5 / 16
第5話 嫌われていた妹から好かれる①
しおりを挟む
その日の帰り、俺は美容院に寄った。一刻も早くこの鬱陶しい前髪を切りたかったからだ。
それに、ちょっと気掛かりなこともあるしな……。
髪を切り終わった後、担当してくれた茶髪の美人なお姉さんから「君イケメンだね~」とか言われて、実際に俺も鏡で見た顔はイケメンだと思ったから調子に乗りそうになったんだけど、気付いたら「そんなことないですよ!」と答えていた。
綺麗なお姉さんから「謙遜しちゃって~」とからかわれて、それはそれで嬉しかったんだけど、俺は別に謙遜したわけじゃなかった。
なんか本能的にというのか、自分の顔をカッコイイと思うことを拒んでしまうのだ。多分、この身体の元の持ち主、流線 遥人の記憶がそうさせているのだと思う。
彼は今まで、そうとう劣等感を感じるような出来事を味わって生きてきたようだからな。
その後、俺はさらに眼科に行って眼鏡をコンタクトに変えた。うん、やっぱりこの方が動きやすいな。
ショッピングモールに行って服も買い、試着室で着替えてそのまま帰った。なんというか、昨日自室で見たタンスの中には、正直俺的には「これはないわ」っていうセンスの服しかなかったのだ。
もちろん俺が日本の感性を理解していないだけなのかもしれないけど、正直あれは、日本人でも男子高校生が着るにはダサいと思う部類に入る気がする。
まるでゲームでキャラメイクをするような感覚で自分の容姿を整えて家に帰ると、玄関で妹の明里が俺を見て固まっていた。
「お、お兄ちゃん……?」
「おう、ただいま明里」
さて、どうしたものか……。
俺、というか遥人は妹に嫌われているようだった。
このまま妹に嫌われたまま過ごすことを選んでいいのか?
と、考えたとき、それはないという結論に至った。今は俺が流線 遥人なんだ、俺のやり方でやらせてもらう。
今日、自分の見た目を整えてきたのもそのためだ。
「明里! 今までずっとカッコ悪い兄でごめん。明里にずっと寂しい思いをさせててごめん!」
「えっ、えぇ……?」
遥人は確かに今まで理不尽な出来事や劣等感を感じる出来事に打ちのめされて生きてきた。
けど、それを言い訳にして卑屈な人間になって、明里とも距離を取るようになって……それで徐々に妹から嫌われていったのだ。
それは確かに俺――ラインハルトではなく、流線 遥人が積み上げてきてしまったものだ。
けれど、今の俺はラインハルトじゃなくて遥人として生きているわけで、だとしたら今までの遥人の行動すべての責任は俺にあると考えて行動するのが筋というものだろう。
少なくとも俺はそう思う。
「今日から俺は、明里と少しでも仲良くなれるように本気で変わろうと思ってる」
「お兄、ちゃん……」
急にすべてをひっくり返すのは無理かもしれない。けれど確実に、明里の心は少しずつ動き始めているようだった。
それに、ちょっと気掛かりなこともあるしな……。
髪を切り終わった後、担当してくれた茶髪の美人なお姉さんから「君イケメンだね~」とか言われて、実際に俺も鏡で見た顔はイケメンだと思ったから調子に乗りそうになったんだけど、気付いたら「そんなことないですよ!」と答えていた。
綺麗なお姉さんから「謙遜しちゃって~」とからかわれて、それはそれで嬉しかったんだけど、俺は別に謙遜したわけじゃなかった。
なんか本能的にというのか、自分の顔をカッコイイと思うことを拒んでしまうのだ。多分、この身体の元の持ち主、流線 遥人の記憶がそうさせているのだと思う。
彼は今まで、そうとう劣等感を感じるような出来事を味わって生きてきたようだからな。
その後、俺はさらに眼科に行って眼鏡をコンタクトに変えた。うん、やっぱりこの方が動きやすいな。
ショッピングモールに行って服も買い、試着室で着替えてそのまま帰った。なんというか、昨日自室で見たタンスの中には、正直俺的には「これはないわ」っていうセンスの服しかなかったのだ。
もちろん俺が日本の感性を理解していないだけなのかもしれないけど、正直あれは、日本人でも男子高校生が着るにはダサいと思う部類に入る気がする。
まるでゲームでキャラメイクをするような感覚で自分の容姿を整えて家に帰ると、玄関で妹の明里が俺を見て固まっていた。
「お、お兄ちゃん……?」
「おう、ただいま明里」
さて、どうしたものか……。
俺、というか遥人は妹に嫌われているようだった。
このまま妹に嫌われたまま過ごすことを選んでいいのか?
と、考えたとき、それはないという結論に至った。今は俺が流線 遥人なんだ、俺のやり方でやらせてもらう。
今日、自分の見た目を整えてきたのもそのためだ。
「明里! 今までずっとカッコ悪い兄でごめん。明里にずっと寂しい思いをさせててごめん!」
「えっ、えぇ……?」
遥人は確かに今まで理不尽な出来事や劣等感を感じる出来事に打ちのめされて生きてきた。
けど、それを言い訳にして卑屈な人間になって、明里とも距離を取るようになって……それで徐々に妹から嫌われていったのだ。
それは確かに俺――ラインハルトではなく、流線 遥人が積み上げてきてしまったものだ。
けれど、今の俺はラインハルトじゃなくて遥人として生きているわけで、だとしたら今までの遥人の行動すべての責任は俺にあると考えて行動するのが筋というものだろう。
少なくとも俺はそう思う。
「今日から俺は、明里と少しでも仲良くなれるように本気で変わろうと思ってる」
「お兄、ちゃん……」
急にすべてをひっくり返すのは無理かもしれない。けれど確実に、明里の心は少しずつ動き始めているようだった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
陽キャグループを追放されたので、ひとりで気ままに大学生活を送ることにしたんだが……なぜか、ぼっちになってから毎日美女たちが話しかけてくる。
電脳ピエロ
恋愛
藤堂 薫は大学で共に行動している陽キャグループの男子2人、大熊 快児と蜂羽 強太から理不尽に追い出されてしまう。
ひとりで気ままに大学生活を送ることを決める薫だったが、薫が以前関わっていた陽キャグループの女子2人、七瀬 瑠奈と宮波 美緒は男子2人が理不尽に薫を追放した事実を知り、彼らと縁を切って薫と積極的に関わろうとしてくる。
しかも、なぜか今まで関わりのなかった同じ大学の美女たちが寄ってくるようになり……。
薫を上手く追放したはずなのにグループの女子全員から縁を切られる性格最悪な男子2人。彼らは瑠奈や美緒を呼び戻そうとするがことごとく無視され、それからも散々な目にあって行くことになる。
やがて自分たちが女子たちと関われていたのは薫のおかげだと気が付き、グループに戻ってくれと言うがもう遅い。薫は居心地のいいグループで楽しく大学生活を送っているのだから。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
恋愛
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
母娘丼W
Zu-Y
恋愛
外資系木工メーカー、ドライアド・ジャパンに新入社員として入社した新卒の俺、ジョージは、入居した社宅の両隣に挨拶に行き、運命的な出会いを果たす。
左隣りには、金髪碧眼のジェニファーさんとアリスちゃん母娘、右隣には銀髪紅眼のニコルさんとプリシラちゃん母娘が住んでいた。
社宅ではぼさぼさ頭にすっぴんのスウェット姿で、休日は寝だめの日と豪語する残念ママのジェニファーさんとニコルさんは、会社ではスタイリッシュにびしっと決めてきびきび仕事をこなす会社の二枚看板エースだったのだ。
残業続きのママを支える健気で素直な天使のアリスちゃんとプリシラちゃんとの、ほのぼのとした交流から始まって、両母娘との親密度は鰻登りにどんどんと増して行く。
休日は残念ママ、平日は会社の二枚看板エースのジェニファーさんとニコルさんを秘かに狙いつつも、しっかり者の娘たちアリスちゃんとプリシラちゃんに懐かれ、慕われて、ついにはフィアンセ認定されてしまう。こんな楽しく充実した日々を過していた。
しかし子供はあっという間に育つもの。ママたちを狙っていたはずなのに、JS、JC、JKと、日々成長しながら、急激に子供から女性へと変貌して行く天使たちにも、いつしか心は奪われていた。
両母娘といい関係を築いていた日常を乱す奴らも現れる。
大学卒業直前に、俺よりハイスペックな男を見付けたと言って、あっさりと俺を振って去って行った元カノや、ママたちとの復縁を狙っている天使たちの父親が、ウザ絡みをして来て、日々の平穏な生活をかき乱す始末。
ママたちのどちらかを口説き落とすのか?天使たちのどちらかとくっつくのか?まさか、まさかの元カノと元サヤ…いやいや、それだけは絶対にないな。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
元おっさんの幼馴染育成計画
みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。
だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる