんって子、バーダンたちと組んでる『剣姫』アニス・メイナードにかなり似ている気がするんだが、彼女と何か関係あるのか?」
オレたちの会話をそばで聞いていた冒険者が、レムについて尋ねてきた。
やっぱり似てるって気付くよな。
せめてギルドに連れていく前に髪を短く切っておけば、少しは雰囲気を変えられたかもしれないが、あのときは急いでいたからそこまで気が回らなかった。
さて、なんて説明しようか……。
「……レムはアニスに憧れてるらしい。だから外見を真似てるんだってさ」
オレは苦し紛れの説明をする。
我ながらかなり不自然と思うが、ほかに説得力のある理由が思いつかなかった。
「へえ~、じゃあレムちゃんとアニスは姉妹とか親戚ってわけじゃないのか。考えてみりゃ、アニスと関係あるなら、レムちゃんはバーダンたちと一緒にチーム組んでるよな」
「あ、ああ、そういうことだ」
ちょっと強引だが、まあ真実がバレることはないだろう。
「なるほど、マスターはそのアニスという女性にフラれたから、代わりにワタシを作ったというわけですね。ひょっとしてバーダンという男に『NTR』されましたか? もしくは『BSS』……」
「ち・が・うっ!」
と言いつつも、『フラれた』という言葉がグサリと胸に刺さったオレ。
っていうか、またしても条件反射で『NTR』と『BSS』を否定しちまったが、いったいどういう意味だ?
ちなみに、『スマホ』で『ナデポ』を検索してみたら、男性が女性の頭を撫でると女性がポッとほほを染めて男性に惚れることだと載っていた。
そんなの、この世界じゃ聞いたことないぞ。なんでレムはこんな変な知識があるのか不思議だ。
そのままオレたちは走り続け、無事野営の場所に辿り着いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
明日5/17から『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』第2巻の電子書籍版が販売開始になります!
皆様是非よろしくお願いいたします。
ちなみに『NTR』とは寝取られるという意味で、『BSS』は付き合う前に女性を奪われてしまう『僕が先に好きだったのに』という意味です。
オレたち調査隊一行はゲスニク領の南方にある、行方不明者が続出している迷宮に向かって馬で移動している。
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その頃にはすっかり暗くなってしまうだろうが、まあこのメンバーなら問題ないだろう。
その野営地で一夜を過ごしたあと、馬を置いてそこからは徒歩で迷宮に向かう。
一応、明日の昼頃には迷宮に着く予定だ。
調査隊メンバーの内訳は、4人組のAランクチームが4つと、5人組のAランクチームが2つ、ジャビロたち5人組のSランクチームが1つ、そしてオレとレムを含めた計33名。
レム以外は全員男だ。冒険者は元々男性のほうが比率が高いが、高ランク冒険者ともなると、さらに女性は少ないからな。
まあレムも女性というわけではないが。
そのほか、オレたち調査隊以外にも、5人組のBランクが2チーム同行している。
ただし彼らは迷宮には入らず、オレたちが迷宮にいる最中、待機している馬の世話を担当する。
「ブヒッ、ブヒヒヒンッ(おいリューク、何故この女はこんなに重いのだ!? ちょっとだけ疲れてきたぞ)」
王都一の駿馬であるタフなアレイオンが、少し息を荒くしながらオレに話しかけてきた。
実はアレイオンには、オレじゃなくてレムが乗っている。
理由は、レムが重すぎて、普通の馬ではこの部隊の移動について来られないからだ。
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これでは、さすがのアレイオンでもちょっとキツいだろう。
むしろ、よくここまで追走できたと言えるくらいだ。
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やっぱり似てるって気付くよな。
せめてギルドに連れていく前に髪を短く切っておけば、少しは雰囲気を変えられたかもしれないが、あのときは急いでいたからそこまで気が回らなかった。
さて、なんて説明しようか……。
「……レムはアニスに憧れてるらしい。だから外見を真似てるんだってさ」
オレは苦し紛れの説明をする。
我ながらかなり不自然と思うが、ほかに説得力のある理由が思いつかなかった。
「へえ~、じゃあレムちゃんとアニスは姉妹とか親戚ってわけじゃないのか。考えてみりゃ、アニスと関係あるなら、レムちゃんはバーダンたちと一緒にチーム組んでるよな」
「あ、ああ、そういうことだ」
ちょっと強引だが、まあ真実がバレることはないだろう。
「なるほど、マスターはそのアニスという女性にフラれたから、代わりにワタシを作ったというわけですね。ひょっとしてバーダンという男に『NTR』されましたか? もしくは『BSS』……」
「ち・が・うっ!」
と言いつつも、『フラれた』という言葉がグサリと胸に刺さったオレ。
っていうか、またしても条件反射で『NTR』と『BSS』を否定しちまったが、いったいどういう意味だ?
ちなみに、『スマホ』で『ナデポ』を検索してみたら、男性が女性の頭を撫でると女性がポッとほほを染めて男性に惚れることだと載っていた。
そんなの、この世界じゃ聞いたことないぞ。なんでレムはこんな変な知識があるのか不思議だ。
そのままオレたちは走り続け、無事野営の場所に辿り着いた。
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ちなみに『NTR』とは寝取られるという意味で、『BSS』は付き合う前に女性を奪われてしまう『僕が先に好きだったのに』という意味です。
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