3 / 36
第3話 小悪魔な後輩とデート②
しおりを挟む
「先輩っ! オムライス来ましたよっ、オムライス!」
「おう、そうだな」
カフェに来てからずっと若菜さんは楽しそうにはしゃいでる。決して演技には見えない。
やっぱり若菜さんはあいつらにうながされただけであって、彼女自身に俺をだまそうというつもりはないのだろう。
しかしそうすると、若菜さんがなぜこんなに俺とのデートを楽しんでいるのかという謎が残ってしまう。
実は若菜さんは本当に俺のことを……というのはまずないとして――
「先輩っ、これ本当に全部おごりでいいんですよね?」
あ、そういうことか……タダでここのメニューを食べられるのが嬉しいからこんなにはしゃいでるんだな。
「もちろん。そういう約束だったし」
俺みたいな陰キャと我慢してデートしている若菜さんのことを考えたら、ついおごってあげなきゃという気になってしまったのだ。
「えへへ、やっぱり先輩って優しいですね……んま~♡」
若菜さんはぽっぺたを両手で押さえるようにしてオムライスを頬張っている。それにしても美味しそうに食べるな……。
さて、俺も食べるかな。そう思いスプーンを口に運びかけたとき……
「じゃあおごってもらうお返しに、先輩にはご褒美をあげなきゃですね。はい、あ~ん♡」
「えっ!?」
ちょうど口を開いていたタイミングでスプーンを差し込まれ、俺は若菜さんが一度口をつけたスプーンに乗ったオムライスを口に入れてしまう。
「――んんッ」
「先輩、どうですか?」
「お、美味しい……」
美味しい、けど……
「ふふっ、よかったです♡」
なんかもう色々とヤバい。
俺はこのあざとい小悪魔後輩に、手の平の上でもてあそぶように、してやられてしまうのだった。
#
「先輩っ、今日は楽しかったです!」
「こちらこそ」
カフェを出てから一緒にショッピングをしたりして、そろそろ解散しようということになった。空はすでに夕焼け色に染まっている。
俺はそろそろあいつらが種明かしをしに来る頃だろうと思い、身構えていた。
「あの、先輩……」
しかしいつになってもあいつらが出てくる様子はなく、なぜか頬を赤らめた若菜さんが俺の服の袖をくいくいとつかんで上目遣いに見てきた。
「この前は、琴莉のこと助けてくれて本当にありがとうございました」
この前……あぁ。
そのとき俺は酔いつぶれて忘れていたときの記憶をふと思い出した。
合コンの解散後、悪友である蛇原 剛が若菜さんを路地裏に誘い込み、無理やり服を脱がせたり身体を触ったりしているところに遭遇した。
俺は酔っていたということもあり、何も考えず思うままに行動した。つまり蛇原を突き飛ばし、若菜さんを逃がしたのだ。
あぁ、そういえばそうだった。なんか、紛失していたパズルのピースが見つかって穴が埋まっていく感覚だ。
「大したことしてないよ。それより、あの後あいつから何かされたりしてない?」
「はいっ! 先輩がちゃんと家まで送ってくれたので」
えっ?
待って、そこまでした記憶はないんだが……いや、言われると確かにそんな気も。酔いつぶれてるときの俺の行動力ヤバくないか?
「先輩っ、また次のデートも楽しみにしてます! チュッ♡」
「えっ……」
若菜さんは俺の頬に唇を触れ、あざとい小悪魔的な笑みを浮かべて去って行った。
えっ、待って次のデート? あれ、今日あいつらが出てきてドッキリは終わるんじゃなかったのか?
俺は意味が分からず、頬にキスをされた熱を感じながらただ立ち尽くすのだった。
「おう、そうだな」
カフェに来てからずっと若菜さんは楽しそうにはしゃいでる。決して演技には見えない。
やっぱり若菜さんはあいつらにうながされただけであって、彼女自身に俺をだまそうというつもりはないのだろう。
しかしそうすると、若菜さんがなぜこんなに俺とのデートを楽しんでいるのかという謎が残ってしまう。
実は若菜さんは本当に俺のことを……というのはまずないとして――
「先輩っ、これ本当に全部おごりでいいんですよね?」
あ、そういうことか……タダでここのメニューを食べられるのが嬉しいからこんなにはしゃいでるんだな。
「もちろん。そういう約束だったし」
俺みたいな陰キャと我慢してデートしている若菜さんのことを考えたら、ついおごってあげなきゃという気になってしまったのだ。
「えへへ、やっぱり先輩って優しいですね……んま~♡」
若菜さんはぽっぺたを両手で押さえるようにしてオムライスを頬張っている。それにしても美味しそうに食べるな……。
さて、俺も食べるかな。そう思いスプーンを口に運びかけたとき……
「じゃあおごってもらうお返しに、先輩にはご褒美をあげなきゃですね。はい、あ~ん♡」
「えっ!?」
ちょうど口を開いていたタイミングでスプーンを差し込まれ、俺は若菜さんが一度口をつけたスプーンに乗ったオムライスを口に入れてしまう。
「――んんッ」
「先輩、どうですか?」
「お、美味しい……」
美味しい、けど……
「ふふっ、よかったです♡」
なんかもう色々とヤバい。
俺はこのあざとい小悪魔後輩に、手の平の上でもてあそぶように、してやられてしまうのだった。
#
「先輩っ、今日は楽しかったです!」
「こちらこそ」
カフェを出てから一緒にショッピングをしたりして、そろそろ解散しようということになった。空はすでに夕焼け色に染まっている。
俺はそろそろあいつらが種明かしをしに来る頃だろうと思い、身構えていた。
「あの、先輩……」
しかしいつになってもあいつらが出てくる様子はなく、なぜか頬を赤らめた若菜さんが俺の服の袖をくいくいとつかんで上目遣いに見てきた。
「この前は、琴莉のこと助けてくれて本当にありがとうございました」
この前……あぁ。
そのとき俺は酔いつぶれて忘れていたときの記憶をふと思い出した。
合コンの解散後、悪友である蛇原 剛が若菜さんを路地裏に誘い込み、無理やり服を脱がせたり身体を触ったりしているところに遭遇した。
俺は酔っていたということもあり、何も考えず思うままに行動した。つまり蛇原を突き飛ばし、若菜さんを逃がしたのだ。
あぁ、そういえばそうだった。なんか、紛失していたパズルのピースが見つかって穴が埋まっていく感覚だ。
「大したことしてないよ。それより、あの後あいつから何かされたりしてない?」
「はいっ! 先輩がちゃんと家まで送ってくれたので」
えっ?
待って、そこまでした記憶はないんだが……いや、言われると確かにそんな気も。酔いつぶれてるときの俺の行動力ヤバくないか?
「先輩っ、また次のデートも楽しみにしてます! チュッ♡」
「えっ……」
若菜さんは俺の頬に唇を触れ、あざとい小悪魔的な笑みを浮かべて去って行った。
えっ、待って次のデート? あれ、今日あいつらが出てきてドッキリは終わるんじゃなかったのか?
俺は意味が分からず、頬にキスをされた熱を感じながらただ立ち尽くすのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。
ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。
しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。
薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。
やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
恋愛
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
陰キャぼっちの俺が、カーストトップグループから追放されて孤立しているギャルと仲良くなった
電脳ピエロ
恋愛
新学年が始まってから1ヶ月が経過した頃、カーストトップグループのギャル――神崎 エリカはグループを追放され、クラスで孤立していた。
クラスの生徒達がエリカを無視する中、陰キャぼっちの倉野 充は彼女に話しかけ、仲良くなっていく。
徐々に充とエリカはクラスだけではなく学園内でも受け入れられるようになり、成りあがって行く。
一方で、カーストトップグループはエリカを返してくれと言うがもう遅い。
彼女は俺と楽しく学園生活を過ごしたいようです!
さらに、カーストトップグループは性格最悪な本性が露呈して、次々と落ちぶれて行く。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる