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第16章
葬儀の日「黒は魔女に一番似合う色」
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本日はとても良い天気。
太陽がサンサンと降り注ぐ。
舗装された街から少し離れ、新緑の芝生が敷き詰められた長閑な広場に私達は集まっていた。
こんな晴れた日は、ピクニックに最適でしょうね。
カラフルなレジャーシートを敷いて、色とりどりの具材が詰まったお弁当を食べるの。
もう私には味覚が無いけれど、目で楽しむだけならできるはずよ。
けれども今日は無理みたい。
右を向いても左を向いても黒一色。
私の服も全身真っ黒。
でも、私には純白なドレスよりも漆黒の喪服の方が似合うわ。
女はお気に入りの洋服を着ると、気持ちが高まるの。
せっかくの晴天なのだから、自分の気持ちだけでも明るくしていなければ。
目の前で、ブライトが眠る棺が土に埋められていく。
国家防衛管理局の職員一同が、今日の葬儀に参加していた。
戦闘課の列にいるトリンの髪も、今日は全く乱れていない。
けれど、顔は涙でボロボロになっている。
せっかく教えてあげた化粧が台無しだわ。
私の隣に立っているリアは、見るまでも無いわね。
きっと目が腫れ上がってしまうわ。
目元用のパックをまた買ってきてあげようかしら。
ルチルはただ出席するだけではなく、葬儀係の人と打ち合わせをしたりなど忙しそう。
ジェイドは……参加していない。
まだ病院のベッドの上。
でも、ブライトが死んだという知らせは聞いているはず。
今頃どう過ごしているかしら。
少しだけ気になるわ。
ブライトの葬儀は無事に終わり、目の前には墓石が鎮座していた。
大丈夫よ、あなたは天国に行けるわ。
ブライトの帰宅経路から近い公園で、彼の死体は発見された。
私がクリスドールに、そこへ捨てろと指示をした。
顔が抉れていた為、親族以外の人間は彼の顔を見て最後のお別れが言えなかった。
ブライトの仲間が次に会った時は、彼は棺の中だった。
でも、その方が良かったのかもしれない。
ブライトの整った顔と無邪気な笑顔だけが記憶に残るのだから。
「僕は仕事に戻ります。お二人はどうされますか? 本日はお休みでも構いませんよ」
葬儀の手伝いを終わらせ、ルチルが私とリアのもとに来た。
相変わらず無表情で、事務的な発言をしている。
「ですが今日は、私とリアちゃんは受付業務があります」
「ダチュラさんが出勤可能でしたら助かります。リアさんは帰宅した方が良いでしょう。トリンさん、ちょっといいでしょうか」
ブライトの墓石を見つめているトリンに、ルチルが声をかける。
トリンが我に返ったように、顔を上げた。
「トリンさん、申し訳ありませんがリアさんを送って行ってもらえませんか? そのまま帰宅していただいて構いませんので」
「え、いえ、送っていくのは構いませんが、私も訓練に戻ります!」
トリンの声はいつもより少しだけ小さかった。
「本日はお休みください。明日からまた宜しくお願いします。ではダチュラさん、行きましょう」
ルチルが歩き出す。
私はトリンとリアに会釈をして、ルチルの後に続いた。
道中ルチルはずっと無言のままだった。
彼なりに落ち込んでいるのかもしれない。
知り合いが亡くなれば、どんな冷たい人間だって多少は落ち込むはずだものね。
受付ではリアの代わりに、別の女の子と業務に就いた。
彼女は以前開かれた合コンがきっかけで、戦闘課職員と付き合っているらしい。
ブライトとはその時しか面識が無かったみたいだけれど、彼女も少し落ち込んでいるようだった。
彼女の恋人は泣いていたという。
少し重苦しい空気の中、私はいつもと同じクオリティーで仕事を終わらせた。
「ダチュラさん、この後空いてますか?」
いつものように帰宅しようとした私に声をかけてきたのは、ルチルだった。
珍しいこともあると思い、私は久しぶりに寄り道をすることにした。
太陽がサンサンと降り注ぐ。
舗装された街から少し離れ、新緑の芝生が敷き詰められた長閑な広場に私達は集まっていた。
こんな晴れた日は、ピクニックに最適でしょうね。
カラフルなレジャーシートを敷いて、色とりどりの具材が詰まったお弁当を食べるの。
もう私には味覚が無いけれど、目で楽しむだけならできるはずよ。
けれども今日は無理みたい。
右を向いても左を向いても黒一色。
私の服も全身真っ黒。
でも、私には純白なドレスよりも漆黒の喪服の方が似合うわ。
女はお気に入りの洋服を着ると、気持ちが高まるの。
せっかくの晴天なのだから、自分の気持ちだけでも明るくしていなければ。
目の前で、ブライトが眠る棺が土に埋められていく。
国家防衛管理局の職員一同が、今日の葬儀に参加していた。
戦闘課の列にいるトリンの髪も、今日は全く乱れていない。
けれど、顔は涙でボロボロになっている。
せっかく教えてあげた化粧が台無しだわ。
私の隣に立っているリアは、見るまでも無いわね。
きっと目が腫れ上がってしまうわ。
目元用のパックをまた買ってきてあげようかしら。
ルチルはただ出席するだけではなく、葬儀係の人と打ち合わせをしたりなど忙しそう。
ジェイドは……参加していない。
まだ病院のベッドの上。
でも、ブライトが死んだという知らせは聞いているはず。
今頃どう過ごしているかしら。
少しだけ気になるわ。
ブライトの葬儀は無事に終わり、目の前には墓石が鎮座していた。
大丈夫よ、あなたは天国に行けるわ。
ブライトの帰宅経路から近い公園で、彼の死体は発見された。
私がクリスドールに、そこへ捨てろと指示をした。
顔が抉れていた為、親族以外の人間は彼の顔を見て最後のお別れが言えなかった。
ブライトの仲間が次に会った時は、彼は棺の中だった。
でも、その方が良かったのかもしれない。
ブライトの整った顔と無邪気な笑顔だけが記憶に残るのだから。
「僕は仕事に戻ります。お二人はどうされますか? 本日はお休みでも構いませんよ」
葬儀の手伝いを終わらせ、ルチルが私とリアのもとに来た。
相変わらず無表情で、事務的な発言をしている。
「ですが今日は、私とリアちゃんは受付業務があります」
「ダチュラさんが出勤可能でしたら助かります。リアさんは帰宅した方が良いでしょう。トリンさん、ちょっといいでしょうか」
ブライトの墓石を見つめているトリンに、ルチルが声をかける。
トリンが我に返ったように、顔を上げた。
「トリンさん、申し訳ありませんがリアさんを送って行ってもらえませんか? そのまま帰宅していただいて構いませんので」
「え、いえ、送っていくのは構いませんが、私も訓練に戻ります!」
トリンの声はいつもより少しだけ小さかった。
「本日はお休みください。明日からまた宜しくお願いします。ではダチュラさん、行きましょう」
ルチルが歩き出す。
私はトリンとリアに会釈をして、ルチルの後に続いた。
道中ルチルはずっと無言のままだった。
彼なりに落ち込んでいるのかもしれない。
知り合いが亡くなれば、どんな冷たい人間だって多少は落ち込むはずだものね。
受付ではリアの代わりに、別の女の子と業務に就いた。
彼女は以前開かれた合コンがきっかけで、戦闘課職員と付き合っているらしい。
ブライトとはその時しか面識が無かったみたいだけれど、彼女も少し落ち込んでいるようだった。
彼女の恋人は泣いていたという。
少し重苦しい空気の中、私はいつもと同じクオリティーで仕事を終わらせた。
「ダチュラさん、この後空いてますか?」
いつものように帰宅しようとした私に声をかけてきたのは、ルチルだった。
珍しいこともあると思い、私は久しぶりに寄り道をすることにした。
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