上 下
13 / 41

変わりゆく未来

しおりを挟む
 バーン
 「はぁはぁ」
 「り、リーリエ⁉︎」
 「なんで戻って来たんだ?」
 「俺達と一緒にシルクロードを倒す気になったのか?」
 「違うわ‼︎」
 ビクッ
 「リーリエ⁇お、落ち着いて。なにがあったの?」
 「ん?なんだこの小袋は?」
 「エース。それに触れたら殺す」
 「え、ええ......」
 目がマジだ。これがなんだって言うんだよ⁇
 「リーリエ⁇これなんなの?私にもわかるように説明して」
 ガシッ
 「時間がないの⁉︎早く渡して‼︎」
 「は、はい......」
 リーリエの顔が怖い。
 「じゃあそうゆーことだから。ばいばい」
 「え?ま、待って......行っちゃった」
 「なんだったんだあいつ......」
 「さぁ⁇俺には関係ないから別にいいけどさぁ。お前ら本当にあいつを仲間だと思ってるのか?俺にはそうは見えねぇぞ」
 「......妹は私達の仲間だよ。今は心が離れているだけ。絶対に戻って来るよ」
 その考えがリーリエを追い詰めていることに気付くことができなかった愚かな自分を今でも責めている。責めらずにはいはれない。
 リーリエの部屋
 「リーリエ。お前マジで大丈夫か?」
 「はぁはぁ......う、うん。全力で行って帰って来たから疲れた」
 「そうか......」
 「はいこれ。シルクロード様に渡してね」
 「ああ」
 バタン
 「......」
 デイモンは悪い人じゃない。ただ尊敬する人を間違えただけの可哀想な人。でも可愛そうなのはリーリエの方。私に人生を奪われて。本物のリーリエは何処か消え。私は見て見ぬ振りをし続けていつまでこんなことをしなくてはいけないの?いつなったら解放されるの?
 「......もう疲れた」
 このまま目を覚ますことなく永遠に夢の世界に閉じこもった方がいいの?そうすれば私もリーリエも苦しまずに済むの?
 「もうわかんないよ。私は本当に栗原由梨なの?それとも......リーリエ.クロムラムなの?」
 それとも私は何者でもない。ただこの世界の異物なの?
 「ねぇ?こんな残酷な運命を変えられるのはリーリエだけなの。私はそれを信じるけど......もう疲れちゃったの?」
 「......私は気を失ったの?それとも眠ったの?」
 「私の質問に答えて。もう疲れちゃったの?」
 「......うん。もう疲れた」
 「......」
 「リリアの為に頑張ろう。誰にも負けないぐらい強くなってシルクロードを倒そう。そんな目標があったはずなのに......もうそれも私を縛る鎖。頑張らなきゃって思うよ。でももう疲れた」
 「じゃあ私に変わってよ。私がこの腐った運命を変えてあげる。リーリエが私が目覚める時にはもう誰も苦しくない世界が待っているからね」
 「......そうだね」
 もうなんでもいい。もう十年も耐えて来た。もう休みたい。キーラを殺した時点でもう私は私じゃない。そんな気がする。
 「そっちに行っては駄目。リーリエ。貴方まだやるべきことが残っているわ」
 「......もう幻覚まで見えて来ちゃった。キーラが目の前に居る。私を止めようとしている。ごめんね。私もう疲れた」
 こんな気持ちになるなら操り人形の方がましだった。何もできないくせに欲張るからこうなるのよ。
 「......リーリエ」
 「キーラを殺した自分を許せない」
 「......」
 「私はもう何もいらない。もう何も望まない。だからせめてリリアが幸せの世界になってほしい」
 「......リーリエ。貴方はそれでいいの?貴方は今まで数えきれないほどの努力と大切な友情を育んできた。それを全て捨てる気なの?」
 「友情?私にはそんなものないのに......努力も無だった。何もできない私は......誰も救えない。救われない‼︎」
 「......」
 「結局私がして来たことはリリアの邪魔だった。リーリエを苦しめるものだった。私は栗原由梨なの‼︎リーリエじゃない!」
 「もうそこから出ないつもり?そこに閉じこもって何もかも諦めて......自分自身を捨てるの?」
 「......出て行って」
 「リーリエ‼︎」
 「もう私の世界からこの夢から出て行ってよ!キーラ‼︎」
 「リーリエ.クロムラム‼︎貴方はそんな人じゃないはず。いつも明るくて何処か冷静で......そして誰よりも優しい。それがリーリエ.クロムラムでしょ⁉︎なのにどうしてこんなことになっているの?ねぇ⁉︎」
 「消えて。私の目の前から消えて‼︎」
 バンッ
 「この世界に閉じこもっても本当の幸せは来ない。だからこの世界から貴方も出るのよ。リーリエ‼︎」
 「消えて。消えて。消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて消えて」
 「り、リーリエ?」
 「この世界から消えて」
 「まだわからないの⁉︎」
 「この世界から消えて」
 「リーリエ‼︎」
 「この世界から消えて」
 「私の話を......」
 「この世界から消えて」
 「もう駄目なの?私みたいにリーリエはもう帰って来ないの⁇」
 「この世界から消えて」
 「......」
 「リリア⁇どうかしたか?」
 「えっあ......うん。今誰かに呼ばれた気がする。リーリエを助けてほしい。そんな声が聞こえた気がするの」
 「......」
 「この世界から消えて」
 もう私に構わないで。私をひとりにして。誰も犠牲にしないためにも私が犠牲にならなければならないの。もういっそのこと死んだ方がいいのかもしれない。そうすればリリアはきっと生き延びられる。私が居ない世界でリリアはエースと幸せに暮らすんだから。それがこの物語の終わりなんだから。私が変えていいものじゃなかったんだ。
 「私がこの未来を変えてあげるからね。私」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。 そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。 しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。 ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。 そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。 「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」 別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。しかしこれは反撃の始まりに過ぎなかった。 

処理中です...