テンペスト

上野佐栁

文字の大きさ
上 下
24 / 29

鎖 茨城

しおりを挟む
 「あなた誰?」

 「わたくしは上級クラスのテンペスト鎖 茨城ですわ。よろしくですわ」

 「……」

 殺気の圧が強い。

 約一時間前

 「雨晴 風華!」

 テンペストが一斉に襲いかかる。

 確かに強いけど、前に比べるとなんだか弱い?なんで?

 「ここで貴様を確保する!」

 ひとりのテンペストが私の肩に触れそうになるが私はそれを避けて核を壊す。

 よくわからないけど、前よりはあの日の私の中での敗北から確実に強くなっている。

 「ここでくたばれ!」

 上から鉛のような剣を私の頭部めがけて刺そうとしてくる。

 私は刀で受け止めそのまま右へと吹き飛ばした。

 「ぐっ!」

 背後から気配を消しながらテンペストが近づいて来たが、その前に反射的に私が動き核を壊す。

 テンペストが崩れ落ちまたテンペストストーンを落とす。これで何個目だろ⁇ずっと攻撃を仕掛けられていたので何人目かわからなくなってしまった。

 「はぁはぁ!流石にここまで多いと疲れる」

 体力を回復されつつテンペストを倒す。今私にできるのはそれぐらいだ。

 「雨晴⁉︎」

 後ろから聞き覚えのある声がした。

 「えっ?龍春さん⁇」

 なんで彼がそこにいるの?私にはわからない。だけど、これだけ派手にテンペストとドンバチしていたらテンペスト学園の人たちがやって来てもおかしくない。

 だけどその考えは今は思いつかなかった。

 「雨晴。ここは中級クラスのテンペストがたくさんいる。お前はまだ下級の四なんだから単独で動くな」

 「ご、ごめんなさい」

 そう。私はあれから階級が上がっていたのだ。

 だけどまだ下級。だから単独行動は本来できない。だけど、私はこの学園を出たからもうそんなの関係ない。

 「あらあら?風華様にもお仲間がこんなにたくさんおられたのですね?うふふ」

 背後からとてつもない殺気を感じた。今の今まで全く気づかなかった。まるで今ここに来たかのように私たちの後ろに立っていた。

 そのテンペストは私に手を差し伸べてこう言った。

 「早く帰りましょう⁇風華様」

 にっこりと笑うテンペストは不気味だった。

 見た目は私と同じ人間の姿だが、気配はもう人間じゃない。殺気が凄まじく見つめられるだけでも凍りつきそうな感じだ。

 「風華様。あなた様を迎えに来たのですの。こんなやつらといる必要はないですわ。早く帰りましょう」

 そう微笑んだが、彼女の笑顔は本当に怖い。なぜそう思うのかわからない。だけど、怖くてジメジメとした違和感。
 
 「雨晴⁇テンペストの元に帰るってどうゆーことだ⁇」

 ずっと黙っていた龍春さんがポツリとそう言った。他の人たちもそう思っている。

 「私、私は……」

 私は自分がテンペストであることを打ち明けようした。だけど喉まで出かかった言葉が詰まる。言いたくない。知られなくない。そんな気持ちが胸の奥底から溢れてくる。

 「……」

 鎖は私に近づき「もういいですわよ?」と言った。

 気がついたら両手両足が鎖で繋がれていた。

 「えっ……」

 何にも見えなかった?

 「雨晴!!!!!!!」

 壁につい込んだ鎖は硬く解けない。手足をもぎ取ってでも動かなきゃ。だけどそれをすると私は動けなくなる。あの時どうして回復したのかはわからないくらい不思議だ。

 「離して⁉︎」

 私はそう叫んだけど、鎖はクスクスと笑うばかりで無視をする。

 「風華様は人間になりたいのですの?こんな脆くてなんの役にも立たない。餌でしかない下等生物なのに?」

 その言葉を聞くと頭に血が上る。前みたいな怒りでないけど、ひとりばかりするのは大概にしろ。そんな気持ちが沸々と湧き出てくる。

 「あなたは人の心を置いてきたのね?」

 私がそう低い声で言うとケラケラと笑いながらこう答えた。

 「わたくしはもうテンペスト。人でありませんのよ?もう人のことなんて忘れた。だからこそわたくしは輝けるのですのよ!」
  
 そう両手を挙げて笑顔のまま自分は恵まれていると言った。

 「わたくしはテンペストになり上級クラスになり天へと昇るぐらい強くなったですのよ」

 彼女の言葉が笑みがこんなにも気持ち悪さを覚えるなんて思わなかった。

 「今からひとりづつ殺して差し上げますわ」

 そう言って龍春さんに近づく鎖なのであった。

 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...