上 下
39 / 145

愛された子

しおりを挟む
 「......ウリス。どんな理由があっても人を傷付けたり殺したりしちゃいけないんだよ?それに陛下を殺したらアリアスが悲しむ」  
 「......」
 「俺は皇帝が消えてくればいいと思うけど、ラティスがいやなら無理強いは出来ないな」
 ラティスがこそまで思っていてくれてたの?自分のせいで、自分がお父様を洗脳さえしなければ死なずに済んだのに......。
 「僕は君達に笑って欲しくて......」
 「その方法を間違えたら駄目だよ?」
 「そうだね。君の言う通りだ」
 「キュウ」
 「ま、マロン!?それにこれって......私のセリファ⁇なんでこんな所に?」
 「えっ?じゃあ今、ラティスが動いて居られるのは⁇」
 「皆んなが無事でよかったわ」
 「おおお、お母様!?」
 「ラティス!?」
 「力が抜けた......」
 マロンはいきなり私の頬にペロリっと舐めた。
 「マロン!?」
 瞬きした時にはもうマロン姿はなかった。
 「私の中に戻ったのね?ありがとうマロン。これからもずっと一緒だよ」
 「ニーアス」
 「私は、ニーアスではありません」
 「余の手を取ってくれるか?」
 「手を差し出す相手を間違えています」
 「余は間違ってなど......」
 「私はもう貴方の娘ではありません。それに手を取る相手は、アリアスです!」
 「余は......」
 「アリアスをどれだけ傷付ければ気が済むのですか?私達は貴方に陛下に愛されたかった。でも貴方は私達を見向きもしなかった‼︎見てくれたら少しは変わっていたかもしれない。だけど、貴方は変わろうとしなかった。そんな貴方に父親を名乗る資格はあるんですか?」
 「......っ‼︎」
 「私達は被害者です。貴方によって、ニーアスもアリアスも人生を狂わされたんですよ?違いますか?」
 「す、すまなかった。余を許してくれ‼︎」
 「言う相手を間違っています。アリアスをちゃんと見てあげてください。貴方が出来る償いはそのぐらいです」
 「......」
 「お、お父様。私は本当にお父様のことを心から愛しています。貴方に愛されたくて頑張ったんです」
 ギュッ
 「余の方こそすまなかった。余の過ちに気付いておったのに......怖くてその、アリアスやニーアスを直視出来なかった。そんな余を許してくれるか?」
 「もちろんですよ......お父様ああ‼︎うわーん‼︎」
 アリアスが心から笑うのはいつぶりだろう⁇でもよかった。仲直りしてくれた。
 「......ラティス。その俺もあんな事を言って本当に申し訳ない」
 「......」
 「俺の子は、セスだけだ。お前など、ただの小娘に過ぎん」
 「言われてみれば、髪とその瞳の色だけは、モールド家のものだ。でもそれを除けば、お前は赤の他人だ」
 「お前は俺の娘ではない」
 「お父様の......」
 「ラティス⁇」
 「馬鹿ああああああ‼︎」
 ゴンッ
 「ええええええ!?」
 「あ、顎に頭が直撃した!?」
 「い、痛そう......」
 「痛いに決まっているだろ⁇」
 「私すごく傷付いたんだから‼︎あんなこと言われて平気なわけないじゃん‼︎うわあああん‼︎」
 「ら、ラティス。な、泣かないでくれ!」
 「公爵様。他に言う事があるでしょ⁇」
 「ラティスを本当に大切で、アニーとしてではなく、ラティスとして、一人の娘として本当に愛している。とても大切なんだ」  
 「ゔわあああああん‼︎」
 「こ、これはどうしたら......」
 「答えはもうわかっているんですね⁇公爵様」
 ギュッ
 「泣かないでくれ。俺が悪かった。もうあんな事は二度と言わない。愛している。ラティス」
 「お父様‼︎」
 ようやく受け入れられる気がする。大切にてくれて、愛してくれて、今まで、私を育ててくれたお父様。壁なんてもういらない。ちゃんと受け止めてくれる人。だからもう疑ったりなんてしない。私もちゃんと言える気がする。
 「お父様。私もお父様のことが大好きです‼︎心から愛してる‼︎」
 「僕は僕は?」
 空気読め!
 「うふふ。セスお兄様も愛してるよ」
 「ラティス‼︎」
 ギュウウウウ
 す、凄い力!
 あの仮面舞踏会から二ヶ月が経過した。私達は今も変わらずに生活している。ひとつ変わった事は......。
 「ラティス‼︎遊びに来たよー‼︎」
 アリアスと今まで以上に仲良くなった事だ。それとレイセリファを全部、私が所有している。神に愛された子しか使えないレイセリファ。どっちが持つかで話し合った時にアリアスが
 「ラティスが持ってた方が都合がいいよ」
 と言ったので、今は私が持っている。お父様、セスお兄様ともとても仲良く暮らしている。最近は、ノワールが神の使いとして本格的に仕事をしているのであまり会えてない。寂しいけど、ノワールにも自分の人生がある。いつまでも守ってもらうわけにはいかない。私だけでもやっていける事を証明しなくちゃね。おとぎ話の中だけだと思っていた愛をちゃんと貰えてとても嬉しい。私も皆んなを愛せるように頑張りたいと思っている。これからも愛されるために生きて行くんだ。
         第一章神に愛された子達終わり
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生者の取り巻き令嬢は無自覚に無双する

山本いとう
ファンタジー
異世界へと転生してきた悪役令嬢の取り巻き令嬢マリアは、辺境にある伯爵領で、世界を支配しているのは武力だと気付き、生き残るためのトレーニングの開発を始める。 やがて人智を超え始めるマリア式トレーニング。 人外の力を手に入れるモールド伯爵領の面々。 当然、武力だけが全てではない貴族世界とはギャップがある訳で…。 脳筋猫かぶり取り巻き令嬢に、王国中が振り回される時は近い。

前世で医学生だった私が、転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります

mica
ファンタジー
ローヌ王国で、シャーロットは、幼馴染のアーサーと婚約間近で幸せな日々を送っていた。婚約式を行うために王都に向かう途中で、土砂崩れにあって、頭を強くぶつけてしまう。その時に、なんと、自分が転生しており、前世では、日本で医学生をしていたことを思い出す。そして、土砂崩れは、実は、事故ではなく、一家を皆殺しにしようとした叔父が仕組んだことであった。 殺されそうになるシャーロットは弟と河に飛び込む… 前世では、私は島の出身で泳ぎだって得意だった。絶対に生きて弟を守る! 弟ともに平民に身をやつし過ごすシャーロットは、前世の知識を使って周囲 から信頼を得ていく。一方、アーサーは、亡くなったシャーロットが忘れられないまま騎士として過ごして行く。 そんな二人が、ある日出会い…. 小説家になろう様にも投稿しております。アルファポリス様先行です。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

次は幸せな結婚が出来るかな?

キルア犬
ファンタジー
バレンド王国の第2王女に転生していた相川絵美は5歳の時に毒を盛られ、死にかけたことで前世を思い出した。 だが、、今度は良い男をついでに魔法の世界だから魔法もと考えたのだが、、、解放の日に鑑定した結果は使い勝手が良くない威力だった。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?

氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!   気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、 「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。  しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。  なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。  そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります! ✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...