精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ

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第8章 夏休み明け

第211話 打ち上げパーティ ②

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「あ、ウンディーネおかあさん、何でここに?」

 突然背後から声をかけられ驚くわたしにウンディーネおかあさんは言う。

「あら、ターニャちゃんの可愛いドレス姿を見に来たらいけなかったかしら?」

 夏休み前に、フェイさんがわたしとミーナちゃんの今日のドレスを作るために精霊の森からシルクの生地を持ち帰ったそうだ。その時フェイさんから今日の事を聞いたらしい。

 今日わたしとミーナちゃんが着ているのは、薄い水色のお揃いのドレスだ。
 育ち盛りなので去年のドレスがもう着れなくなってしまい新調したんだよ。
 ウエストからスカートの裾にかけてふんわり膨らんだ形の可愛いドレスで、上腕の中ほどから袖口が大きく広がっている。
 ドレスそのものは精霊の森で取れた光沢のある絹糸から作られた生地だが、ドレスの正面デコルテからスカートの裾にかけて白い花柄のレースがあしらわれていてとっても可愛らしい。

「ターニャちゃんもミーナちゃんもとっても良く似合っているわ、可愛いわよ。」

「おかあさん、とっても素敵なドレスを用意してもらって有り難う。」

「ウンディーネおばさま、お久し振りです。とっても可愛いドレスを用意してくださり有り難うございました。」

 ウンディーネおかあさんは、わたし達のドレス姿を見て相好を崩している。
 まさか、わたし達のドレス姿を見るだけに姿を現すとは思ってもいなかった。

 ウンディーネおかあさんはアストさんとラインさんをみて、

「話の腰を折ってしまったみたいでごめんなさいね。
 初めまして、ティターニアの母のウンディーネです。
 日頃は娘がお世話になっているみたいで有り難うございます。」

といかにも保護者な挨拶をした。そういえば、こんな風に普通の挨拶をするのは初めて見たかも。

「初めまして、ブルーメン領主のアストです。
 恥ずかしながら娘さんにはこちらの方が大変お世話になっているのです。
 今日もお礼を言おうと思って娘さんを訪ねてきたところなのですよ。
 今日はお母さんにもお目にかかることが出来てよかったです。」

 アストさんがお母さんに挨拶をしていると元気の良い声がした。

「あ、ウンディーネ様だ!こんばんは、ウンディーネ様。今日はターニャちゃんを見に来たの?」

 料理の小皿を手にルーナちゃんがやって来る。

「いつぞや、湖でターニャたちと一緒にいた子だったわね。息災にしていましたか?」

「うん、ルーナだよ。この間は有り難う、とっても楽しかった。」

 ルーナちゃんとおかあさんのやり取りを聞いていたアストさんがルーナちゃんに尋ねた。

「ルーナはティターニアさんのお母さんと面識があったのかい?」

「あ、アスト伯父さんいたんだ、ごめんなさい、話の邪魔をしちゃったかな?
 うん、夏休みに女神の湖で会ったの、氷河を見に連れて行ってもらったんだよ。」

 ルーナちゃんの空気を読まない発言に、案の定アストさんが疑問の呈する。

「女神の湖って、あそこに近づけるのは王室の関係者かアデル侯爵家の関係者くらいだろうウンディーネさんはどちらかの関係者なのかい?
 でも、あそこの氷河って近づくのは難しいだろう、私もアデル侯爵に招かれて別荘に行ったことが有るけどとても氷河に近づけるとは思えなかったよ。」

 女神の湖は山深いところにある湖で湖畔には王家とアデル侯爵の別荘しかない、そのためその二つに行く道しかなく、湖畔に出るためには二つの別荘に行くしかない状態なの。
 しかも、くだんの氷河というのは二つの別荘から見て大きな湖の対岸にあり、湖に浮かぶ小舟ではとても行けそうにないの。

「そんなの水の女神様には・・・。」

 ルーナちゃんは何か言いかけたが、途中で後ろから口を塞がれた。

「あらあら、ルーナさんでしたっけ?そういう話は、時と場所を考えてしましょうね。」

 ミルトさんが怖い笑顔でルーナちゃんにいうと、ルーナちゃんは必死に首を縦に振った。
 確かに…、今ルーナちゃんたらウンディーネおかあさんが伝承の水の女神だと言おうとしたよね。
 ここでそんな事を言ったら、頭のおかしな子と思われるか、会場全体が大騒ぎになるかのどちらかだもんね。たぶん、前者だと思うけど。

「ミルト、久し振りですね、息災にしていましたか?」

「ええ、ウンディーネ様のおかげで日々を楽しく過ごしておりますわ。
 ウンディーネ様にお目にかかる前の鬱々とした日々が嘘のようですわ。」

「そうですか、それは良かった。」

 おかあさんとミルトさんにやり取りを聞いていたアストさんは合点がいったようだ。

「皇太子妃殿下、ご無沙汰をしております。ブルーメン領をお預かりしているアストでございます。
 やはり、ティターニアさんのお母さんは王室の関係者でしたか、感じられる存在感が只者ではないと思っていたのです。」

「ブルーメン卿、公の場ではないのでそう畏まらないでください。
 今日は私もフローラの母親として出席しているのですよ。
 それと、ご推察のとおりウンディーネ様は王室にとってとても大切な方なのですよ。
 ブルーメン卿も粗相の無いようにお願いしますね。」

 ミルトさんはシレッとそう言った。『王室にとってとても大切な方』ですか、『王室の関係者』とは言っていないから間違いではない、微妙な言い方だね。

「ところで何の話をしてらしたの?」

 ミルトさんの問いにわたしは、

「ブルーメン領に伝わる三女神の伝承について伺っていたんです。
 今、花の女神に伝承を聞き終えたところでお母さんが来て、話しが途中になっているんです。」

と答えると、ミルトさんは

「そう、それは興味深い話だわ。私も聞かせていただいてよろしいかしら?」

と言った。

 きっと、ウンディーネおかあさんの話になるんだろうな…。
 



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