51 / 145
思い出す記憶
しおりを挟む
「......わかりませんか?」
「だからなんの話だ?」
「貴方にとって、一番大事な人のセリファです」
「は?なにを言って......」
「思い出してください。貴方の最愛の妻、ニールス.ハーンテリングはもうこの世には居ない」
「そんなでたらめな事を言うな!」
「でたらめなんかじゃない。青のレイセリファは貴方の妻なんかじゃない」
「嘘だよなぁ?なぁ?ニールス」
「ごめんなさい。私は貴方の本当の妻でもないし......ニールスでもないの。今まで騙してごめんなさい」
もうこれで、貴方は振り向いてくれない。きっとあの人は怒って、罵詈雑言を浴びせてくるのかしら⁇これで、自分の恋は終わり......。
「君は本当にニールスじゃないのか?」
「......はい」
「騙されていたのか」
「最初は幻を見せるだけでいいって思ってた。でも貴方に出会えて恋を知った。人を愛するのはこんなにも愛しくて......苦しい。そう思ったの」
「......」
「私は、ニールスじゃないから。いつまでも騙すわけにはいかないって思っていたのに......言えなかったの......」
もう言葉が出てこない。怖い。嫌われたくない‼︎
ギュッ
「えっ?」
「そうか。ありがとう」
「え?えっ!?なんでお礼なんか......」
「俺のために楽しい幻をありがとう。お陰でまた妻に会えた気がするよ」
「うぅぅ......うわああん!ごめんなさい‼︎ごめんなさい。コンドルを騙してごめんなさい。私を許してくれてありがとう」
「ああ」
「いい感じに話が進んでいるな」
「我も思わぬ方向へと進むのは予想外じゃ」
「君のお陰で前に進めるよ。あの時の事は今でも胸が痛む。今度こそ娘を探す。そして連れ戻す」
「......」
そう思ってくれたのがもう数十年前だったらよかったのになぁ。
「ニーアスは俺の大切な娘だ」
「もうニーアスはこの世の何処にも居らんぞ」
「は?」
「とうの昔に死刑になっておるからなぁ」
「何言ってんだよ」
「本当の事じゃ」
「ニーアスが死んだ?い、いつだ?」
「はて?我も知らんが......歳で言うと、十五だったか十六だったかで死んだはずじゃ。お主がもう少し早めに決断をしようものなら救えたかもしれんな」
「......」
「ファルミ‼︎そんな言い方......」
「お主が一番よく知っておるじゃろう?」
「そ、それは......」
「よく聞くのじゃ。ラティス.ハンル.モールドはニーアスの生まれ変わりなのじゃよ。前世の記憶を持ったまま生まれた神に愛された子じゃ」
「この子がそうだと言うのか?」
「無論じゃ」
「ニーアスなのか?本物の?」
「......違います」
「......え」
「私は、ラティス.ハンル.モールドです。公爵の娘です」
「......もう俺の娘だとは言ってくれないのか?」
「はい」
「どうして?」
「私は今のお父様が大好きだからです。だからラティスとして余生をしっかりと生き抜きます」
「......」
「このセリファを受け取ってください」
「このセリファがニールスなのか?」
「はい。貴方に会うために今まで成仏もしないでこの世に留まり続けて居たんです」
「......そうか」
「ラティス。今言うのはあれだけど......私はラティスの味方だからね」
「ありがとう」
「私も力を貸すよ。だから......名前を決めてくれる?」
「貴方の名前は......ニーブルーはどうなぁ?ニーアス、ニールスの二人の名前を少しとって付けたんだけど......」
「とってもいいわ!気に入ったわ」
「良かった」
「次のレイセリファを探すなら緑のレイセリファがいいわ。此処からかなり近いもの」
「案内してくれるのかよ?」
「もちろんよ」
「行ってしまうのか?」
「うん。次に会うまでに......本当の姿を見せるから。楽しみに待っててね」
「ああ......待っている」
元父が手を振りながら私達を見送ってくれる。隣には元母がありがとうって言うみたいにペコリと頭を下げた。そんな気がする。
「緑のレイセリファをぜってえー仲間にするぞ」
「カセリ。張り切ってるね」
「おう!」
「うむ。我達の前に従わぬものがおらんぞ」
「あ、あはは」
「私もこうして旅に出るのは初めてだから楽しみ」
こうして四人で旅をする事になった。
「だからなんの話だ?」
「貴方にとって、一番大事な人のセリファです」
「は?なにを言って......」
「思い出してください。貴方の最愛の妻、ニールス.ハーンテリングはもうこの世には居ない」
「そんなでたらめな事を言うな!」
「でたらめなんかじゃない。青のレイセリファは貴方の妻なんかじゃない」
「嘘だよなぁ?なぁ?ニールス」
「ごめんなさい。私は貴方の本当の妻でもないし......ニールスでもないの。今まで騙してごめんなさい」
もうこれで、貴方は振り向いてくれない。きっとあの人は怒って、罵詈雑言を浴びせてくるのかしら⁇これで、自分の恋は終わり......。
「君は本当にニールスじゃないのか?」
「......はい」
「騙されていたのか」
「最初は幻を見せるだけでいいって思ってた。でも貴方に出会えて恋を知った。人を愛するのはこんなにも愛しくて......苦しい。そう思ったの」
「......」
「私は、ニールスじゃないから。いつまでも騙すわけにはいかないって思っていたのに......言えなかったの......」
もう言葉が出てこない。怖い。嫌われたくない‼︎
ギュッ
「えっ?」
「そうか。ありがとう」
「え?えっ!?なんでお礼なんか......」
「俺のために楽しい幻をありがとう。お陰でまた妻に会えた気がするよ」
「うぅぅ......うわああん!ごめんなさい‼︎ごめんなさい。コンドルを騙してごめんなさい。私を許してくれてありがとう」
「ああ」
「いい感じに話が進んでいるな」
「我も思わぬ方向へと進むのは予想外じゃ」
「君のお陰で前に進めるよ。あの時の事は今でも胸が痛む。今度こそ娘を探す。そして連れ戻す」
「......」
そう思ってくれたのがもう数十年前だったらよかったのになぁ。
「ニーアスは俺の大切な娘だ」
「もうニーアスはこの世の何処にも居らんぞ」
「は?」
「とうの昔に死刑になっておるからなぁ」
「何言ってんだよ」
「本当の事じゃ」
「ニーアスが死んだ?い、いつだ?」
「はて?我も知らんが......歳で言うと、十五だったか十六だったかで死んだはずじゃ。お主がもう少し早めに決断をしようものなら救えたかもしれんな」
「......」
「ファルミ‼︎そんな言い方......」
「お主が一番よく知っておるじゃろう?」
「そ、それは......」
「よく聞くのじゃ。ラティス.ハンル.モールドはニーアスの生まれ変わりなのじゃよ。前世の記憶を持ったまま生まれた神に愛された子じゃ」
「この子がそうだと言うのか?」
「無論じゃ」
「ニーアスなのか?本物の?」
「......違います」
「......え」
「私は、ラティス.ハンル.モールドです。公爵の娘です」
「......もう俺の娘だとは言ってくれないのか?」
「はい」
「どうして?」
「私は今のお父様が大好きだからです。だからラティスとして余生をしっかりと生き抜きます」
「......」
「このセリファを受け取ってください」
「このセリファがニールスなのか?」
「はい。貴方に会うために今まで成仏もしないでこの世に留まり続けて居たんです」
「......そうか」
「ラティス。今言うのはあれだけど......私はラティスの味方だからね」
「ありがとう」
「私も力を貸すよ。だから......名前を決めてくれる?」
「貴方の名前は......ニーブルーはどうなぁ?ニーアス、ニールスの二人の名前を少しとって付けたんだけど......」
「とってもいいわ!気に入ったわ」
「良かった」
「次のレイセリファを探すなら緑のレイセリファがいいわ。此処からかなり近いもの」
「案内してくれるのかよ?」
「もちろんよ」
「行ってしまうのか?」
「うん。次に会うまでに......本当の姿を見せるから。楽しみに待っててね」
「ああ......待っている」
元父が手を振りながら私達を見送ってくれる。隣には元母がありがとうって言うみたいにペコリと頭を下げた。そんな気がする。
「緑のレイセリファをぜってえー仲間にするぞ」
「カセリ。張り切ってるね」
「おう!」
「うむ。我達の前に従わぬものがおらんぞ」
「あ、あはは」
「私もこうして旅に出るのは初めてだから楽しみ」
こうして四人で旅をする事になった。
0
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
婚約破棄されたので王子様を憎むけど息子が可愛すぎて何がいけない?
tartan321
恋愛
「君との婚約を破棄する!!!!」
「ええ、どうぞ。そのかわり、私の大切な子供は引き取りますので……」
子供を溺愛する母親令嬢の物語です。明日に完結します。
【番外編】貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
『貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。』の番外編です。
本編にくっつけるとスクロールが大変そうなので別にしました。
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる