愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

上野佐栁

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 「お嬢ちゃん達。早く村長の所へと帰った方が身のためよ?」
 「お主はそこまで腐っておるとはな」
 「は?」
 「お主は何もわかっておらん。ただ幻を見せるだけでは意味がないのじゃ」
 「......わかっているわよ」
 「なら何故じゃ?」
 「恋してしまったのよ」
 「え?恋したって......えっ?ええええ!?」
 「最初はただの気まぐれだったのよ。でも......あの人をコンドルを次第に好きになってしまったのよ。精神が不安定だから私が、ニールスになるって決めたのよ」
 「それって正しいのかよ?」
 「そうね。正しくないわね」
 「じゃあなんで幻を解かない」
 「解いてどうするの?あの人はもう心が壊れているのよ。そんな状態で元に戻したら人を殺しかねないわ」
 「......」
 「ねぇ、元ニーアスとして意見を聞かせて」
 「え?」
 「貴方はこのままの方がいい?それとも違う道に進んで欲しいの?」
 「私は......」
 「ニールス⁇そろそろ昼ご飯だ。行こう」
 「え、ええ......この話はまた今度ね。コンドルは私が守るから」
 「......」
 何も言えなかった。本当にこのままでいいの?元父とは言え、もう他人なのよ?他人にかまっていられるほど暇じゃない。
 「主人様」
 「ラティスよ。少し休もうぞ」
 「うん」
 「あの村長さん。お願いがあるんです」
 「何かのう?」
 「それは......」
 とある墓地
 「......此処が元母のお墓」
 少し前
 「ニールスさんのお墓を教えてください」
 「はて?どうするかのう?」
 「どうしても手を合わせたいんです‼︎」
 「良かろう。ただし一人で行くんじゃぞ」
 「はい」
 「......ニールスお母様。ラティスことニーアスです。私も死んで転生しました。でもお父様は......」
 「......れ......って‼︎」
 「え?」
 目の前に紫のセリファが浮かんでいた。
 「お願......い。あの......人......の元に......連れて......行って‼︎」
 「もしかしてこれ......」
 私はなんとなくだが、このセリファがなんなのかがわかった。これはきっと......。
 「あれ?君は......」
 「ラティスです」
 「あー。そうそう。ラティスさんだね。俺に何の用かなぁ?」
 「そろそろ現実を受け入れてください」
 「......は」
 「もう貴方の妻も娘も居ないんですよ!」
 「な、何を言って......」
 「ラティス!?待って!まだ早いわ!」
 「ごめんね。でもこれ以上は茶番に付き合う気ないから!」
 「......わかったわ」
 「さっきからなんの話をいているんだ?俺の家族がもう居ないってそんな冗談はやめてくれよ」
 「冗談じゃない‼︎だって私は......ニーアスだったんだもん」
 「......」
 驚いて声すら出ない元父。これ以上言えばきっと発狂するだろう。でもこの現実を受け入れれば前に進めるそう思った。
 「ニールスは......お母様は死んだ!それが現実です」
 「......嘘だ」
 「本当です!」
 「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ‼︎」
 「......」
 「そんなわけがない‼︎ニールスが死んだ?はっ?笑わせるな!目の前に居るだろうがよ‼︎」
 「私の目にはただ、セリファが浮いているようにしか見えません」
 「......」
 「それに......貴方に会いたいって言ってた人の為にも‼︎貴方には現実と向き合ってもらいます」
 「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ‼︎俺は悪くない‼︎悪いのは娘と妻を奪った奴らだ!」
 「そうですね。しかし今はその事は関係ない」
 「そうか......お前が奪ったんだ。俺の妻をニールスを奪ったんだ!返せよ!この泥棒‼︎」
 「......やめ......て」
 「は?誰だよ。この薄汚れた宝石は?」
 「......」
 私はあえて何も言わなかった。失った悲しみ苦しみを受け止める時間が欲しいかもしれない。でも充分にその時間はあった。だからそろそろ受け入れなければならない。この先にある幸せを生み出すために。未来を見るために私は元父を正気に戻したいと思ったのであった。
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