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第1章 貴族嫌いの少年、冒険者学校に入学する
6話 合否
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6話 合否
「ロイ君! おはよう! 昨日は緊張しちゃってなかなか寝付けなかったよ~」
「おはよ! 俺も早く冒険者登録がしたくて昨日からワクワクしちゃってな~」
俺は今、ターナと一緒に学校へ向かっている。
昨日の帰り際にターナから合格発表を一緒に見に行きたいと言われていたので、ターナの家まで迎えに来たのだ。
2人で学校へと向かっていると、昨日と同様に同年代の子ども達で道がごった返している。
そして学校へたどり着くと、大きな掲示板に合格者の受験番号が書かれた紙が貼り出されていた。
しかし、合格者発表は入学試験と違って貴族と市民とで分けられてはいない。
というのも、そもそもこの学校では生徒は平等とされており、外の世界での立場や権力を持ち込むのは禁止されている。
入学試験が貴族と市民とで別々なのは、まだ入学はしていないからという難癖をつけて裏で賄賂なり脅迫なり好き放題する貴族がいるからだそうだ。
さて、俺とターナの番号はあるだろうか。
結果は⋯⋯。
2人とも合格だった。
そして俺の番号のところには丸印がつけられていた。
なんでも、特待クラスに合格した生徒の番号につけられる印らしい。
そもそも特待クラスとはどのようなものなのかというと、
・家庭環境などを鑑み、必要に応じて学校が資金援助
・卒業するために必要な成績を学外での功績で代替可能
・受けたい授業を好きに選べる
といった特権を与えられる、いわゆるエリートクラスのことだ。
「さすがはロイ君だね! 弟子の私も鼻が高いよ!」
なんて、偉そうに胸を張るターナ。
「なに、ターナにはすぐに追いついてもらわないといけないからな。学校の授業と訓練の両立、大変だと思うが頑張ってくれよ?」
昨日の訓練の最中に気付いたのだが、ターナは魔力の扱いがあまり得意じゃない。
まぁ、あまり魔法を使ってこなかったから仕方がないのかもしれないが。
一方で、戦闘センス自体はピカイチだ。
天性の優れた動体視力を上手く活用できている。
これらを踏まえた訓練を毎日やっていれば彼女の実力はすぐに伸びるだろう。
「もちろん頑張るよ! あ、ロイ君は入学式どうするの?」
入学式は昼前に行われ、午後からはクラス別に分かれて顔合わせをしたり、寮に入る生徒は入寮の手続きを行なったりする。
入学式への出席は強制ではないが、午後からは参加しないといけないことになっている。
「俺は出るつもりはないかな。ターナはどうするんだ?」
「ん~。ロイ君が出ないなら私もやめとこうかな」
「おう、それなら午後まで時間があるから、今から鍛冶屋に行かないか? ターナも冒険者登録するんだろ? ちゃんとした自分の武器を持っておかないとな」
俺がそう言うと、苦笑を浮かべるターナ。
「う~ん。確かに武器は必要なんだけどね。ほら、入学金に加えて武器代も、ってなると家計が⋯⋯」
しかし、ターナにはいずれ冒険者としてのクエストにも同行してもらうつもりだからそれだと俺も困るんだよな。
だから、
「しばらくの間、必要になるお金は全て俺が出すよ。あ、心配しなくてもいいぞ? これは施しとかじゃなくていわゆる投資だ。きちんと俺にもメリットがある」
「ロイ君がそういうんだったら⋯⋯。何から何までお世話になっちゃって、ロイ君には感謝してもしきれないよ! 強くなってお礼しないとだ!」
「じゃあ行こうか。実は腕の立つ鍛冶屋を知ってるんだ」
それから俺達は、レコルさんの鍛冶屋へと向かった。
「おはようございます! 先日、お世話になったロイです!」
だが、そんな俺たちを出迎えたのはレコルではなく知らないドワーフの青年だった。
ドワーフらしい屈強な身体つきをしているが、髭は生やしていない。
「君がロイ君か! 君の話は師匠から聞いてるぜ! ちょっと待っててくれ。師匠を呼んでくるよ!」
お弟子さんだったのか。
そういえば、一昨日にこの店を訪れたときはレコルさん自身が店番をしていたが、あの時は偶然お弟子さんが居なかったのだろうか。
ターナと一緒に店内の様々な武器や防具などを物色していると、先ほどの青年とレコルさんが店の裏から出てきた。
「よく来たな! 今日は防具でも買いに来たか?」
「そうです! 俺の分の防具と、この子の分の装備一式を下見に来ました!」
レコルはターナの方を一瞥してから、少し悩むような仕草を見せた。
「うむ⋯⋯。剣の方ならお嬢ちゃんに合うものもあると思うが、防具の方がな。いっそのこと、2人分の防具は特注にしとくか?」
成長期の俺達ぐらいの年齢からすると、体格が大きく変わると使えなくなる防具を高値で買うのは無駄に思える。
だが、俺の場合は冒険者登録さえしてしまえばお金はいくらでも稼げるのだ。
それにマジックバッグに貯め込んである大量の魔物の素材を売ってしまえば相当な収入を得られるしな。
「そうします!」
「うむ。おい、2人の採寸を済ませておけ! その間に俺はお嬢ちゃんに合いそうな剣を持ってくる」
レコルさんがそう指示すると、俺たちはお弟子さんに店の裏へと連れて行かれた。
店の裏は工房になっており、俺たちは工房にある採寸室でそれぞれ採寸を済ませた。
「帰ってきたか。ほれ、これがお嬢ちゃんの剣だ」
レコルさんが持ってきたのは、刃渡り40cm程で漆黒の鞘に納められたショートソードだ。
「⋯⋯あれ? これ、なんか俺の剣と似てません?」
「これはロイが持っとる剣の旧型みたいなもんだ。まぁ旧型とはいっても、そこらの鍛治師にはつくれない一級品だぞ。少しロイのものよりも短いし、お嬢ちゃんにはちょうどいいんじゃないか?」
「どうだ? これでいいか?」
ターナに聞くと、彼女は満面の笑みで答えた。
「これがいい! だってロイ君とおそろいだもん!」
⋯⋯やっぱり、女の子っておそろいとかを結構気にするものなんだな。
妹のリリィも誕生日はよく俺とおそろいの物を買ってもらってたし。
「そうか。じゃあこれでお願いします! ⋯⋯何ですか?」
屈強な男2人がニヤニヤしながらこちらを見てきている。
「さすがはあのウィードの息子だな!」
⋯⋯別に俺とターナはそういう関係じゃないんですけど。
それに、こういうときに引き合いに出されてしまうウチの父親ってなんなのさ⋯⋯。
かなりの誤解が生まれてしまったみたいだが、俺たちの装備についてはこれで問題なさそうだ。
ちなみに、ターナの剣はかなり値引きをしてもらって金貨1枚で買うことができた。
そして俺達の防具の方だが、より性能の高いものを作ろうとすると素材の入手に時間がかかってしまうらしい。
そこで、俺のマジックバッグに入れてある魔物の素材を一部だけ渡して使ってもらうことにした。
渡したのはファイアドラゴンとウィンドパンサーの素材で、前者は耐久性と耐熱性に優れ、後者は軽量化を図るのに優れている。
どちらも高ランクの魔物なので出来上がりが今から楽しみだ。
レコルさんの店を出ると、時刻は昼前になっていたのでターナと昼食をとることにした。
そして、その後には学校でクラスメイトとの顔合わせがある。
特待クラスか⋯⋯。
どんな人達がいて、どんな学校生活が始まるのだろうか。
田舎者の俺は、内心そうやって人一倍にわくわくしているのだった。
「ロイ君! おはよう! 昨日は緊張しちゃってなかなか寝付けなかったよ~」
「おはよ! 俺も早く冒険者登録がしたくて昨日からワクワクしちゃってな~」
俺は今、ターナと一緒に学校へ向かっている。
昨日の帰り際にターナから合格発表を一緒に見に行きたいと言われていたので、ターナの家まで迎えに来たのだ。
2人で学校へと向かっていると、昨日と同様に同年代の子ども達で道がごった返している。
そして学校へたどり着くと、大きな掲示板に合格者の受験番号が書かれた紙が貼り出されていた。
しかし、合格者発表は入学試験と違って貴族と市民とで分けられてはいない。
というのも、そもそもこの学校では生徒は平等とされており、外の世界での立場や権力を持ち込むのは禁止されている。
入学試験が貴族と市民とで別々なのは、まだ入学はしていないからという難癖をつけて裏で賄賂なり脅迫なり好き放題する貴族がいるからだそうだ。
さて、俺とターナの番号はあるだろうか。
結果は⋯⋯。
2人とも合格だった。
そして俺の番号のところには丸印がつけられていた。
なんでも、特待クラスに合格した生徒の番号につけられる印らしい。
そもそも特待クラスとはどのようなものなのかというと、
・家庭環境などを鑑み、必要に応じて学校が資金援助
・卒業するために必要な成績を学外での功績で代替可能
・受けたい授業を好きに選べる
といった特権を与えられる、いわゆるエリートクラスのことだ。
「さすがはロイ君だね! 弟子の私も鼻が高いよ!」
なんて、偉そうに胸を張るターナ。
「なに、ターナにはすぐに追いついてもらわないといけないからな。学校の授業と訓練の両立、大変だと思うが頑張ってくれよ?」
昨日の訓練の最中に気付いたのだが、ターナは魔力の扱いがあまり得意じゃない。
まぁ、あまり魔法を使ってこなかったから仕方がないのかもしれないが。
一方で、戦闘センス自体はピカイチだ。
天性の優れた動体視力を上手く活用できている。
これらを踏まえた訓練を毎日やっていれば彼女の実力はすぐに伸びるだろう。
「もちろん頑張るよ! あ、ロイ君は入学式どうするの?」
入学式は昼前に行われ、午後からはクラス別に分かれて顔合わせをしたり、寮に入る生徒は入寮の手続きを行なったりする。
入学式への出席は強制ではないが、午後からは参加しないといけないことになっている。
「俺は出るつもりはないかな。ターナはどうするんだ?」
「ん~。ロイ君が出ないなら私もやめとこうかな」
「おう、それなら午後まで時間があるから、今から鍛冶屋に行かないか? ターナも冒険者登録するんだろ? ちゃんとした自分の武器を持っておかないとな」
俺がそう言うと、苦笑を浮かべるターナ。
「う~ん。確かに武器は必要なんだけどね。ほら、入学金に加えて武器代も、ってなると家計が⋯⋯」
しかし、ターナにはいずれ冒険者としてのクエストにも同行してもらうつもりだからそれだと俺も困るんだよな。
だから、
「しばらくの間、必要になるお金は全て俺が出すよ。あ、心配しなくてもいいぞ? これは施しとかじゃなくていわゆる投資だ。きちんと俺にもメリットがある」
「ロイ君がそういうんだったら⋯⋯。何から何までお世話になっちゃって、ロイ君には感謝してもしきれないよ! 強くなってお礼しないとだ!」
「じゃあ行こうか。実は腕の立つ鍛冶屋を知ってるんだ」
それから俺達は、レコルさんの鍛冶屋へと向かった。
「おはようございます! 先日、お世話になったロイです!」
だが、そんな俺たちを出迎えたのはレコルではなく知らないドワーフの青年だった。
ドワーフらしい屈強な身体つきをしているが、髭は生やしていない。
「君がロイ君か! 君の話は師匠から聞いてるぜ! ちょっと待っててくれ。師匠を呼んでくるよ!」
お弟子さんだったのか。
そういえば、一昨日にこの店を訪れたときはレコルさん自身が店番をしていたが、あの時は偶然お弟子さんが居なかったのだろうか。
ターナと一緒に店内の様々な武器や防具などを物色していると、先ほどの青年とレコルさんが店の裏から出てきた。
「よく来たな! 今日は防具でも買いに来たか?」
「そうです! 俺の分の防具と、この子の分の装備一式を下見に来ました!」
レコルはターナの方を一瞥してから、少し悩むような仕草を見せた。
「うむ⋯⋯。剣の方ならお嬢ちゃんに合うものもあると思うが、防具の方がな。いっそのこと、2人分の防具は特注にしとくか?」
成長期の俺達ぐらいの年齢からすると、体格が大きく変わると使えなくなる防具を高値で買うのは無駄に思える。
だが、俺の場合は冒険者登録さえしてしまえばお金はいくらでも稼げるのだ。
それにマジックバッグに貯め込んである大量の魔物の素材を売ってしまえば相当な収入を得られるしな。
「そうします!」
「うむ。おい、2人の採寸を済ませておけ! その間に俺はお嬢ちゃんに合いそうな剣を持ってくる」
レコルさんがそう指示すると、俺たちはお弟子さんに店の裏へと連れて行かれた。
店の裏は工房になっており、俺たちは工房にある採寸室でそれぞれ採寸を済ませた。
「帰ってきたか。ほれ、これがお嬢ちゃんの剣だ」
レコルさんが持ってきたのは、刃渡り40cm程で漆黒の鞘に納められたショートソードだ。
「⋯⋯あれ? これ、なんか俺の剣と似てません?」
「これはロイが持っとる剣の旧型みたいなもんだ。まぁ旧型とはいっても、そこらの鍛治師にはつくれない一級品だぞ。少しロイのものよりも短いし、お嬢ちゃんにはちょうどいいんじゃないか?」
「どうだ? これでいいか?」
ターナに聞くと、彼女は満面の笑みで答えた。
「これがいい! だってロイ君とおそろいだもん!」
⋯⋯やっぱり、女の子っておそろいとかを結構気にするものなんだな。
妹のリリィも誕生日はよく俺とおそろいの物を買ってもらってたし。
「そうか。じゃあこれでお願いします! ⋯⋯何ですか?」
屈強な男2人がニヤニヤしながらこちらを見てきている。
「さすがはあのウィードの息子だな!」
⋯⋯別に俺とターナはそういう関係じゃないんですけど。
それに、こういうときに引き合いに出されてしまうウチの父親ってなんなのさ⋯⋯。
かなりの誤解が生まれてしまったみたいだが、俺たちの装備についてはこれで問題なさそうだ。
ちなみに、ターナの剣はかなり値引きをしてもらって金貨1枚で買うことができた。
そして俺達の防具の方だが、より性能の高いものを作ろうとすると素材の入手に時間がかかってしまうらしい。
そこで、俺のマジックバッグに入れてある魔物の素材を一部だけ渡して使ってもらうことにした。
渡したのはファイアドラゴンとウィンドパンサーの素材で、前者は耐久性と耐熱性に優れ、後者は軽量化を図るのに優れている。
どちらも高ランクの魔物なので出来上がりが今から楽しみだ。
レコルさんの店を出ると、時刻は昼前になっていたのでターナと昼食をとることにした。
そして、その後には学校でクラスメイトとの顔合わせがある。
特待クラスか⋯⋯。
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