4 / 6
第3話 授業中の逃避行①
しおりを挟む
席替えが行われてから数日……。
今日は朝から雨が降っていた。
それだけでも憂鬱な気分だと言うのに、一時限目から俺が一番苦手な体育の授業がある。もう最悪だ……。
雨でグラウンドが使えないということで、体育の授業は体育館にて行われることになった。
しかも今日は女子担当の先生が不在ということで、男女合同でバスケットボールをするらしい。それも好きにチームを組んでいいとかいう自由形式で。
大半の生徒が仲のいい人とチームを組めることに歓喜の声を上げているが、俺にとってはたまったものじゃない。
準備運動の2人1組もしかり、修学旅行の班決めもまたしかり、自由にグループを組んでいいという状況は、ぼっちにとっては地獄でしかないのだ。
どこのグループにも入ることができず、哀れむような視線を向けられながら息を殺してやり過ごす。俺は1人でいることも、人から嫌われることも苦ではないけれど、白い目で見られて恥をかかされることにだけは、いまだ慣れない。
現に今も次々とグループが出来上がっていく中、俺は手持ち無沙汰に棒立ちをしている状況。体育教師の小田はそんな俺を見てニヤニヤと笑みを浮かべるだけ。
この先生はゴリゴリの体育会系の男で、ノリのいい陽キャたちには優しいけど、俺みたいな陰キャは嫌っているから、1人であぶれている俺を見ているのが楽しいのかもしれない。
「くそっ、なんなんだよ……」
なんともみじめな気分になり、小声でつぶやくと俺はその場を離れた。
授業が終わるまで隠れてやり過ごそうと思い、体育館の隅に向かうとすでに先客がいた。
「あ、西城さん……」
「おう……」
声をかけると、西城さんはそれだけ言って顔をこちらに向けた。半袖のTシャツから伸びる綺麗な白い腕で、長い脚を抱えるようにして座っている。
一瞬見学かなと思ったが、体操着に着替えているのでそうではない。だとすると、俺と同じ状況ということか……?
「隣、座ってもいい?」
「……アタシと一緒にいると、おまえまで変な目で見られるぞ」
西城さんには良くない噂が付きまとっている。だから、自分と一緒にいることで俺に悪影響を与えることを気にしているのだろう。
しかしあいにく、俺はもともとクラスメイトからの評価は悪いのでこれ以上嫌われたところで関係ないのだ。
「対して仲も良くないクラスメイトからどう思われようが構わないよ。アイツらの目を気にするくらいなら、西城さんと仲良くしたいし」
「んなっ! なぅぅ……なに恥ずいこと言って……」
西城さんは不意打ちを食らったかのように赤面し、ひざに顔をうずめて表情を隠してしまう。
隣の席になってからときどき会話をするようになったけど、彼女はよくこうやって可愛い反応を示す。
さっきのは俺もちょっと恥ずかしいことを言ってしまった自覚があったけど、西城さんの可愛い顔が見られたので結果オーライだ。
「わ、わかったよ……ったく。けど、ここじゃ目立つからこっち来い」
西城さんは立ち上がると、強引に俺の腕を引っ張って体育館の外に進んでいく。
「えっ……ちょっ、今授業中だよ!?」
「別にいいだろ、どうせあそこにいたって何もしないで一時間過ごすだけなんだし」
確かにあの先生のことだ、俺みたいな陰キャが消えたところで気付きもしないだろう。
あぶれ者をバカにするようなあの顔を思い出すとイライラしてきて、ちょっとくらい反発してやりたいという気にもなってくる。
「……わかった、じゃあ行くか」
どこに行くのかもわからないけれど、俺は西城さんの手に引かれて体育館から抜け出すことに決めた。
♣
「この雨の中、わざわざここまで見回りに来る教師もいないだろ」
西城さんに連れられてたどり着いたのは、学校の敷地内の角に位置する空間だった。巨大な木が完全に雨をしのいでいるので、芝生の上に座っても濡れる心配はない。
彼女の言う通り、先生に見つかるというリスクもなさそうだ。
「アタシ、いつも昼はここに来てんだよ」
そう言うと、彼女は仰向けに寝転がる。なるほど、いつも昼休み教室にいないと思ったら、こんなところに来ていたとは。
それはそうと……急にひざを立てて寝転がるものだから、体操着の半ズボンの裾がススーっと脚を滑り落ちて、彼女の白い太ももが付け根の当たりまで全開にさらけ出されてしまう。
まるでモデルのようにスラっと伸びる長くて綺麗な脚。そのくせ男心をくすぐる豊満な肉付きをした、程よい太さの太もも。それはまるで何度も何度もかき混ぜて溶かした生クリームのように、白くて柔らかそうで……。
その刺激的な光景に、俺の心臓は爆発するように高鳴った。
高校生とは思えないほど発育のいい西城さんの太ももは眼福ではあるけれど、あまりにも刺激が強すぎた。このまま彼女の腿がチラチラと視界に入ってきたら、俺は平常心を保っていられる自信がない。早く直してもらうべきだろう。
「ちょっ、西城さん……その、ズボン……まくれすぎ」
「はぁ? 別にアタシの太ももくらい、見られたってなんともねーし」
西城さんは自分の太ももをもてあそぶように、手の平で裏側からタプタプと叩く。重力で垂れ下がっていた腿の肉付きが、まるで皿にのせられたプリンのようにぷるんっ、ぷるんっ――と振動している。
うわぁっ、柔らかそう……じゃなくてっ!
「ちょっ、だっ、ダメだって! 西城さん可愛いんだから、そんな無防備な格好してたら……」
甘美に揺れる太ももに魅せられて、感情が高ぶった勢いでついそんなことを口走ってしまう。
「なっ、ななっ! なんだよっ、可愛い、とかっ……! ふ、ふざけたこと言ってんじゃねーよ!」
西城さんは体を起きあげて、今までにないくらいの動揺っぷりでまくし立ててくる。
「あ、アタシが、かわ、可愛いとか……そんなわけ、ねーだろ……」
片方の腕で口元を隠し、恥ずかしそうに顔を背ける。
「いや、あの、別にふざけてるわけじゃなくて……可愛いっていうのは、本当に思ってる……」
「なっ、なっ……!」
かあぁぁっっと顔が真っ赤に染まる。ぷしゅーっと頭から煙が出てしまいそうな勢いだ。
「もう、マジでなんなんだよ……」
それからもしばらくの間、西城さんは両手で顔を隠してごにょごにょと「なんだよ、アタシが可愛いとか……」を繰り返していた。
今日は朝から雨が降っていた。
それだけでも憂鬱な気分だと言うのに、一時限目から俺が一番苦手な体育の授業がある。もう最悪だ……。
雨でグラウンドが使えないということで、体育の授業は体育館にて行われることになった。
しかも今日は女子担当の先生が不在ということで、男女合同でバスケットボールをするらしい。それも好きにチームを組んでいいとかいう自由形式で。
大半の生徒が仲のいい人とチームを組めることに歓喜の声を上げているが、俺にとってはたまったものじゃない。
準備運動の2人1組もしかり、修学旅行の班決めもまたしかり、自由にグループを組んでいいという状況は、ぼっちにとっては地獄でしかないのだ。
どこのグループにも入ることができず、哀れむような視線を向けられながら息を殺してやり過ごす。俺は1人でいることも、人から嫌われることも苦ではないけれど、白い目で見られて恥をかかされることにだけは、いまだ慣れない。
現に今も次々とグループが出来上がっていく中、俺は手持ち無沙汰に棒立ちをしている状況。体育教師の小田はそんな俺を見てニヤニヤと笑みを浮かべるだけ。
この先生はゴリゴリの体育会系の男で、ノリのいい陽キャたちには優しいけど、俺みたいな陰キャは嫌っているから、1人であぶれている俺を見ているのが楽しいのかもしれない。
「くそっ、なんなんだよ……」
なんともみじめな気分になり、小声でつぶやくと俺はその場を離れた。
授業が終わるまで隠れてやり過ごそうと思い、体育館の隅に向かうとすでに先客がいた。
「あ、西城さん……」
「おう……」
声をかけると、西城さんはそれだけ言って顔をこちらに向けた。半袖のTシャツから伸びる綺麗な白い腕で、長い脚を抱えるようにして座っている。
一瞬見学かなと思ったが、体操着に着替えているのでそうではない。だとすると、俺と同じ状況ということか……?
「隣、座ってもいい?」
「……アタシと一緒にいると、おまえまで変な目で見られるぞ」
西城さんには良くない噂が付きまとっている。だから、自分と一緒にいることで俺に悪影響を与えることを気にしているのだろう。
しかしあいにく、俺はもともとクラスメイトからの評価は悪いのでこれ以上嫌われたところで関係ないのだ。
「対して仲も良くないクラスメイトからどう思われようが構わないよ。アイツらの目を気にするくらいなら、西城さんと仲良くしたいし」
「んなっ! なぅぅ……なに恥ずいこと言って……」
西城さんは不意打ちを食らったかのように赤面し、ひざに顔をうずめて表情を隠してしまう。
隣の席になってからときどき会話をするようになったけど、彼女はよくこうやって可愛い反応を示す。
さっきのは俺もちょっと恥ずかしいことを言ってしまった自覚があったけど、西城さんの可愛い顔が見られたので結果オーライだ。
「わ、わかったよ……ったく。けど、ここじゃ目立つからこっち来い」
西城さんは立ち上がると、強引に俺の腕を引っ張って体育館の外に進んでいく。
「えっ……ちょっ、今授業中だよ!?」
「別にいいだろ、どうせあそこにいたって何もしないで一時間過ごすだけなんだし」
確かにあの先生のことだ、俺みたいな陰キャが消えたところで気付きもしないだろう。
あぶれ者をバカにするようなあの顔を思い出すとイライラしてきて、ちょっとくらい反発してやりたいという気にもなってくる。
「……わかった、じゃあ行くか」
どこに行くのかもわからないけれど、俺は西城さんの手に引かれて体育館から抜け出すことに決めた。
♣
「この雨の中、わざわざここまで見回りに来る教師もいないだろ」
西城さんに連れられてたどり着いたのは、学校の敷地内の角に位置する空間だった。巨大な木が完全に雨をしのいでいるので、芝生の上に座っても濡れる心配はない。
彼女の言う通り、先生に見つかるというリスクもなさそうだ。
「アタシ、いつも昼はここに来てんだよ」
そう言うと、彼女は仰向けに寝転がる。なるほど、いつも昼休み教室にいないと思ったら、こんなところに来ていたとは。
それはそうと……急にひざを立てて寝転がるものだから、体操着の半ズボンの裾がススーっと脚を滑り落ちて、彼女の白い太ももが付け根の当たりまで全開にさらけ出されてしまう。
まるでモデルのようにスラっと伸びる長くて綺麗な脚。そのくせ男心をくすぐる豊満な肉付きをした、程よい太さの太もも。それはまるで何度も何度もかき混ぜて溶かした生クリームのように、白くて柔らかそうで……。
その刺激的な光景に、俺の心臓は爆発するように高鳴った。
高校生とは思えないほど発育のいい西城さんの太ももは眼福ではあるけれど、あまりにも刺激が強すぎた。このまま彼女の腿がチラチラと視界に入ってきたら、俺は平常心を保っていられる自信がない。早く直してもらうべきだろう。
「ちょっ、西城さん……その、ズボン……まくれすぎ」
「はぁ? 別にアタシの太ももくらい、見られたってなんともねーし」
西城さんは自分の太ももをもてあそぶように、手の平で裏側からタプタプと叩く。重力で垂れ下がっていた腿の肉付きが、まるで皿にのせられたプリンのようにぷるんっ、ぷるんっ――と振動している。
うわぁっ、柔らかそう……じゃなくてっ!
「ちょっ、だっ、ダメだって! 西城さん可愛いんだから、そんな無防備な格好してたら……」
甘美に揺れる太ももに魅せられて、感情が高ぶった勢いでついそんなことを口走ってしまう。
「なっ、ななっ! なんだよっ、可愛い、とかっ……! ふ、ふざけたこと言ってんじゃねーよ!」
西城さんは体を起きあげて、今までにないくらいの動揺っぷりでまくし立ててくる。
「あ、アタシが、かわ、可愛いとか……そんなわけ、ねーだろ……」
片方の腕で口元を隠し、恥ずかしそうに顔を背ける。
「いや、あの、別にふざけてるわけじゃなくて……可愛いっていうのは、本当に思ってる……」
「なっ、なっ……!」
かあぁぁっっと顔が真っ赤に染まる。ぷしゅーっと頭から煙が出てしまいそうな勢いだ。
「もう、マジでなんなんだよ……」
それからもしばらくの間、西城さんは両手で顔を隠してごにょごにょと「なんだよ、アタシが可愛いとか……」を繰り返していた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
鬼上官と、深夜のオフィス
99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」
間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。
けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……?
「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」
鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。
※性的な事柄をモチーフとしていますが
その描写は薄いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる