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第1章

第5話

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もしかしたらかなり紹介が遅れたかもしれないがこのオレこと、千尋司ちひろつかさの通う高校をすこし紹介しよう。


オレたちの通う学校はというと都内23区の某区に門をかまえる私立校である。

アホの子の野々村が入学できたことを考えるとそこまで頭の良い学校ではないのかも…と思うが、基本的にはこの高校に通う生徒たちの多くは大学進学をしているという意味では進学校とよんでも問題ないだろう。

と、まぁ本当にかんたんではあるが、説明がすんだところでつまりなにがいいたいかというと。


ここは田舎ではなく都会である。

田舎ならば放課後イベントとは、例えば魚釣りとか近くの森でかくれんぼ、などのほのぼのスローライフな日々がまっているのかもしれないが、
このコンクリートジャングルの大都会では放課後イベントはカラオケやファストフード店やゲームセンターなどがメインとなる。

そしてそれはときとして全くほのぼのしないイベントが起こることもあるのだ…。




「で?2人ともお前もあの美少女転校生も特製プレミアムパンは買えなかったわけか」

「まぁーなー、やっぱり特製プレミアムパンの人気は恐ろしいわ。ぜんぜんトップランカーたちにはついていけねーよ」


美少女転校生ヒロイン、雨宮鈴花あめみやすずかの登場という激動の1日も終わり。
放課後である。

学校を出たオレとタイヨウは2人で駅へとつながる大通りを歩きながら、今日のいちれんの出来事について話しているところだ。


タイヨウの家は学校から歩いて10分くらいのところにある。
学校の最寄り駅と自分の家の最寄り駅が同じという、いわゆる地元民というやつで、
そのためタイヨウは毎日徒歩で学校まで登下校をしているのだ。
そのタイヨウの家は、学校からスタートすると学校の最寄り駅を間に挟んで、その先に位置する。
つまり電車通学であるオレとは、その最寄り駅までは帰り道が同じということだ。

まぁオレも電車通学とはいったものの、乗るのはたった2駅ぶんなのでその気になれば自転車通学もかんたんにできるのだが、こだわりをもってあえて電車通学にしている。

……だって電車通学ってなんか主人公っぽいイベントおきそうじゃね?(ちなみに今のところイベント数は0だが)
…やめようかな電車通学。


「しっかし、さんざんな1日だったよ今日は。雨宮アイツのせいで遅刻しかけるわ、飯は食い逃すわ」

結局2人とも購買についたときには、すでに特製プレミアムパンは売り切れで、タイヨウと転校生ヒロインの雨宮のパン買い競争はとりあえずドローに終わったらしい。

そして、これまた別のヒロインである幼なじみヒロインの野々村がタイヨウの分の弁当までキレイにたいらげていることも知らずに、そのまま購買でなにも買わずに教室に帰ってきたタイヨウは、野々村に
「なんでオレの弁当まで食ってるんだよー」
と抗議したが、野々村の
「フンだ、自分が先に購買にパン買いにいったんでしょ!?タイヨウのことなんか知りません!」
という逆抗議というか正論であっさり論破され、あわてて購買にトンボ返りするも購買には、すでに特製プレミアムパンどころか普通のパンもなにもかも売り切れて残っていないソールドアウト状態だったらしい。


ちなみに雨宮はそのまま購買で普通のパンを買ったらしく、購買にトンボ返りするために教室を出ていったタイヨウと入れ違いになるタイミングで教室に戻ってきた。

そんな雨宮に、二度目の購買でもなんの成果もあげられずに戻ってきたタイヨウは
「お前のせいで昼飯なくなったから1口くれ!」
とパンをせがんでいたが
「全然意味がわからないわ。絶対にイヤ!」
と断固拒否されていた。

てなわけで、めでたく昼飯抜きになってしまったタイヨウは空腹に耐えながら午後の授業をすごしたとさ。めでたし。めでたし。


…でもなんか昼飯ぬきとかも主人公っぽいよな。
そのあとの、無茶苦茶な理論で雨宮にパンせがむのとか天才的主人公センスだよな。
オレにはない発想だった。

オレはというと登校時に買っておいたコンビニの弁当をフツーに食べて、フツーに昼休みが終了してるし…。




まあ、なにはともあれ結局今日のところは主人公(タイヨウ)と転校生ヒロイン(雨宮)はエピソード1【最初の出会いは最悪】までで終わったようだ。


…助かったー。エピソード2【あれアイツいがいと良いやつなのかも?】まで進んでしまわなかったのはオレの主人公計画にとって明るいニュースだ。


「しかし雨宮、放課後はお前とケンカもしないでえらいおとなしくすんなりと帰っていったな?」
とタイヨウに問いかけた。

そう、オレとしては放課後には2人の仲直りイベントでも始まりのかと予想していたが、雨宮のほうがすんなりと帰ってしまったのだ。

「いや、全然おとなしくねーよ。『放課後までアナタに付き合ってるほど暇じゃないの』って捨てゼリフのこしていきやがったよ」

「なるほど。しかしなかなかにキツいお嬢さんだな雨宮鈴花」


いまのとこ、雨宮の(おそらく)ツンデレ属性のツンのとこしか見れていない。
しかもツンデレがデレるのは基本的に異性であれば主人公にのみだ。
主人公以外へのツンは、後にデレるときに感じるギャップ萌えのためのスパイスに昇華しょうかすることもなくツンのまま終わり、ただのツンツンにしかならないのである。
傷つけられるばっかりだ。

そして傷つけられるばっかりの筆頭候補が、主人公の親友ポジである、このオレだ…。
主人公の親友ポジのやつってけっこう辛らつなこと言われたり雑に扱われがちだよね…。かわいそう。


と他人事のような言いまわしをすることによって自分は主人公の親友ポジからの脱却、そして主人公になる!を目標にしていることを再確認しながらオレはそのためには、また明日からどうしていこうかと考えながらこうしたタイヨウと下校していた。


「しっかし腹へるよなー?どっかよってこうぜ?」

「いやそれ昼飯食えなかったお前だけだから。別にオレ腹へってないけど」

「いいじゃんか腹へって死にそうなんだよ。どっかよろうぜ?付き合えよ」 

これまた主人公が言いそうな、腹がへって力が出ね~的なセリフがよくもまぁコイツは自然と口からでるもんだ。

「しかたねーな、付き合ってやるよ。でも、どっかってどこ行くんだよ?」

ここらへんだとちょうどいい店どこだろう?
と歩きながら、まずは進行方向右、大通りの道路を挟んだむこうがわを見てみる、むこうにはコンビニ、ハンバーガー屋、カフェなどがあった。
まぁ軽く食事をとるとしたらあそこらへんが妥当なとこか。
じゃあオレたちがいま歩いてるほうはなんかあったっけか?
と、ふいっと左に顔を向けると真横は、オレとタイヨウも放課後ちょくちょく立ちよるゲームセンターだった。

今の目的とは関係なし、とゲームセンターから目をそらそうとしたとき
ん?っと、そのゲームセンターの中で一瞬みえたある光景がひっかかって、もう1度ゲームセンターのほうに振り向いた。

そして今度はしっかりとゲームセンターの中を確認したオレは、その中の光景に思わず足を止めてしまった。


……おいおいおい?マジかよ?

……たぶんアレ、アイツだよな?


そんなオレに気づかずに、どこいこーかな(ルンルン)と、キョロキョロとまわりを見ながら歩きつづけていたタイヨウは、オレが足を止め立ち止まっていることに気づいて道をひきかえしてきた。
そしてオレが立ち止まって見ているのその場所がゲームセンターであることに気づいて、ドッっと笑った。

「って、おい!確かにどっかよろうって言ったけどここゲーセンじゃねーか。飯だよ飯!腹へってんだってのっ!!」

とゲームセンターの前で立ち止まったのはオレのボケだと思ったのだろう、ツッコミをいれてきた。

しかし、とうのオレは別にボケをかましたわけではなくゲームセンターの店先から、その中の様子に釘付けになっていた。

そんなオレの様子を疑問に思ったのだろう、タイヨウはオレの視線の先をおってゲームセンターの中を見た。
そしてその中の光景を確認して、オレと同じことに気づいたらしい。

「ん??…アレって?」

そこにはゲームセンター入り口のすぐそばにあるクレーンゲームの近くに立つ雨宮鈴花あめみやすずかの姿があった。


そしてその雨宮をとり囲むように3人のチャラくて悪そな男子高校生が立っていた。



あっちゃ~~~。

このパターンのあるある出ちゃったかぁ~~。

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