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2話
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「母上?」
クリスティーナの息子は今年で三歳になるらしい。
クリスティーナの息子を見た瞬間に少しづつ彼女の記憶が私にも流れ込んでくる。
「クリスティーナ様。男の子が生まれましたよ」
彼女の最初の息子との思い出が流れてくる。その時の彼女は笑顔で優しい笑みを浮かべていた。
「私の可愛い息子……」
本当に我が子を愛しているのだと見ただけでわかった。
でもその一年後
ガシャーン
クリスティーナは実の息子のロンに(ロンと言うのはクリスティーナの息子の名前だ)物を投げて冷たく突き放す。
「私に、近づかないでよ。この化け物!!!!!!!」
なぜ彼女がいきなり豹変してしまったのかはまだ記憶が曖昧でわからない。
でも何かがあって自分の息子を拒絶したのだけはわかる。
それから彼女はロンに近付かなくなっただけではなく、今私たちがいる離れ部屋と押し込み放置した。
父親であるカティーがロンのお世話をしていたが、彼女の口からは二度と息子の話をすることはなかった。
「……」
今私がクリスティーナだから。だから息子に、ロンに向き合わなきゃいけないのに体が固まって動かない。声も出せない。
体が全面的に拒否をしている。
「母上⁇やっぱり僕のこと嫌い?」
今にも泣き出しそうな顔で、ロンは私を……ううん。母親を見つめる。
ロンは嫌われたくない。わがままを言ってはいけない。我慢しなきゃいけない。じゃないと、捨てられてしまうから。愛情をもらえないから。そう思っているのだろう。
私も今にも泣き出しそうだったが、涙がをグッと堪えて、ロンに近づいた。
「はぁはぁ!」
ロンに近づけば近づくほど息が荒くなる。でも前に進む。今ここで向き合わなければロンをこの先も一生傷つけることになる。私は彼女のようにはなりたくない。クリスティーナと同じ道を辿りたくない!
ロンの目の前に立ち震える手でロンを抱きしめ謝った。
「……今までごめんなさい。私が自分勝手であなたを傷つけて、本当にごめんなさい」
「は、母上……」
ロンは私を抱きしめ返し大声で泣き出した。
「ぼ、僕、母上に嫌われてんだって!全然会いに来ないから寂しかったよおお!うわあああん!!!!!!!」
がむしゃらに泣くロンをきつく抱きしめ何度も謝った。
カティーがそんな私たちを黙って見守る。
「ロン。これからは三人一緒だからね。絶対にもうあなたを離さない。命に変えても守るから」
私はロンにそう約束し家族三人で家に帰った。
「ロン。今日はロンの好きな物をたくさん食べましょうね?」
今の私はロンの好きなものすら知らない。だからひとつづつ知っておこう。ロンのことをもっと知りたいから。
「ぼ、僕ねぇ、母上のクリームシチューが食べたい」
ロンは無邪気にそう笑いながら言った。
ロンが笑うたびに私の心の奥底が痛む。
この痛みがなんなのか知るのはまだ先のお話だ。
クリスティーナの息子は今年で三歳になるらしい。
クリスティーナの息子を見た瞬間に少しづつ彼女の記憶が私にも流れ込んでくる。
「クリスティーナ様。男の子が生まれましたよ」
彼女の最初の息子との思い出が流れてくる。その時の彼女は笑顔で優しい笑みを浮かべていた。
「私の可愛い息子……」
本当に我が子を愛しているのだと見ただけでわかった。
でもその一年後
ガシャーン
クリスティーナは実の息子のロンに(ロンと言うのはクリスティーナの息子の名前だ)物を投げて冷たく突き放す。
「私に、近づかないでよ。この化け物!!!!!!!」
なぜ彼女がいきなり豹変してしまったのかはまだ記憶が曖昧でわからない。
でも何かがあって自分の息子を拒絶したのだけはわかる。
それから彼女はロンに近付かなくなっただけではなく、今私たちがいる離れ部屋と押し込み放置した。
父親であるカティーがロンのお世話をしていたが、彼女の口からは二度と息子の話をすることはなかった。
「……」
今私がクリスティーナだから。だから息子に、ロンに向き合わなきゃいけないのに体が固まって動かない。声も出せない。
体が全面的に拒否をしている。
「母上⁇やっぱり僕のこと嫌い?」
今にも泣き出しそうな顔で、ロンは私を……ううん。母親を見つめる。
ロンは嫌われたくない。わがままを言ってはいけない。我慢しなきゃいけない。じゃないと、捨てられてしまうから。愛情をもらえないから。そう思っているのだろう。
私も今にも泣き出しそうだったが、涙がをグッと堪えて、ロンに近づいた。
「はぁはぁ!」
ロンに近づけば近づくほど息が荒くなる。でも前に進む。今ここで向き合わなければロンをこの先も一生傷つけることになる。私は彼女のようにはなりたくない。クリスティーナと同じ道を辿りたくない!
ロンの目の前に立ち震える手でロンを抱きしめ謝った。
「……今までごめんなさい。私が自分勝手であなたを傷つけて、本当にごめんなさい」
「は、母上……」
ロンは私を抱きしめ返し大声で泣き出した。
「ぼ、僕、母上に嫌われてんだって!全然会いに来ないから寂しかったよおお!うわあああん!!!!!!!」
がむしゃらに泣くロンをきつく抱きしめ何度も謝った。
カティーがそんな私たちを黙って見守る。
「ロン。これからは三人一緒だからね。絶対にもうあなたを離さない。命に変えても守るから」
私はロンにそう約束し家族三人で家に帰った。
「ロン。今日はロンの好きな物をたくさん食べましょうね?」
今の私はロンの好きなものすら知らない。だからひとつづつ知っておこう。ロンのことをもっと知りたいから。
「ぼ、僕ねぇ、母上のクリームシチューが食べたい」
ロンは無邪気にそう笑いながら言った。
ロンが笑うたびに私の心の奥底が痛む。
この痛みがなんなのか知るのはまだ先のお話だ。
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