私の恐怖はこれから

上野佐栁

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私の恐怖はこれから 過去の恐怖編

深雪と小雪二人の呪いその3

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 「はぁはぁ......もう駄目。霊力が持たない」
 もう皆んなも限界だ。今まで戦って来たどんな敵よりもどんな呪いよりも強い。
 初めはこっちの方が有利だった。霊力で攻撃をして核を壊せば小雪が帰って来るって思ってた。そう思いたかった。だけど無理だった。時間が経てば経つほど私達の霊力は限界を迎えた。そして私も霊感総合部の皆んなも倒れ。誰一人も立ち上がることすら出来なくなってしまった。
 ごめんね。駄目なお姉ちゃんでごめんなさい。
 「謝らないで......お姉ちゃん」
 「......っ‼︎小雪なの?」
 「そうだよ。お姉ちゃん」
 「私......死んだの⁇」
 「ううん。まだ死んでないよ」
 「じゃあこの空間は何⁇」
 「私の霊力は創造。この空間も私の創造で出来てるの」
 「......」
 「お姉ちゃん。私を狙って」
 「そんなことできなっ......」
 「お姉ちゃんなら私を倒せるよ」
 「駄目!貴方を倒しても何も変わらない‼︎貴方を失うぐらいならいっそ......」
 「失っても気持ちは残る」
 「......小雪?」
 「私ねぇもう私じゃないの」
 「え......」
 「あの日あの場所で死んでから......私は人じゃなくなり苗木小雪でもなくなった」
 「そんなことない!お姉ちゃんは小雪のことわかるよ。お姉ちゃんわかってるから。此処に居る小雪も核になっている小雪も本物だってわかっているから‼︎」
 「私は死者蘇生で一時的に蘇ったに過ぎないの。だからせめてお姉ちゃんの手で終わらせて」
 「嫌だよ......お姉ちゃんは小雪を助けたいの。助けたかったのに......こんなのあんまりだよ」
 「お姉ちゃん。あの時のことは仕方ないんだよ?だってあの事故は誰のせいでもない。呪いが私を選んだ。それだけだよ」
 「やめてよ⁉︎小雪は小雪なの‼︎お姉ちゃんの妹で可愛くて愛しくて大好きで大好きで......たった二人の姉妹で......かけがえのない人なの。だから!」
 「もうこの空間も持たない。お姉ちゃん頑張って。この呪いはお姉ちゃんにしか解けないの。だから私はお姉ちゃんを信じるよ」
 「小雪待って⁉︎お願い!お姉ちゃんの話を聞いて‼︎」
 「わがままで迷惑をかけた妹でごめんね......お姉ちゃん」
 「小雪いいいいい⁉︎」
 「うぅ......」
 「ぐるるる」
 「み、皆んなまだ戦えるかしら⁇」
 「も、もう無理です。もう力が残ってないです」
 「ぼ、僕達でも駄目なんて......あれは化け物だ」
 「計算しきれてなかった。あんなに強くて......体力も呪いも強いなんて......」
 「ぐっ......」
 「深雪⁇無理に立ち上がらない方がいいわ‼︎」
 「お姉ちゃんが終わらせる。小雪を助けたかった。だけど......だけどあの言葉が貴方の願いならお姉ちゃん叶えるよ。何を犠牲にしても!」
 「......深雪⁇」
 「はぁはぁ。お姉ちゃん。あと二回だけなら奇跡を使える」
 「篤子!私に奇跡を使って!私を信じて」
 「......」
 「篤子⁇」
 「深雪は本当にそれでいいの?」
 「え?何が?」
 「ほんとに貴方の望まない結末にしていいの?」
 「それが......小雪の願いだから」
 「奇跡の力は万能じゃない。でも貴方の想いが強ければ強いほど奇跡の力はより強く発揮される」
 「......」
 「よく考えて使ってね」
 「......わかった」
 「深雪に奇跡の力を!」
 「......ありがとう」
 霊力が戻ってくる。これならあの大技が出来る。歯車と一度しか出来なかった私の大技を組み合わせればきっとあの呪いも核も消えるはず。
 「ぐるるる」
 「......」
 「お姉ちゃん」
 「お姉ちゃんとずっと一緒に居たい」
 「私もだよ。小雪」
 「......っ⁉︎」
 私はやっぱり小雪を倒すことは出来ない。
 「小雪......私に......お姉ちゃんに......貴方の本当の声を聞かせて‼︎」
 ガタンギイイイギィィュュ
 「ポープファイナリー‼︎」 
 シュッ
 「ぐるるがるがるるががくぐる!」
 「私の元に帰ってきて!小雪‼︎」
 ドーン
 「音が聞こえる?」
 「この境界が崩れかけているのよ‼︎」
 「やりマーシた‼︎」
 「僕達の勝ちなのか?」
 ピキッ
 「希望はどんな暗闇にもどんな苦しみにも痛みにも悲しみにも負けなりしない‼︎」
 パキーン
 「嘘よ?嘘よ⁉︎こんなことって......元の世界に戻される?いやよ......いやあああああ‼︎」
 「......っ」
 「小雪‼︎」
 「......お姉ちゃん⁇」
 ギュウウウウ
 「お、お姉ちゃん⁉︎」
 「会いたかった。見ないうちに少し成長したね?背も伸びてる」
 「お姉ちゃんあの......」
 「やっと貴方を抱きしめられた。会いたかったよ。本当に会いたかった。小雪を取り戻せてよかった。うわああああん‼︎」
 「うぅ......うん。ずっと怖かった。また死んじゃうのかなぁって思って......だったらせめてお姉ちゃんの手で終わらせて欲しかった」
 「そんなこと私には出来なかった。小雪お家に帰ろ⁇」
 「で、でも私は死んだことになっているんだよ?だから帰る場所なんてもう......」
 「奇跡の力でなんとか記憶を改善してみるよ。小雪は死んだんじゃない。行方不明になっていたってことにするよ」
 「い、いいの?」
 「うん。深雪の妹は私達の仲間なんだから」
 「ありがとう......ありがとう!お姉ちゃん!私もお姉ちゃんに会いたかった。うぅぅゔゔゔ!シクシク。ぐすん」
 「これからは貴方の手を離さない。私が小雪を守るから。だからもう苦しまないで」
 「......うん!」
 「それにしても本当に背が伸びた。もし今までのことを計算しても三年ぐらいは経っているのに......貴方は見た目は中学生だよ」
 「この空間で過ごした時間はもっと長いから」
 「そうなのね?そんなことすら知らなかった。ごめんなさい」
 「もう!お姉ちゃん!ごめんはなしだよ」
 「......わかった」
 「お姉ちゃん。私学校に行ってみたい。お姉ちゃんと一緒に‼︎」
 「うん。学年も違うし......小雪はきっと中等部だと思うけど通学路は一緒だよ」
 「やったー!」
 こうして私は小雪と取り戻すことに成功した。小雪が家に戻って来る前に慌てて遺影を隠した。てか、燃やした。証拠隠滅だ!お父さんもお母さんもとても喜んでいた。やっと家族が揃ったのだから。やっと願いが叶った。やっと妹と一緒に居られる。そのことに浮かれすぎて気付いていなかった。篤美が私達に対してあんなことをするなんて今の私達は何も知らない。  
 「......何も出来なかった。何も動けなかった」 
 「み、皆んなまだ戦えるかしら⁇」
 「あの時私はまだ体力が残っていたし霊力も多少あった。なのに何もしなかった」
 情け無い。深雪があんなに頑張っているのに......嫉妬していたなんて誰にも言えない。
 「だったら全部壊して無くしてしまえばいいのよ」
 「......」
 「その力で深雪を繋ぎ止めて縛り付ければいいのよ。私なら出来るわ」
 「......そうね。そうするしか深雪は繋ぎ止めておくことが出来ない」
 心の闇は篤美の心を蝕み続けるのであった。
 
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