私の恐怖はこれから

上野佐栁

文字の大きさ
上 下
88 / 104
私の恐怖はこれから 過去の恐怖編

地獄の始まり

しおりを挟む
 私の名前は苗木深雪。天之川学園の教師をしている。私には娘がひとりいる。可愛くて優しくて霊力がある愛娘だ。
 「深雪。今日の晩御飯なーに?」
 ゴンッ
 「いてっ⁉︎」
 「此処は学校よ。プライベートのことを持ち出さないように」
 「は、はいっす。鈴木せんー......い‼︎」
 ゴンッ
 「ひ、光先生⁇ほ、本当に大丈夫なの?」
 「だ、大丈夫っす」
 「原技先生ね。一体いつになったら覚えるのかしら?」
 「あ、あはは......」
 「深雪先生。次の授業の支度しなくていいのかしら⁇」
 「あっ!そうだった。ありがとう。篤美先生」
 「うふふ。どういたしまして」
 「じゃあまた後でね」
 「はいっす」
 「ええ」
 今はとても平和だ。こうして先生として教え子達に色んなことを教えられている。あの時、未来の私が助けてくれたから今の私がいる。そう思っていた。まさか過去に連れ戻させるなんて今の私は思ってもみなかった。
 「あれが......七柱七番目世界の歯車、苗木深雪か?」
 「はい。わたくしが調査しただけでもかなりの霊力の持ち主です。それと......彼女には未来と繋ぎ止める何かがあるみたいです。本来ならもうとっくに死んでいていいはずなのに......まだ生きています」  
 「そうだなぁ。それが不思議だ。一度決められた未来は決定している。それを跳ね除けるその力はまさに神とも呼べる」
 「どういたしますか?」
 「......苗木深雪を十五歳まで戻せ」
 「は、はい?一体それが何になるのですか?」
 「いい考えがある。十五歳の時に殺してしまえば七柱になることも霊感総合部が図にのることもない。つまり呪いすら解けずに死んでいくということだ」
 「さ、流石です!」
 「じゃあ過去に戻すぞ」
 「御意」
 「苗木先生!此処ってこうで当てますか?」
 「うんうん。当てるね。あっそこは違うよ」
 「はーい」
 皆んな良い子達。天之川学園に戻って来てよかった。
 カチカチカチ
 「え......この音は時計の針の音?」
 それにしても音が大きすぎる。まるで目の前に大きな時計があるかのように......。
 「深雪!早く起きなさい。じゃないと入学式に遅刻するわよ?」
 「え......入学式?」
 「何?まだ寝ぼけているの?今日は貴方が高校生デビューの日でしょ?」
 「え?ええええええええ⁉︎」
 「深雪?本当に大丈夫?今日の貴方は何処か変よ」
 「......」
 前髪で前があまり見えない。切ろう。
 「深雪?ハサミなんて持ってどうし......って⁉︎な、何をしているの?何故髪を切っているの?」
 「うん。こっちの方が見やすい」
 「......深雪」
 「じゃあ行って来ます」
 「いってらっしゃい。お母さんもすぐに行くからね」
 「うん......」
 おかしい。私が高校生?しかも入学式?まるで時間が遡ったかのように見える。まるで誰かがそれを望んでいるかのように......。
 ドクン
 「......」  
 何この霊力は?今まで出会った霊の中でも一番強い。
 「やぁ。君が苗木深雪だな?」
 「......」
 「この表情を見る限り......覚えているのか?君は本当に厄介だ。だからこそ此処で死んでもらう」
 「......一体何が目的なの?」
 「目的か?そんなのあの呪いを取り戻すためだ。あれがないと少々厄介でね。だから君には死んでもらう必要がある」
 「......そう簡単に殺せるなんて思わないでね」
 七柱の力を使えば......。
 「......あれ?使えない?」  
 「そんなの当然さ。過去に戻されているのだから」
 「......っ⁉︎」
 そうだった。今この時点では私は七柱じゃない。霊力はかろうじて使えるみたいだけど......勝てない。この霊には勝てる気がしない。
 「七柱の力さえあれば......」
 「勝てると思われている時点で不愉快だ。死ね」
 「......」
 ジュー
 駄目。避けられない。死ぬ?こんなところでこんなに早く死ぬの?
 「危ない!」
 「え?」
 ドンッ 
 「いてて......あ、篤美⁉︎」
 「貴方何をしているのかしら⁇早く逃げるわよ」
 「えっ......ち、ちょっと⁉︎私の話を聞い......ってー‼︎」
 「チッ。逃したか。まぁいい。これから殺す時間は有り余っているのだから」
 そう冷たく笑う謎の霊だったのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

長野県……の■■■■村について

白鳥ましろ
ホラー
この作品はモキュメンタリーです。 ■■■の物語です。 滝沢凪の物語です。 黒宮みさきの物語です。 とある友人の物語です。 私の物語です。 貴方の物語でもあります。 貴方は誰が『悪人』だと思いますか?

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

こわいはなし

コーヒーブレイク
ホラー
3000字くらいまでの、ショートショートホラー集です。お好きなものからどうぞ。

182年の人生

山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。 人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。 二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。 (表紙絵/山碕田鶴)  ※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「66」まで済。

都市伝説 短編集

春秋花壇
ホラー
都市伝説 深夜零時の路地裏で 誰かの影が囁いた 「聞こえるか、この街の秘密 夜にだけ開く扉の話を」 ネオンの海に沈む言葉 見えない手が地図を描く その先にある、無名の場所 地平線から漏れる青い光 ガードレールに佇む少女 彼女の笑顔は過去の夢 「帰れないよ」と唇が動き 風が答えをさらっていく 都市伝説、それは鏡 真実と嘘の境界線 求める者には近づき 信じる者を遠ざける ある者は言う、地下鉄の果て 終点に続く、無限の闇 ある者は聞く、廃墟の教会 鐘が鳴れば帰れぬ運命 けれども誰も確かめない 恐怖と興奮が交わる場所 都市が隠す、その深奥 謎こそが人を動かす鍵 そして今宵もまた一人 都市の声に耳を澄ませ 伝説を追い、影を探す 明日という希望を忘れながら 都市は眠らない、決して その心臓が鼓動を刻む 伝説は生き続ける 新たな話者を待ちながら

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

都市伝説レポート

君山洋太朗
ホラー
零細出版社「怪奇文庫」が発行するオカルト専門誌『現代怪異録』のコーナー「都市伝説レポート」。弊社の野々宮記者が全国各地の都市伝説をご紹介します。本コーナーに掲載される内容は、すべて事実に基づいた取材によるものです。しかしながら、その解釈や真偽の判断は、最終的に読者の皆様にゆだねられています。真実は時に、私たちの想像を超えるところにあるのかもしれません。

オカルティック・アンダーワールド

アキラカ
ホラー
出版社で編集者として働く冴えないアラサー男子・三枝は、ある日突然学術雑誌の編集部から社内地下に存在するオカルト雑誌アガルタ編集部への異動辞令が出る。そこで三枝はライター兼見習い編集者として雇われている一人の高校生アルバイト・史(ふひと)と出会う。三枝はオカルトへの造詣が皆無な為、異動したその日に名目上史の教育係として史が担当する記事の取材へと駆り出されるのだった。しかしそこで待ち受けていたのは数々の心霊現象と怪奇な事件で有名な幽霊団地。そしてそこに住む奇妙な住人と不気味な出来事、徐々に襲われる恐怖体験に次から次へと巻き込まれてゆくのだった。

処理中です...