勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる

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第4章 迷宮の宝

第2話 加入の条件

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「フォーレ……ギルド長、最近この近くの迷宮ダンジョンに行った冒険者たちが次々と行方不明になっていると聞いたんだが、現在どうなってる?」

「むっ、どこでそれを聞いた? まだ一般にはしらされていないはずだが?」

「王都でちらりと小耳に挟んだんだ」

「なんと、王都ではもう噂になっているというのですか? 私が遠距離用魔導通信で王都に報せたのは昨日だというのに? まだ内密にしておきたかったのですが、困りましたね……」

 オレの言葉を聞いて、フォーレントの横にいる中年男性が驚きの声を上げる。
 この場に似つかわしくないような気品を感じるが、誰なんだろう?

「ああ失礼しました、私はこの辺りの監査を務める者で、ノモスと言います。ここハイゼンバーグ領で異変が起こりつつあると聞いて、査察に来たのです」

 アルマカイン王国領土内を回る監査官か!
 各地の自治権はその領主にあるとはいえ、王国が管理する領土でもあるので、査察のために定期的に王国領土内を見回ることを仕事としている。
 今回の事態を聞きつけてやって来たということか。
 この人に不審がられてしまうと、このあと動きづらくなる。しっかり自己紹介しておこう。

「オレはここの領主ゲスニク・ハイゼンバーグの元息子のリュークと言います。まあすでに勘当された身ですけどね。ここの異変については……た、たまたま知ることができただけで、王都で噂になっているようなことはありません」

「そうですか……それなら少し安心しました」

「とにかくフォー……ギルド長、何か事故が起こっているならオレが救出に行くから、迷宮ダンジョンの場所を教えてくれ!」

『スマホ』のマップ機能では、山や森などの地形は分かっても洞窟や迷宮の場所までは表示されない。
 だから『クラティオ苔』を探すときも、地道に1つずつ洞窟を見つけていったわけだが。
 近くまで行けば、マップを拡大して入り口を探すことも可能なんだけどな。

「ふん、確かに帰還が遅れている冒険者たちが多数いるが、事故と決まったわけではない。まだその調査段階で、ここにいる冒険者たちはそのために集めたメンバーだ。お前が救出に行く必要などない」

「じゃ、じゃあ、オレもそのメンバーに加えてくれ!」

「ダメだ!」

「なっ、なんでだ!?」

 即答で拒絶され、思わずオレも聞き返す。

「今回の調査のために、わざわざ精鋭のメンバーを集めたのだ。お前が入ることで、和を乱されては困る」

「なら、オレ1人で動くから、迷宮ダンジョンの場所だけ教えてくれ!」

「お前が単独で動くなど、なおさら邪魔だ。たとえ迷宮ダンジョンの場所をお前が突き止めたとしても、行くことは許さん! ここでずっと待機していろ」

 コイツ、なんでそんな意地悪するんだ!?
 もしかして、以前フォーレントにあげた『アビスウオームの魔石』のことを根に持ってるのか?
 賄賂代わりに渡したあと、あの魔石を消したからな。あのときは仕方なかったとはいえ、安易に騙したことをオレは少々後悔する。
 もう一度同じ手を使っても、もう騙されないだろうしな……。

「えーと、ノモスさん、このギルド長の指示はいいんですか? 裁量を逸脱しているような気がするんですが?」

 オレはフォーレントの説得を諦め、監査官に伺いを立ててみる。
 冒険者たちにこっそり付いていく手もあるが、のちに大きくトラブっても困る。
 現在の状況を詳しく知るためにも、なんとかこの調査隊に入れてもらいたいところ。

「申し訳ありませんが、ギルドの方針は私の管轄外ですので、フォーレント殿の判断については何も申し上げられません」

「くっ、そうですか……」

 監査官は査察したことを報告するのが仕事で、その領地で行うことに口を出す権限があるわけじゃないからな。
 オレから助けを求められても困るか……。

「リュークよ、そもそもお前は迷宮ダンジョンに入ったことはあるのか?」

 戸惑っているオレに、フォーレントが小馬鹿にするように訊いてくる。

「そ、それは……い、一応経験くらいはあるぜ?」

「なら、どこの迷宮ダンジョンに入ったか言ってみろ」

 くそっ、ウソがバレてる。
 オレは迷宮ダンジョンに入ったこともないし、存在する場所どころか名称すらよく知らない。
 質問に答えられず、思わず言葉を詰まらせていると、フォーレントが勝ち誇ったように笑った。

「それ見ろ。素人が迷宮探索に来ても邪魔になるだけだ。そもそも、迷宮ダンジョンではチームプレイが不可欠だ。ここにいる者たちも全員チームを組んでいる。そうだな、お前もチームを作ってくれば、加入を考えてやってもいいぞ」

「ホントか!? じゃあ誰か、オレをチームに入れてくれ!」

 オレは目の前に集合している冒険者たちに、メンバー加入の打診をする。
 しかし……

「バカ者っ! ここにいる者たちは普段から連係プレイを大事にしているのだ。お前が加入したらそれをぶち壊すだろう。ほかのチームに加入することは許さん。自分だけのメンバーを連れてこない限り、お前の参加は認めんぞ」

「わ、分かった、じゃあ明日まで……いや夕方までにチームメンバーを探してくるから待っててくれ!」

「いいや、今から出発するからダメだな。言っておくが、このギルドにいる冒険者は全員チーム持ちだ。オレの知らない人間を連れてこい」

 くっそーっ、とことん意地悪しやがって……!
 どうすりゃいいんだ? ジーナたちがここに到着するのはまだまだ先だし、まさか街の人間を無理やり危険な場所に連れていくわけにもいかないし……。
 いやまて、もしかしてならなんとかなるんじゃないか?

「ギルド長、チームメンバーは何人連れてくればいい?」

「ふむ……あと3人と言いたいところだが、1人で勘弁してやる。ただし、今すぐに連れてこないと認めんぞ。もちろん、実力もちゃんとなければダメだ」

 フォーレントはニヤニヤしながらそう答えた。
 わざと緩めの条件にして、オレに淡い希望を持たせつつ、最終的に挫折する姿をあざ笑おうというつもりなんだろう。
 この地で今すぐ新たな冒険者を見つけるなんて、およそ不可能だからな。
 だが、1人でいいならオレにはアテがある!

「分かった。ちょっとだけ待っててくれ」

「20分で出発する。それまでに見つけてこれるかな? ガハハハ!」

 フォーレントの笑い声を聞きながら、オレは急いでギルドを飛び出した。
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