人を愛したら魔女と呼ばれていた

トトヒ

文字の大きさ
上 下
12 / 26
第11章

エネミーの正体「行動に移せない自分が腹立たしいわ」

しおりを挟む
ジェイドが飲み会好きなことや、トリンとリアの提携、ブライトが私を口説くことを諦めていないといった思惑のため、私達は頻繁に集まるようになった。
ルチルも嫌々ながら、ジェイドには逆らえずついて来ている。
ルチルのアドバイスは的確で、トリンだけでなくブライトも積極的に意見を仰ぐようになった。
そのお陰でブライトの戦闘スキルも軒並み上がっているとのこと。
集まりで話す内容は、エネミーのことや今後の戦略ついて深い内容になることもあった。

「僕達はエネミーと戦うことに精一杯で、奴らの正体を掴むまではいけないんですよね。破壊したエネミーの残骸を持ち帰っても、この国の調査機関では何も分からないみたいですし」

ブライトが弱々しい声で言った。
ちょっとほろ酔いね。

「俺達の仕事は国の防衛だ。それ以上のことはできないだろ。そりゃ、気にはなるけどな」

「私いろいろ考えてみたんですけど、化学肥料による害虫の突然変異種なんじゃないでしょうか? 地方都市に出没することが多いし! 化学って怖いですよね!」

「お前ってやっぱりバカだな」

トリンの発言を、ジェイドが一刀両断した。

「トリン先輩、流石にそれは非現実的ですよ」

「トリンさん面白~い」

ブライトは呆れ、リアがトリンに抱き着く。
トリンとリアはすっかり仲良しになっていた。

「そんな……真剣に考えたんですけど」

トリンはしょぼくれていた。

「まず、エネミーは生物ではありません。そいういう意味でも、突然変異だとは考えられません。あれは自然界の物ではなく、意図的に創られたものだと思います」

ルチルはいつものように淡々と答えた。

「さすがルチルさん! もしかしてルチルさんは、エネミーが何なのか見当がついているのでしょうか?」

 トリンがルチルに尊敬の眼差しを向けている。

「いえ、全く」

「あら、私達には教えてくださらないの?」

私はルチルを見つめて挑発してみた。
この前もはぐらかしたものね、あなた。

「ただの推測で話すことは、意味が無いと思います」

「ここは会議室ではありませんよ。ただの飲み会の席です。ルチル主任の意見を聞きたいだけですわ。皆さんもそうではありませんか?」

私はジェイドの方を振り向いた。

「俺は聞きたいぞ、ルチルの意見!」

他の皆も頷いていた。
ルチルは私を窘めるように眉間に皺を寄せていたが、渋々話始めた。

「酔っ払いの戯言程度に聞いてください。エネミーが誰かの手によって創られたものであるならば、意図的にこの国を攻撃していることになります。つまり、エネミーは敵国が送り込んでいる兵器だと考えれば筋が通るかと」

「え! それじゃ、まるで戦争じゃないですか」

ブライトは酔いが覚めたように驚いている。

「戦争というよりテロじゃないか?」

ジェイドも険しい顔つきで言った。

「筋が通るとは言いましたが、この話も現実的ではありません。この国は同盟国も多く、それを含めてもあのような技術力がある国は今はありません。現在進行形でテロ行為を受けているとは考えづらいです」

「私、もうついて行けてないです。現在進行形のテロじゃないって、どういうことでしょうか?」

トリンが頭を抱えながら混乱している。

「かつての敵国の中に、高い技術力を持っていた国がありました。その国との戦争にハモネーは勝利したので、その国は滅んでいます。もしその国が当時あのエネミーを開発していたなら、国が滅び兵器だけ残っていたというわけです。そして、どういう理由かは分かりませんが、今になって暴走したのではないでしょうか?」

「つまり……時を超えたテロ、ということでしょうか?」

私の言葉に、空気が重くなる。

「あくまでも、僕の妄想ですが。仮にそうだとしたら、暴走したエネミーが現れる度に一体一体破壊するしか方法がありません。最後の一体になるまで」

「それなら、そうするまでだ! 俺はこの国を守る」

ジェイドがお酒を一気飲みする。

「敵は亡霊みたいで怖いですね……」

リアがそっと呟いた。

皆の酔いも覚めないまま、私達はお店を後にした。
ルチルの話を皆気にしていたみたいだけれど、何の確証も無い話だからとルチルはそれ以上語らなかった。
何の取り留めも無い雑談を交えながら皆で帰宅する。
だんだんこの流れが通例行事のようになってきたわね。
時間が合えば、仕事帰りに皆で食事に行き、皆で途中まで帰宅する。
時間は取られるけれど、私にとって得るものはある。
前よりも情報を手軽に集められるようになってきたもの。

プランは頭の中でできている。
今度はアウトプットに移すだけ。
本当は準備は整っていて、いつでも実行できる。
それなのに、タイミングをつかめないでいる。
私はこんな性格じゃないはず。
何を躊躇しているのかしら。
自分でも苛立ちを覚える。

その時。

「ダチュラ見ーつけた!」

私達の前に、とある人物が現れる。
この声は何度も聞いている。
私だけじゃなく、皆も。

「う、嘘ー!」

リアが甲高い声を上げた。
それは驚くでしょうね。

「ク、ク、ク、ク――クリスドール?」

私達の目の前に現れたのは、純白の英雄クリスドールだった。
ブライトが間抜けな声を上げてよろめく。
ジェイドとルチルも目を見開いて立ち尽くしていた。

とうとう見つかってしまったわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...