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第4章 迷宮の宝
第8話 Sランクの攻撃
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模擬戦が始まり、オレはジャビロたちに向かってスピードを抑えつつ駆けていく。
全力疾走して一気にカタをつけてもいいんだが、とりあえずは様子見だ。
どれくらい手加減をしていいか、力加減も分からないしな。
ジャビロたちはまだその場から動かず、神官のエリアスが聖属性の魔法をメンバーにかけている。
恐らく、ダメージを減らすための物理防御系のシールドと思われる。
魔導士のブルゲンも、なんらかの属性魔法を詠唱している。
チーム戦のセオリー通りの行動だ。
シールドをかけ終わったあと、ジャビロとギーグが飛び出した。
シールドには魔法防御系のものもあるが、それはかけてないみたいだ。オレは魔法の使えない剣士と思われているので、必要ないと判断したのだろう。
ジャビロとギーグは、オレと同じくスピードを抑えて接近してくる。
前衛同士が行う近接戦の前に、まずは遠距離攻撃の撃ち合いがチームバトルの基本だからだ。
その基本通り、後方からオレ目掛けて矢が飛んできた。大弓を使う、魔導弓士トトの狙撃だ。
通常より二回り大きい矢には魔法がかかっていて、雷撃を帯びている。
そしてスキル技によって追尾性能も付加されているらしく、弧を描きながらオレに迫ってきた。
七部衆のマンジも弓矢使いだったが、忍者は対人戦が主体だったので素早さ精密さを重視していたのに対し、冒険者であるトトはモンスター戦がメインなので破壊力重視の攻撃だ。
追尾性能があるとはいえ、暗殺者ケプラが使っていた『飛鋭刃』と比べると大雑把な攻撃なので、躱すことは造作もない。
……とそのとき、前方の地面から魔力の発生を感知し、オレは慌てて飛び退く。
直後、地面から土の槍が数十本出現し、オレが通る予定だった場所を針山のように貫いた。
ブルゲンが放った土魔法の攻撃だ。
ちょっと待て、オレが避けなかったら、死んでもおかしくなかったぞ!?
まあオレには火、水、風、土、光、闇の6属性が無効だから、実際にはダメージを受けることはないけど。
ただ、魔法が効かないということがバレるとまずいから、喰らわないように大げさに避けた。
そして、飛び退いたオレのところに大矢の追撃がくる。
一応、難なく避けたが、また次から次へと矢が飛んできて、オレへの狙撃が止まらない。
さらに、地面からの土槍も間断なくオレを襲ってくる。スキル技の連続魔法を使ってるんだろう。
オレだから避けられるが、本来ならこんな危険な魔法は禁じ手だ。
……何か変だ。彼らの攻撃から殺意を感じるぞ?
冒険者同士でタイマンしたりチーム戦をすることはたまにあるが、一応暗黙の了解で、相手を殺さないように配慮はする。
殺し合いまでしなくても、お互いの実力差はだいたい分かるからだ。
今回のこの戦いだって、フォーレントからは怪我には注意するように言われている。
なのにこんな攻撃をするなんて、何考えてんだ!?
嫌な予感がする……。
遠距離攻撃を避けていると、ジャビロとギーグがオレのところまで到着した。
ここからは接近戦の開始である。
「ぶっ殺してやるぜ!」
ジャビロがそう言いながら、左右の手に持つ2本の剣でオレを斬りつけてきた。その流れるような連続攻撃を、オレは最小限の動きで躱す。
ジャビロは怪力を自負するだけあって、両手持ちしなくてはならないような大剣を、それぞれ片手で軽々と操っている。
ただの力任せの攻撃ではなく、その剣捌きも鋭くて精密だ。
なるほど、『双大剣』と言われるだけはあるな。
それはともかく、コイツ本気で殺しに来てるぞ。
いくらオレでも、こんなことされては黙っていられない。
「ジャビロ、これは模擬戦だぞ! 分かってるのか!?」
「ぐふふっ、安心しろ、ちゃんと理解してるぜ」
「なら、なんでこんな危険な攻撃をするんだ!」
「ギルド長から直々に許可をもらってるからだ。事故に見せかけて、お前をここで始末していいとな」
なんだってーっ!?
そういやさっき、フォーレントがジャビロと何か話してた。あのとき、オレを殺す許可を与えていたのか!
フォーレントのヤツが、まさかここまでオレのことを嫌っていたとは……。
「くそっ、チョコマカとすばしっこいヤツだ! これでも喰らえっ!」
ジャビロが左足を強く地面に叩きつけて踏み鳴らす。
地を伝わる衝撃波で、相手の体勢を崩す技だ。戦士系が覚えるスキル技で、オレも持ってる。
幅5メートルほどの衝撃波が、地面を歪ませながら超速でオレに接近するが、それも軽く躱す。
そこにギーグが飛び込んできた。
「オレに任せろ! スピード勝負なら負けないぜ!」
ジャビロの攻撃が途切れたところで、すかさず次はギーグがオレに襲いかかる。
前衛同士、息が合ったコンビネーションだ。
ギーグは拳で戦う拳闘士だけに、抜群の体術バランスで攻撃してくる。
一撃の破壊力はジャビロのほうが遥かに上だが、手数ならギーグが圧倒的だ。
そしてギーグやジャビロの邪魔をしないようなタイミングで、後方から魔法や矢の援護が来る。
さすがSランクチーム、ヤツらが繰り出す近接攻撃と遠距離攻撃の連係で、オレは防戦一方の状態だ。
……とあえて見せている。
どう対応しようか、考えをまとめるための時間がほしかったからだ。
想定外の戦いとなって、オレも少々面食らってしまったが、ジャビロたちがそう来るならオレもそれなりに容赦はしない。
大怪我させないように気を遣うつもりだったが、遠慮なく反撃させてもらうとしよう。
全力疾走して一気にカタをつけてもいいんだが、とりあえずは様子見だ。
どれくらい手加減をしていいか、力加減も分からないしな。
ジャビロたちはまだその場から動かず、神官のエリアスが聖属性の魔法をメンバーにかけている。
恐らく、ダメージを減らすための物理防御系のシールドと思われる。
魔導士のブルゲンも、なんらかの属性魔法を詠唱している。
チーム戦のセオリー通りの行動だ。
シールドをかけ終わったあと、ジャビロとギーグが飛び出した。
シールドには魔法防御系のものもあるが、それはかけてないみたいだ。オレは魔法の使えない剣士と思われているので、必要ないと判断したのだろう。
ジャビロとギーグは、オレと同じくスピードを抑えて接近してくる。
前衛同士が行う近接戦の前に、まずは遠距離攻撃の撃ち合いがチームバトルの基本だからだ。
その基本通り、後方からオレ目掛けて矢が飛んできた。大弓を使う、魔導弓士トトの狙撃だ。
通常より二回り大きい矢には魔法がかかっていて、雷撃を帯びている。
そしてスキル技によって追尾性能も付加されているらしく、弧を描きながらオレに迫ってきた。
七部衆のマンジも弓矢使いだったが、忍者は対人戦が主体だったので素早さ精密さを重視していたのに対し、冒険者であるトトはモンスター戦がメインなので破壊力重視の攻撃だ。
追尾性能があるとはいえ、暗殺者ケプラが使っていた『飛鋭刃』と比べると大雑把な攻撃なので、躱すことは造作もない。
……とそのとき、前方の地面から魔力の発生を感知し、オレは慌てて飛び退く。
直後、地面から土の槍が数十本出現し、オレが通る予定だった場所を針山のように貫いた。
ブルゲンが放った土魔法の攻撃だ。
ちょっと待て、オレが避けなかったら、死んでもおかしくなかったぞ!?
まあオレには火、水、風、土、光、闇の6属性が無効だから、実際にはダメージを受けることはないけど。
ただ、魔法が効かないということがバレるとまずいから、喰らわないように大げさに避けた。
そして、飛び退いたオレのところに大矢の追撃がくる。
一応、難なく避けたが、また次から次へと矢が飛んできて、オレへの狙撃が止まらない。
さらに、地面からの土槍も間断なくオレを襲ってくる。スキル技の連続魔法を使ってるんだろう。
オレだから避けられるが、本来ならこんな危険な魔法は禁じ手だ。
……何か変だ。彼らの攻撃から殺意を感じるぞ?
冒険者同士でタイマンしたりチーム戦をすることはたまにあるが、一応暗黙の了解で、相手を殺さないように配慮はする。
殺し合いまでしなくても、お互いの実力差はだいたい分かるからだ。
今回のこの戦いだって、フォーレントからは怪我には注意するように言われている。
なのにこんな攻撃をするなんて、何考えてんだ!?
嫌な予感がする……。
遠距離攻撃を避けていると、ジャビロとギーグがオレのところまで到着した。
ここからは接近戦の開始である。
「ぶっ殺してやるぜ!」
ジャビロがそう言いながら、左右の手に持つ2本の剣でオレを斬りつけてきた。その流れるような連続攻撃を、オレは最小限の動きで躱す。
ジャビロは怪力を自負するだけあって、両手持ちしなくてはならないような大剣を、それぞれ片手で軽々と操っている。
ただの力任せの攻撃ではなく、その剣捌きも鋭くて精密だ。
なるほど、『双大剣』と言われるだけはあるな。
それはともかく、コイツ本気で殺しに来てるぞ。
いくらオレでも、こんなことされては黙っていられない。
「ジャビロ、これは模擬戦だぞ! 分かってるのか!?」
「ぐふふっ、安心しろ、ちゃんと理解してるぜ」
「なら、なんでこんな危険な攻撃をするんだ!」
「ギルド長から直々に許可をもらってるからだ。事故に見せかけて、お前をここで始末していいとな」
なんだってーっ!?
そういやさっき、フォーレントがジャビロと何か話してた。あのとき、オレを殺す許可を与えていたのか!
フォーレントのヤツが、まさかここまでオレのことを嫌っていたとは……。
「くそっ、チョコマカとすばしっこいヤツだ! これでも喰らえっ!」
ジャビロが左足を強く地面に叩きつけて踏み鳴らす。
地を伝わる衝撃波で、相手の体勢を崩す技だ。戦士系が覚えるスキル技で、オレも持ってる。
幅5メートルほどの衝撃波が、地面を歪ませながら超速でオレに接近するが、それも軽く躱す。
そこにギーグが飛び込んできた。
「オレに任せろ! スピード勝負なら負けないぜ!」
ジャビロの攻撃が途切れたところで、すかさず次はギーグがオレに襲いかかる。
前衛同士、息が合ったコンビネーションだ。
ギーグは拳で戦う拳闘士だけに、抜群の体術バランスで攻撃してくる。
一撃の破壊力はジャビロのほうが遥かに上だが、手数ならギーグが圧倒的だ。
そしてギーグやジャビロの邪魔をしないようなタイミングで、後方から魔法や矢の援護が来る。
さすがSランクチーム、ヤツらが繰り出す近接攻撃と遠距離攻撃の連係で、オレは防戦一方の状態だ。
……とあえて見せている。
どう対応しようか、考えをまとめるための時間がほしかったからだ。
想定外の戦いとなって、オレも少々面食らってしまったが、ジャビロたちがそう来るならオレもそれなりに容赦はしない。
大怪我させないように気を遣うつもりだったが、遠慮なく反撃させてもらうとしよう。
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