悪党の執着心を舐めてた

上野佐栁

文字の大きさ
上 下
1 / 22

1話

しおりを挟む
 みなさんこんちは。そして初めまして。私の名前はルディ.クララでもなくて、翼木元枝と言います。そういわゆる異世界転生です!

 なぜそうなったかというと、お恥ずかしいながら餅を喉に詰まらせて死んでしまったんです。

 「うぐっ!」

 チーン

 そして気がついたら昔趣味で読んでいた小説の世界に転生してしまったのです。

 タイトル:君に心臓を捧げる

 タイトルだけ見ると少しホラー要素があるのかなぁって思うでしょう⁇違うんです。ホラーどころかほんっとにグロと恋愛とメンヘラやヤンデレ要素がたっぷりと詰まったヤバすぎる小説なんです。

 そして私、ルディ.クララは序盤で雑に死ぬモブキャラなんです。

 たしか馬車に轢かれて死んだはず?なにぶん昔の小説だから覚えてない!

 「あははは!」

 じゃない!!!!!!!

 そろそろ本題に入ります。

 本当に唐突だなぁ!!!!!!!

 「うーん?この時点でのルディは知らないのよね?」

 彼女が死んだのは多分だけど、十歳から十二歳の間のはず。

 なぜかというと、この時代で働きに出れるのは十歳からだからだ。

 「確かに馬車で死んだけど……働きに出る途中って書いてあった」

 今の私は四歳だ。

 「だからまだ時間はある。だからその間に安全なところで安全に生きられるように計画を立てないとね」

 ルディの家は平民で貧乏だ。

 「ルディごめんね?今日はパン一切れしかなくて……」

 お母さんが申しわけさなそうに言う。

 「別にいいよ」

 私がそうそっけなく答える。

 「父さんが働けたらいいんだが、この体ではまともに動けん」

 父は病気で体を動かすだけでも辛そうだ。

 「……」

 昔のことを思い出してしまった。

 昔私には姉がいた。でも姉は未知の病にかかり数ヶ月もしないうちに死んでしまった。姉と今の父が重なる。

 「お母さんが頑張って働くからね」

 そうにっこりと微笑む。

 でもその矢先に母が死んだ。強盗に襲われ所持金も持ち物も命も全て失った。

 「……」

 私はショックで何も言えなかった。涙さえも出てこないまま数日後には後を追うように父もなくなりひとりぼっちになった。

 「転生してまで不幸だなんて……」

 大好きな姉が死に姉の形見であるブレスレットは付き合っていた彼氏に壊され捨てられ別れ後も会社は倒産。新たに就職するも人間不信になっていた私は会社の人たちとコミニュケーションがうまくいかずに孤立。しまいにはたまたま買った餅で喉を詰まらせて死亡。あまつさえ両親を失い帰る家すらない詰んだ幼子。

 「これからどうしろと⁇」

 私は行く宛がないのでとりあえず路地裏に隠れていた。

 「安全に暮らすどころか今危険な状態。詰んだわね?」

 もうばからしくなる。

 そう思っていた。

 路地裏で生活するようになって数週間たったある日、薄い紫髪の男の子がうずくまっていた。

 「……」

 男の子はお腹をずっと鳴らしながらふとこっちを見てきた。

 「……」
  
 男の子の瞳は濃い緑。綺麗だ。

 「ね、ねぇ?こんなところで何をしているの?」

 私みたいに親なしがたじろぐところで何をしているかと尋ねると家出をしたそうだ。

 「家出⁇」

 私が聞き返すと親と喧嘩したから家出をしここに辿り着いたらしい。

 「そう。私はねぇ親がいないの」

 「……」

 男の子は黙って私を見つめる。

 「君、お腹が空いているならこれあげるよ」
  
 昔から仲良くしてくれた近所のおばさんからもらった果物。今回はたくさんもらったので分け与える余裕がある。

 「私の名前はルディ!君のお名前は?」

 私が名前を尋ねると少し黙った後で教えてくれた。

 「……ウィル」

 ウィルは私の裾をそっと掴み耳元でこう言った。

 「ありがとう」

 私は驚いたがそれでもお礼を言われると嬉しい。

 「どういたしまして!」

 これが彼との悪党との出会いだった。彼に優しくしたことで一生執着される未来が待っているとはこの時の私は知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。

あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!? ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。 ※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。

人形師の第三夫人は傍観者

久守 龍司
恋愛
富裕な伯爵家の第三夫人であるテオドラは日々平穏に過ごしていたが、第一夫人と新入りの第五夫人の関係が悪化し、その諍いに巻き込まれることになる。あくまで傍観者を決め込みたい彼女の話。

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています

平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。 自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

処理中です...