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第12章 三度目の夏休み
第307話 夏休みはまだ続いています
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無事にポルトの孤児院を開設した翌日、まだ夏休みは三十日以上残っている、さてこれからどうしようか。
忘れてはならないのが、ミーナちゃんをご両親のお墓参りに連れて行くこと。
きっとミーナちゃんは遠慮して言い出せないでいるはずだから。
あと、昨年森を作った村の様子も確認したい、『黒の使徒』の連中に嫌がらせされていなければ良いのだけど。
これから帝国まで行くとなると日程がタイトになるからどうしようかと思っていたのだけど…。
ひらめきました、何も律儀に魔導車で時間をかけていく必要はないのよね。
わたしは早速精霊の森へ帰省しておかあさん達におねだりしてきたよ。
理由を話したら快く希望のモノをもらえたの、よかった。
**********
そして数日後、準備が整ったわたし達はノイエシュタットから帝国の東部辺境への旅に出発することになるのですが…。
今回のメンバーは、わたし、ミーナちゃん、ハンナちゃん、リリちゃんの四人組に加え、帝国の現状を知っておいて貰おうと昨年同様ハイジさんにも声をかけたの。そこまでは良いの…。
わたしの目の前には、いつもと変わらぬ侍女の服装をしたリタさんが大きな鞄を抱えて立っている。
なぜ、あなたがここにいるの…、
「夏休みですよ、夏休み。
ターニャちゃんに無茶振りした罰として、ミルト様はしばらく皇太子様の事務仕事を手伝うことになったのです。
私がいると全部私がやってしまって罰にならないからと言って、皇太子様から直々に夏季休暇を言い渡されたのです。有給ですよ、有給休暇。
凄いですね高級官吏って夏休みが一ヶ月もあるんだそうです。もっとも、忙しくて実際に取れるのはほんの一部だそうですけど。
セレブは夏は働かないって本当だったんですね、私は都市伝説だと思っていましたよ。
ということで、私も連れて行ってください。
私は料理も得意ですし、事務仕事もできます、一緒にいると何かと便利ですよ。」
なんか、凄く行く気満々なんだけど、帝国へ行くこと誰から聞いたんだろう?
でも、とりあえず。
「リタさん、一緒に行くって言いますけど、どこに寝るつもりなのですか。
帝国の辺境には宿がないので車中泊ですよ、ベッドが足りないです。」
わたしは魔導車のキャパシティの関係で無理だと断ったの。
「魔導車のソファーがあるじゃないですか、私の使っているベッドより数段寝心地が良さそうですよ。
ちゃんと毛布は持ってきたので大丈夫です。」
ああ、その大きな荷物、毛布が入っていたんだ…。
これは何を言っても付いて来るだね、ミルトさんから何か指示されているのかな。
わたしは諦めてリタさんの同行を認めたの。
でも、その服装で行くの?侍女服だよね、それ…。
**********
フェイさんが作った『精霊の道』を通って移転してきたのは、冬に作った屋敷の有る精霊の森。
そう、何も王都からノイエシュタットまで魔導車で行く必要はないのよね。
ここは、ノイエシュタットから南西に約五シュタットの荒野にある、ここからノイエシュタットまで半日で済むの。
問題なのは移動手段、だから先日お母さんの許へ帰省して、この屋敷用に魔導車を貰ってきたんだ。
魔導車に乗って精霊の森から出ると…。
「へー、あのお屋敷ってこんなところにあったのですか。
見事に何もない荒野なんですね。
私、西部地区も初めて来ましたけど、本当に森林が少ないのですね。」
リタさんがのんきに言っている通り、本当に何もない荒野にわたし達の森はあった。
荒野にポツンと森が存在していて、凄い違和感だよ。
ウンディーネおかあさんの話だと元々王国のほとんどがこんな荒地だったみたい。
ヴァイスハイト女王の時代から森を作り、畑を耕して、延々と努力して今の豊かな土地を築き上げてきたんだね。今更ながら先人の努力って凄いと思う。
そして、魔導車に揺られること約半日、まだ日が高いうちにノイエシュタットに着くことができた。
ただ、…。
「みんな、ひ弱すぎです。あの程度の揺れで気分を悪くするなんて。
馬車なんかちゃんとした街道でももっと揺れますよ。」
わたし達みんなが車に酔って青い顔をしているとリタさんが呆れていた。
そう、屋敷のある森は荒野のど真ん中、一応道らしきものはあったけどノイエシュタット近郊で街道に合流するまでは酷い悪路だったの。
流石に高性能の魔導車と言えども悪路の揺れは吸収しきれず、普段は殆ど揺れを感じない魔導車に慣れきったわたし達は見事に車酔いしてしまったの。
「しかし、ここがノイエシュタットですか、新しい町だけあって綺麗ですね。
それに、町がまだ発展途上にあるので活気があります。
若い人もたくさんいて非常に良い町ですね。」
一人だけ元気なリタさんはのんきに初めて来たノイエシュッタットの印象を口にしている。
わたし達を介抱しようと言う気は全くないようだ。
わたしがリタさんに愚痴をもらすと…。
「えっ、ターニャちゃん達は『癒し』の力を使えるのだから車酔いくらい簡単に治るでしょう。」
と言われてしまった。
わたしも最初はそう思ったのだけど、フェイさんが言うんだよ。
「車酔いなんて慣れの問題です。
病気や怪我ではないのですから、何でも安易に精霊の力に頼ってはいけません。」
こう言われちゃったら、我慢するしかないでしょう。
結局、ミーナちゃんのご両親のお墓参りは明日にして、今日はこの町に来たときに毎回宿泊しているホテルに宿を取りゆっくり休むことにしたんだ。
忘れてはならないのが、ミーナちゃんをご両親のお墓参りに連れて行くこと。
きっとミーナちゃんは遠慮して言い出せないでいるはずだから。
あと、昨年森を作った村の様子も確認したい、『黒の使徒』の連中に嫌がらせされていなければ良いのだけど。
これから帝国まで行くとなると日程がタイトになるからどうしようかと思っていたのだけど…。
ひらめきました、何も律儀に魔導車で時間をかけていく必要はないのよね。
わたしは早速精霊の森へ帰省しておかあさん達におねだりしてきたよ。
理由を話したら快く希望のモノをもらえたの、よかった。
**********
そして数日後、準備が整ったわたし達はノイエシュタットから帝国の東部辺境への旅に出発することになるのですが…。
今回のメンバーは、わたし、ミーナちゃん、ハンナちゃん、リリちゃんの四人組に加え、帝国の現状を知っておいて貰おうと昨年同様ハイジさんにも声をかけたの。そこまでは良いの…。
わたしの目の前には、いつもと変わらぬ侍女の服装をしたリタさんが大きな鞄を抱えて立っている。
なぜ、あなたがここにいるの…、
「夏休みですよ、夏休み。
ターニャちゃんに無茶振りした罰として、ミルト様はしばらく皇太子様の事務仕事を手伝うことになったのです。
私がいると全部私がやってしまって罰にならないからと言って、皇太子様から直々に夏季休暇を言い渡されたのです。有給ですよ、有給休暇。
凄いですね高級官吏って夏休みが一ヶ月もあるんだそうです。もっとも、忙しくて実際に取れるのはほんの一部だそうですけど。
セレブは夏は働かないって本当だったんですね、私は都市伝説だと思っていましたよ。
ということで、私も連れて行ってください。
私は料理も得意ですし、事務仕事もできます、一緒にいると何かと便利ですよ。」
なんか、凄く行く気満々なんだけど、帝国へ行くこと誰から聞いたんだろう?
でも、とりあえず。
「リタさん、一緒に行くって言いますけど、どこに寝るつもりなのですか。
帝国の辺境には宿がないので車中泊ですよ、ベッドが足りないです。」
わたしは魔導車のキャパシティの関係で無理だと断ったの。
「魔導車のソファーがあるじゃないですか、私の使っているベッドより数段寝心地が良さそうですよ。
ちゃんと毛布は持ってきたので大丈夫です。」
ああ、その大きな荷物、毛布が入っていたんだ…。
これは何を言っても付いて来るだね、ミルトさんから何か指示されているのかな。
わたしは諦めてリタさんの同行を認めたの。
でも、その服装で行くの?侍女服だよね、それ…。
**********
フェイさんが作った『精霊の道』を通って移転してきたのは、冬に作った屋敷の有る精霊の森。
そう、何も王都からノイエシュタットまで魔導車で行く必要はないのよね。
ここは、ノイエシュタットから南西に約五シュタットの荒野にある、ここからノイエシュタットまで半日で済むの。
問題なのは移動手段、だから先日お母さんの許へ帰省して、この屋敷用に魔導車を貰ってきたんだ。
魔導車に乗って精霊の森から出ると…。
「へー、あのお屋敷ってこんなところにあったのですか。
見事に何もない荒野なんですね。
私、西部地区も初めて来ましたけど、本当に森林が少ないのですね。」
リタさんがのんきに言っている通り、本当に何もない荒野にわたし達の森はあった。
荒野にポツンと森が存在していて、凄い違和感だよ。
ウンディーネおかあさんの話だと元々王国のほとんどがこんな荒地だったみたい。
ヴァイスハイト女王の時代から森を作り、畑を耕して、延々と努力して今の豊かな土地を築き上げてきたんだね。今更ながら先人の努力って凄いと思う。
そして、魔導車に揺られること約半日、まだ日が高いうちにノイエシュタットに着くことができた。
ただ、…。
「みんな、ひ弱すぎです。あの程度の揺れで気分を悪くするなんて。
馬車なんかちゃんとした街道でももっと揺れますよ。」
わたし達みんなが車に酔って青い顔をしているとリタさんが呆れていた。
そう、屋敷のある森は荒野のど真ん中、一応道らしきものはあったけどノイエシュタット近郊で街道に合流するまでは酷い悪路だったの。
流石に高性能の魔導車と言えども悪路の揺れは吸収しきれず、普段は殆ど揺れを感じない魔導車に慣れきったわたし達は見事に車酔いしてしまったの。
「しかし、ここがノイエシュタットですか、新しい町だけあって綺麗ですね。
それに、町がまだ発展途上にあるので活気があります。
若い人もたくさんいて非常に良い町ですね。」
一人だけ元気なリタさんはのんきに初めて来たノイエシュッタットの印象を口にしている。
わたし達を介抱しようと言う気は全くないようだ。
わたしがリタさんに愚痴をもらすと…。
「えっ、ターニャちゃん達は『癒し』の力を使えるのだから車酔いくらい簡単に治るでしょう。」
と言われてしまった。
わたしも最初はそう思ったのだけど、フェイさんが言うんだよ。
「車酔いなんて慣れの問題です。
病気や怪我ではないのですから、何でも安易に精霊の力に頼ってはいけません。」
こう言われちゃったら、我慢するしかないでしょう。
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