勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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第4章 迷宮の宝

第6話 悪化する一方です

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「ぐぬぬ、見せつけやがって……もう許さねえっ!」

 腕相撲に負けてショックを受けていたジャビロが、ふざけあうようなオレとレムを見て気を取り直し、怒りを露わにした。
 そして椅子から立ち上がり、背負っていた2本の大剣を抜く。
 あれほどデカいこと言っておきながら負けたクセに、往生際の悪いヤツだな……。

「おいよせ、勝負はもうついただろ。オレが勝ったんだから、約束は守ってもらうぞ」

「いいや、腕相撲はギルド長が勝手に決めた勝負だ。こんなんじゃ俺は納得いかねえ。キッチリ戦闘で白黒つけようじゃねえか!」

「なに言ってやがる。出発前に怪我したら……」

「許す! 戦闘で決着をつけて良い!」

 えっ、なんだって!?
 青い顔で固まっていたフォーレントが、またしてもオレとジャビロの会話に口を挟んできた。
 戦闘で決着って、さすがに問題があるだろ。
 それに、すでに出発時間を大幅に過ぎてるぞ。オレとしても、余計なことに時間を使ってるヒマはないんだが……?

「フォーレ……ギルド長、腕相撲で決着つけたんだからもういいだろ。そもそも怪我したら……」

「いいや、こじれたままでは調査もスムーズには行かぬ。腕相撲などではなく、お前たちの力関係をしっかり確認すべきだ」

 さっきは怪我されたら困るって言ったくせに、コロコロ変えやがって……!
 ただ、通常の戦闘じゃオレに分があると思ったからこそ、フォーレントは腕相撲勝負にしたんだろ?
 なのに、今さら戦闘で決着つけろだなんて、意味分かんねーな。

「話が分かるぜギルド長。外へ出ろ小僧! お墨付きが出たところで、決闘と行こうじゃねえか」

 ジャビロはもうやる気満々だ。
 仕方ねーな。適当に遊んでやれば、オレの力を知って大人しくなるだろ。

「んじゃあオレとタイマン……」

「まて、1対1の決闘ではなく、チーム戦で勝負するのだ!」

 オレが決闘を承諾した瞬間、すかさずフォーレントがまた口を挟んできた。
 チーム戦!? ってことは、オレとレムの2人vsジャビロチーム5人で戦うのか?
 なるほど、タイマン勝負はともかく、これならジャビロに分があるってわけか。

 とはいえ、フォーレントの思惑は分かるが、チーム戦なんかしたらマジで怪我人が出るぞ?
 オレが上手く手加減できれば問題ないが、曲がりなりにもコイツらSランクチームだからな。果たして、穏便に戦闘を終わらせることができるかどうか。

「フォーレント、いくらなんでもそりゃ危険だ。せめて……」

「ギルド長と呼べ! 元々この調査隊にはチームでの加入を条件とした。だからチーム戦で勝負を決めるのは当然のこと。怖いなら、怪我する前に降参しろ」

 フォーレントのヤツめ……めちゃくちゃなこと言いやがって。
 どうあってもオレの加入は認めたくないようだな。
 それなら仕方ない。あまりオレの力を見せたくなかったが、どうしてもと言うなら力でねじ伏せようじゃないか。

 戦いによる負傷が少し心配だが、身体欠損などの酷い怪我さえさせなければ、一応オレのエリクサーで治療できる。
 これ以上難癖をつけられる前に、きっちり決着をつけてやろう。

「ぐふっ、お前など俺1人でも叩き潰せるが、ギルド長がチーム戦だというなら俺もそれで構わない。お前はどうする? 女を置いて逃げるか?」

「オレも構わない。ただ、戦うのはオレ1人だ。お前たちを倒すのにレムの力はいらない」

「1人で俺たち『黒鷲の爪』5人を相手にするだと!? ナメやがって……ぶっ殺してやる!」

「小僧、可哀想だから手加減してやろうと思っていたが、撤回だ。二度とそんな口が利けないように痛めつけてやる」

「死にたくなければ今すぐ降参しろ」

 オレの言葉に、ジャビロ以外のメンバーも怒りを燃やす。
 ちょっと言い過ぎたか?
 煽るつもりはなかったんだが、ジャビロの態度やフォーレントの無茶命令にオレも少しムキになってしまった。

「マスター、もしかしてワタシの体を気遣ってくれたのですか? そうですね、ワタシの体が傷付いたら、夜伽のときに悲しい思いをさせますしね。ああマスターの愛を全身で感じます!」

 何を勘違いしてるのか、レムが歓喜しながら身悶えしている。
 別にレムの体なんて気遣ってないのに、思い込みが激しすぎてもう頭が痛い。
 レムに戦わせるとやりすぎちゃうのが怖いから、オレ1人で戦うってだけなのに……本当に変なゴーレムだ。

 そもそも体が傷付く心配どころか、レムはそこらのSランク冒険者なんて問題にならないほど強いからな。ゾンダール将軍には勝てないと思うが、ラスティオンとは互角以上に戦える気がする。
 ちなみに、レムは人間に似せることを最優先にして作ったが、戦闘力重視で製作したら、ゾンダール将軍より遥かに強いゴーレムも作れるはず。
 今のところは必要ないが、もしもそういう状況になったら、レムを解体して強力なゴーレムを作ろう。

「マスター、何故かよく分かりませんが、今ワタシとても悲しい気持ちになったのですが……?」

 うっ、コイツまさか、オレの心が読めるとか……?
 そんなわけないか。でもレムは目を潤ませながら、オレをじっと見つめている。
 その瞳の重圧に負けて、オレは思わず目をそらしてしまう。

「マスター、やはりつれないことを考えてますね!? 生まれてから身も心も全てマスターに捧げているのに、ワタシを弄ぶなんて酷いお方……」

「おまっ、誤解されるような言い方するなっ!」

 何も捧げてもらってないし、弄んでもいないだろ!
 アニスと似ているだけに、妙な罪悪感まで覚えちまうぞ!

「リューク、お前こんな美少女に手を出しやがったのか!?」

「もう許せねえっ、お前なんか『黒鷲の爪』のメンバーにボコボコにされちまえっ!」

 ああもう、どんどん面倒な方向に話が行く。
 オレはただ、迷宮に行きたいだけなのに……。

 とりあえず、騒ぐ冒険者たちをなだめながら、オレたちはギルドの裏にある戦闘用の広場に移動した。
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