死亡確定の敵キャラに転生したので全力で回避します

上野佐栁

文字の大きさ
上 下
14 / 41

真っ暗な影

しおりを挟む
 私は昔からバッドエンドが嫌いだった。悲しくなるから?ううん。きっと違う。私がリーリエだから。そうなるって何処かで確信をしていたから。だからバッドエンドが嫌い。私が死ぬ運命を変えたかっただけなんだ。リリアを救いたいだとかこの運命を変えるんだって思うのは私が死ぬのが嫌だったから。だからバッドエンドが大っ嫌い。
 「それを変えようとする自分嫌い」
 「そうだね。何も知らない。何もわからない。だからこそこの人生に意味がある」
 「......」
 「なのに貴方は何も考えずに首を突っ込んで何もかも駄目にした。だから私が変えてあげる。リーリエが私がなし得た無かったことを私が代わりにやってあげる。そうすればリーリエは救われる。そうなる運命」
 「......」
 「大丈夫。私が全てを包み込んであげる。だから何考える必要はない。ただの操り人形になればいい。そうでしょ⁇私」
 「......もう自分で考えるのも疲れた。この苦しみから解放されるならなんでもいい」
 もう何もいらない。リリアもハッピーエンドもいらない。私にはもう必要ない。
 ドンッドドドドドーン
 「リーリエ⁇なんの音だ?」
 「......」
 バンッ
 「げっ⁉︎何すんだよ......リーリエ⁇」
 なんだ?顔が墨汁を塗ったくったみたいに黒い。確認できるのは笑っていることぐらい。なんでだ?なんでいきなりこうなっているんだよ?
 「......」
 カチャッ
 「り、リーリエ⁉︎ま、待て......」
 バンバンバンバン
 「くそ‼︎」
 「リリア‼︎いきなりシルクロードの城を制圧ってどうゆーことだよ⁉︎」
 「リーリエが危険な気がするの。もうリーリエが帰って来ないみたいな......そんな嫌な予感がする」
 リーリエ。私の大切で可愛い妹。あの時再会した時からずっと、リーリエを取り戻すって心に決めていたの。だから必ずリーリエを連れ戻す。
 バッシャーン
 「水⁉︎」
 「はぁはぁ......くそ!なんなんだよ。リーリエ‼︎しっかりしろよ!」
 「デイモン‼︎」
 「ん?お前らはリーリエと一緒に居た奴ら」
 「何があった?」
 「今協力するしかないな。リーリエが暴走しているんだ」 
 「どうして⁉︎」
 「俺にも理由はわからない。だが、朝起きてリーリエの部屋まで行ったらもうリーリエはリーリエじゃなかった」
 「......」
 「俺じいちゃんから聞いたことがある。自分の中にはもうひとりの自分が居てその自分と代わるなって言われたことがある」
 「それって......」
 「リーリエはもうひとりの自分と入れ替わったのかもしれない」
 「そんなことって......」
 「じいちゃんの話だとその人にはとてつもない闇を抱え込んだ人だけがなる症状だって言ってた」
 「じゃあリーリエは闇を抱えているの?」
 「そうだな。じいちゃんの話が本当ならリーリエは相当な闇を抱え込んでいることになる。そしてそのもうひとりの自分と代わったってことはリーリエはその闇に負けたんだ」
 「......」
 「助ける方法はないのか?」
 「......ある」
 「それ何⁉︎」
 「共鳴すれば助けられるかもしれない。リーリエが閉ざした心の蓋を開けることができれば......もしくは無理やりこじ開けて出て来させるしかない」 
 「私がやる。リーリエの姉だもん。絶対にリーリエは心を開いてくれる」
 「できるのか?」
 「できるよ。リーリエと私は双子なんだから‼︎」
 「......」
 「リリアをサポートするぞ!」
 「おお!」
 バンバン
 「リーリエ!戻って来い!」
 「リーリエはそんな奴じゃない。誰かを無闇に傷付ける奴じゃない‼︎」
 「......」
 「リーリエ‼︎」
 お願い。この気持ち届いて。
 「共鳴‼︎」
 リーリエ。お願い。返事をして!私よ。リリアよ。そこに居るなら返事をして。
 「......帰って」
 「リーリエ‼︎」
 「もう私には何も残されてない。私はもう駄目なの。だから帰って」
 「嫌だ!リーリエを連れ戻すまでは......」
 「いい加減にして⁉︎」
 「リーリエ⁇」
 「その考えが私を追い詰めているってなんで気付かないの⁇なんでそんなに私を求めるの?私が居なくたって今までと変わらないじゃない!だからもう私のことは放っておいて」
 「そんなのっ......」
 「もうこれ以上私の中に踏み込んで来ないで!」
 ビリッ
 「きゃっ⁉︎」
 「リリア‼︎」
 ドサッ
 「......リーリエが私を拒絶した?」
 「......嘘だろ?あのリーリエがリリアを拒絶?」
 「なんでなんだよ。なんでリリアの声すら届かねーんだよ!リーリエ‼︎」
 「今度は俺がやる」
 「デイモンが?」
 「俺達は少なくても十年一緒だ。お前らが知らないリーリエを知っている。可能性は低いがやる価値はある」
 「......信じていいんだね?」  
 「ああ。俺を信じろ!」
 「わかった。私はリーリエのためにやるだけのことはする」
 「......」
 ゴオオオ
 「ほんっとお前ら姉妹だけあって、似た者同士だな!」
 「当然!」
 「俺もリーリエを助けたい。あの時は傷付けちゃったけど......今度は守る方に力を使いたい」
 「エース......クリフ......ありがとう」
 リーリエがもう諦めていても私は諦めないよ。リーリエを取り戻すの‼︎
 「リーリエ‼︎共鳴」
 「......」
 「リーリエ帰ろう。お前を待っている奴は沢山いるんだ。だから......」
 「......だからまた頑張れって?」
 「リーリエ⁇」
 「もう十分頑張ったでしょ⁇もう嫌なの。いつまでシルクロードの精神支配に苦しまなければならないの?」
 「お前そんなことを思っていたのか?」  
 「どうして⁇どうして私はリリアと敵対しなければならないの?こんなことをして誰も幸せになんてなれないのに......私がやって来たことは無意味だったんだよ。だから帰って」
 「リーリエ。お前がどれだけ拒絶してもお前を諦めきれないのは俺だけじゃないって覚えておけよ‼︎」
 「......」
 「......これ以上この子の心を掻き乱さないでくれる?」
 「誰だ⁉︎」
 「私はリーリエ。この世界がリセットされる前のリーリエ.クロムラム」
 「何言ってるんだ?リセット⁇この世界が⁇」
 「そうだよ。なんで皆んなの中にもうひとりの自分が居ると思う⁇」
 「考えたこともなかった」
 「一度リセットされたからだよ。本来リセットされる前の自分が本当の自分だったりするかもね。でも私はリーリエのためならなんでもできる。たとえそれがリーリエが望んでいないことだったとしてもね」
 「お前はそれで幸せなのかよ?」
 「幸せだよ。リーリエが笑ってくれるなら私はそれでいい」
 「そんな屁理屈......」
 「貴方達は自分が大事なんでしょ⁇リーリエみたいに誰かのために強くなったわけじゃないんだよね?リーリエはリリアを守りたい一心で強くなったの。だから貴方達とは済む世界も違う。リーリエは操り人形じゃない。私がそれを許さない」
 「お前さっきから何を言って......」
 「私の結末は私だけが知る。リリアはねぇ。禁断の魔術に手を出したの」
 「は?禁断の魔術?」
 「そう。禁断の魔術は全部で四つある。その中のひとつは時を操る魔法。その力は誰にでも使えるわけじゃない。本当に強く願いがあるものにしか使えない」
 「......」
 「リリアは願った。リーリエを助けたい。リーリエが生き残る世界にしてほしい。その願いに反応して禁断の魔術はリリアを選んだ。でもその力強すぎてリセット後の記憶はない」
 「......さっきから聞いていればお前は何もかも知っていて俺達の結末も知っているような口振りを......」
 「だって知っているもん」
 「え......」
 「シルクロードがどうなるとか誰が死んで誰が生き残るのかも知っている。逆に聞くけど、デイモンは何がしたいの?私の心を壊したいの?」
 「そんなことっ⁉︎」
 「でもやっていることは私が望まないこと。それにリーリエは知っているのよ。自分が二年後に死ぬことを......」
 「......」
 何も言えない。目の前に居る少女は言っていることはめちゃくちゃなのになぜか説得感がある。まるで囁くようにそうだって言われているようなそんな気がする。
 「もうこの世界から出て行きなさい。デイモン.クラック」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽りの恋人と生贄の三日間

有坂有花子
ファンタジー
三日目に生贄になる魔女が、騎士と偽りの恋人としてすごす三日間 「今日から恋人としてすごして」 珍しい容姿と強い魔力から『魔女』と疎まれていたリコ。ともにすごしてきた騎士のキトエと、辺境の城で三日間をすごすことになる。 「三日だけだから」とリコはキトエに偽りの恋人として振るまってほしいとお願いし、キトエは葛藤しながらもリコのお願いに沿おうとする。 三日目の夜、リコは城の頂上から身を投げなければならない、生贄だった。 ※レーティングは一応です

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...