婚約破棄したのに元婚約者がしつこく付き纏ってきて困っています

上野佐栁

文字の大きさ
上 下
11 / 11

条約

しおりを挟む
 「ジェンダー嬢落ち着け。そろそろ本題に入りたいのだが......」
 「はっ⁉︎す、すみません!頭に血が上ってその......失礼なことを言ってしまい申し訳ございませんでした‼︎」
 「別に良い。それよりも条約だな?」
 「はい。人と魔獣が安心して暮らせるように我々も善を尽くします」
 「うむ」
 「魔獣は人を襲ってはならない。そして人間も魔獣を狩ったり襲うことを禁止されます」
 「まぁいいだろ。そうだ。マリー。お前に頼みがある」
 「頼みですか?」
 何だか嫌な予感がするような......。  
 「北の国にある氷の島におかしな噂がある。それをマリー。お前に解決してほしい。それが出来たら考えてやってもいい」
 「ジェンダー嬢だけで行かせるのですか⁉︎」
 「ああ。言って悪いが、マリーは警戒されなさそうだからな」
 「うぐっ!」
 心にざっくりと刺さりました。私って威厳とかないのでしょうか?まぁありすぎても困りますがなさすぎるのはどうかと思います。
 「僕は一緒に行く!」
 「駄目だ。あいつらは男を嫌う。だが、マリーなら上手く潜入出来るはずだ。危なくなったら俺が止めに入るし怪我などは絶対にさせない。そこは誓おう」
 「......ジェンダー嬢だけで行かせるのは少し抵抗感が......」
 「......やります!」 
 「ジェンダー嬢⁉︎」
 「マリー何を言っているんだ⁉︎」
 「私が魔王様の頼み事を聞いて皆が救われるのならやります。やらせてください‼︎」
 何も出来ないただの伯爵令嬢にはなりたくない。私もお父様やお兄様みたいに誰かの役に立ちたいのです!
 「いい返事だ。だが、危険だと判断したら即逃げるように」
 「......わかりました」
 「ジェンダー嬢!本当に君ひとりで大丈夫なのか?これはかなり危険だぞ」
 「そうだ!純粋で無垢なマリーには身が重すぎる!やっぱり僕と結婚するべきだ」
 「何を言ってるんです?これは名誉なことです。それに誰も傷付かないで人のためになれるのなら私はやりたい。やりたいのです!」
 「で、でも......」
 「いつまでもお屋敷の中に閉じこもる世間知らずな小娘扱いはやめてください‼︎」
 「......っ!」
 「私だって何が出来るのならやりたいんです。魔王様の出された条件は私しか成立されない。なら私が直接行き皆のために......この国のためにも務めを果たして来ます」
 「ジェンダー嬢。私は正直反対だが、君がそこまで言うのならもう何も言わない。だが、必ず無事に戻ると約束してくれ。じゃないと心配で仕事にも手がつかなくなる。だからどうか無事で居てくれ」
 「はい」
 「マリー‼︎やっぱり僕は反対だ!君をそんな危険ことをさせるために婚約破棄をしたんじゃない‼︎君が何を言っても考えを曲げないのなら僕にも考えがある」
 「公爵。ジェンダー嬢に何かしてみろ。その時は君を潰す」
 「......」
 「納得してください」
 「......」
 公爵様は俯いたまま何も喋らなくなった。これで納得してくれたと思っていた。もっと公爵様を見ていればあんなことにはならなかったのに......。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

【完結】望んだのは、私ではなくあなたです

灰銀猫
恋愛
婚約者が中々決まらなかったジゼルは父親らに地味な者同士ちょうどいいと言われ、同じ境遇のフィルマンと学園入学前に婚約した。 それから3年。成長期を経たフィルマンは背が伸びて好青年に育ち人気者になり、順調だと思えた二人の関係が変わってしまった。フィルマンに思う相手が出来たのだ。 その令嬢は三年前に伯爵家に引き取られた庶子で、物怖じしない可憐な姿は多くの令息を虜にした。その後令嬢は第二王子と恋仲になり、王子は婚約者に解消を願い出て、二人は真実の愛と持て囃される。 この二人の騒動は政略で婚約を結んだ者たちに大きな動揺を与えた。多感な時期もあって婚約を考え直したいと思う者が続出したのだ。 フィルマンもまた一人になって考えたいと言い出し、婚約の解消を望んでいるのだと思ったジゼルは白紙を提案。フィルマンはそれに二もなく同意して二人の関係は呆気なく終わりを告げた。 それから2年。ジゼルは結婚を諦め、第三王子妃付きの文官となっていた。そんな中、仕事で隣国に行っていたフィルマンが帰って来て、復縁を申し出るが…… ご都合主義の創作物ですので、広いお心でお読みください。 他サイトでも掲載しています。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

処理中です...