テンペスト

上野佐栁

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雨の中

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 ザァァー

 「雨……」

 どうして私は雨の中この場所で座り込んでいるの?私は何者なの?わかるのは名前だけ。どこに住んでいたのかそんな記憶が抜け落ちている。

 ただひとつ理解できるのは目の前に傘をささずに私を睨みつけている男。それだけだ。

 「お前はテンペストか?」

 男はそう聞いてきた。

 だから私も答える。

 「テンペストってなに⁇」

 男は少し驚いたような顔をしたが、すぐに真顔に戻り刀を私に向けてきた。

 「テンペスト。俺はお前たちを許さない」

 何を言っているの?まだ私は混乱しているのだろうか?自分の気持ちがわからない。

 普通ならここで逃げ出したり恐怖で足をすくむはずなのに何も感じない。

 「……」

 男は睨みつけながら私に質問をしてきた。

 「お前たちの親玉はどこだ?」

 「……⁇」

 質問の意味がわからない。親玉?誰のことを言っているの?

 私がきょとんとしていると男は怒鳴りさっきの質問を繰り返した。

 「答えろ!お前たちテンペストの親玉はどこにいる!!!!!!!」

 「……」

 知らない。わからない。テンペストの親玉って誰のことを言っているの?

 「……」

 なんなんだ。このテンペストは?普通なら何か言ってもおかしくない。だが、こいつは俺にビビりもせずにただ座っているだけ。今から殺されるのにそれすらわかっていない。

 ガサッ

 後ろから人の形をかろうじてとどめているテンペストらしきものが接近してきた。

 「やっと見つけたぞ。風華」

 「私の……名前」

 誰だろ?見覚えもない。だけど、なんだが嫌な感じがする。

 「お前はどうしたらテンペストらしくなるんだ?」

 「……」

 質問の意味がわからない。

 「お前でもいい。お前たちの親玉はどこにいる?」

 さっきの男が違うテンペストに質問した。

 そのテンペストは嘲笑うかのように教えないと言った。

 「だったら核を壊すまでだ」

 説明。テンペストには体のどこかに核が存在します。核はテンペストにとっては命と同じもの。核を壊されるとそのまま体が割れ崩れ落ちます。つまり核を壊さない限りはテンペストは絶命しません。足も手も生えます。

 テンペストには下、中、上級クラスが存在し上級クラスの上がテンペストの始祖、カトリーヌです。彼女がテンペストを作り魂に呪いを植え付けテンペストたちを凶暴化させています。

 

 テンペストは基本的には死者に魂を核に変え呪いを宿した状態で復活します。テンペストたちの間ではこう呼ばれています。リザレクションと呼ばれています。

 テンペストは負の感情や強い怒りを養分にし強くなっていきます。

 テンペストの特徴はみんな瞳が赤いと言うことと、体に変な紋様が浮かび上がっていることです。
                 説明以上‼︎

 「俺の核を壊す?人間風情が調子に乗るな!」

 そう言ってテンペストが男に襲いかかってきた。

 「はぁっはぁはぁ……」

 頭が心が言っている。助けろ。あの男を助けろ。人を死なせるな。人間を守れって!!!!!!!そう言っている。

 「……っ!!!!!!!」

 「ガハッ!!」

 俺は一度も見たことがない。テンペストがテンペストに攻撃をし核を壊す姿を俺は一度も見たことがない。

 ドサッ

 「クソが!!!!!!!このガキ‼︎俺たちを裏切りやがった。人間なんて負の感情を撒き散らして俺たちの栄養分にされちまえばいいんだよ」

 そう言いながらテンペストは絶命した。

 「お前はいったい……」

 驚きを隠せないかのように私を見つめてくる。

 「……」

 もしかしたらこの子供は他のテンペストとは違う。明らかに違う。まず言えるのはこの子供の瞳はアイスブルーだ。赤くない。体にも紋様がない。まだ完全なるテンペスト化をしていないだけかもしれない。だが、このテンペストがいれば辿り着けるのかもしれない。

 テンペストの親玉……いや。テンペストの始祖に辿り着けるのかもしれない。

 これが私とテンペスト狩りとの出会い。

 秋の夜にザァーザァーと降るための中で出会った私たちの始まり。

 「風華ちゃんがテンペスト狩りの手に堕ちたってほんと⁇」

 「ああ、あのお方が言っていた」

 「あいつなんでテンペスト化しないんだ?」

 「まだ人ひとり殺してないよ?」

 「それでは我々の計画の邪魔になる」

 「だが、あのテンペストはあのお方のお気に入りだ」
  
 「殺さずに捕えよ」

 「了解!!!!!!!」
 
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