私の恐怖はこれから

上野佐栁

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弓道に潜む恐怖その1

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 「川咲君のことは置いといて、自己紹介を終わらせましょう」
 「うちの名前は天堂大輔って言います‼︎よろしくな。ちなみにうちは、二年です‼︎」
 「俺は二年の区事務泰斗です。苗木先輩よろしく」
 「ぼ、僕は一年の原技優夢です。よ、よろしくお願いします」
 「改めて、私は鈴木篤子よ。で、そっちの倒れてる人は川咲光君よ。彼は一年生よ。私達のことは知ってるわね。後の五人とも仲良くね」
 「う、うん。川咲君、大丈夫⁇」
 「はいっす。なんとかっす」
 バタン
 「きゃあー‼︎川咲君!?」
 「血が出過ぎて気を失ったみたいよ。ほっときなさい」
 「後輩に対して冷たくない?」
 「当たり前の反応をしているだけよ。此処では、私の言うことは絶対よ。いいわね?」
 「苗木先輩ー。鈴木先輩は部長ですー」
 「副部長は?」
 「居ないわ」
 「え?」
 「だって要らないですー。鈴木先輩がいればなんとかなりますし、副部長なんて、邪魔でしかないですよー」
 「はぁー。雑談はここまで。本題に入るわよ」
 「弓道に霊が出るって噂聞いたかしら?」
 「私聞いてない」
 「うちも聞いてねぇー」
 「ぼ、僕は聞きました。クラスメイトが話しているところを聞いただけです」
 「俺は知らない」
 「あの、さっきから思ってたんだけど、一人多くない⁇」
 「え?」
 「そういえばそうっすね。苗木先輩、鈴木先輩、江原先輩、天堂先輩、区事務先輩、桃凛先輩、原技、俺、たしかに一人多いっす。」
 「待って‼︎江原君って昔、私と一緒の弓道部に居たよね?一年時確か、自殺したって聞いたような」
 「てことは、一人多いのは貴方の仕業ね」
 「でも、どうして誰も気づかなかったんですか?」
 「きっと、記憶操作ね」
 「うわー。怖っ‼︎」
 「どうしたの⁇僕は人間だよ」
 「......」
 「鈴木さん⁇」
 「オーラが違う。人間のオーラとは違うわ。苗木さんの言う通り、犯人は江原君よ‼︎」
 「なんだ。気づいたんだ。じゃあ、僕もそろそろやろうかな⁇」
 「......っ!?皆んな部室の外へ逃げなさい‼︎今すぐに‼︎」
 「えっ?」
 「逃がさないよ」
 黒影が、私、鈴木さん、川咲君、原技君、そして桃凛さんを巻き込んで違う世界へと連れて来られた。
 「......さん‼︎......木......苗......さん‼︎......苗木さん‼︎」
 「はっ‼︎此処は?」
 「気がついたのね。昨日来た場所と似ている所よ」
 「似てる?」
 「えぇ。昨日と全く同じ空間は存在しないわ。此処は似てるようで似てない。そんなところよ」
 「そう。川咲君と桃凛さんと原技君は?」
 「知らないわ。気づいたら苗木さんと二人だけよ」
 「そんな。川咲君達は大丈夫なの?」
 「大丈夫よ。あっちには川咲君が居るわ。そう簡単に死ぬことはないわ」
 「信頼してるんだね」
 「別にそういうわけじゃないわ」
 「照れてる。可愛い。」
 「て、照れてなんてないわ‼︎」
 「うふふ。そうだね」
 「あ、ああああ‼︎」
 「彼はもう、霊の本性が出てしまっているわ。彼の未練を断ち切るしかないわ」
 「江原君は確か、弓道部に入ったけど、先輩達にいじめられて、大好きだった。弓道を続けられなくなって自殺をしたみたい」
 「流石、元弓道部ね」
 「褒められても全然嬉しくない」
 「褒め言葉にしてあげるわ」
 「はぁー」
 「江原君。私が弓道を教えてあげるよ。だから未練を断ち切ろう‼︎」
 「苗木さん!?正気なの⁇彼の未練は相当強いわ‼︎そう簡単には未練を断ち切るなんて無理よ‼︎」
 「どうして?私は出来ると思うよ。だって、同じ弓道部だったんだもん。だから弓道が大好きだって気持ちは同じ‼︎彼の未練は私が断ち切る‼︎」
 「苗木さん。貴方、意志が強いのね」
 「そうかな?」
 「そうよ。やりなさい‼︎苗木さんなら出来るわ」
 「ありがとう‼︎」
 「江原君‼︎弓道を教えるよ‼︎」
 「も、う、い、ち、ど、弓、道、出、来、る、の⁇」
 「うん。出来るよ‼︎私を信じて‼︎お願い」
 「わ、かっ、た」
 「ありがとう」
 「彼の心を動かした。普通は出来ないはず。でもたしかに、一人でやりたいって思っていた彼の心を動かした。苗木さんは私達の中でも、一番ある意味霊力が強いのかもしれないわ」
 「さあ‼︎江原君。恐怖の弓道を始めよう‼︎」
 
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