テンペスト

上野佐栁

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砥部さんからの贈り物

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 私は砥部さんの腕の中でわんわん泣いた後、疲れて眠ってしまった。気がついたら朝で、いつものように砥部さんの抱き枕にされていた。

 「……」

 砥部さんってもしかして甘えん坊?ここ最近は私が砥部さんを起こす。それがほぼ毎日続いている。

 「砥部さん起きてください。朝ですよ?」

 私の声かけにうーんとうめきながらも起き上がり私に抱きつく。

 「と、砥部さん?」

 まただ。もう私は死んでいるのに胸が痛い。心臓がドクンドクンと鳴り続ける。心臓が破裂しそうだ。

 「……っ!!!!!!!」

 「風華、おはよー」

 寝ぼけながらも挨拶をしふらふらと着替えに行った。

 「び、びっくりした」

 ここ最近は抱きついてこなかったのにいきなり抱きつくとか勘弁してほしい。

 「この気持ちなんなの?」

 そう思いながらも私も着替え朝食を済ませて私たちは授業に出た。

 「雨晴!」

 私に肩を叩き昼食を一緒に食べないかと誘ってくれた龍春さん。

 龍春さんと言うのは前に金髪の男の人のことだ。

 この人の名前は龍春 聖夜という人で明るく元気で、砥部さん同じ時期にこの学園に入学したいわゆるズッ友(龍春が勝手にそう喚いている)らしい。

 「龍春(風華は俺と食べる)だからだめだ」

 「おい!俺だからだめだってなんだよ!友達だろ?」

 龍春さんが砥部さんにそう怒鳴ったが、砥部さんは首を傾げてなんこと⁇みたいな顔をしたので、龍春さんは怒ってどこかに行った。

 「もう知らん!」

 「なんだあいつ?」

 「……」

 私はあえて何も言わなかった。何か言ってはいけない気がしたからだ。

 そしてその日の放課後

 「風華これあげる」

 砥部さんは私の目の前に鈴蘭の髪飾りを差し出してきた。

 当然のことで私は少し困惑したが、初めての砥部さんからの贈り物。

 「ありがとう、ございます!」

 とても嬉しい。鼓動が高鳴る。

 「この髪飾りは(昔俺が持っていた遺品の整理をしていたら)棚から出てきた。だから風華にあげるべきだと思った」

 「??????」

 棚になぜ髪飾りがあるのだろうか?

 その頃砥部の心の中ではこう思っていた。

 「……」

 この髪飾りは風華の物だろう。なぜかはわからんがそれを見つけた時に風華の顔が思い浮かんだ。そして今、風華が身につけたら誰かと重なった。

 「彰吾お兄ちゃんありがとう。ずっとずっと大切にするね」

 誰が妹なのか?いや違う。俺には妹はいなかった。だけど、妹ではないけどとても大切な人の形見。それがこの髪飾りだ。

 それなのに風華にあげるべきだと思った。それが正しい選択だと思った。

 やっぱり重なる。同一人物なのか?それとも似ているだけなのか?

 「砥部さん。この髪飾り絶対に大切にします。何があっても離しませんしずっとずっと大切にします!!!!!!!」

 私がそう言うと、少し驚いた顔をしたがそれでもくすりと笑い「そうだな」と言った。

 笑った顔がとても綺麗だびっくりした。砥部さんはあんまり笑わないけど、それでもその笑顔は私だけに向けられたものだと思うとすごく嬉しくなる。

 この髪飾りがまさか私たちの関係に亀裂が入るとはまだ知らない。
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