私の恐怖はこれから

上野佐栁

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私の恐怖はこれから 過去の恐怖編

繋がる記憶その3

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 「あははは‼︎全然痛くない!私は最強......そう七柱七番世界の歯車、苗木深雪なんだから!」
 「深雪!いい加減にしなさい‼︎貴方はそんな人間じゃないはずよ。私の知っている深雪は誰よりも人が死ぬのを恐れて呪いのせいで犠牲になった者達を誰よりも労わり......そして誰かを責めることなく自分を責めてしまう。そんな優しい貴方が呪い如きに負けてどうするの?そんなんで最強って言えるのかしら⁇」
 「......」
 「お姉ちゃん⁇記憶が戻ったの?」
 「え?よくわからないけど......深雪の人柄は誰よりも側で見ていた気がするの。どうしてかしら⁇」
 「未来の記憶がリンクし始めいる」
 「お姉さん‼︎お姉さんは言った。私の罪も怒りも悲しみも苦しみも痛みも全部背負って持っていくって......私はお姉さんと二人で分け合いたい。本当はひとりで背負わなきゃいけない。でもお姉さんは私と一緒に背負ってくれるって言ってくれた!だから戻ってきてよ!」
 「あははは!」
 「ヤッホー!遊びに来ちゃった」
 「愛組さん⁉︎」
 「今このタイミングで⁉︎」
 「あれ?苗木ちゃん?なぁにぃ⁇イメチェンでもしたの?少し不気味だよ」
 「違うわよ!今、深雪は呪いに支配されている状態なの。だから貴方達も手伝ってちょうだい」
 「いいよ」
 「よっしゃ!この俺様の力を見せてやるぜ!ウルトラハイパーグルグルパンチ‼︎」
 ドンッ
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......」
 「......だっさ!」
 「いてて。こいつ強いな」
 「いや。あんたが単なる馬鹿で弱いだけでしょ⁇部長のくせに弱すぎ」
 グサッ
 「言葉の暴力だ」
 「あははは!」
 「苗木ちゃん?」
 「私は強い。私は最強!」
 「苗木ちゃんは強くないよ?」  
 「......」
 「笑みが消えた?」
 「苗木ちゃん。本当の強さってなんだと思う?力?それとも霊力?違うよ。だって心が......想いの力が一番強いの。苗木ちゃんはそんな気持ちに気付かないの⁇」
 「......」
 「もう一度......奇跡を使えば元に戻るかも。でも失敗なんてしたらまた深雪が傷付く」
 ギュッ
 「お姉ちゃん⁇」
 「平気よ。私もいるわ。私も一緒に貴方の奇跡を信じて霊力を送るわ」
 ギュッ
 「私も!お姉さんを守りたいのは奇跡のお姉さんだけじゃないから」
 「二人とも......」  
 「行くわよ!」
 「うん!」
 「了解‼︎」
 「あははは‼︎」
 「熱で動けなくしてやるで!」
 「あのあほ!」
 バン
 「あれ?見えない壁で届かない?」
 「結界⁇」
 「先輩!すみませんっす!少し痛くかもっすけど我慢してほしいっす!」
 ゴロゴロ
 「あははは‼︎」
 「やっぱり結界が邪魔をしてるっす」
 「ぼ、僕のワープで内側に入れるかなぁ?」
 「やめろ。計算したが確率は一パーセントダ」
 「そんなぁ!」
 「このまま突っ込むわよ!」
 「お姉ちゃん!私の奇跡の力でカバーするから全力で霊力使っちゃって!」
 「えぇ!もちろんよ!」
 パキッ
 「......っ‼︎」
 「深雪ぃぃぃぃぃいいい‼︎」
 「お願い。今度はうまくいって‼︎」
 「此処は?交差点?」
 キィィイイイドーン
 「あ、あああ......小雪⁇」
 「......」
 「妹さんが轢かれた⁇」
 ピチャッ
 「小雪いいいいいいい⁉︎」
 「深雪!」
 「もう駄目。何度やっても妹を助けられない」
 「あきらめ......」
 「こんなところで立ち止まってどうするの?過去の私!」
 「......未来の私⁇今更何?今更来てお説教⁇」
 「違う。今此処で諦めたら後悔する。私は私を諦めない。小雪を助けられるはず」
 「じゃあどうしろっていうの⁉︎どうやったらこの悪夢から覚めるの⁇どうしたら妹を助けられるっていうの⁉︎ねぇ?教えてよ!」
 「周りを見なさい。周りには貴方を想って此処まで来てくれた仲間がいる。なのにどうして?どうしてそんな悲しいことを言うの?諦めるにはまだ早い。まだ希望がある」
 「......周り?」
 「深雪‼︎」
 「お姉さん‼︎」
 「助けに来たよ」
 「......篤子⁇もも?篤美⁇どうして三人が此処に⁇」
 「決まっているわ!貴方を助けに来たの」
 「あ、あはは......私はやっぱり弱いな。強くなれない。どんなに霊力が強くなっても......力をつけても大事な人達は守れない。こんな気持ちになるぐらいならいっそ霊力なんてなければよかった!誰かを守りたいなんて思わなければ良かった!どうして?どうしてこんなにも惨めな気持ちになるの?教えてよ?篤美⁇」 
 「......」
 「彼には有り余るほどの時間があったはずよ。でも彼は練習しなかった。弓道が好きだと言っていたのに、彼の弓道愛はそんなものってことでしょ⁇呆れたわ」
 「私は江原君の弓道愛は本物だって思うよ。だって、今まで成仏せずに此処に居るってことはまだ諦めきれてないってことでしょ⁇そんな江原君の気持ちを汲み取ってあげてよ‼︎」
 「篤子になろうとすればするほど情けなくて惨めに思えて来て、どうすれば良いのわからないの。篤子みたいに優しく無いし明るいも無い。口を開けば憎まれ口ばかり言ってしまう。そんな自分が嫌いよ。大っ嫌いよ」
 「鈴木さん。ううん。篤美。私は篤美の事が大好きだよ。私の世界はいつも狭くて何も無くて、でも篤美に出会ってからは変わった。いつも恐怖と隣り合わせな日々だけど、キラキラした世界が私に広がった‼︎私は大切な仲間に出会えてよかった‼︎篤美に会えてよかった‼︎私の世界を広げてくれてありがとう」
 「目の前の人を救えないで、何が霊力者だ‼︎何も出来ない自分が心底憎らしい‼︎死ぬべきだったのは、私だったんだ‼︎」
 「今の言葉を撤回しなさい‼︎貴方が死ぬべきだった⁇ふざけた事を言うんじゃないわよ‼︎霊感総合部には、深雪‼︎貴方が必要なのよ‼︎だから生きなさい‼︎何がなんでも争いなさい‼︎」
 「......篤美に何がわかるの⁇目の前で誰も救えなかった気持ち。それも二回も。私の気持ちなんて知らないくせに勝手な事を言わないでよ‼︎」
 「そう。それが貴方の答えね。だったら、この部を辞めなさい‼︎今の貴方に、この部にいて欲しくないわ‼︎」
 「篤美の馬鹿‼︎」
 「此処から先には行かせるわけにはいかないわ‼︎深雪は、私達の大切な仲間、霊感総合部の一人よ‼︎」
 「あの時の私は落ち込んでいる深雪に優しい言葉をかけれあげれなかった。でも今は違うわ。私は深雪が大好きなの。今まで忘れててごめんなさい。深雪」
 「......篤美⁇」
 キィィイイイ
 「もうこの悪夢は見させないわ‼︎」
 パキーン
 「こ、氷で車を止めた?」
 「お姉ちゃん⁇行っちゃうの⁇私を置いて行くんだ。何処かに行っちゃうんだ。酷い」
 「酷い?酷いのはどっちなの?深雪を此処まで苦しめて......強い呪いを深雪にかけるなんて......それでも貴方は深雪の妹なの?私は深雪に幸せになってほしいわ!だから貴方なんかに深雪は渡さないわ!」
 「......」
 ギュッ
 「これからも何があっても貴方を離さない。この繋いだ手を離すことなくこれからも一緒に居てくれる⁇」
 「うぅ......うん!うん!ありがとう篤美」
 ドサッ
 「先輩の姿が元に戻った?」
 「......篤美⁇」
 「もう大丈夫よ」
 「ううぅゔ......うぅん。ありがとう。そしてごめんなさい」
 「少し休みなさい。貴方はかなりの大怪我をしているのよ?」
 「皆んなもごめん。迷惑かけちゃった」
 「いいですよ。まぁ回復させるのは大変ですがやりますよ」
 「桃凛さんありがとう」
 「骨折した手首はしばらくの間安静にしてください。全ての傷が元通りに戻るわけじゃないので治るまでは戦いは禁止です」
 「わかったよ」
 「お姉ちゃん。酷いよ。私達を置いて行くなんて許さなから」
 「......」
 「深雪。これからは私も貴方の悲しみと向き合えるようにするわ。未来を信じた貴方をこれから支えさせて」
 「......うん」
 本当によかった。もっと早く気付いていれば深雪は傷付かなかった。
 「自分の妹すら守れないのに......何を守りたいのかしら⁇」
 「......」  
 心の闇は少しづつ篤美の心を蝕む。それをまだ私達は知らない。
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