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第4章 迷宮の宝
第10話 ナデポ?
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「フォーレント、これで今度こそ文句ないな?」
無事戦闘が終わったところで、フィールドのすぐ外で戦いを見ていたギルド長フォーレントに声をかけた。
特に煽るようなつもりもなく、ただ普通の口調で言っただけなんだが、よく見てみるとフォーレントの様子がいつも以上におかしいことに気付く。
血の気が引いた顔で呆然としていて、オレの言葉も届いてないような状態だ。
「な……なんだこの異常な強さは!? こ……こんな怪物、いったいどうやって殺せば…………」
「マスターさすがですわ! さあ勝利の口づけをどうぞ! ほら、ほら、遠慮しないでくださいませ!」
「よせっレム! ひっつくなって!」
レムが歓喜しながら猛ダッシュでオレのもとに飛び込んできた。
ああもうっ、今フォーレントが何か呟いてたけど、レムのせいで聞き取れなかったじゃないか!
レムは無理やりキスしようと、スゲー怪力でオレにしがみついて顔を近付けてくる。
なんつー力だ、普通の人間だと死ぬレベルだぞ!
「いいかげんにしろ!」
まったく言うことを聞かないレムに対し、ゴチンッと頭をゲンコツで叩く。
女性に暴力を振るいたくないが、レムはゴーレムだからな。
と思ったところで……
「イッテエエエエエッ!!」
殴ったオレの手が逆に痛くて、思わず叫んでしまった。
レムの頭部は皮膚も薄いうえ、オレは『身体硬化』も『物理無効』も発動してなかったので、生身の状態でアダマンタイトを殴ったのと同じだ。
運悪く拳の骨にジャストヒットしたらしく、あまりの硬さにビリビリと痺れたほど。
頑丈なゴーレムだけに、つい強めに叩いたのが裏目に出ちまった。
一応、骨に異常はなさそうだが、オレは痛みが治まるように右拳をさする。こんなアホなことで回復薬を使いたくないぞ。
まあゴーレムとはいえ、アニスに似ているレムを叩こうとした罰かもしれない。
少々短慮だったことをオレは反省した。
「マスター、もしや今のは『ナデポ』というヤツですか? そんなことなさらなくても、ワタシはマスターにラブですのに」
「全然違うわっ!」
っていうか、思わず本能で否定してしまったが、『ナデポ』ってなんだ?
オレのギフト『スマホ』が影響しているのか、レムはどうも変な知識を持ってるらしい。
あとで『ナデポ』のことを検索しておこう。
とまあそれはさておき、オレは未だ気絶しているトトとブルゲンのところに駆け寄った。
そしてエリクサーをこっそり出し、2人の喉にさっと流し込む。
同じように、離れた場所に倒れているジャビロとギーグに駆け寄り、エリクサーを飲ませた。
エリアスはただ気絶しているだけなので、治療はしなくても問題ない。
結構重傷だが、これで完治するだろう。
万が一、状態が酷すぎて治せなかった部分があっても、『スマホ』の『被写体復元』機能を使えば、元通りの状態まで戻せる。
ほどなくして、ジャビロたちの意識が戻って起き上がった。
「ぐふっ、俺はいったい何を……くそっ、頭がクラクラしやがる。ああっ、お前はっ!?」
「……そうだ、オリャあFランクのガキにぶっ飛ばされたんだった!」
オレを見たジャビロとギーグは記憶も思い出したらしく、再び戦闘態勢を取る。
だが、自分たちが負けたことは理解しているようで、怒りにまかせてオレを襲うようなことはなかった。
離れた場所にいたトトたちも、意識を取り戻してこの場に集まってきた。
「ぐ……ぎ……この小僧……」
「勝負はついた。もう無駄に争う必要はないだろ?」
オレの言葉に、ジャビロは悔しげに口をつぐむ。
ほかのメンバーたちも、オレに対する敵意は消えてないみたいだが、さすがに戦う気力は残ってないようだ。
憮然とした表情で、彼らは無言のままフィールドをあとにする。
「どうなってんだよ、なんであのリュークがこんなに強くなってんだ!?」
「今の強さ、SSランク級だぞ!? もしかしてラスティオンよりも強いんじゃ……?」
「王都でいったい何があったんだ!?」
「それにしても『黒鷲の爪』のヤツら、あれほどやられたのにピンピンしてるなんて、やっぱSランクは丈夫だなあ」
野次馬に来ていた冒険者たちが、口々に驚きの言葉を出す。
想定外の事態になったが、いつまでも侮られたままだと調査隊での行動も制限されそうだったから、これくらい力を見せたほうがきっと動きやすくなる。
今後は「Fランクは引っ込んでろ」なんて言われないだろうし、結果オーライだ。
しかし、フォーレントのヤツがそこまでオレを恨んでいるとは思わなかったぜ。
改めて考えてみると、アビスウオームの魔石を消しちゃったのは、さすがにまずかったかもしれない。
喜ばせるだけ喜ばせておいて、奈落の底に叩き落としちゃったからな。相当ショックだったのも頷ける。
あとで適当な物でも贈って、機嫌を直してもらうとしよう。
こんな状態ではあるが、とりあえずオレたち調査隊は迷宮に向かって出発した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
多分知っているとは思いますが、念のため説明すると、『ナデポ』とは女性の頭を撫でると相手がポッとほほを染めて惚れちゃうことです。
無事戦闘が終わったところで、フィールドのすぐ外で戦いを見ていたギルド長フォーレントに声をかけた。
特に煽るようなつもりもなく、ただ普通の口調で言っただけなんだが、よく見てみるとフォーレントの様子がいつも以上におかしいことに気付く。
血の気が引いた顔で呆然としていて、オレの言葉も届いてないような状態だ。
「な……なんだこの異常な強さは!? こ……こんな怪物、いったいどうやって殺せば…………」
「マスターさすがですわ! さあ勝利の口づけをどうぞ! ほら、ほら、遠慮しないでくださいませ!」
「よせっレム! ひっつくなって!」
レムが歓喜しながら猛ダッシュでオレのもとに飛び込んできた。
ああもうっ、今フォーレントが何か呟いてたけど、レムのせいで聞き取れなかったじゃないか!
レムは無理やりキスしようと、スゲー怪力でオレにしがみついて顔を近付けてくる。
なんつー力だ、普通の人間だと死ぬレベルだぞ!
「いいかげんにしろ!」
まったく言うことを聞かないレムに対し、ゴチンッと頭をゲンコツで叩く。
女性に暴力を振るいたくないが、レムはゴーレムだからな。
と思ったところで……
「イッテエエエエエッ!!」
殴ったオレの手が逆に痛くて、思わず叫んでしまった。
レムの頭部は皮膚も薄いうえ、オレは『身体硬化』も『物理無効』も発動してなかったので、生身の状態でアダマンタイトを殴ったのと同じだ。
運悪く拳の骨にジャストヒットしたらしく、あまりの硬さにビリビリと痺れたほど。
頑丈なゴーレムだけに、つい強めに叩いたのが裏目に出ちまった。
一応、骨に異常はなさそうだが、オレは痛みが治まるように右拳をさする。こんなアホなことで回復薬を使いたくないぞ。
まあゴーレムとはいえ、アニスに似ているレムを叩こうとした罰かもしれない。
少々短慮だったことをオレは反省した。
「マスター、もしや今のは『ナデポ』というヤツですか? そんなことなさらなくても、ワタシはマスターにラブですのに」
「全然違うわっ!」
っていうか、思わず本能で否定してしまったが、『ナデポ』ってなんだ?
オレのギフト『スマホ』が影響しているのか、レムはどうも変な知識を持ってるらしい。
あとで『ナデポ』のことを検索しておこう。
とまあそれはさておき、オレは未だ気絶しているトトとブルゲンのところに駆け寄った。
そしてエリクサーをこっそり出し、2人の喉にさっと流し込む。
同じように、離れた場所に倒れているジャビロとギーグに駆け寄り、エリクサーを飲ませた。
エリアスはただ気絶しているだけなので、治療はしなくても問題ない。
結構重傷だが、これで完治するだろう。
万が一、状態が酷すぎて治せなかった部分があっても、『スマホ』の『被写体復元』機能を使えば、元通りの状態まで戻せる。
ほどなくして、ジャビロたちの意識が戻って起き上がった。
「ぐふっ、俺はいったい何を……くそっ、頭がクラクラしやがる。ああっ、お前はっ!?」
「……そうだ、オリャあFランクのガキにぶっ飛ばされたんだった!」
オレを見たジャビロとギーグは記憶も思い出したらしく、再び戦闘態勢を取る。
だが、自分たちが負けたことは理解しているようで、怒りにまかせてオレを襲うようなことはなかった。
離れた場所にいたトトたちも、意識を取り戻してこの場に集まってきた。
「ぐ……ぎ……この小僧……」
「勝負はついた。もう無駄に争う必要はないだろ?」
オレの言葉に、ジャビロは悔しげに口をつぐむ。
ほかのメンバーたちも、オレに対する敵意は消えてないみたいだが、さすがに戦う気力は残ってないようだ。
憮然とした表情で、彼らは無言のままフィールドをあとにする。
「どうなってんだよ、なんであのリュークがこんなに強くなってんだ!?」
「今の強さ、SSランク級だぞ!? もしかしてラスティオンよりも強いんじゃ……?」
「王都でいったい何があったんだ!?」
「それにしても『黒鷲の爪』のヤツら、あれほどやられたのにピンピンしてるなんて、やっぱSランクは丈夫だなあ」
野次馬に来ていた冒険者たちが、口々に驚きの言葉を出す。
想定外の事態になったが、いつまでも侮られたままだと調査隊での行動も制限されそうだったから、これくらい力を見せたほうがきっと動きやすくなる。
今後は「Fランクは引っ込んでろ」なんて言われないだろうし、結果オーライだ。
しかし、フォーレントのヤツがそこまでオレを恨んでいるとは思わなかったぜ。
改めて考えてみると、アビスウオームの魔石を消しちゃったのは、さすがにまずかったかもしれない。
喜ばせるだけ喜ばせておいて、奈落の底に叩き落としちゃったからな。相当ショックだったのも頷ける。
あとで適当な物でも贈って、機嫌を直してもらうとしよう。
こんな状態ではあるが、とりあえずオレたち調査隊は迷宮に向かって出発した。
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多分知っているとは思いますが、念のため説明すると、『ナデポ』とは女性の頭を撫でると相手がポッとほほを染めて惚れちゃうことです。
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