乙女ゲームのヒロインに転生したけど、私が思った通り、悪役令嬢が悪役じゃなかったので、いろいろ設定変わってました。

南雲このは

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出会いイベント発生してしまいました!?

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その後、メアリー様たちは、アイスクリーム屋、フランス料理店、サーカス、レストラン、水族館、スイーツバイキング店、動物園、フルーツバイキング専門店……などなど。

本当にいろいろな所をまわっていたので、私はクタクタになっていた。

ちなみにまわった場所はほとんど料理店。

メアリー様はだいぶ大食いだと言うことがわかった。


「はー、疲れた……」


私は今、キャッキャウフフと青春を楽しんでいるメアリー様たちから、少し離れたカフェテリアの席で見張っている最中。

尾行するにあたって、同じ人だとバレないように少しずつ変装していった。

今は髪を三つ編みにして、大きなつば付きの帽子とサングラスを付けている。


「もうそろそろ帰ろうぜ。寮の門限がもうすぐだぞ」

「あ、そうだ。私は今日、自分の家に泊まるね」

「じゃあ、婚約者である俺が送るよ」

「いえいえ、ここは護衛である私がお送りします」

「いーや、俺が送る!」

「はあ!?」

「………………」


私はあの集団に呆れの視線を送った。

うーん、ゲームをプレイしていた時は、本当にかっこいいキャラばっかりだなと思っていたけど、こういう姿を見ると、やっぱり人の子なんだなということがよく分かる。

私は、メアリー様が転生者なのではないかと密かに疑っていたけど、その線はもう消していた。

メアリー様に裏はないことがよーく分かったし、転生者にありがちな不可解な言動(前世での言葉を言ったり)もなかった。

私のように転生者の可能性はほぼ0だ。

じゃあ何でゲームと性格が違うのかは、まだ分からないけど……。

その中でも分かったのは、攻略対象たちは、私が予想した以上に、メアリー様を好きだったということ。

まだ誰がメアリー様を送るかで揉めている。


「……もう情報は集まったし、帰ろっと」


だいぶ有益な情報も集まったので、そろそろ帰ることにした。

カフェテリアの席から立とうとしたその瞬間……。


「お嬢さん、君はもう、家には帰れないよ」

「え?……ん、んん!?」


な、何この人!?

力では到底叶わなくて、路地裏に引きずり込まれてしまった。

路地裏では、さらに男の人たちが待ち構えていて、私が逃げられないようにするためなのか、私の周りを囲んだ。


「ほらこいつ、平民のくせに、なかなか綺麗な顔をしているぞ」


そ、そりゃヒロインの容姿ですからね!


「国外へ売れば、高値がつくぞこりゃ!」


こ、国外!?

さらに“売る”というワードに、血の気が引くのを感じて、全身が震えてくる。

血の気が引くなんて初めて体験した。

こんな感じなのね……。


「なあ、売る前に、コイツでちょっとでもヤれねえかな」

「お前ロリコンかよ!」


ゲラゲラと笑う、ものすごく下品な人たちは、全員で4人だ。

って、あれ…?


「ば、馬車の車夫さん!?」


笑っている4人のうちの1人は、私が乗ってきた馬車の車夫のおじさんだった。


「お?気づいたかお嬢ちゃん。ダメだぞー、優しい人には警戒しないと。うわっはっは!」

「そ、んな……」


あんなに優しいおじさんだったのに……。

辺りを見回しても、当たり前だけど誰もこんな暗い路地裏は通らない。


「でも、確かにガキのくせに色気づいてるよなあ…。お仕置きが必要か?」


こ、こいつらたった10歳の女の子の体に発情してるの!?

しかもお仕置きって何、気持ち悪い!

車夫さんが最低な人だったことに思った以上に衝撃を受けた。

けど、誰かが助けてくれる訳ではない。

……仕方がない。

私はある決意をした。

私の魔法で、全員やっつけて、無事に帰るしかない。

だって、リオンやお母さんに心配をかける訳にはいかないんだから。

そして、魔法を念じ始めようとしたその時。


──ドカン、ドカン、ドカン!!


辺りが爆発し始めた。


「な、なんだ!?魔法か!」

「あ、アニキい……!」


──ドカン、ドカン!!



「ひいいっ!」

「う、うろたえるな!そのガキは絶対に離すんじゃね…ぐわあ!?」

「悪いけどさあ、そういう会話、メアリーの近くでやらないでくれる?」

「!!」


驚いて振り返ると、攻略対象たちが勢ぞろいしていた。

後ろには、守られるようにメアリー様が立っている。

…いや、私の方へ来ようとしているメアリー様を、攻略対象の1人が必死に押さえつけている。

え、な、何で…?


「さーて、メアリーを泣かした罪で、お前ら死ね」


あ、メアリー様が泣いていたから、原因のこの男たちを殺すってこと?

…メアリー様、泣いているどころか、だいぶご立腹な様子なんですけど。

男たちは青ざめると、「ひぃぃ~~~っ!!」と叫びながら逃げていった。

え、こんなことで簡単に逃げるの!?

絶対に犯罪には向いてないよあんたら!

そして、取り残されたのは、私と攻略対象たちとメアリー様。

ど、どうしよう……。

出会いたくないのに、何故か出会いイベント起きちゃったよ。

とりあえず、お礼を言って急いで帰ろう。


「この度は助けてきただき、ありが……」

「ついでにお前もだ」


──ドカンッ!!


「ひいっ!?」


な、何でまだ魔法使って攻撃するの!?

こんな風に、風を使う攻撃を得意としているのは、メアリー様の護衛で、1つ年上のクレイ・ディアス様だ。

さっきの爆発魔法もクレイ様。

確か、丁寧な言葉遣いと、優しい口調が特徴だけど……。

ゲームと違いメアリー様を好きすぎて、メアリー様に危害を及ぼしかねない人物には、丁寧な言葉遣いが全く無くなる、とか……。

…わ、私がメアリー様に危害を及ぼす人物ってこと!?


「お、お願いしますやめてくださいっ!!」

「じゃあそのノートを俺らに出して。そしてもう2度と近づくな」

「……!シェア……王子様……」


しまった、顔を見られた!


「君が俺たちをつけ回していることに、気付いていないとでも思ったの?」

「……っ…!」


私は、ノートの入ったカバンを無意識に抱きしめる。

本当に、最悪なパターンでの出会いイベントだ。

ここをうまく切り抜けられたとしても、学園に入れば、私の存在は警戒される。

うまく切り抜けられなければ、ノートは取られて、私の身もどうなるか分からない。

どこかに幽閉されるか、最悪処刑されるか……。

そうなれば、今までの私の努力は水の泡だ。

ああもう、何で出会いイベントなんてものが発生しちゃったの!

絶対に1人で切り抜けられたのに!


「も、もうそこまででいいじゃない!」

「め、メアリー…?」

「あなた、大丈夫?シェア王子たちが乱暴な言葉であなたを傷つけてごめんね!」

「へ、は、はい…」


まさか、メアリー様直々に謝られるとは…。

驚きの意味を込めて、顔を上げてメアリー様を見る。


「メアリー様、そいつは私たちの情報を集めているのですよ。近づくのは危険です!」

「そうかしら?この子は危険じゃないわ。私の勘はよく当たるんだから!」


自信満々に腰に手を当てるメアリー様。

…うん、本当に悪い人ではないのだと思う。

私が発動させた、悪人にだけ効果のある、『見つめられると気絶する魔法』にもかかる様子はなかったし。


「……あの、諸事情でノートをお渡しすることも、見せることもできません。でも、決して悪用はしません!信じてください!」

「…ええ、私は信じる!」

「メアリー様……」


本当に、いい人だ。

信じてくれる人がいることに少しだけ安心して、肩の力を抜くことができた。


「……その言葉、本当だな?」

「は、はいっ!!」


シェア王子の言葉に、全力で首を縦に振って答える。


「じゃあ、今回はメアリーに免じて見逃してやる。もしその情報を悪用したら、それ相応の罰を受けてもらうからな」

「……はい」


悪いことはしていないけれど、“罰”という言葉が重くのしかかる。


「……あの、もうひとつお願いがあります。今後、もし私を見かけても、話しかけないで、関わらないでほしいんです」

「え、どうして!?」


メアリー様が『何で!?』という顔をして聞いてくる。


「…それは、何故ですか?」

「絶対に、守りたいものがあるからです」


クレイ様の問いかけに、きっぱりと答える。

そう、私の命よりも優先して守りたいものがある。

脳裏に、リオンとお母さんの笑顔が浮かんだ。


「ま、別にいいんじゃない?こっちだって怪しい君とは関わり合う気はこれっぽっちもないし」


こ、この人、かわいい顔をしてなんて辛辣な言葉を……。

かわいい顔をしているのは、私と同い歳で、メアリー様と同じく公爵家子息の、アーク・ルイス様だ。

前世では、最も攻略が難しかったキャラだっから、すごく覚えている。

ツンデレなんてキャラ、それまでは全く知らなかったからなあ。

そして、思考が単純でツッコミ気質なのは、キアン・フォスター様。

ちなみに、攻略が1番簡単だった人だ。

いわゆる脳筋の人。


「本当に、ありがとうございました!」


手を振ってくれるメアリー様に、ペコリとお辞儀を返した。

メアリー様たちに関わらなければ、きっと私自身の破滅はないはず。

……今度は、絶対に1人で馬車へ乗らずに、集合馬車のような、大人数で乗るものに乗ろう。

私は密かに、そう心に誓った。

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