精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ

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第7章 二度目の夏休み、再び帝国へ

第162話 瘴気の森の施設 ①

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「さて、この施設を運営している者の名称とあなたの名前から教えてもらえるかしら?」

 さっきまで激昂していたおじさんは、ミルトさんが身分を明かし施設の接収を告げると一転沈黙し何も話さなくなった。
 今のミルトさんの問い掛けに対しても返答する気がないようだ。

「あらら、今度は黙秘するつもりかしら?
 良いわよ、そちらがその気なら尋問はプロに任せるわ。
 別にあなたから話を聞かなくても接収に差支えがあるわけではないから。
 それに、以前から探っていた魔晶石の不正流通についてもこちらが関わっていた証拠を見つけたし、ここで押収する物証を良く検討すれば背後関係なんかもわかるでょうしね。」

 そう言ってミルトさんは魔晶石の不正流通に関する証拠書類をおじさんの目の前でヒラヒラと振って見せた。

 おじさんは悔しげに顔を歪めてなにやらぶつぶつと呟いている。
 うん?なんかこれ…、ヤバイやつじゃない?

「おチビちゃん!あのおじさん、魔法使うつもりだ!発動を止めて!」

 慌ててわたしはおチビちゃんにお願いをする。
 おじさんは火の魔法で証拠書類を燃やすつもりだったようだ。おじさんが魔法を放つより早く、火のおチビちゃんが魔法の制御を乗っ取り発動をキャンセルした。

「ミルトさん、挑発のつもりかもしれないけど、不用意に証拠書類をちらつかせたらダメだよ。
 このおじさん、火の魔法で証拠を隠滅しようとしてたよ、それにミルトさんが火傷するところだった。
 相手が魔法を使えることも考えてよ。」

「有り難う、ターニャちゃん、助かったわ。 
 ごめんね、普段治癒以外の魔法を使うことがないので魔法で攻撃されるとは考えてなかったわ。」

 わたしとミルトさんの会話を聞いていたおじさんがワナワナと震えながら声を上げた。

「きさま何者だ!人の魔法の制御を乗っ取るなんて聞いたことがないぞ!」

 そう言われてもただの子供だし、やったのは精霊さんだからね、…言わないけど。
 わたしは忌々しげにわたしを睨むおじさんに告げた。

「危ないよ、おじさん!
 建物の中で火の魔法を使ったらダメって子供の頃言われたでしょう。火事になったらどうするの。
 それに、人に向かって攻撃性の魔法は使っちゃダメだって学校で習ったでしょう。
 今からミルトさんの取調べに協力すれば許してあげるけど、まだ反抗的な態度を続けるのならば死ぬほど後悔することになるよ。」

 子供のわたしが脅してもなんとも思わないのだろう。
 その後も、おじさんはミルトさんの尋問に答えようとはしなかった。

「ねえ、ミルトさん。このおじさん、油断しているとまた魔法で証拠を隠滅しようとするかもしれないよ。
 魔法を封じちゃった方が良いのじゃないですか。」

「ターニャちゃんって、時々凄く酷い仕打ちを考えるわよね。
 それは、軽々しくやって良いことではないわ。」

「わたしもそれは分っています。
 でも、すぐに魔法で人を攻撃するような人に魔法を持たせておくのは危険だと思いますよ。
 それに今回はこの人を見せしめにすれば捕らえた他の人が素直に取り調べに応じてくれると思うのですが。」

 ミルトさんは、わたしの顔とおじさんの顔を何度か見た後少し考えて言った。

「それもそうね、この人が協力的でないなら見せしめになってもらいましょうか。」

「おい、おまえら何を言って……。」

 ミルトさんの酷薄な笑みに嫌な予感がしたのだろうおじさんが何か言いかけるが、言い終わる前に光のおチビちゃんの『浄化』が発動する。それも、全力全開のやつが…。

 おじさんを包み込んだ眩い光が収まるとそこには真っ白になったおじさんがいた。

「おい、貴様今何をやった。
 私の体から魔力が抜けていく感じがしたぞ。」

 そう言ってハッとした表情で自分の手を見たおじさんは、

「白い……。
 きさま、『白い聖女』か?去年、教導団一つを使い物にならなくしたと言う、あの。
 なんできさまが生きているんだ?」

と叫んだ。

 こういうのを何て言ったけ?棚から牡丹餅?瓢箪から駒?

「おじさん、ちょっと聞きたいんだけど。
 『白い聖女』が『黒の使徒』の教導団一つを使い物にならなくしたと言うのは一般の人の噂になっているの?
 しかも、王国にいるおじさんの耳に入るほどの?
 それに、何でわたしが生きているのかというのはどういう意味なの?」

 わたしがそう言った時、おじさんがしまったと言う顔をしたのを私は見逃していないよ。
 勿論ミルトさんも気付いたと思う。

 語るに落ちると言うのはこういうことを指すのだろうね。
 何で私が生きているのか、そんな疑問を持つのはわたしが死んでいると思っている人だけ。
 そして、そう思っている人は、『黒の使徒』の暗殺者がわたしに差し向けられたと知っている人だけだろう。
 一般の人が『黒の使徒』の暗殺者のことなど知っている訳がない。

「おじさんには色々と教えてもらわなければならないみたいね。」

 わたしがそう言うとおじさんは下を向いたままだんまりを決め込んでいる。


 その時、執務室の扉がノックされ、二人の騎士が入ってきた。
 それぞれ、別の持ち場の人だったらしく、一人は作業所の接収が終わったという報告をもう一人は病人、怪我人がまとまって収容されているのを見つけたという報告をもたらしたのだった。

 とりあえず、おじさんから話を聞くのは時間が掛かりそうなので後回しにして、そっちを先に片付けた方が良いのかしら。

 わたしはミルトさんにどうしますと問いかけた。











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