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第13章 何も知らない子供に救いの手を
第329話 不法侵入は犯罪です、わかってますよね…
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そう、『黒の使徒』の連中、ザイヒト皇子を誘拐しに来たんじゃないかと思ったんだよね。
何のため?それがロクでもないことを考えているとしか思えないからミルトさんに来てもらったの。
「えーと、ターニャちゃんはその三人がザイヒト王子を誘拐しに来たのではないかと思った。
だから、衛兵に突き出すより先に私達に相談したかったということかな。」
「うん、そうなの。
今まで、奴らときたら馬鹿の一つ覚えみたいにわたし達の命を狙ってきてた。
なのに今回、わたし達じゃなくてザイヒト皇子の方へ行ったのは新しい動きだなと思って。
なんかまたロクでもないことを考えているよ、きっと。」
しかし、何で今、このタイミングで動くのだろう?
リタさんの予想では、ザイヒト皇子を御輿に担ぎ出すのは大分先のはずでは……。
「そう、分かったわ。とりあえずその侵入者の話を聞いてみましょう。」
***********
守衛の詰め所、三人の侵入者を放り込んだ部屋にミルトさんが護衛の騎士を伴って入って行った。
わざと部屋の扉は少し開けたままにしてあり、部屋の中の声が廊下でも聞こえるようにしてもらった。
わたし達は今、扉の陰から中の様子を窺っているの。
護衛の騎士が侵入者三人の頬を張り、三人を覚醒させると猿轡を外した。
目を覚ました侵入者の一人が言う。
「ここはどこだ?貴様、俺達に何をした。」
「ここは王立学園の守衛詰め所、あなた達は王立学園への不法侵入の現行犯で捕らえられているの。」
ミルトさんは事実をありのままに答える。
「王立学園への不法侵入だって?
我々は、いとも貴きお方の命でザイヒト殿下をお迎えに上がったのだ。
何故われわれが捕らえられねばならないのだ。」
いや、夜中に壁を乗り越えて侵入すれば不法侵入だよ、立派な犯罪者でしょうに…。
ほら、ミルトさんが頭が痛そうにしている。
分かるよ、その気持ち。『黒の使徒』って言うことが常人とずれているから。
「どこから、突っ込めば良いものやら…。
まず第一に、それならば昼間堂々と正門から入って来れば良いでしょう。
なにも、真夜中に塀を乗り越えて入ってくることはないのではなくて。
第二に、王宮では帝国の大使館からザイヒト皇子を帝国へ送り返すとは聞いていないわ。
この学園は帝国との正式な取り決めによって皇子をお預かりしているの、正式な書面がない限りお渡しすることは出来ないわ。
ザイヒト皇子が誘拐でもされたらこちらの責任問題になるもの。」
ミルトさんが至極真っ当な指摘をする、本来ならこれを言われたらグウの音も出ないよね。
でも、『黒の使徒』は一味違うんだ、それが頭痛のタネ。
「おまえの様な話の通じない輩がいるから、こっそりとお連れしないといけないのではないか。
なんで、大使のような下っ端に話を通さねばならん、こちらはいとも貴き方から直接命じられて参じたのだ。
つべこべ言わずにザイヒト皇子をこちらに渡してもらおうか。
それと早く我々の拘束を解け、それ相応の謝罪を要求するぞ。」
ほら、無茶苦茶なことを言う。だいたい大使って、皇帝の全権代理人だよね。それを下っ端って、不敬もいいところだよ…。
「ターニャちゃんに聞いていたとおりだわ…、あなた方と話をしていると頭が痛くなりますわ。
要するにザイヒト皇子の帰還が正式に決まったわけではないのね。
たかが、宗教団体の人間が何を偉そうに言っているの。
国として決まったわけでもなく、正式な要請もないのに引き渡せるわけないでしょう。
そんなことをしたら、こちらの責任問題だわ。」
「たかが、宗教団体だと?貴様、我々を愚弄するか!
帝国においては我が教団の教皇こそが至高のお方、その命が最優先されるに決まっているではないか。
いいか、片田舎のこの国ではわからんだろうが、教皇の命と皇帝の命が相反した場合は教皇の命に従わねばならないのだ。よく覚えておくが良い。」
本当にどこまで思い上がっているのだろうこの集団は、わたしの隣でヴィクトーリアさんが怒りに体を震わせているじゃないの。
「そう、わかったわ。
今回あなた達にザイヒト王子の誘拐を指示したのは『黒の使徒』の教皇なのね。」
「誘拐とは何だ!その言葉訂正してもらおう!
我々はザイヒト殿下を正統な帝国の後継者としてお迎えに上がったのだ。
それを誘拐とは不愉快も甚だしい。」
侵入者の一人が激昂して言った、自分達の行為をけなされると怒るんだよねこの人たち。
「それはおかしいですね。帝国の正当な後継者はケントニス皇太子でしたわよね。
正式な立太子の儀も済ませておりますよね、わたしの夫が国賓として参列して確認しておりますわよ。」
「笑わせるな、貴色を纏っていない第一皇子が何が皇太子だ。
頭脳明晰で温和な第一皇子が次期皇帝に相応しいなどと穏健派貴族どもが調子に乗りおって。
第一皇子が言うように民衆に甘い顔を見せてみろ、民衆はすぐ付け上がるぞ。
民衆というのは貴色を纏った皇帝が力で抑えつけるからこそ、声を静めているんだ。
あんな皇太子は早々に廃して、貴色を纏ったザイヒト殿下を皇太子に迎えるのだ。」
こいつら本当に馬鹿だろう、こんなにペラペラ喋って。聴かれちゃ拙い人が聴いているとは思わないのだろうか。
侵入者の一人が喋り終わるのを待って、ミルトさんがこちらに声をかけてきた。
「こんなところで良いでしょうかね。目的は粗方判りましたよね。
そろそろ、入ってきたらいかがですか?」
ミルトさんの声に促されて、わたし達は部屋に入ることにした。
先頭に立って部屋に入るやいなや、ヴィクトーリアさんが言った。
「あなた方、『黒の使徒』の者達が内心でどう思っているかが分かりました。
たかが、宗教団体が国政に介入しようとは不遜もいいところです。」
「皇后、貴様、まだおめおめと生きておったのか。
しかも、後ろにいるのは『背信皇女』と『白い悪魔』、おまえらみんなグルだったのか。
おい、皇后、貴様の隣にいる二人のせいで今帝国は大混乱だ。
二千年の長きに渡り『黒の使徒』の教導の賜物で安定していた民心に、その二人のせいで乱れが出ているのだ。
その二人が民に施したせいで、民が『黒の使徒』に楯突くようになったではないか。
今回もおまえらが妨害に加わったことをしっかりと報告してやるからな。」
うーん、グルも何もわたし達が一緒に行動しているのって周知のことだと思うのだけど。
それと、この人達、報告すると言うけど生きて帰れると思っているのかな。
「あら、あなた達、どうやって報告するつもりなの?
まさか、生きてこの国を出られると思っている訳?」
ミルトさんが冷淡な声で言い放つ。
「ふざけるな、俺達にもしものことがあったら、『黒の使徒』が絶対に赦さんぞ。
必ず後悔させてやるぞ。」
『黒の使徒』の威光が通じるのは帝国だけだと気付こうよ、そろそろ…。
「だから、あなた方に何かがあったことを、『黒の使徒』の連中はどうやって知ると言うの。
本当に馬鹿な人たちね。
ターニャちゃん、お願いしてもいいかな。
以前無闇に使っちゃダメと言ったけど、こういう人を更正させるのは無理だと思うわ。
この人たちの言う貴色というのを取上げちゃうのが一番だわね。」
心底呆れたミルトさんがわたしに頼んできた。
勿論、いいですよ、こんな人に強い魔法を持たせておくのはマジ危険だから。
わたしは、光のおチビちゃん達に侵入者三人組を完膚なきまで念入りに浄化するようにお願いしたの。
いつもの如く、「悪魔」とか「人でなし」とか罵詈雑言を投げ付けられたよ。無視したけど…。
何のため?それがロクでもないことを考えているとしか思えないからミルトさんに来てもらったの。
「えーと、ターニャちゃんはその三人がザイヒト王子を誘拐しに来たのではないかと思った。
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なんかまたロクでもないことを考えているよ、きっと。」
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わざと部屋の扉は少し開けたままにしてあり、部屋の中の声が廊下でも聞こえるようにしてもらった。
わたし達は今、扉の陰から中の様子を窺っているの。
護衛の騎士が侵入者三人の頬を張り、三人を覚醒させると猿轡を外した。
目を覚ました侵入者の一人が言う。
「ここはどこだ?貴様、俺達に何をした。」
「ここは王立学園の守衛詰め所、あなた達は王立学園への不法侵入の現行犯で捕らえられているの。」
ミルトさんは事実をありのままに答える。
「王立学園への不法侵入だって?
我々は、いとも貴きお方の命でザイヒト殿下をお迎えに上がったのだ。
何故われわれが捕らえられねばならないのだ。」
いや、夜中に壁を乗り越えて侵入すれば不法侵入だよ、立派な犯罪者でしょうに…。
ほら、ミルトさんが頭が痛そうにしている。
分かるよ、その気持ち。『黒の使徒』って言うことが常人とずれているから。
「どこから、突っ込めば良いものやら…。
まず第一に、それならば昼間堂々と正門から入って来れば良いでしょう。
なにも、真夜中に塀を乗り越えて入ってくることはないのではなくて。
第二に、王宮では帝国の大使館からザイヒト皇子を帝国へ送り返すとは聞いていないわ。
この学園は帝国との正式な取り決めによって皇子をお預かりしているの、正式な書面がない限りお渡しすることは出来ないわ。
ザイヒト皇子が誘拐でもされたらこちらの責任問題になるもの。」
ミルトさんが至極真っ当な指摘をする、本来ならこれを言われたらグウの音も出ないよね。
でも、『黒の使徒』は一味違うんだ、それが頭痛のタネ。
「おまえの様な話の通じない輩がいるから、こっそりとお連れしないといけないのではないか。
なんで、大使のような下っ端に話を通さねばならん、こちらはいとも貴き方から直接命じられて参じたのだ。
つべこべ言わずにザイヒト皇子をこちらに渡してもらおうか。
それと早く我々の拘束を解け、それ相応の謝罪を要求するぞ。」
ほら、無茶苦茶なことを言う。だいたい大使って、皇帝の全権代理人だよね。それを下っ端って、不敬もいいところだよ…。
「ターニャちゃんに聞いていたとおりだわ…、あなた方と話をしていると頭が痛くなりますわ。
要するにザイヒト皇子の帰還が正式に決まったわけではないのね。
たかが、宗教団体の人間が何を偉そうに言っているの。
国として決まったわけでもなく、正式な要請もないのに引き渡せるわけないでしょう。
そんなことをしたら、こちらの責任問題だわ。」
「たかが、宗教団体だと?貴様、我々を愚弄するか!
帝国においては我が教団の教皇こそが至高のお方、その命が最優先されるに決まっているではないか。
いいか、片田舎のこの国ではわからんだろうが、教皇の命と皇帝の命が相反した場合は教皇の命に従わねばならないのだ。よく覚えておくが良い。」
本当にどこまで思い上がっているのだろうこの集団は、わたしの隣でヴィクトーリアさんが怒りに体を震わせているじゃないの。
「そう、わかったわ。
今回あなた達にザイヒト王子の誘拐を指示したのは『黒の使徒』の教皇なのね。」
「誘拐とは何だ!その言葉訂正してもらおう!
我々はザイヒト殿下を正統な帝国の後継者としてお迎えに上がったのだ。
それを誘拐とは不愉快も甚だしい。」
侵入者の一人が激昂して言った、自分達の行為をけなされると怒るんだよねこの人たち。
「それはおかしいですね。帝国の正当な後継者はケントニス皇太子でしたわよね。
正式な立太子の儀も済ませておりますよね、わたしの夫が国賓として参列して確認しておりますわよ。」
「笑わせるな、貴色を纏っていない第一皇子が何が皇太子だ。
頭脳明晰で温和な第一皇子が次期皇帝に相応しいなどと穏健派貴族どもが調子に乗りおって。
第一皇子が言うように民衆に甘い顔を見せてみろ、民衆はすぐ付け上がるぞ。
民衆というのは貴色を纏った皇帝が力で抑えつけるからこそ、声を静めているんだ。
あんな皇太子は早々に廃して、貴色を纏ったザイヒト殿下を皇太子に迎えるのだ。」
こいつら本当に馬鹿だろう、こんなにペラペラ喋って。聴かれちゃ拙い人が聴いているとは思わないのだろうか。
侵入者の一人が喋り終わるのを待って、ミルトさんがこちらに声をかけてきた。
「こんなところで良いでしょうかね。目的は粗方判りましたよね。
そろそろ、入ってきたらいかがですか?」
ミルトさんの声に促されて、わたし達は部屋に入ることにした。
先頭に立って部屋に入るやいなや、ヴィクトーリアさんが言った。
「あなた方、『黒の使徒』の者達が内心でどう思っているかが分かりました。
たかが、宗教団体が国政に介入しようとは不遜もいいところです。」
「皇后、貴様、まだおめおめと生きておったのか。
しかも、後ろにいるのは『背信皇女』と『白い悪魔』、おまえらみんなグルだったのか。
おい、皇后、貴様の隣にいる二人のせいで今帝国は大混乱だ。
二千年の長きに渡り『黒の使徒』の教導の賜物で安定していた民心に、その二人のせいで乱れが出ているのだ。
その二人が民に施したせいで、民が『黒の使徒』に楯突くようになったではないか。
今回もおまえらが妨害に加わったことをしっかりと報告してやるからな。」
うーん、グルも何もわたし達が一緒に行動しているのって周知のことだと思うのだけど。
それと、この人達、報告すると言うけど生きて帰れると思っているのかな。
「あら、あなた達、どうやって報告するつもりなの?
まさか、生きてこの国を出られると思っている訳?」
ミルトさんが冷淡な声で言い放つ。
「ふざけるな、俺達にもしものことがあったら、『黒の使徒』が絶対に赦さんぞ。
必ず後悔させてやるぞ。」
『黒の使徒』の威光が通じるのは帝国だけだと気付こうよ、そろそろ…。
「だから、あなた方に何かがあったことを、『黒の使徒』の連中はどうやって知ると言うの。
本当に馬鹿な人たちね。
ターニャちゃん、お願いしてもいいかな。
以前無闇に使っちゃダメと言ったけど、こういう人を更正させるのは無理だと思うわ。
この人たちの言う貴色というのを取上げちゃうのが一番だわね。」
心底呆れたミルトさんがわたしに頼んできた。
勿論、いいですよ、こんな人に強い魔法を持たせておくのはマジ危険だから。
わたしは、光のおチビちゃん達に侵入者三人組を完膚なきまで念入りに浄化するようにお願いしたの。
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