悪党の執着心を舐めてた

上野佐栁

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9話

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 「この人形はもう十年の間動かない」

 「……」

 前回のあらすじ。ウィルがついに学園へと旅立ち私は侯爵家でひとりで過ごす時間が増えたよ。そこで好きだった本を読むために書庫へと行きそこに謎の扉。そしてヒロインのオートマタのステラに出会う。そしてヒロインは十年の間動くことなくずっと眠り続けているらしい。

                  説明以上

 「う、動かないって……このオートマタがですか?」

 ありえない。だって、この世界でのヒロインはこのオートマタだから。だからヒロインが眠り続けているだなんてありえるの?

 「このオートマタは十年前に俺も協力し完成したはずだった。だが、動かない。ずっとなぁ」

 「……」

 なんて言えばいいの?魔力量が足りない⁇そんなことはないと思うけど、じゃあ何が足りないの?

 私はそう考えているうちにあることを思い出した。

 「「ステラは神力と魔力を同時に使いこなすことができる」」

 「もしかして」

 魔力だけじゃない。神力が足りないんだ。

 前に侯爵様が言った。私には神力があると。だったらヒロインを動かせるのでは?

 私はステラにそっと触れ自分を信じ神力?の言動源を探し力を使った。

 「な、なんだこの光は⁉︎」

 部屋全体に広がる光。これが私の力?異世界転生者の特権ってやつなの?わからないけど、これでステラを目覚めさせられる。

 ステラはピクッとまぶたを動かしゆっくりと目を開ける。

 「う、嘘だろ?」

 信じられないといった顔でまばたきをしもう一度ステラを見る。

 ステラは体を起こし私の方をじっと見つめてこう言った。

 「はじめまして。私はあなた様にお支えする戦闘用兼愛玩用オートマタです」

 「……」

 私が知っているステラはもっと感情豊かでおしとやかで雰囲気が柔らかい子だ。

 だけど、今のステラは冷たく感情という感情が抜け落ちたかのような顔つきだ。

 「は、はじめまして。私はルディ.クララです。これからよろしくね」

 私が手を差し伸べると首を傾げて私を見つめる。

 「これはいったいなんですか⁇」

 本当にわからないのだろう。きっと握手も人と喋ったことすらないオートマタだから何も知らないのだろう。

 「これは握手。お友達になって」

 私が笑顔でそう言うと冷たい表情で冷たい声でこう言った。

 「それは命令ですか?」

 「えっ……」

 私が戸惑っていると侯爵様が私の肩にそっと手を置きもう寝室に戻りなさいと言った。

 「この子には感情はない。そうゆー風に作っているから」

 「そ、そんな!」

 ステラに感情はない。だったら今まで描かれていたステラはいったいなんなの⁇

 「私のオーナーはどちらですか?」

 ステラはそう質問し侯爵様は私だと言った。

 「えっ?えっ、ええええええ!!!!!!!」

 私が驚き声を上げてしまった。

 「君が動かした。だから君がこのオートマタのオーナーだ」

 そう言ってきた。

 ヒロインが感情がないだけでも混乱するのにまさかのヒロインのオーナーになるとか勘弁してよ!

 そう思いながらも私の願いは叶わずステラが私のそばにいることになったのであった。
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