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思い出す記憶

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 「......わかりませんか?」
 「だからなんの話だ?」
 「貴方にとって、一番大事な人のセリファです」
 「は?なにを言って......」
 「思い出してください。貴方の最愛の妻、ニールス.ハーンテリングはもうこの世には居ない」
 「そんなでたらめな事を言うな!」
 「でたらめなんかじゃない。青のレイセリファは貴方の妻なんかじゃない」
 「嘘だよなぁ?なぁ?ニールス」
 「ごめんなさい。私は貴方の本当の妻でもないし......ニールスでもないの。今まで騙してごめんなさい」
 もうこれで、貴方は振り向いてくれない。きっとあの人は怒って、罵詈雑言を浴びせてくるのかしら⁇これで、自分の恋は終わり......。
 「君は本当にニールスじゃないのか?」
 「......はい」
 「騙されていたのか」  
 「最初は幻を見せるだけでいいって思ってた。でも貴方に出会えて恋を知った。人を愛するのはこんなにも愛しくて......苦しい。そう思ったの」
 「......」
 「私は、ニールスじゃないから。いつまでも騙すわけにはいかないって思っていたのに......言えなかったの......」
 もう言葉が出てこない。怖い。嫌われたくない‼︎
 ギュッ
 「えっ?」
 「そうか。ありがとう」
 「え?えっ!?なんでお礼なんか......」
 「俺のために楽しい幻をありがとう。お陰でまた妻に会えた気がするよ」
 「うぅぅ......うわああん!ごめんなさい‼︎ごめんなさい。コンドルを騙してごめんなさい。私を許してくれてありがとう」
 「ああ」
 「いい感じに話が進んでいるな」
 「我も思わぬ方向へと進むのは予想外じゃ」
 「君のお陰で前に進めるよ。あの時の事は今でも胸が痛む。今度こそ娘を探す。そして連れ戻す」
 「......」
 そう思ってくれたのがもう数十年前だったらよかったのになぁ。
 「ニーアスは俺の大切な娘だ」
 「もうニーアスはこの世の何処にも居らんぞ」
 「は?」
 「とうの昔に死刑になっておるからなぁ」
 「何言ってんだよ」  
 「本当の事じゃ」
 「ニーアスが死んだ?い、いつだ?」
 「はて?我も知らんが......歳で言うと、十五だったか十六だったかで死んだはずじゃ。お主がもう少し早めに決断をしようものなら救えたかもしれんな」
 「......」
 「ファルミ‼︎そんな言い方......」
 「お主が一番よく知っておるじゃろう?」
 「そ、それは......」
 「よく聞くのじゃ。ラティス.ハンル.モールドはニーアスの生まれ変わりなのじゃよ。前世の記憶を持ったまま生まれた神に愛された子じゃ」
 「この子がそうだと言うのか?」
 「無論じゃ」
 「ニーアスなのか?本物の?」
 「......違います」
 「......え」
 「私は、ラティス.ハンル.モールドです。公爵の娘です」
 「......もう俺の娘だとは言ってくれないのか?」
 「はい」
 「どうして?」
 「私は今のお父様が大好きだからです。だからラティスとして余生をしっかりと生き抜きます」
 「......」
 「このセリファを受け取ってください」
 「このセリファがニールスなのか?」
 「はい。貴方に会うために今まで成仏もしないでこの世に留まり続けて居たんです」
 「......そうか」  
 「ラティス。今言うのはあれだけど......私はラティスの味方だからね」
 「ありがとう」
 「私も力を貸すよ。だから......名前を決めてくれる?」
 「貴方の名前は......ニーブルーはどうなぁ?ニーアス、ニールスの二人の名前を少しとって付けたんだけど......」
 「とってもいいわ!気に入ったわ」
 「良かった」
 「次のレイセリファを探すなら緑のレイセリファがいいわ。此処からかなり近いもの」
 「案内してくれるのかよ?」
 「もちろんよ」
 「行ってしまうのか?」
 「うん。次に会うまでに......本当の姿を見せるから。楽しみに待っててね」
 「ああ......待っている」
 元父が手を振りながら私達を見送ってくれる。隣には元母がありがとうって言うみたいにペコリと頭を下げた。そんな気がする。
 「緑のレイセリファをぜってえー仲間にするぞ」
 「カセリ。張り切ってるね」
 「おう!」
 「うむ。我達の前に従わぬものがおらんぞ」
 「あ、あはは」
 「私もこうして旅に出るのは初めてだから楽しみ」
 こうして四人で旅をする事になった。
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